乙女ゲームのモブに転生したので縁結び相談室を作る
08.待ちに待った救援
しかし、運は私に味方をした。
「シキミ!? 無事か!?」
聞き慣れた勇ましい女性の声。ハッとして背後を振り返ると、ベティを始めとしたギルドのメンバーが3名。デレクまでは理解出来たが、何故かこの面子の中に面倒臭そうな顔をしたオルヴァーも混ざっている。
聞くまでもない、私が送った救援依頼で駆け付けてきてくれたのだろう。正直、最悪悪戯扱いされて誰も来ないかもしれないとまで思っていたが助かった。しかも、山のヌシ程度なら片手で捻りそうなオルヴァーまで連れている。
「救援に来たぞ! 相手は――これは、山のヌシだな」
デレクの冷静な一言で我に返る。
アベルの敵と意気込んでいたマルセル達もまた、救援の姿を認めて目を丸くしていた。彼等には悪いが、ヌシ討伐など出来そうも無いのでこっそり呼んでおいた救援。少々バツが悪くなり、私はそっと顔を背けた。
「助けに来てくれてありがとう! 詳しい説明は後でするから、みんなでアイツを倒そう」
「分かった。後で何やってたのか、私にも教えてくれよ!」
そう言うと、ベティは剣を抜き、意気揚々と山のヌシを見据える。恐らく彼女も歯が立たないので、オルヴァーに頑張って欲しいところだ。
そんな彼は現れてからこっち、ずっと無言である。ただ、何故か私と目が合っている。お前のせいだぞ、と言外に語られているかのようだ。何なのだろう。
マルセルが加勢に加わったベティに声を掛ける。
「やあ、レディ。俺達を助けてくれるのかい?」
「おうさ! お前等、シキミに感謝しろよ。わざわざクエスト外なのに救援出してくれてたぞ!」
「……そうかい。うーん、彼女には迷惑を掛けているなあ」
「通りで逃げ帰らないと思ったわ」
クレールの言葉が刺さる。確かに勝てる可能性があったので付いて行った事に関しては否定出来ない。が、彼女の続く言葉に私の心は撃ち抜かれる事となる。
「ま、救援を呼んでくれてた事には感謝しているわ。有り難う、シキミ」
「ひえっ……!?」
「失礼ね。私だって、お礼くらいは言えるのよ」
ツンデレのデレの威力を思い知った私は、定期的に巻き起こる不整脈に心臓辺りを押さえた。なんてこったい、これがゲームの世界か。リアルでこんな人間いたら、お近づきには絶対になりたくないが。
ほのぼのとした会話は長くは続かなかった。人が集まってきた事に危険を感じたのか、ヌシが大きく動き、その身を起こす。最早小さな丘レベルのサイズ感に、私は目を白黒させた。こいつ、立ち上がったらこんなに大きいのか。
元気に加勢へ入ったベティに釘を刺す形で、デレクが声を掛ける。
「無闇に突っ込むのは危険な大きさだぞ、ベティ!」
「いや、突っ込むも何も……。私の剣じゃ、こんなの効かないだろ。肌に爪楊枝でツンツンしてるみたいなもんじゃない?」
「言い得て妙だな!」
ちょっと、とクレールが眉間に皺を寄せる。
「私が魔法を撃つから、怯んだ隙にどうにかしなさい」
「ざっくり! クレール、俺が言うのも何だけれど、それは作戦とは呼べないよ」
流石に適当が過ぎたのか、マルセルが慌てて魔法を編み始めたクレールを止める。そうこうしている内にとっちらかった状態に嫌気が差したのか、終始無言だったオルヴァーがついに口を開く。
「おい、クソ雑魚共。もう貴様等はそこで指をくわえて見ていろ。俺が片付ける」
「誰よコイツ」
折角魔法を編んでいたクレールが青筋を立てて呟く。大喧嘩に発展する未来が脳裏を過ぎったものの、それ以上の小競り合いは彼等の間では起きなかった。
オルヴァーが背中に背負っていた大剣――最早鉄の塊――をベルトから外す。彼の商売道具であるそれは、刃物と言うより鈍器だ。非常に凶悪な外見をしていると言える。
大剣を易々と片手で持ち上げるオルヴァーに戦慄したのか、怪物でも見るような視線を向けたマルセルが、そっとその場から距離を取った。彼はサポート専門なので、前衛の振り回す大剣の巻き添えになるのは本意ではないのだろう。
実際、山のヌシ程度なら彼の被っている人の皮を剥ぐ事無くあっさりと仕留めてしまうに違いない。私はゲームとは違う現実の彼を前に、どういう立ち回りをするのか自然と胸を躍らせた。
