エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
第278話
「ケイしゃま! おかえりなしゃい!」
「……ただいま」
いつも通り訓練指導を終えて帰ると、ラファエルがケイを出迎えた。
すると、ラファエルのポケットからヒヨコが顔を出していた。
「あっ! お帰りなさい」
「ただいま」
ケイがそのヒヨコに戸惑っていたところ、家の中にいたオシアスが顔を出してきた。
丁度いいので、ケイはオシアスに聞くことにした。
「なぁ? あのヒヨコって……」
「はい。あの卵から孵ったヒヨコです」
「孵っちゃったのか……」
「ケイ殿が朝出かけてから卵にヒビが入り始めまして……」
思った通りだった。
実はあのヒヨコが生まれるまでは、少しさかのぼることになる。
「……ケイしゃま! この卵は何の卵でしゅか?」
「…………なんだろ? 何か樹の上にあった巣から拝借してきただけだから分からないな」
定期的にエナグアの周辺の魔物の駆除を行なっているケイ。
狩ってきた魔物の肉は、自分たちで食べる用と周囲の住人に配る用に持ち帰るのだが、その中に何だか分からない卵が入っていた。
その卵に反応したラファエルが、手に持ってジッと眺めた。
「何か食べたい卵料理でもあるのか?」
「…………いいえ」
そのラファエルを見て、何か食べたい調理でもあるのかと思ったのだが、何だか困ったような表情に変わった。
どうやらそういう訳ではないらしい。
「……………………」
「んっ? どうした?」
何だかラファエルの様子がおかしい。
その卵に何か感じるものでもあるのだろうか。
「これふかしましゅか?」
「孵化?」
黙って卵を見続けていることにケイが心配になって来た頃、ラファエルが急に問いかけてきた。
その突然の質問の内容に、ケイは少し戸惑い首を傾げる。
「どうだろう? …………孵化させてみたいのか?」
「はい!」
子供だから孵化と言うものに興味が生まれたのだろうか。
ケイの息子のカルロスも、似たようなことを言った経験があったことを思いだす。
「じゃあ、やってみるか?」
「いいのでしゅか?」
ケイ自身何の卵だか分からないが、鶏程度の大きさの卵なのだから、たいして大きな生き物が生まれるとは思えない。
子供の好奇心を伸ばすには、やらせてみるのも一興だろう。
卵なら他にもあるので、小さいのが1個なくなったからと言って大したことではない。
なので、ケイはラファエルの好きにさせてみることにした。
「難しいぞ?」
「やりましゅ!」
基本従魔にするときや家畜でも、産んだのを手に入れているので、ケイでも孵化なんてやったことがない。
命を生み出すのだから、それだけ気を遣わなければならない。
子供のラファエルにはかなり難しいだろうと思って問いかけるが、やる気満々でケイに返事をした。
「良いのですか?」
「大丈夫だろ? 多分孵らないだろうし……」
早速ケイが教えように卵を温めだしたラファエルを見ながら、オシアスはケイに問いかけてきた。
どういった内容で彼が心配しているのかは分からないが、ケイは全然心配していないように言葉を返した。
「上手くできても有精卵かどうかも分からないし……」
「そうですね……」
野生の鳥でも無精卵は産まれる。
というより、野性の場合調べてみたら無精卵だったなんてことはよくある。
ラファエルが温めている卵は、ケイが言ったようにたまたま見つけた巣に有った卵だ。
親鳥が妨害してこなかったということもあるし、恐らく無精卵の可能性が高い。
だから、可哀想だが孵化することはないだろう。
失敗しても、それだけ命を生み出すのは難しいと学ばせることも出来るという考えもある。
ケイのいうことに納得したのか、オシアスも見守ることにしたのだった。
「ピッ!」
そんな大人の企みを無にするように、ヒヨコが生まれてしまったらしい。
見た感じだと、鶏のヒヨコと色や大きさからいって大差がない。
「魔物のヒヨコですかね?」
「……さすがにヒヨコでは分からないな」
森の中の巣から持って来た卵だから、場合によっては魔物の卵の可能性もある。
でかくなったり、凶暴だったりした場合、駆除しないと他の人に迷惑をかけるかもしれない。
特に魔人大陸は強力な魔物が多いのだから、注意しなければならない。
だが、いくらケイでも、ヒヨコの状態では魔物かどうかなんて判断できない。
「でも、あの大きさなら大丈夫なんじゃないか?」
生まれたのがヒヨコの時点で何かの鳥か、鳥系の魔物のかもしれない。
だが、特殊な形状をしている部分はないため、ただの鳥だと思われる。
繁殖期とかはどんな鳥も気性が荒くなるが、基本従魔にしてしまえば主人の指示に従うので他人に害をもたらすことはないだろう。
そう言った部分では安心していいと思う。
「とりあえず様子見だな……」
「分かりました」
何のヒヨコだか分からない状態で殺すなんて判断をしたら、ラファエルの今後が不安になる。
成長して何の子だか判断できるまでは手の出しようもないというのが現状だ。
ただの鳥でも魔物だったとしても、とりあえずは従魔にしておいた方が良いと思い、ケイはラファエルに従魔の契約の仕方を教え、ヒヨコとの契約をさせたのだった。
