転移したのに人間じゃない!?

逢夢

第17話 ここで生きていく。レギオンゴブリン戦(俺 対 レギオンゴブリンリーダー編)

遠くでレギオンゴブリン達の悲鳴が聞こえている。
どうやら、アマリアは問題なくやれているようだ。


良かったと思うと同時に
目の前の気配に集中した。


『レギオンゴブリンのリーダー格じゃの、この気配は』
「さっきの奴とはやっぱり、違うんだろうな」
『違うはずじゃ、どちらかというの能力というよりかは性格がじゃが』
「どいうい事だ?」
『端的に言えば、ずる賢いのじゃ』
「ずる賢いのか…」
『そして、自分の事しか考えておらぬ、言葉はなんとでもいうタイプじゃろうな
 そんな奴がリーダーになりやすいはずじゃ』
「言葉には惑わされないようにするか」
『それが懸命じゃの』


そんな会話をしている内に、レギオンゴブリンリーダーが見えてきた。
レギオンゴブリンリーダーは、しっかりと銀色の鎧を着ており
他のレギオンゴブリンとは、なんというか風格が違うように見えた。


「オマエノ ツヨサニハ オドロイタ ヨク ココマデキタ」


片言ではあるが、ハッキリと言葉を喋ったレギオンゴブリンに驚いた。


「オマエ ノ ナカマニ ナッテモイイ」


まさかの提案に更に驚いた。


「そうか、ならこれ以上争わないでいいんだな
 良かったよ」


俺はそう言って微笑み、背中を見せた。


----------------------------------------------------------------


レギオンゴブリンリーダー視点


こいつはチョロい人間だ。
こんな言葉で騙されるとは、やはり人間は無能だ。
こうやって、昔から人間は詰めが甘い。
簡単に信じやがる。


笑いが込み上げてくるが我慢だ。
目の前の人間が背を向けるまでは
向けた瞬間に、ヤッてやる。


ほらみろ、簡単に振り返りやがった。
音は立てずにやってやる。


振り返った人間に向かって、鎧を着ているのに
無音で襲いかかる。


取り出したナイフで
背中から心臓を貫くように差し込んだ。


-------------------------------------------------------


バキンと音を立てて、ナイフは折れた。
すぐに竜化で背中を鱗状に変化させたからだ。
やはり、レギオンゴブリンリーダーは俺に襲い掛かった。


本当に安心して、信じてみても良いかなと思った。
事前に情報を聞いていても、目の前でそう言われると
アマリアの事もあり、信じても良いかと思った。


『お人好しが』
「そうだな…」


紅竜からお叱りを受けてしまった。


振り返ると焦っているようには見えないレギオンゴブリンリーダー。


「サスガダ ヤハリ ツヨキモノト クメルノハ イイナ」


そんな事を言ってきた。


「そうか…」
もはや、苦笑いしか出来ない。


そして、また背を向けてアマリアの方へ歩き出した。


その時の俺は少しいつもと違っていた。
コイツが、こんな感じのヤツで本当に良かった。
気分は少し感傷的にはなるが、それ以上に感じないのは
コイツの言葉と行動の差を
事前に知り、そして現実に見せつけられたからだろう。


俺は今まで出したことのない《尻尾》を出した。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品