エルティモエルフォ ―最後のエルフ―

ポリ 外丸

第260話

「……………………」「……………………」


“バッ!!”“バッ!!”


 2丁拳銃スタイルのケイと、居合の構えをする綱泉佐志峰の姿をした魔族。
 お互い無言のまま、少しの間睨み合う。
 そして、何が合図になったのか分からないが、同時に地を蹴り、相手との距離を詰める。


「フッ!」


 剣の間合いに入り、佐志峰は小さく息を吐くことに合わせて抜刀する。
 その刀は、ケイの首目掛けて高速で迫った。


“ガキンッ!!”


「チッ!!」


 自分の剣がケイの首を斬り飛ばすと思った佐志峰だが、そうはいかずに手前で止まる。
 迫り来る剣を、ケイが左手に持っている銃で防御したからだ。
 攻撃を防がれ、佐志峰は舌打ちをする。


「っ!!」


“パンッ!!”


 剣を止められた佐志峰は、そのままその場にいることはできない。
 ケイは両手に武器を持っている。
 片手で止たのなら、もう片方は空いている。
 右手の拳銃が佐志峰の眉間へと向けられる。
 それに気付いた佐志峰は、すぐさま首を横に弾丸を回避する。
 そして、ケイからの攻撃が更に飛んで来るのを避けるため、一気に後方へと飛び下がる。


「おかしな武器を使うな……」


 後方へ下がったさ佐志峰は、納刀してまたも居合の体勢へと入る。
 そして、ケイとの衝突で感じたことを小さく呟く。
 弾を飛ばすだけとは言っても、その威力はかなり強力だ。
 武器の形状から、至近距離なら自分に利があると思っていた。
 しかし、至近距離でもキッチリ反撃してくるところをみると、それもたいした利にならないようだ。


「特注品でね。それよりもいいのか?」


 ケイの武器が面倒そうな代物だと思われたのなら、それは別に構わない。
 それよりも、距離を取ってもらった方が戦いやすい。


「何がだ?」


 佐志峰はケイの言葉に首を傾げる。
 何が言いたいか分からなかったためだ。


「この武器相手に距離を開けることがだ!!」


“パンッ!! パンッ!!”


「っ!?」


 距離があった方が、ケイにとっては戦いやすい。
 機動力を削ぐためなのか、佐志峰の足へ向かって飛んで来る
 両手の拳銃を刺身尾根へ向けて、連射攻撃を開始した。
 慌てて佐志峰はその攻撃を避けるが、ケイとの距離はドンドンと離れて行く。


「くっ! チッ! 言い直そう。厄介な武器だ……」


 居合の攻撃ができる距離になかなか近付けず、佐志峰はイラ立つようにケイの攻撃を躱していく。
 このままでは避けることを続けるしかできず、体力を消耗することしかできない。


「だろ?」


 自分の間合いに敵を釘付けさせることは、ケイにとっては普通のこと。
 その場にとどまれば攻撃をして、動き回るようなら、攻撃せずに銃口を向けるだけで佐志峰は近付くのを躊躇う。
 ケイからしたら、とても戦いやすい相手だ。










“キンッ!!”


「っ!?」


 ケイの攻撃に悪戦苦闘していた佐志峰だったが、その状況も次第に変化が起きていた。
 佐志峰が、次第にケイとの距離を縮めて来たのだ。
 そして、とうとう佐志峰の刀が届きそうな距離まで近付いてきた。
 近付きさえできれば、刀による攻撃ができる。
 銃での攻撃が通用しないとでも言うように、佐志峰は居合による攻撃を繰り出す。
 ケイはそれを難なく後方へと飛ぶことで躱す。


「いつまでも通じると思うなよ! 速いとはいえ直線的な攻撃だ。ならば避けるなり弾けば済む話だ!」


 下がったことで、またもケイとの距離がケイとの離れてしまう。
 しかし、佐志峰は大したことではないように呟く。
 それもそのはず、ケイの武器から放たれる攻撃はたしかに速く、なかなか近付けなかった。
 しかし、その特性に気付けば、対処法を導き出すのは簡単なことだ。
 銃口の直線状にいないようにするのと、たとえ攻撃されようとも、弾き、躱すことで距離を縮めていけば良いだけのこと。
 それができるようになった今では、もうケイの武器への苦手は克服できた。


「少しは楽しませてもらった。が、もう死んでもらおう」


 後は攻撃を当てるだけで勝利を得られる。
 他にも周囲を囲む兵たちの相手をしなければならないため、佐志峰はケイを殺すことにした。
 そして、またも居合の体勢に入り、ケイが動くのを待った。


「……随分剣技を磨いているんだな?」


「……何だ? 何かの時間稼ぎか?」


 ケイが攻撃をしてくれば、今度は間合いに入って斬り殺すだけ。
 そんな佐志峰に、ケイは突如関係ないような話を投げかける。
 あまりにも突拍子もない話に、佐志峰も何かあるのかと勘繰る。


「違う。単純な疑問だ」


 言葉の通り、ケイはただ単純に佐志峰の剣技の高さが気になっていた。
 隠れて訓練していたにしては、ケイが見た日向の剣士たちと比べてもトップレベルの鋭さだ。
 佐志峰に成り代わるまでに、相当な訓練をしてきたのだということが窺え知れる。


「長いこと生きてきたのでな……」


 今の姿は人間でも、元々は魔物。
 いつ生まれたのなんて、覚えていないほど大昔だ。


「そこまでなるには、長生きしてるって理由だけでなく、日向の人間に師事したのだろう?」


「左様。まぁ、その時はこの顔ではなかったがな……」


 佐志峰の剣を見ていると、とてもしっかりとした型ができている。
 とても我流で訓練したようには思えない。
 そうなると、もしかしたら誰かに教わったのだろうと思ったが、返事を聞く限り思った通りだった。


「だからか……」


「何がだ?」


 この質問の答えを聞いて、ケイが佐志峰へ持っていた疑問はほぼ解消された。
 佐志峰は、ケイが思っていた最悪の存在ではなかった。
 そのためか、安心したケイは笑みを浮かべたのだった。





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