「……ただいま」
いつも通り訓練指導を終えて帰ると、ラファエルがケイを出迎えた。
すると、ラファエルのポケットからヒヨコが顔を出していた。
「あっ! お帰りなさい」
「ただいま」
ケイがそのヒヨコに戸惑っていたところ、家の中にいたオシアスが顔を出してきた。
丁度いいので、ケイはオシアスに聞くことにした。
「なぁ? あのヒヨコって……」
「はい。あの卵から孵ったヒヨコです」
「孵っちゃったのか……」
「ケイ殿が朝出かけてから卵にヒビが入り始めまして……」
思った通りだった。
実はあのヒヨコが生まれるまでは、少しさかのぼることになる。
「……ケイしゃま! この卵は何の卵でしゅか?」
「…………なんだろ? 何か樹の上にあった巣から拝借してきただけだから分からないな」
定期的にエナグアの周辺の魔物の駆除を行なっているケイ。
狩ってきた魔物の肉は、自分たちで食べる用と周囲の住人に配る用に持ち帰るのだが、その中に何だか分からない卵が入っていた。
その卵に反応したラファエルが、手に持ってジッと眺めた。
「何か食べたい卵料理でもあるのか?」
「…………いいえ」
そのラファエルを見て、何か食べたい調理でもあるのかと思ったのだが、何だか困ったような表情に変わった。
どうやらそういう訳ではないらしい。
「……………………」
「んっ? どうした?」
何だかラファエルの様子がおかしい。
その卵に何か感じるものでもあるのだろうか。
「これふかしましゅか?」
「孵化?」
黙って卵を見続けていることにケイが心配になって来た頃、ラファエルが急に問いかけてきた。
その突然の質問の内容に、ケイは少し戸惑い首を傾げる。
「どうだろう? …………孵化させてみたいのか?」
「はい!」
子供だから孵化と言うものに興味が生まれたのだろうか。
ケイの息子のカルロスも、似たようなことを言った経験があったことを思いだす。
「じゃあ、やってみるか?」
「いいのでしゅか?」
ケイ自身何の卵だか分からないが、鶏程度の大きさの卵なのだから、たいして大きな生き物が生まれるとは思えない。
子供の好奇心を伸ばすには、やらせてみるのも一興だろう。
卵なら他にもあるので、小さいのが1個なくなったからと言って大したことではない。
なので、ケイはラファエルの好きにさせてみることにした。
「難しいぞ?」
「やりましゅ!」
基本従魔にするときや家畜でも、産んだのを手に入れているので、ケイでも孵化なんてやったことがない。
命を生み出すのだから、それだけ気を遣わなければならない。
子供のラファエルにはかなり難しいだろうと思って問いかけるが、やる気満々でケイに返事をした。
「良いのですか?」
「大丈夫だろ? 多分孵らないだろうし……」
早速ケイが教えように卵を温めだしたラファエルを見ながら、オシアスはケイに問いかけてきた。
どういった内容で彼が心配しているのかは分からないが、ケイは全然心配していないように言葉を返した。
「上手くできても有精卵かどうかも分からないし……」
「そうですね……」
野生の鳥でも無精卵は産まれる。
というより、野性の場合調べてみたら無精卵だったなんてことはよくある。
ラファエルが温めている卵は、ケイが言ったようにたまたま見つけた巣に有った卵だ。
親鳥が妨害してこなかったということもあるし、恐らく無精卵の可能性が高い。
だから、可哀想だが孵化することはないだろう。
失敗しても、それだけ命を生み出すのは難しいと学ばせることも出来るという考えもある。
ケイのいうことに納得したのか、オシアスも見守ることにしたのだった。
「ピッ!」
そんな大人の企みを無にするように、ヒヨコが生まれてしまったらしい。
見た感じだと、鶏のヒヨコと色や大きさからいって大差がない。
「魔物のヒヨコですかね?」
「……さすがにヒヨコでは分からないな」
森の中の巣から持って来た卵だから、場合によっては魔物の卵の可能性もある。
でかくなったり、凶暴だったりした場合、駆除しないと他の人に迷惑をかけるかもしれない。
特に魔人大陸は強力な魔物が多いのだから、注意しなければならない。
だが、いくらケイでも、ヒヨコの状態では魔物かどうかなんて判断できない。
「でも、あの大きさなら大丈夫なんじゃないか?」
生まれたのがヒヨコの時点で何かの鳥か、鳥系の魔物のかもしれない。
だが、特殊な形状をしている部分はないため、ただの鳥だと思われる。
繁殖期とかはどんな鳥も気性が荒くなるが、基本従魔にしてしまえば主人の指示に従うので他人に害をもたらすことはないだろう。
そう言った部分では安心していいと思う。
「とりあえず様子見だな……」
「分かりました」
何のヒヨコだか分からない状態で殺すなんて判断をしたら、ラファエルの今後が不安になる。
成長して何の子だか判断できるまでは手の出しようもないというのが現状だ。
ただの鳥でも魔物だったとしても、とりあえずは従魔にしておいた方が良いと思い、ケイはラファエルに従魔の契約の仕方を教え、ヒヨコとの契約をさせたのだった。
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