エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
第177話
「俺たちが魔族だと……」
ケイが発した言葉に、リッチのエルベルトとジャック・オ・ランタンのアンブロシオは動きを止める。
エルベルトたちは、自分たちが魔族などと言った覚えはない。
それなのに、そのワードが出てきたことに引っ掛かったからだ。
「……何でそう思う?」
別に、魔族とバレた所で何か変わるという訳ではない。
そのため、アンブロシオはケイの問いを肯定したように問いかけ返してきた。
「多くの魔物を操る能力に、異常な魔力量の多さ、人間並の知能、どれも以前見た魔族の特徴に似ている」
ケイたちが以前見たというのは、リシケサ王国の地下に封印されていた魔族のことだ。
国1つを壊滅に追い込むほどの数の虫の魔物を操り、他の魔族も呼び込んでいた危険人物だった。
結局封印を解いたケイたちも介入して、倒させることに成功したが、標的が自分だったらかなり面倒な相手だったと思う。
ケイは、その時見た魔族の特徴を幾つかエルベルトたちへ述べた。
「……なるほど、我々の仲間にあったことがあったのか」
「それならば理解できる」
それを聞いて、エルベルトたちは納得の言葉を呟く。
同じ魔族にはなかなか出会う機会がない。
何をきっかけにして魔族と呼ばれる者たちが生まれるのかは分からないが、普通の魔物と同様に生存競争に勝ち抜けなければならず、生まれた瞬間から親兄弟を敵に回して戦わなければならない。
その過酷な状況を生き抜くことは、極めて難しい。
生き抜いた者が少ないがゆえに、会う機会も少ないのかもしれない。
「まぁ、それはそれ、お前たちにはこの国と共に死んでもらおう」
アンブロシオとエルベルトが出会ったのも、たまたまといったところ。
目の前のエルフが見たという魔族も、噂を聞かないところを考えるとすでに死んでいるのだろう。
他の魔族にも興味があるが、今は目の前のエルフと獣人の始末が先だ。
ケイたちへ向けた言葉と共に、アンブロシオは手に持っているランタンを前へ掲げる。
すると、話している間大人しかったスカルドラゴンが、先程同様に動き始めた。
「リカルド殿!」
「おう!」
ケイたちが話しをしていたのは、ただこの魔族たちのことを知りたかっただけではない。
単純に、自分たちがどうやったら魔物たちの殲滅ができるかということを考えるための時間稼ぎでしかなかった。
リカルドも、この間に同じように考えていたはず。
なので、ケイはハンドサインで自分の背後に来るようにリカルドへ指示した。
そのサインを理解したリカルドは、アンデッドの魔物の群れに向かって走り出したケイの背後へと回り付いて行く。
「ハァッ!!」
その2人へアンデッド軍団が迫り来る。
しかし、そう来ることが分かっているケイは、2丁の銃の超速連射で魔物を撃ち倒していく。
「ガァーッ!!」
これまで以上に一気に魔物たちを倒していっていると、スカルドラゴンがこちらへ向けて巨大火球を放とうと魔力を溜めていた。
「ハッ!!」
スカルドラゴンが火球を放った瞬間に、リカルドが上空へと跳び上がる。
またも上空からスカルドラゴンを仕留めようと、手に持つハンマーに力を込める。
「同じことを……」
そのリカルドに対し、アンブロシオは魔法を放とうとする。
手に魔力を込めてリカルドへ向けたのだが、
「っ!?」
「させるかよ!」
ケイが銃を撃ち、アンブロシオの魔法攻撃を阻止した。
スカルドラゴンの攻撃をいちいち受け止めていては、ケイも疲労とダメージが蓄積されていくだけ。
魔法防御の苦手なリカルドが回避したのだから、ケイもその攻撃を回避すればいいだけだ。
スカルドラゴンの放った火球が飛んで行った森の方は、爆発と共に火災を起こしているが、そんなの後で水でもかければ済む話だ。
今は自然環境に配慮している余裕はない。
「くっ!?」
リカルドへの攻撃をいったん中断し、アンブロシオはケイの攻撃を躱すことに専念する。
そして、僅かにできた間でリカルドの方を見てみると、もうスカルドラゴンの頭部寸前まで迫っていた。
「セイッ!!」
“ドゴンッ!!”
