エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
第307話
「打てっ!」
「フッ!」
アンデッドを召喚していた者を退治したと思ったら、巨大な魔力を有するギジェルモと名乗る者が突如現れた。
そのことを退いたシーロとエミリアノから報告を受けた人族の兵と冒険者たちは、協力して総攻撃を開始した。
ゆっくりと向かって来るギジェルモに対し様々な魔法が放たれるが、それらを全てを躱し、ギジェルモは笑みを浮かべる。
「くっ! 休ませるな打て!」
「ハハ……こんな魔法が当たると思っているのか?」
飛んで来る魔法の数が増やしてもギジェルモに当たることなく、地面に穴を穿つことしかできない。
魔力を無駄にしていることしかできていない人族に対し、ギジェルモは思わず声を出して笑ってしまう。
「おっと!」
流石に四方から飛んで来るようになると、ギジェルモは魔力による障壁を作って防ぐようになった。
その障壁によってどんな魔法も防がれ、変わらずギジェルモは兵のいる方向へ足を進める。
追い詰めて行くことを楽しんでいるかようだ。
「どうした? もう諦めたか?」
障壁に防がれ続け、段々と人族たちの魔法が減っていく。
魔法を放っていた者たちが、座り込んで行っているのを見ると魔力が尽きて来たのが分かる。
そのため、愉悦に感じるかのようにギジェルモが崩れ落ちた者たちを嘲笑う。
「今だ!!」
「ムッ!?」
歩みを進めるギジェルモがある箇所へ来た時、待ってましたと言うかのように、シーロたち冒険者たちによる魔法が発動した。
足下に浮かび上がった魔法陣にギジェルモも気付くが、時すでに遅く、彼を包み込むように地面から炎の柱が噴き出した。
「ぐっ、ぐあぁーー!!」
「殺ったか!?」
炎に包まれ、悲鳴を上げるギジェルモ。
その声に、人族たちは勝利を確信したように喜びの声をあげる。
しかし、その中でシーロは言ってはいけない言葉を呟いてしまった。
「魔法を設置しているとはな……」
「なっ!?」
案の定、シーロの呟きがフラグになってしまったかのように、治まり始めた炎柱の中から声が聞こえて来る。
そして、魔法が治まった後には、ギジェルモが何もなかったかのようにその場に立っていた。
生きていただけでも恐ろしいというのに全くの無傷の状態でいるギジェルモに、人族の誰もが目を見開き固まってしまった。
「なかなか面白い戦い方だ」
「何で効いていないんだ!?」
用意を周到にして完全に罠に嵌めたというのに、何もなかったかのようにギジェルモは楽しそうにしている。
人族たちがどんな風に攻撃してくるのかを待ちわびるかのようだ。
そんなギジェルモに対し、シーロたち冒険者や兵たちはどうしていいか分からなくなる。
「おのれっ!!」
「だ、だめだ!」
魔法による攻撃が通用しないと判断したのか、数人の兵士たちが剣を手にギジェルモ目掛けて斬りかかって行った。
そんな彼らに対し、シーロたちは止める言葉をかけるが、それも虚しく彼らには届かない。
「私を相手に肉弾戦か……」
無謀にも突っ込んでくる者たちに、ギジェルモはこれまでとは違い獰猛な笑みへと変わった。
「死ね!!」
「ガッ!!」
ギジェルモは、まず先頭で向かってきた兵の懐に入り、剣を持った手を掴んで鳩尾に肘を叩きこむ。
そして、攻撃を受けて掴みが弛んだ兵の手から剣を奪い取った。
「くらえ!!」
次に接近して来た兵は、手に持つ槍で突きを放ってくる。
仲間の兵が死角になり、躱すことなどできないはずだ。
「フッ!」
「なっ!?」
しかし、ギジェルモは腹へ攻撃した兵をその槍先へ向けて押し、同士討ちをさせようとしてくる。
仲間を殺してしまいそうになり、驚いた兵は攻撃を中断するように槍を引く。
「そのまま仲間ごと突き刺せばいいものを……」
「グァッ!!」「ガッ!!」
自分に押し出された仲間を受け止めた兵に向かって一言忠告するように呟くと、ギジェルモは2人そろって奪い取った剣で斬り殺した。
「ヤロウッ!!」「キサマッ!!」
仲間が2人殺られ、怒りを含んだ言葉と共に、剣を持った兵2人が左右から斬りかかる。
“スッ!!”
