エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
第173話
「リカルド殿。これを使ってください」
「んっ?」
アンデッドの中には、触れるだけで毒に侵される種類の魔物も存在している。
そのため、いつもと同じく武器を持っていないリカルドに対し、セベリノが武器を渡してきた。
「これは……」
「私が作ったハンマーです。やや重いですが、リカルド殿なら使いこなせるはず」
色々な分野で才能を発揮しているマカリオに対し、息子のセベリノは鍛冶の分野でしか才が発揮されなかった。
しかし、その才だけでもと懸命に努力をおこなったからか、鍛冶の分野においてはこの国でもトップクラスの地位にまで至った。
それがあるからこそ、天才の父に対して卑屈にならずにすんでいるのかもしれない。
「……うむ、素晴らしいな……」
そんな彼が作った巨大ハンマーを手に持ったリカルドは、初めて持つのに手になじむ感触に感嘆の声をあげる。
その言葉は、うっとりとすらしているようにも聞こえる。
よっぽどこのハンマーが気に入ったのかもしれない。
リカルドのその姿に、ケイは鬼に金棒ということわざがピッタリだと内心思った。
「では、まず魔法で攻撃して見ましょう」
「お願いする」
西門の城壁付近まで迫ってきているアンデッドの魔物たち。
セベリノたちが武器と魔道具を駆使して戦ってきたというのに、数が変わらないというのには何かしらの仕掛けがあるはず。
それを見極めるためにも、攻撃をしたらどうなるのかを見てみる必要がある。
そのため、ケイは右手を魔物の集団に向けてかざし、その手に魔力を集め始めた。
「ハッ!」
“ゴッ!!”
右手に集めた魔力を、ケイは先頭を歩いてきている魔物に向けて放出した。
ガイコツ兵が、飛んできたその魔力に持っている盾を向けたが、魔力が盾に着弾した瞬間に大爆発が発生した。
その爆発によって数百のアンデッドたちが巻き込まれた。
ケイが放ったのはエクスプロシオンという魔法。
爆発を引き起こす魔法だ。
「……な、なんですかな? あの威力は……」
ケイの魔法を見たセベリノと、他のドワーフ兵たちは、信じられないものを見るような目で魔法を放ったケイに目を向ける。
ドワーフ族も魔法を使うことはできるが、性格などによって習得の得意・不得意な系統がある。
しかし、たとえ得意な魔法であったとしても、ケイ程の魔法を放てる人間はそうそういない。
撃てたとしても、相当な魔力を消費しなくてはならないので、かなりの疲労を伴うことになる。
それなのに、先程放ったケイはというと、平然とした顔で爆発して魔物たちへ火が燃え広がっていく様を黙って見ている。
「ケイ殿、やりすぎでは?」
ケイの魔法の腕は知っているつもりでいたリカルドだが、広範囲に高威力の魔法をポンと出したことに若干引く。
自分との決闘の時、ケイはこのような大規模な魔法を放ってこなかった。
あの時魔法で攻撃して来ていたら、もしかしたらリカルドは負けていたかもしれない。
勝負は引き分けということになっており、その翌日の状態からなんとなく自分が勝ったような空気が流れているが、実はそれは逆なのではないかと、最近リカルドは密かに思っている。
そして、様子見の攻撃にしては規模の大きな魔法に、リカルドはケイに軽くツッコミを入れた。
「えっ? いや、それほど魔力は込めてませんが?」
「……そ、そうか……」
リカルドのツッコミに対し、ケイはピンと来ていなかった。
言葉の通り、ケイ自身はこの程度の魔法はたいしたことがない。
魔物を倒した時のレベルアップのような成長は、エルフのケイの場合、肉体の強化は微弱、魔力は大きく成長する。
倒せば倒す程にその成長速度は遅くなっていっているが、止まった訳ではない。
まだ100歳にも満たないでもこの強さに、リカルドはこれからどうなるのかが末恐ろしく感じる。
「エルフは魔力が多いとは文献で読んだことがあったが、ここまでとは……」
「セベリノ殿、恐らくケイ殿は特別だと思うぞ」
あの威力でたいしたことない感じのケイに、セベリノは引き気味に呟く。
真剣な表情をしているセベリノに、リカルドは訂正を入れる。
ケイからすると、何だか変な扱いになっているような気がする。
「それにしても、これでは私の出る幕はないかな?」
これほどの魔法が、ケイからしたらたいしたことのないのなら、あと何発か撃ってもらえば魔物の殲滅は難しくない。
ケイだけで済んでしまっては、手助けを名乗り出た意味がなくなってしまうが、倒せてしまうのなら、別にそれでも構わない。
ただ、高まったやる気が無駄になってしまっただけだ。
「いや……」
リカルドの言葉を、ケイは否定する。
爆発によってたしかに魔物たちが焼失したように見えたのだが、あとから向かって来る魔物たちの量が変わっていないように思えた。
「アンデッドは火が苦手のはず、これほどの生き残りがいるなど……」
爆発と火によって燃え広がったにもかかわらず、数が減っていない。
その光景に、リカルドは不思議そうに呟く。
「いえ、僅かですが魔力を感じました」
「えっ!?」
リカルドの場合は匂いで判断するのだが、腐臭が漂っていて鼻が利かないため気付かないのも仕方がない。
だが、ドワーフのセベリノは魔力を使えるので、広範囲は無理としても魔力を探知することはできる。
しかし、その範囲内で反応を感知できるような魔力はなかった。
そのため、ケイのその言葉に驚きの声をあげる。
「あの魔物の集団以外に、何か他にいると思われます」
「何だって……」
何度倒しても増える魔物に、対抗策が見つからなかったセベリノたち。
ジリ貧になるばかりだったドワーフたちだったが、その謎をケイはあっさりと解き明かしたのだった。
「んっ?」
アンデッドの中には、触れるだけで毒に侵される種類の魔物も存在している。
そのため、いつもと同じく武器を持っていないリカルドに対し、セベリノが武器を渡してきた。
「これは……」
「私が作ったハンマーです。やや重いですが、リカルド殿なら使いこなせるはず」
色々な分野で才能を発揮しているマカリオに対し、息子のセベリノは鍛冶の分野でしか才が発揮されなかった。
しかし、その才だけでもと懸命に努力をおこなったからか、鍛冶の分野においてはこの国でもトップクラスの地位にまで至った。
それがあるからこそ、天才の父に対して卑屈にならずにすんでいるのかもしれない。
「……うむ、素晴らしいな……」
そんな彼が作った巨大ハンマーを手に持ったリカルドは、初めて持つのに手になじむ感触に感嘆の声をあげる。
その言葉は、うっとりとすらしているようにも聞こえる。
よっぽどこのハンマーが気に入ったのかもしれない。
リカルドのその姿に、ケイは鬼に金棒ということわざがピッタリだと内心思った。
「では、まず魔法で攻撃して見ましょう」
「お願いする」
西門の城壁付近まで迫ってきているアンデッドの魔物たち。
セベリノたちが武器と魔道具を駆使して戦ってきたというのに、数が変わらないというのには何かしらの仕掛けがあるはず。
それを見極めるためにも、攻撃をしたらどうなるのかを見てみる必要がある。
そのため、ケイは右手を魔物の集団に向けてかざし、その手に魔力を集め始めた。
「ハッ!」
“ゴッ!!”