思いっきり振り下ろされたハンマーが直撃すると、重い音と共にスカルドラゴンの頭部を粉砕した。
アンデッド系にはよくあるが、スカルドラゴンも魔石が頭部に隠されていたらしく、リカルドの1撃で破壊された。
魔石がなくなれば、状態を維持していられるわけもないので、頭部以外の骨はバラバラと地面に落下していった。
アンデッド系でもスカル系の魔物は、骨が残るから良い。
後々、素材として使えるからだ。
他のアンデッド系は、使える所がないうえに肉は腐っており、衛生面を考えると、倒したらちゃんと焼却処分しなければいけないため、ただ不愉快な存在でしかない。
「おのれ……」
自分が呼び出したスカルドラゴンがやられ、アンブロシオはまたもスカルドラゴンを呼び出そうとした。
さっきのスカルドラゴンを呼び出した時のように、ランタンに魔力を集め始める。
「そのランタンが魔物を呼ぶための媒体になっているんだろ?」
「っ!?」
アンブロシオが、またスカルドラゴンでも出したら面倒だ。
早々に、魔物の出現を防がなければならない。
そして、恐らく手に持つランタンが鍵になっているとケイは気付いていた。
そのランタン目掛け、2丁の銃を向ける。
「やめっ……!!」
“バキンッ!!”
アンブロシオの制止の言葉は虚しく、ケイの撃った弾の数発が当たり、ランタンが破壊された。
「貴様……!!」
「なかなかいいコンビだが、我々ほどではないな……」
ランタンを破壊されたアンブロシオは、悔し気な声色でケイのことを睨みつける。
睨みつけると言っても、かぼちゃの隙間から目のような光がケイを見ているだけなので、恐ろしいという感情を持たないが、相当腹を立てていることは分かった。
そこへ、スカルドラゴンを倒したリカルドが、ケイたちの側へと近寄ってきた。
「リッチの方は魔物を数多く出現させられるようだが、魔法の方は障壁以外は大したことがないのだろう?」
「くっ!?」
アンブロシオが窮地に陥っている中、エルベルトの方は無防備な状態でいるケイたちへ魔法で攻撃をおこなって来ない。
リカルドがスカルドラゴンを倒すために跳び上がった時、ケイはちゃんとエルベルトの方も視界の端でとらえていた。
アンブロシオと同様に、空中で攻撃を防ぐのが難しいリカルドへ魔法で攻撃するチャンスはあった。
それなのにして来ないというのは、障壁と大量の魔物の呼び出しができるようになるための練習しかしていないように思えた。
そして、今も攻撃してこないことから、考えていたことが証明されたようだ。
「ネタが分かればもうこっちには通用しねえよ」
この2人は、2人が揃うことで強力なコンボができるタイプのようだ。
しかし、出来ることが分かっていれば、こちらとしても戦い方を考え出すだけだ。
そして、そのコンボの使用はもう難しい
「……仕方がない。退避だ!」
“ダッ!!”“バッ!!”
行動は潔かった。
アンブロシオが呟いたと同時に、2人は左右へと別れて走り出した。
あまりにも潔すぎて、ケイたちはワンテンポ足が遅れた。
「あっ!?」
出遅れたと言っても、ケイたちから逃れられるほどアンブロシオたちの足は速くない。
すぐにリカルドがアンブロシオに追いつく。
「逃がす訳がないだろが!?」
“パンッ!!”
片手で横に振っただけの一撃。
それが頭部に当たると、かぼちゃの頭が弾けるように砕け散った。
魔石も同時に破壊されたらしく、残った肉体は崩れ落ちて動かなくなった。
「アンブロシオ!!」
「あとはお前だ……」
仲間が殺られて、エルベルトは反射的に足を緩めてしまう。
すると、追いかけていたケイが追い付き、2丁の銃をエルベルトの頭部へと向けた。
「くそっ!! 寄るな化け物め!!」
「……どっちが化け物だよ!」
“パパパパンッ!!”
