転移したのに人間じゃない!?

逢夢

第60話 ウンター・ヴェルト 紅事件 暴走する肉体を留める。

「殺すのではなく、暴走を止めておく形で待ちますよ、コブシ様」
〈意外と面倒そうだな、だが面白そうだ!〉
そして目の前の意識の混濁で暴走している主人に宣誓をした、アマリア。
「ご主人様、アマリアとコブシ様の力、お見せします!」


咆哮をして、行動しようとした、ヒデの身体。
だが、咆哮とは裏腹に動きは起きなかった。
その訳は、コブシの空間配置の結界術。
〈やはり、肉体的な能力で切られていた訳ではないのだな〉
「ですね、ただ無理やり動こうとしてはいますね」
〈やはり、魔力量や構造変化が起こるか認識が甘い部分があるか〉
「それなら大丈夫です、私も捉えますから」


そう言って、祈るポーズをしてしゃがみ込む、アマリア。
〈何をしている?アマリア隙を見せるな!〉
コブシは初めて戦闘するアマリアをみるので、そう問いかけた。
「これが戦闘スタイルへの移行のきっかけですから、ご安心を」


そして、アマリアが立ち上がった時、コブシは禍々しい魔力を感じた。
〈アマリア、お前は…〉
「コブシ様も本気をお出しになればこれに近い魔力は出ますが
 これでは人間の世界は歩けませんから
 それにご主人様と一緒に入れないのは、嫌ですからね」


コブシに与えた、実を作る時に吸収したヒデの魔力の影響もあり
足が蔦状になり、地面に生える時の姿は、普段のアマリアよりも
大人びており、ピンクの髪が生える美女へと姿を変えていた。


「ご主人様、少しお休みください。」


両手を上げると赤紫色の蔦達がヒデの肉体を絡め取る。
絡め終わった時には、力はコブシの空間配置の結界術に
魔力行使はアマリアの蔦により吸収されて花が咲き乱れていた。


「その咲いた花は、良い眠りを誘いますので、ご安心を」
その匂いを感じていたコブシは、自分の立ち位置を
アマリアの後ろに変えてから
〈そう言う事は早めに言っておけ、馬鹿め〉
「失礼しました、コブシ様
 気づかれると思いましたので」
と言って、いつの間にか作ったのか、薔薇が描かれている扇子で
口元を隠しながら優雅な言葉遣いで返す、アマリア。
〈ふん、どこかの貴族かお前は〉


それでも動きを起こそうと暴れているヒデの肉体。
〈流石に、動くか〉
「ですが、先ほどよりは力、魔力共に下がっていますね」
〈自己再生に使った分が多いのだろう、きっと〉


その時、アマリアの扇子を持っていた腕ごと何かによって
吹っ飛ばされていた。


〈一筋縄ではいかん、主人様だな〉
「それが良い所でもあるんですが、今回ばかりはそれが裏目ですね。」


腕を吹き飛ばされたが、アマリア、コブシ共々笑っていた。

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