右手に集めた魔力を、ケイは先頭を歩いてきている魔物に向けて放出した。
ガイコツ兵が、飛んできたその魔力に持っている盾を向けたが、魔力が盾に着弾した瞬間に大爆発が発生した。
その爆発によって数百のアンデッドたちが巻き込まれた。
ケイが放ったのはエクスプロシオンという魔法。
爆発を引き起こす魔法だ。
「……な、なんですかな? あの威力は……」
ケイの魔法を見たセベリノと、他のドワーフ兵たちは、信じられないものを見るような目で魔法を放ったケイに目を向ける。
ドワーフ族も魔法を使うことはできるが、性格などによって習得の得意・不得意な系統がある。
しかし、たとえ得意な魔法であったとしても、ケイ程の魔法を放てる人間はそうそういない。
撃てたとしても、相当な魔力を消費しなくてはならないので、かなりの疲労を伴うことになる。
それなのに、先程放ったケイはというと、平然とした顔で爆発して魔物たちへ火が燃え広がっていく様を黙って見ている。
「ケイ殿、やりすぎでは?」
ケイの魔法の腕は知っているつもりでいたリカルドだが、広範囲に高威力の魔法をポンと出したことに若干引く。
自分との決闘の時、ケイはこのような大規模な魔法を放ってこなかった。
あの時魔法で攻撃して来ていたら、もしかしたらリカルドは負けていたかもしれない。
勝負は引き分けということになっており、その翌日の状態からなんとなく自分が勝ったような空気が流れているが、実はそれは逆なのではないかと、最近リカルドは密かに思っている。
そして、様子見の攻撃にしては規模の大きな魔法に、リカルドはケイに軽くツッコミを入れた。
「えっ? いや、それほど魔力は込めてませんが?」
「……そ、そうか……」
リカルドのツッコミに対し、ケイはピンと来ていなかった。
言葉の通り、ケイ自身はこの程度の魔法はたいしたことがない。
魔物を倒した時のレベルアップのような成長は、エルフのケイの場合、肉体の強化は微弱、魔力は大きく成長する。
倒せば倒す程にその成長速度は遅くなっていっているが、止まった訳ではない。
まだ100歳にも満たないでもこの強さに、リカルドはこれからどうなるのかが末恐ろしく感じる。
「エルフは魔力が多いとは文献で読んだことがあったが、ここまでとは……」
「セベリノ殿、恐らくケイ殿は特別だと思うぞ」
あの威力でたいしたことない感じのケイに、セベリノは引き気味に呟く。
真剣な表情をしているセベリノに、リカルドは訂正を入れる。
ケイからすると、何だか変な扱いになっているような気がする。
「それにしても、これでは私の出る幕はないかな?」
これほどの魔法が、ケイからしたらたいしたことのないのなら、あと何発か撃ってもらえば魔物の殲滅は難しくない。
ケイだけで済んでしまっては、手助けを名乗り出た意味がなくなってしまうが、倒せてしまうのなら、別にそれでも構わない。
ただ、高まったやる気が無駄になってしまっただけだ。
「いや……」
リカルドの言葉を、ケイは否定する。
爆発によってたしかに魔物たちが焼失したように見えたのだが、あとから向かって来る魔物たちの量が変わっていないように思えた。
「アンデッドは火が苦手のはず、これほどの生き残りがいるなど……」
爆発と火によって燃え広がったにもかかわらず、数が減っていない。
その光景に、リカルドは不思議そうに呟く。
「いえ、僅かですが魔力を感じました」
「えっ!?」
リカルドの場合は匂いで判断するのだが、腐臭が漂っていて鼻が利かないため気付かないのも仕方がない。
だが、ドワーフのセベリノは魔力を使えるので、広範囲は無理としても魔力を探知することはできる。
しかし、その範囲内で反応を感知できるような魔力はなかった。
そのため、ケイのその言葉に驚きの声をあげる。
「あの魔物の集団以外に、何か他にいると思われます」
「何だって……」
何度倒しても増える魔物に、対抗策が見つからなかったセベリノたち。
ジリ貧になるばかりだったドワーフたちだったが、その謎をケイはあっさりと解き明かしたのだった。
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