「シキミ!? 無事か!?」
聞き慣れた勇ましい女性の声。ハッとして背後を振り返ると、ベティを始めとしたギルドのメンバーが3名。デレクまでは理解出来たが、何故かこの面子の中に面倒臭そうな顔をしたオルヴァーも混ざっている。
聞くまでもない、私が送った救援依頼で駆け付けてきてくれたのだろう。正直、最悪悪戯扱いされて誰も来ないかもしれないとまで思っていたが助かった。しかも、山のヌシ程度なら片手で捻りそうなオルヴァーまで連れている。
「救援に来たぞ! 相手は――これは、山のヌシだな」
デレクの冷静な一言で我に返る。
アベルの敵と意気込んでいたマルセル達もまた、救援の姿を認めて目を丸くしていた。彼等には悪いが、ヌシ討伐など出来そうも無いのでこっそり呼んでおいた救援。少々バツが悪くなり、私はそっと顔を背けた。
「助けに来てくれてありがとう! 詳しい説明は後でするから、みんなでアイツを倒そう」
「分かった。後で何やってたのか、私にも教えてくれよ!」
そう言うと、ベティは剣を抜き、意気揚々と山のヌシを見据える。恐らく彼女も歯が立たないので、オルヴァーに頑張って欲しいところだ。
そんな彼は現れてからこっち、ずっと無言である。ただ、何故か私と目が合っている。お前のせいだぞ、と言外に語られているかのようだ。何なのだろう。
マルセルが加勢に加わったベティに声を掛ける。
「やあ、レディ。俺達を助けてくれるのかい?」
「おうさ! お前等、シキミに感謝しろよ。わざわざクエスト外なのに救援出してくれてたぞ!」
「……そうかい。うーん、彼女には迷惑を掛けているなあ」
「通りで逃げ帰らないと思ったわ」
クレールの言葉が刺さる。確かに勝てる可能性があったので付いて行った事に関しては否定出来ない。が、彼女の続く言葉に私の心は撃ち抜かれる事となる。
「ま、救援を呼んでくれてた事には感謝しているわ。有り難う、シキミ」
「ひえっ……!?」
「失礼ね。私だって、お礼くらいは言えるのよ」
ツンデレのデレの威力を思い知った私は、定期的に巻き起こる不整脈に心臓辺りを押さえた。なんてこったい、これがゲームの世界か。リアルでこんな人間いたら、お近づきには絶対になりたくないが。
ほのぼのとした会話は長くは続かなかった。人が集まってきた事に危険を感じたのか、ヌシが大きく動き、その身を起こす。最早小さな丘レベルのサイズ感に、私は目を白黒させた。こいつ、立ち上がったらこんなに大きいのか。
元気に加勢へ入ったベティに釘を刺す形で、デレクが声を掛ける。
「無闇に突っ込むのは危険な大きさだぞ、ベティ!」
「いや、突っ込むも何も……。私の剣じゃ、こんなの効かないだろ。肌に爪楊枝でツンツンしてるみたいなもんじゃない?」
「言い得て妙だな!」
ちょっと、とクレールが眉間に皺を寄せる。
「私が魔法を撃つから、怯んだ隙にどうにかしなさい」
「ざっくり! クレール、俺が言うのも何だけれど、それは作戦とは呼べないよ」
流石に適当が過ぎたのか、マルセルが慌てて魔法を編み始めたクレールを止める。そうこうしている内にとっちらかった状態に嫌気が差したのか、終始無言だったオルヴァーがついに口を開く。
「おい、クソ雑魚共。もう貴様等はそこで指をくわえて見ていろ。俺が片付ける」
「誰よコイツ」
折角魔法を編んでいたクレールが青筋を立てて呟く。大喧嘩に発展する未来が脳裏を過ぎったものの、それ以上の小競り合いは彼等の間では起きなかった。
オルヴァーが背中に背負っていた大剣――最早鉄の塊――をベルトから外す。彼の商売道具であるそれは、刃物と言うより鈍器だ。非常に凶悪な外見をしていると言える。
大剣を易々と片手で持ち上げるオルヴァーに戦慄したのか、怪物でも見るような視線を向けたマルセルが、そっとその場から距離を取った。彼はサポート専門なので、前衛の振り回す大剣の巻き添えになるのは本意ではないのだろう。
実際、山のヌシ程度なら彼の被っている人の皮を剥ぐ事無くあっさりと仕留めてしまうに違いない。私はゲームとは違う現実の彼を前に、どういう立ち回りをするのか自然と胸を躍らせた。
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