転移したのに人間じゃない!?

逢夢

第27話 迷界樹の暗黒街へ向かう道中 目の前の人間 (前編)

本当はスキル授与が終わったら子供の頃に転生をさせて
この人間の第二の人生をスタートさせる予定だった。


だが、この人間 立花秀明は
何がどうなってか、死んだ時と同じ状態でこちらの世界に落ち
そして、竜と同化を果たし、こちらの世界に定着をした。


生まれ方もイレギュラーならスキル取得もイレギュラー。


スキルを1000年も与え続けてきたが、あんなことは初めてだった。


本から文字が浮かび、直接入ればそれは最初から最上位の能力を取得することと同義。
1つだけという点のみが不幸中の幸いだが、これからも何が起こるかわからない。


この男は本当に何者なのだろうか?


そう思い、話が一段落した頃合いでその人間の頭に手を置いた。


この白い世界で女神に許されている事。
心の世界に干渉できる能力。
それを発動させた。


自分だけが光に包まれて光を抜けた先に広がるのは
広い芝生の庭を持つ、大きめの洋館。
それがこの人間の心の世界だった。


穏やかな風と感情が人の形を取り
穏やかに過ごしている雰囲気が伝わってくる。


〝なんて、穏やかな世界なのでしょうか〟


〝ですが、何かイレギュラーな存在があるものと思ったのですが〟
周りを見渡していると、庭に面している洋館の入り口の扉が独りでに開いた。


〝中に来いという事でしょうか?〟


この能力は人の世界に入れるがもし心の世界に囚われでもしたら
女神にも抜け出すことはできない、諸刃の能力。


〝私にもこんな気持ちがあったのですね〟


何があるか、ワクワクが抑えられてないのが自分でもわかっている。


その扉を抜け、広いリビングに入った。
そして、リビングの扉も開き、ホールへと誘われた。


ホールの真ん中に違和感のある古びた扉のみが存在していた。
そしてその扉も開き、中はこちらからの光が入り込む分のみが目視でき
その先は真っ暗な世界が広がっている入り口だった。


〝どう見ても、怪しいですがこの先にこの人間のイレギュラーにつながるナニかがあるのでしょう〟


女神はゆっくりとその扉の中へと入っていった。
その先に広がる世界は先ほどいた世界とは違い
薄暗い世界で扉を中心に全体で8畳程度の広さで円状の陸地のみ
その縁には波が当たっているので周りが水辺、湖のようにも感じられる。


扉がゆっくりと閉まると同時にこの世界に月明かりが降り注いだ。
明るさはある程度はあるが先ほどのいた世界とは全く違う世界。


〝ここは本当に同じ人の中にある世界なのでしょうか?〟
そう呟くと
湖面が盛り上がり、何かが動いたのがわかった。
かなり大きなサイズの何かが動いた。


“それを知りたいからこの世界に来たのだろう、わざわざ”


低く、そして重く響く声。


〝何者ですか?〟


“我が名は、ディノス 此奴の中に眠る力”



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