魔法高校の聖騎士~楽園の鳥籠で天使は嘲笑う~

天羽睦月

第29話 白色の球体


「被害が大きすぎる! 遠くに報道のヘリコプターも来ているし、第一部隊の人たちが早く倒してくれるといいんだけど……」

 出雲はこれからどう動けばいいのか悩んでいた。
 景昌たちと一緒に行けばよかったと後悔をする反面、違う行動をしたから先ほどの女性を助けられたという気持ちもあり、どうすれば正解だったのか答えが出ずにいた。

「俺はこれでよかったんだろうか……」

 出雲がその場にて考えていると、巨大化した若い男性の様子がおかしいことに気が付いた。戦っている第一部隊の人たちも距離を保ちながら、その様子を伺っているようである。

「みんな動きが止まってる? 何かあったのかな?」

 巨大化した若い男性の姿や周囲で止まっている第一部隊の姿を出雲が見ていると、巨大化した若い男性の体に亀裂が入り始めていた。

「あの男性の全身に亀裂が!? 何が起きるんだ!?」

 両手で自身の頭部を抑えながら動きが止まった巨大化した若い男性はその体に入った亀裂によって全身が崩壊をすると、体の中心部分があった場所に何やら白色の球体が存在していた。その白色の球体は縦横3メートル程に見える大きさをしている。

「あの球体は何だ!? 一体何が起こるんだ!?」

 出雲が白色の球体を凝視していると、第一部隊の人たちが攻撃をしていた。
 武器での攻撃や魔法を用いて、連続で途切れることなく白色の球体に攻撃を浴びせていた。

「急に攻撃を始めた!? あの白色の球体を壊せるのか!?」

 耳を劈く程の大きさの衝撃音が周囲に響き渡る中で、出雲は爆風と衝撃をんに耐えながら第一部隊の戦っている姿を見ていた。

「俺もあれぐらいの魔法が使えるようにしないと! 武器での攻撃と魔法を合わせて戦えれば、もっと強くなれるはず!」

 そんなことを考えていると、次第に第一部隊の攻撃が止まり始めていた。 
 武器や魔法での攻撃によって白色の球体の周りに煙が立ち込めている。次第にその煙が消えていくと、白色の球体には傷一つ付いていなかった。

 第一部隊の人たちはその硬さに驚いている様子であり、さらに攻撃を仕掛けようと出雲もの目から見えた。
 だが、第一部隊の人たちが再度攻撃を仕掛けようとした瞬間、白色の球体に亀裂が入る。

 それは卵が割れるようにピキピキと音を立てて亀裂が入り、小さな欠片が白色の球体から地面に落ち始めた。

「球体が割れ始めてる!? 倒したのか?」

 出雲が第一部隊の人たちが倒してのかなと考えていると、そんな考えはすぐに一蹴されてしまう。
 白色の球体の欠片が全て地面に落ちると、そこには出雲の中にいるミサと似ている点を持つ姿の俯いている若い男性の姿があった。

「な、なんだあの姿……ミサさんやあの時の金髪の男に似ているけど、微妙に似ていない気もする……」

 若い男性の姿は今にも取れそうなボロボロの両翼が背中から生えており、服装もミサや金髪の男性同様に布一枚を纏っている。
 その姿を見た出雲は、似ているけど似ていない若い男性の姿に戸惑っていた。

「羽はボロボロで、服は布一枚……ミサさんやあの金髪の男に似ているけど、右側の髪が金髪で左側が白髪をして、体は筋肉がなく骨が浮き出ているみたいだ」

 出雲が姿を変えた若い男性を観察していると、俯き顔を止めて真っ直ぐに前方を見始める。姿を変えた若い男性の顔はどこか悟ったような表情をし、周囲にいる第一部隊の人たちを哀れみの目で見ているようである。

「貴様は誰なんだ! 人間か!? それ以外の生命体か!?」

 宙に浮かぶ第一部隊の隊長である獅子王源十郎である。
 獅子王源十郎は、現在50歳でありながら、その強さと魔法騎士団を引っ張るリーダーシップを発揮して未だに難易度が高い第一部隊の隊長を任されている。

 獅子王源十郎は白髪の長髪をしながら、後ろ髪を縛っている髪型をしている。他の隊員とは違い、黒色の目立つ鎧を着ながら素早く動き回っているのでその筋力の高さが外側からでも理解が出来る。

「答えろ! お前は何者だ! この町を壊して何がしたいんだ!」

 鬼のような形相で姿を変えた若い男性に叫んでいると、聖痕の導きに答えろと無表情のまま言葉を発した。
 源十郎は聖痕の導きってどういう意味だと叫ぶと、姿を変えた若い男性が右腕を剣に変化させた。

「言葉が通じないか。お前たち臨戦態勢だ!」
「了解です! 気を付けろよ!」

 源十郎が声を上げると、側にいた副隊長と思わしき男性が気を付けろよと叫ぶ。その声と共に全員が武器を構えると、源十郎の側にいた男性が来ますと叫ぶ。

「分かっている! 轟雷の剣!」

 源十郎が腰に差している剣の握りを力強く掴むと、鞘が中央から上下に分離をしてそこからバチバチと帯電している黄金の剣が現れた。

「この轟雷で貴様を討ち滅ぼす!」

 その言葉と共に、源十郎が雄叫びを上げながら帯電をしている剣で姿を変えた若い男性に斬りかかる。

「ホロボス……? ヤッテミルトイイ。 オレハサトッタンダ……コノセカイはオワリヲムカエル」
「片言じゃ何を言っているか分からんよ!」

 帯電をしている剣で攻撃をした源十郎の剣を、変化させた腕で若い男性は防ぐ。

「オレ……ノナマエ……ハ……ハニエル……ソウ……ハニエルダ!」
「名前なんて聞いていないぞ!」

 源十郎とハニエルが目に見えない速度で斬り合いをしていた。

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