転移したのに人間じゃない!?

逢夢

第61話 ウンター・ヴェルト 紅事件 ご主人様との再会。

アマリアの扇子を持っていた腕ごと何かによって
吹っ飛ばされていた。
〈一筋縄ではいかん、主人様だな〉
「それが良い所でもあるんですが、今回ばかりはそれが裏目ですね。」


腕を吹っ飛ばされたが、平然としているアマリア。


〈アマリア、腕は大丈夫か?〉
「はい、核さえやられなければ、再生は可能ですから」


そう言っている内に、傷口から芽が生えてきて一気に成長し
腕を作り上げた。
〈便利なもんだな〉
「きっと、コブシ様も出来ますよ。」
〈それが出来たら、俺様は別の生き物になっている!
 俺様はカイザーシュピンネ種に誇りを持っているからな!〉


胸を張った、目の前に着弾した何かの影響で土がコブシに降り掛かる。


〈主人とはいえ、今のはイラッとしたな〉
「抑えてくださいね、コブシ様」


コブシは空間配置の結界術を利用して魔力の流れを感知した。


〈そう言う事か、ただ暴れるだけが能ではないな〉
「何か分かりましたか?」
〈あぁ、動けない、魔力を外に出せないと分かった途端に
 口の中に魔力を貯めて、魔力弾としてこちらにぶつけている。〉
「吸収される量より多く出せれば、出来る芸当ですね。」
〈しかし、主人様の魔力は規格外だな〉
「それも今回裏目ですね」
〈愚痴っても仕方ない〉


コブシが顎を上げるとキラキラ光る糸が一瞬だけ見えたアマリア。


「今度はどうしますか?」
〈入口を塞いでやる〉
「それは!!」
そのアマリアの抗議の声と同時にヒデの身体では大爆発が起きた。


〈俺様がカッコつけている時に、土をかけたお返しだ〉
スッキリしている、コブシ。
「コブシ様!!」
〈そう怒るな!アマリア!〉


魔力を自分に向けられて、焦るコブシ。


モクモクと黒い煙が晴れていき、糸も荊棘も吹っ飛んでおり
そこには目を瞑ったヒデの肉体のみが佇んでいた。


そして、開かれる目がこちらを向いた時二人は驚いた。


懐かしい気配も感じるが今まで見えなかった魔力がしっかりと感じ取れる。
それはアマリア、コブシが発する禍々しい魔力とは違い
穏やかな気配を帯びた魔力だが包み込まれており
動こうとすると押し留めれる、威圧にも似た
感情で感じる部分と肉体的に感じる部分の差が存在している
不可思議な魔力だった。


〈これなら俺様の結界の中を動けるのも納得だ
 まるで、従えば許し、歯向かえば消す
 穏やかだが、暴君の様な魔力だ〉
「暴君ですか、言えて妙ですね。」


そしてその魔力に乗って
“暴君?それは良いな、それを我が力の名にしておく。
 そして、これからは共に暴れようぞ”
そう聞こえた。


そして、その魔力が落ち着きいつもの雰囲気のみが残った主人の姿がそこにはあった。


開口一番出た言葉は再開の言葉ではなく
「待って!!なんで俺裸なの!!」
だった。



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