どう考えても、見た目が化け物なのはリッチの姿をしているエルベルトの方だろう。
そんな化け物に化け物呼ばわりされ、ケイはイラッとして銃を連射した。
「がっ!?」
頭や体を穴だらけにされ、頭部にある魔石が丸見えになる。
「ぐっ!!」
「じゃあな!」
穴だらけにされて動けなくなったエルベルトの魔石に、ケイは右手の銃を至近距離まで近付ける。
そして、ケイの別れの言葉と共に引かれた引き金によって、エルベルトは頭部の魔石を破壊され、ただの骨となり動かなくなったのだった。
ケイが発した言葉に、リッチのエルベルトとジャック・オ・ランタンのアンブロシオは動きを止める。
エルベルトたちは、自分たちが魔族などと言った覚えはない。
それなのに、そのワードが出てきたことに引っ掛かったからだ。
「……何でそう思う?」
別に、魔族とバレた所で何か変わるという訳ではない。
そのため、アンブロシオはケイの問いを肯定したように問いかけ返してきた。
「多くの魔物を操る能力に、異常な魔力量の多さ、人間並の知能、どれも以前見た魔族の特徴に似ている」
ケイたちが以前見たというのは、リシケサ王国の地下に封印されていた魔族のことだ。
国1つを壊滅に追い込むほどの数の虫の魔物を操り、他の魔族も呼び込んでいた危険人物だった。
結局封印を解いたケイたちも介入して、倒させることに成功したが、標的が自分だったらかなり面倒な相手だったと思う。
ケイは、その時見た魔族の特徴を幾つかエルベルトたちへ述べた。
「……なるほど、我々の仲間にあったことがあったのか」
「それならば理解できる」
それを聞いて、エルベルトたちは納得の言葉を呟く。
同じ魔族にはなかなか出会う機会がない。
何をきっかけにして魔族と呼ばれる者たちが生まれるのかは分からないが、普通の魔物と同様に生存競争に勝ち抜けなければならず、生まれた瞬間から親兄弟を敵に回して戦わなければならない。
その過酷な状況を生き抜くことは、極めて難しい。
生き抜いた者が少ないがゆえに、会う機会も少ないのかもしれない。
「まぁ、それはそれ、お前たちにはこの国と共に死んでもらおう」
アンブロシオとエルベルトが出会ったのも、たまたまといったところ。
目の前のエルフが見たという魔族も、噂を聞かないところを考えるとすでに死んでいるのだろう。
他の魔族にも興味があるが、今は目の前のエルフと獣人の始末が先だ。
ケイたちへ向けた言葉と共に、アンブロシオは手に持っているランタンを前へ掲げる。
すると、話している間大人しかったスカルドラゴンが、先程同様に動き始めた。
「リカルド殿!」
「おう!」
ケイたちが話しをしていたのは、ただこの魔族たちのことを知りたかっただけではない。
単純に、自分たちがどうやったら魔物たちの殲滅ができるかということを考えるための時間稼ぎでしかなかった。
リカルドも、この間に同じように考えていたはず。
なので、ケイはハンドサインで自分の背後に来るようにリカルドへ指示した。
そのサインを理解したリカルドは、アンデッドの魔物の群れに向かって走り出したケイの背後へと回り付いて行く。
「ハァッ!!」
その2人へアンデッド軍団が迫り来る。
しかし、そう来ることが分かっているケイは、2丁の銃の超速連射で魔物を撃ち倒していく。
「ガァーッ!!」
これまで以上に一気に魔物たちを倒していっていると、スカルドラゴンがこちらへ向けて巨大火球を放とうと魔力を溜めていた。
「ハッ!!」
スカルドラゴンが火球を放った瞬間に、リカルドが上空へと跳び上がる。
またも上空からスカルドラゴンを仕留めようと、手に持つハンマーに力を込める。
「同じことを……」
そのリカルドに対し、アンブロシオは魔法を放とうとする。
手に魔力を込めてリカルドへ向けたのだが、
「っ!?」
「させるかよ!」
ケイが銃を撃ち、アンブロシオの魔法攻撃を阻止した。
スカルドラゴンの攻撃をいちいち受け止めていては、ケイも疲労とダメージが蓄積されていくだけ。
魔法防御の苦手なリカルドが回避したのだから、ケイもその攻撃を回避すればいいだけだ。
スカルドラゴンの放った火球が飛んで行った森の方は、爆発と共に火災を起こしているが、そんなの後で水でもかければ済む話だ。
今は自然環境に配慮している余裕はない。
「くっ!?」
リカルドへの攻撃をいったん中断し、アンブロシオはケイの攻撃を躱すことに専念する。
そして、僅かにできた間でリカルドの方を見てみると、もうスカルドラゴンの頭部寸前まで迫っていた。
「セイッ!!」
“ドゴンッ!!”