「なっ!?」
「グエッ!!」
左右から振り下ろされて来た剣の内、ギジェルモは左からきた剣を躱しつつ右からくる剣の軌道を僅かにずらす。
ずらされた軌道はそのまま進み、ギジェルモの左から迫っていた仲間へ突き刺さってしまった。
「すま……ぐっ!!」
仲間を刺してしまって、顔を青くした兵が謝罪の言葉を口にしようとしている所を、ギジェルモは容赦なく首を刈って斬り殺した。
「っ!!」
「ウガッ!!」
一気に3人を殺したギジェルモに、少し離れた距離から火球の魔法が飛んで来る。
その攻撃に対してギジェルモは、仲間に胸を刺されて動けなくなっている兵を盾にすることで回避する。
「ほらよっ!!」
「うっ!!」
魔法を防いだ後、ギジェルモは足元に転がっている槍を拾い、それを投擲する。
それが先程火球を放った兵の体を貫通して倒す。
「「「「ハッ!!」」」」
1、2人で攻めかかっても倒せないと判断した兵たちが、一気に4人がかりで攻めかかる。
四方、上下にからの槍による攻撃に、槍を投擲したばかりの態勢では躱すことなどできるはずがない。
「ハッ!!」
「「「「……っ!!」」」」
避けられないなら避けなければいいと言わんばかりに、ギジェルモは地面に手を付く。
そしてそのまま地面へ魔力を流し、攻めかかってきた4人の足下から魔法による岩の槍を出現させて突き刺した。
あまりにも咄嗟のことで、4人とも躱すことなどできずに体を尽き抜かれて絶命した。
「……どうした? 終わりか?」
「……うっ!!」
地面から突き出た槍に串刺しにされた仲間を目の当たりにし、後続の兵たちは急ブレーキをかけて動けなくなる。
遠距離からの魔法攻撃でもダメで、至近距離の戦闘までも冷静に対応してくる。
勝つための未来が見えずに、兵たちは気圧されて後退りをする事しか出来なくなった。
「どけっ!!」
「っ!?」
ギジェルモの強さにどうすることも出来ずにいる兵たちの背後から、大きな声が聞こえて来た。
その声に反応すると、冒険者たちがまとまって魔力を集中していた。
強力な魔力の高まりを確認した兵たちは、その声に従いギジェルモへの道を作るように左右へとダイブした。
「「「「「行けーーー!!」」」」」
「なっ!?」
シーロをはじめとした冒険者たちが集めた魔力は、掛け声と共に高温の光線と化してギジェルモへと発射された。
収束された高速の光線に、ギジェルモは初めて慌てるような声を漏らした。
「ガッ!!」
光速の攻撃を躱すことなどできず、光線は剣を持つギジェルモの右手とその周辺の半身を抉るように消し去った。
攻撃を受けたことによる痛みで、ギジェルモは呻き声を漏らした。
「よしっ!!」
今度こそ攻撃が効いたことを確認した人族たちは喜びの声をあげる。
さっきのように迂闊な発言をしないように誰もが気を付ける。
「フフッ!! ハーハッハ……!!」
「「「「「っ!!」」」」」
抉れた半身から血を噴き出し、そのまま朽ち果てるかと思われたギジェルモが大声で笑い出し、人族の誰もが声を失う。
朽ち果てるどころか、さっきまでの笑みを取り戻したかのようだ。
「素晴らしい一撃だったぞ! これほどのダメージを与えるなんて称賛に値する!」
「そんな……」
笑みを浮かべて話すギジェルモの抉れていた部分から、何かが蠢くように膨れ上がってきた。
それが何か分からずに人族たちが呆気に取られていると、それはギジェルモの体を修復して怪我がなかったかのように元に戻っていった。
全力を尽くして折角与えた怪我が、あっという間に修復されるという信じられないような現象が目の前で起き、誰もが自身の目を疑った。
「素晴らしい攻撃の礼に、私の本性を見せてやろう!」
「………………」
まだあっという間に体が再生したことを受け入れられない人族たちは、何を言っているのか分からないと言うかのように、無言でギジェルモの言葉が耳を通り抜けた。
「ハーーーハァッ!!」
魔力の膨れ上がりに、地面が僅かに振動を起こした。
そして、ギジェルモの気合いの言葉と共にその振動が治まると、そこには先程の人間の姿から、違う生物へと変化を遂げていた。
