異世界転生って、まだ死なせてくれないんですか?〜老衰から誕生へ〜

真木 輝

第2章 第1話 光の国

《魔法歴639年》4月 光の国 ルーン
転移魔法のゲートが開く
どのような国なのだろうか
気になってしょうがない
少し時間もあるし観光でもしよう
ルンルンになりスキップしながらゲートを潜る
その時

「あいて!!!」

「きゃっ!!!」

ボンっと鈍い音とともに身体に誰かがぶつかった
「す、すいません、お怪我はありませんか?」
そう声をかけ、前を向くと
そこには銀髪の美女が倒れていた

「ほんとにいったいどんなよそ見をしたらこうなるのよ」

痛そうに頭を撫でながらその美女は言った

「姫様!姫様!どこにおられるのですか!」

「やばっ!ちょっとあなたもこっち来て!」

そう言うと謎の銀髪美女は俺の手を引いて走り出した

「え、ちょっ、まっ」

え、姫様?なんだ?なんなんだ?



あれからしばらく走った

「やっと、まけたわね」

女は物陰に隠れながらそう言った

「ごめんなさいね、逃走に付き合わせて、私の名前はリルよ」

「ご丁寧にどうも、アースだ、さっきはすまなかった」

リルというのか銀髪にすらっとした身体のライン、少し大きな胸
うむなかなか良いの〜

「なにかやましいことでも考えてるんじゃないでしょうね?」

やばいバレた

「ま、まさかぁ・・・」

「そう、まぁいいわ、それよりさっきの転移魔法よね?もしかして光魔法の使い手?この国の人?」

質問攻めか

「い、いや風の国だよ」

「風の国!?それまた遠いところから来たのね」

「君は光の国出身なのかい?」

「ええそうよ、生まれも育ちもこの国よ、あと君じゃなくて、リル、わたしにはリルって名前があるから」

「わ、わかったわかった」

それなりに気の強い子だ

「それはそうとなんで逃げてたんだい?」

「あああれね、家から脱走したら使用人が追いかけてきたのよ」

へぇ使用人か俺と同じ貴族か?

「あなたは?何か予定でもあったんじゃないの?」

「ま、まぁ予定というほどではないけど、この国を観光しようかと思ってただけだよ」

「へぇなるほどね、なら連れ回したお礼に案内してあげるわ!!!」

これは良い収穫だ
なんせ美女のガイドがついたのだから

「是非お願いするよ」

「オッケー、ならさっそく案内するわ」

「『変身魔法』」

そういうとリルは金髪ショートの美女へと変身した

「これでよしと、さぁ行きましょう!」

「あ、ああ」

なるほど光の性質を利用したこのような使い方があるのか奥が深いな

その後リルは街中を案内してくれた
光の国は風の国よりも発展している
光をさまざまなものに応用しているのだ
風でも応用は効くがやはり光には勝てない
食は風の国の方がおいしいようだ
しかしこの先住むにはなかなか面白そうな街だ
「もう暗いわね、最後は私のお気に入りの場所に連れて行ってあげるわ」



リルの言うお気に入りの場所までは歩いて15分ほどかかった
街からは少し離れていて、目の前には色とりどりのチューリップが咲いている
夕日に照らされてまさに幻想的だ

「どう?すごいいいところでしょ?ここも、光の国も」

「ああ、ほんとにいい国だよ、こんな綺麗な場所もあるしね」

「私日頃からなんか重圧というか堅苦しいというかそんな環境で育ってきたから、辛いときは抜け出してここによくくるの」

この子の家は厳しい家なのだろうか?

「季節によって違う花が咲くからそれも見どころよ」

なんだろうか
この少女は笑っているようで
心の奥でなにか悲しい感情を感じる

「今日はありがとう、とても楽しかった」

「どういたしまして、私もリフレッシュできたしウィンウィンよ」

そう言うとリルはひょいっと起き上がり笑顔で言った

「帰りましょうか」

その笑みの奥にはやはり悲しさが滲み出ていた
何か声をかけるにしてもさっき出会ったばかりの赤の他人だここは放っておこう

「そうだね、家まで送ろうか?」

「いや大丈夫よ」

そう言うとリルは後ろを指さした
するとこちらに走ってくる年老いた使用人がいた

「ひ、姫様、探しましたよ、さあ帰りましょう」

「ええ、じぃ、わかったわ」

「またどこかで会えるといいわね」

そう言うとリルはくるっと方向を変えて歩き出した
その背中は華奢な身体からさらに小さく見えた

「俺も帰ろうか・・・」

今日の出来事をおそらく俺は忘れないだろう





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