思いっきり振り下ろされたハンマーが直撃すると、重い音と共にスカルドラゴンの頭部を粉砕した。
アンデッド系にはよくあるが、スカルドラゴンも魔石が頭部に隠されていたらしく、リカルドの1撃で破壊された。
魔石がなくなれば、状態を維持していられるわけもないので、頭部以外の骨はバラバラと地面に落下していった。
アンデッド系でもスカル系の魔物は、骨が残るから良い。
後々、素材として使えるからだ。
他のアンデッド系は、使える所がないうえに肉は腐っており、衛生面を考えると、倒したらちゃんと焼却処分しなければいけないため、ただ不愉快な存在でしかない。
「おのれ……」
自分が呼び出したスカルドラゴンがやられ、アンブロシオはまたもスカルドラゴンを呼び出そうとした。
さっきのスカルドラゴンを呼び出した時のように、ランタンに魔力を集め始める。
「そのランタンが魔物を呼ぶための媒体になっているんだろ?」
「っ!?」
アンブロシオが、またスカルドラゴンでも出したら面倒だ。
早々に、魔物の出現を防がなければならない。
そして、恐らく手に持つランタンが鍵になっているとケイは気付いていた。
そのランタン目掛け、2丁の銃を向ける。
「やめっ……!!」
“バキンッ!!”
アンブロシオの制止の言葉は虚しく、ケイの撃った弾の数発が当たり、ランタンが破壊された。
「貴様……!!」
「なかなかいいコンビだが、我々ほどではないな……」
ランタンを破壊されたアンブロシオは、悔し気な声色でケイのことを睨みつける。
睨みつけると言っても、かぼちゃの隙間から目のような光がケイを見ているだけなので、恐ろしいという感情を持たないが、相当腹を立てていることは分かった。
そこへ、スカルドラゴンを倒したリカルドが、ケイたちの側へと近寄ってきた。
「リッチの方は魔物を数多く出現させられるようだが、魔法の方は障壁以外は大したことがないのだろう?」
「くっ!?」
アンブロシオが窮地に陥っている中、エルベルトの方は無防備な状態でいるケイたちへ魔法で攻撃をおこなって来ない。
リカルドがスカルドラゴンを倒すために跳び上がった時、ケイはちゃんとエルベルトの方も視界の端でとらえていた。
アンブロシオと同様に、空中で攻撃を防ぐのが難しいリカルドへ魔法で攻撃するチャンスはあった。
それなのにして来ないというのは、障壁と大量の魔物の呼び出しができるようになるための練習しかしていないように思えた。
そして、今も攻撃してこないことから、考えていたことが証明されたようだ。
「ネタが分かればもうこっちには通用しねえよ」
この2人は、2人が揃うことで強力なコンボができるタイプのようだ。
しかし、出来ることが分かっていれば、こちらとしても戦い方を考え出すだけだ。
そして、そのコンボの使用はもう難しい
「……仕方がない。退避だ!」
“ダッ!!”“バッ!!”
行動は潔かった。
アンブロシオが呟いたと同時に、2人は左右へと別れて走り出した。
あまりにも潔すぎて、ケイたちはワンテンポ足が遅れた。
「あっ!?」
出遅れたと言っても、ケイたちから逃れられるほどアンブロシオたちの足は速くない。
すぐにリカルドがアンブロシオに追いつく。
「逃がす訳がないだろが!?」
“パンッ!!”
片手で横に振っただけの一撃。
それが頭部に当たると、かぼちゃの頭が弾けるように砕け散った。
魔石も同時に破壊されたらしく、残った肉体は崩れ落ちて動かなくなった。
「アンブロシオ!!」
「あとはお前だ……」
仲間が殺られて、エルベルトは反射的に足を緩めてしまう。
すると、追いかけていたケイが追い付き、2丁の銃をエルベルトの頭部へと向けた。
「くそっ!! 寄るな化け物め!!」
「……どっちが化け物だよ!」
“パパパパンッ!!”
どう考えても、見た目が化け物なのはリッチの姿をしているエルベルトの方だろう。
そんな化け物に化け物呼ばわりされ、ケイはイラッとして銃を連射した。
「がっ!?」
頭や体を穴だらけにされ、頭部にある魔石が丸見えになる。
「ぐっ!!」
「じゃあな!」
穴だらけにされて動けなくなったエルベルトの魔石に、ケイは右手の銃を至近距離まで近付ける。
そして、ケイの別れの言葉と共に引かれた引き金によって、エルベルトは頭部の魔石を破壊され、ただの骨となり動かなくなったのだった。
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