転移したのに人間じゃない!?

逢夢

第48話 ウンター・ヴェルト 紅事件 意識の中

気づいたら、広い芝生の庭を持つ、大きめの洋館の庭に倒れていた。


「ここは?」
まだ、フラフラとしていたら腕を掴まれ、しっかりと立たせてくれた。
{大丈夫ですか?主人様}


「君はもしかして…」
目の前にいるのは、150センチ程度であろう少女。
{私は、鑑定栞カンテイノシオリです。主人様。}


「やっぱり、そうか喋ってはいたけど、こうして会うのは初めましてだな」
{そうなりますね、本来ならこうして会う事は叶わなかったので
 紅竜様の悪知恵のお陰ですね。}
「2人でなんか、色々と考えたって言ってたもんな、あいつは」
{はい、こうして会うのも紅竜様のアイディアです。
 本体の私があなたに伝えなさいと}
「そっか、なら教えて欲しいんだがここはどこになるんだ」
{ここはあなたの心の中になります。}
「俺の心?」
{先ほどの会話の後、紅竜様は主人様の体の主導権を奪取しました
 そして、自身の力のみを本体の紅竜様に吸収されやすくさせました。}
「という事は、ここは多少は安全ということか?」
{外側からの脅威ということに関しては、そうなります。}
外側からの脅威にはという事は
「その言い方だと他にも問題がありそうだな…」
{判断が早くて助かります。
 主人様の中にはもう1つ別の存在があります。
 今まで一度たりとも外には出た事はないが、確かに存在しているモノです。}
「そう聞くと、俺はこっちに来てから本当に多くのモノを中に入れているんだな」
{本当にそうなりますね、私が入っている事自体ありえないというのに!}
シオリは本来、自分だけがいるはずだったのにそうなっていない事への怒りからなのか
語尾が強かった。
「感謝しているよ、シオリ
 こうしていてくれるのが助かる、俺だけならどうして良いかわからなかったから」
{まぁ、その怒りは紅竜様との打ち合わせで燃え尽きました
 あそこまで使われれば、誰だって…}
「戻っておいで〜」
そして、アマリアにしている様に自然と撫でていた。
こうして撫でるのも癖になっているらしい。
{おぉ〜これが噂のなでなでですね、すごい効果ですね}
どこで噂になっているのかと思いながら、俺は撫で続けていると
洋館のほうの窓が開き、一陣の風が俺を撫でた。
その風の方向を向くと、先ほどまでなかった一枚の古びた扉が
洋館と自分たちの間に生まれていた。



コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品