「ヴァンパイア……」
その姿を見た誰かが、絞り出すようにギジェルモのことを形容する言葉を呟いたのだった。
「フッ!」
アンデッドを召喚していた者を退治したと思ったら、巨大な魔力を有するギジェルモと名乗る者が突如現れた。
そのことを退いたシーロとエミリアノから報告を受けた人族の兵と冒険者たちは、協力して総攻撃を開始した。
ゆっくりと向かって来るギジェルモに対し様々な魔法が放たれるが、それらを全てを躱し、ギジェルモは笑みを浮かべる。
「くっ! 休ませるな打て!」
「ハハ……こんな魔法が当たると思っているのか?」
飛んで来る魔法の数が増やしてもギジェルモに当たることなく、地面に穴を穿つことしかできない。
魔力を無駄にしていることしかできていない人族に対し、ギジェルモは思わず声を出して笑ってしまう。
「おっと!」
流石に四方から飛んで来るようになると、ギジェルモは魔力による障壁を作って防ぐようになった。
その障壁によってどんな魔法も防がれ、変わらずギジェルモは兵のいる方向へ足を進める。
追い詰めて行くことを楽しんでいるかようだ。
「どうした? もう諦めたか?」
障壁に防がれ続け、段々と人族たちの魔法が減っていく。
魔法を放っていた者たちが、座り込んで行っているのを見ると魔力が尽きて来たのが分かる。
そのため、愉悦に感じるかのようにギジェルモが崩れ落ちた者たちを嘲笑う。
「今だ!!」
「ムッ!?」
歩みを進めるギジェルモがある箇所へ来た時、待ってましたと言うかのように、シーロたち冒険者たちによる魔法が発動した。
足下に浮かび上がった魔法陣にギジェルモも気付くが、時すでに遅く、彼を包み込むように地面から炎の柱が噴き出した。
「ぐっ、ぐあぁーー!!」
「殺ったか!?」
炎に包まれ、悲鳴を上げるギジェルモ。
その声に、人族たちは勝利を確信したように喜びの声をあげる。
しかし、その中でシーロは言ってはいけない言葉を呟いてしまった。
「魔法を設置しているとはな……」
「なっ!?」
案の定、シーロの呟きがフラグになってしまったかのように、治まり始めた炎柱の中から声が聞こえて来る。
そして、魔法が治まった後には、ギジェルモが何もなかったかのようにその場に立っていた。
生きていただけでも恐ろしいというのに全くの無傷の状態でいるギジェルモに、人族の誰もが目を見開き固まってしまった。
「なかなか面白い戦い方だ」
「何で効いていないんだ!?」
用意を周到にして完全に罠に嵌めたというのに、何もなかったかのようにギジェルモは楽しそうにしている。
人族たちがどんな風に攻撃してくるのかを待ちわびるかのようだ。
そんなギジェルモに対し、シーロたち冒険者や兵たちはどうしていいか分からなくなる。
「おのれっ!!」
「だ、だめだ!」
魔法による攻撃が通用しないと判断したのか、数人の兵士たちが剣を手にギジェルモ目掛けて斬りかかって行った。
そんな彼らに対し、シーロたちは止める言葉をかけるが、それも虚しく彼らには届かない。
「私を相手に肉弾戦か……」
無謀にも突っ込んでくる者たちに、ギジェルモはこれまでとは違い獰猛な笑みへと変わった。
「死ね!!」
「ガッ!!」
ギジェルモは、まず先頭で向かってきた兵の懐に入り、剣を持った手を掴んで鳩尾に肘を叩きこむ。
そして、攻撃を受けて掴みが弛んだ兵の手から剣を奪い取った。
「くらえ!!」
次に接近して来た兵は、手に持つ槍で突きを放ってくる。
仲間の兵が死角になり、躱すことなどできないはずだ。
「フッ!」
「なっ!?」
しかし、ギジェルモは腹へ攻撃した兵をその槍先へ向けて押し、同士討ちをさせようとしてくる。
仲間を殺してしまいそうになり、驚いた兵は攻撃を中断するように槍を引く。
「そのまま仲間ごと突き刺せばいいものを……」
「グァッ!!」「ガッ!!」
自分に押し出された仲間を受け止めた兵に向かって一言忠告するように呟くと、ギジェルモは2人そろって奪い取った剣で斬り殺した。
「ヤロウッ!!」「キサマッ!!」
仲間が2人殺られ、怒りを含んだ言葉と共に、剣を持った兵2人が左右から斬りかかる。
“スッ!!”
