転移したのに人間じゃない!?

逢夢

第49話 ウンター・ヴェルト 紅事件 扉の先には

一陣の風が俺を撫でた。
その風の方向を向くと、先ほどまでなかった一枚の古びた扉が
洋館と自分たちの間に生まれていた。


「あの扉は?」
{あの扉こそ、主人の心とは別の存在の心の世界へと繋がっています。}
「これは、行った方が良いかな?」
開いている扉の中は薄暗く、こちらの光が地面に当たっているので
辛うじて、地面がある事はわかるが
それ以外の情報はさっぱりわからない世界の様に見えていた。
{内からの脅威があの扉の中にいます。紅竜様が今まで抑えていたので
 安全でしたが、居なくなれば主人様が飲み込まれる可能性があります。}
「それは行かないダメそうだね。」
{お恥ずかしながら、ここからの計算でよく紅竜様は言われていました。
 その別の存在を倒すのではく主人様が信じるという答えになる様にと
 私には意味がわかりませんでしたが、一番求めている答えに繋がる流れが
 主人様の意思で扉をくぐり、迫り来る脅威を前に認めるという事でした。}
「迫り来る脅威を認める??」
{上記の計算の際に、出た答えで一番の悪手だと思った事が紅竜様は
 喜んで、『それじゃ!』と仰っていましので確かかと。}
「悪手だけど、紅竜は『それだ』と言った。」
「シオリは不安だろうけど、紅竜がそういうなら大丈夫なんだろうな」
{失礼ながら、主人様は紅竜様の事をなぜ、信頼しているのですか?
 彼女は、この世界では原色竜として恐れられている竜です。}
「俺からしたら、この世界で初めて会った人物なんだよ
 そして、色々救ってくれた恩人でもあるし
 でも、なんでだろうな??






 なぜか信じたいと思っているだよ。」


{そうですか…
 その気持ちを別の存在にもし、向ける事ができたらどちらも救われますね。}
小さな声で俺には聞こえない様に、シオリは言った。


「何か言ったか?」
{いえ、大丈夫です。}
「そうか?なら、向かうか!」
{扉の先には、主人様のみ行く事になります。}
「そうなの!?」
{私は主人様の心にいるので、別の心の世界には行けませんので…}
「そっか、ならなんとかしてくるよ」
そうして、また、シオリの頭を撫でて、そう伝えた。


ゆっくりと扉の前まで来ると
風が扉の中に吸われていくのを感じる、この先に何がいるのか
俺にはわからないが紅竜、シオリから
『お主がこれから出会うかも知れないモノは、ヒデから全て作られたと言って良い
 だが、始まりはお主ではない。』
{迫り来る脅威を認める事}
と助言を貰えている。
俺は、その言葉を信じてその扉をくぐった。



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