「なっ!?」
「グエッ!!」
左右から振り下ろされて来た剣の内、ギジェルモは左からきた剣を躱しつつ右からくる剣の軌道を僅かにずらす。
ずらされた軌道はそのまま進み、ギジェルモの左から迫っていた仲間へ突き刺さってしまった。
「すま……ぐっ!!」
仲間を刺してしまって、顔を青くした兵が謝罪の言葉を口にしようとしている所を、ギジェルモは容赦なく首を刈って斬り殺した。
「っ!!」
「ウガッ!!」
一気に3人を殺したギジェルモに、少し離れた距離から火球の魔法が飛んで来る。
その攻撃に対してギジェルモは、仲間に胸を刺されて動けなくなっている兵を盾にすることで回避する。
「ほらよっ!!」
「うっ!!」
魔法を防いだ後、ギジェルモは足元に転がっている槍を拾い、それを投擲する。
それが先程火球を放った兵の体を貫通して倒す。
「「「「ハッ!!」」」」
1、2人で攻めかかっても倒せないと判断した兵たちが、一気に4人がかりで攻めかかる。
四方、上下にからの槍による攻撃に、槍を投擲したばかりの態勢では躱すことなどできるはずがない。
「ハッ!!」
「「「「……っ!!」」」」
避けられないなら避けなければいいと言わんばかりに、ギジェルモは地面に手を付く。
そしてそのまま地面へ魔力を流し、攻めかかってきた4人の足下から魔法による岩の槍を出現させて突き刺した。
あまりにも咄嗟のことで、4人とも躱すことなどできずに体を尽き抜かれて絶命した。
「……どうした? 終わりか?」
「……うっ!!」
地面から突き出た槍に串刺しにされた仲間を目の当たりにし、後続の兵たちは急ブレーキをかけて動けなくなる。
遠距離からの魔法攻撃でもダメで、至近距離の戦闘までも冷静に対応してくる。
勝つための未来が見えずに、兵たちは気圧されて後退りをする事しか出来なくなった。
「どけっ!!」
「っ!?」
ギジェルモの強さにどうすることも出来ずにいる兵たちの背後から、大きな声が聞こえて来た。
その声に反応すると、冒険者たちがまとまって魔力を集中していた。
強力な魔力の高まりを確認した兵たちは、その声に従いギジェルモへの道を作るように左右へとダイブした。
「「「「「行けーーー!!」」」」」
「なっ!?」
シーロをはじめとした冒険者たちが集めた魔力は、掛け声と共に高温の光線と化してギジェルモへと発射された。
収束された高速の光線に、ギジェルモは初めて慌てるような声を漏らした。
「ガッ!!」
光速の攻撃を躱すことなどできず、光線は剣を持つギジェルモの右手とその周辺の半身を抉るように消し去った。
攻撃を受けたことによる痛みで、ギジェルモは呻き声を漏らした。
「よしっ!!」
今度こそ攻撃が効いたことを確認した人族たちは喜びの声をあげる。
さっきのように迂闊な発言をしないように誰もが気を付ける。
「フフッ!! ハーハッハ……!!」
「「「「「っ!!」」」」」
抉れた半身から血を噴き出し、そのまま朽ち果てるかと思われたギジェルモが大声で笑い出し、人族の誰もが声を失う。
朽ち果てるどころか、さっきまでの笑みを取り戻したかのようだ。
「素晴らしい一撃だったぞ! これほどのダメージを与えるなんて称賛に値する!」
「そんな……」
笑みを浮かべて話すギジェルモの抉れていた部分から、何かが蠢くように膨れ上がってきた。
それが何か分からずに人族たちが呆気に取られていると、それはギジェルモの体を修復して怪我がなかったかのように元に戻っていった。
全力を尽くして折角与えた怪我が、あっという間に修復されるという信じられないような現象が目の前で起き、誰もが自身の目を疑った。
「素晴らしい攻撃の礼に、私の本性を見せてやろう!」
「………………」
まだあっという間に体が再生したことを受け入れられない人族たちは、何を言っているのか分からないと言うかのように、無言でギジェルモの言葉が耳を通り抜けた。
「ハーーーハァッ!!」
魔力の膨れ上がりに、地面が僅かに振動を起こした。
そして、ギジェルモの気合いの言葉と共にその振動が治まると、そこには先程の人間の姿から、違う生物へと変化を遂げていた。
「ヴァンパイア……」
その姿を見た誰かが、絞り出すようにギジェルモのことを形容する言葉を呟いたのだった。
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