エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
第156話
「とんでもなく膨らんでる!」
また数日経ち、ケイとレイナルドはリシケサ王国の状況を見に転移してきた。
すると、戦線がとうとう東の軍の駐留地付近にまできていた。
ケイたちは、山の中に身をひそめながら戦場を見下ろしている。
流石に魔族の虫男も軍相手では勝てないだろうと思っていたのだが、形勢はリシケサの方が押されているように思える。
というのも、レイナルドの呟きの通り魔物がまた増えていたからだ。
「嫌な予感が的中したな……」
「どういうこと?」
ケイの呟きがレイナルドの耳に入る。
先日見にきた時に言っていた嫌な予感とは、どうやらこのことのようで、虫男の方の魔物が大幅に増えたことの理由が、分かっているような口振りだ。
「魔族が増えてる」
「…………えっ!?」
小さな島育ちのレイナルドは、魔族なんてものが存在しているのは今回初めて知った。
いまだに魔族のことはよく分からないが、珍しい生物という印象しかなく、そんな生物が他にも存在しているということに思い至らなかった。
考えてみれば、確かにあの虫男以外の魔族がこの世界に存在していないと言い切れる確証はない。
もしかしたら、どこかに潜んでいるということもありえた。
これだけの大群の魔物が移動していれば、その魔族たちが自分と同じような能力を持つものに気付いてもおかしくない。
虫男の狙いは、自分を長期間封印していたこの国の者たちへの報復と、この時代の魔族の招集も考えていたのかもしれない。
「集まった魔族は2体」
望遠と鑑定の複合術で虫男の側を見ると、2体の魔族らしき生物が見つけられた。
「あのネズミとカエルかな?」
「そうだ」
虫男の下に集まったのは、レイナルドが言ったようにネズミとカエルの魔族。
増えた魔物も同様にネズミとカエルの魔物たちだ。
カンタルボスのリカルドに聞いた話だと、魔族は自分と同種の魔物を使役する方が、多くの従魔を従える傾向にあるとのことだった。
「流石に、あの虫男ほどのレベルではないけれど、厄介なのは厄介だ」
虫男が特別なのだろうか、様々な虫の魔物が多すぎて、ネズミやカエルの魔物はそこまで多くないように見える。
しかし、小さな村なら潰せるのではないかという程の量の魔物が増えている。
虫との攻撃法の違いから、戦いの幅が増えたようにも見える。
「それに、移動すれば他の魔族が気付き、また増える。それを繰り返していく気なのかもしれないな」
ネズミとカエルの魔族がこの周辺にいたように、他の地にも他の魔族が存在している可能性がある。
たいしたことなくても、相当数の魔物を従えているとなると、魔族が集まれば集まるほど恐ろしいことになっていくことだろう。
「…………本格的にマズくない?」
「マズいな……」
この国を潰せれば御の字だと軽い気持ちで復活させてしまったが、魔物の集団が段々と膨らんで行くことを想像すると、2人の額には冷や汗が浮かんできた。
自分たちがしたことが、とんでもないことになってきたからだ。
「どうする?」
「あの虫男はともかく、他の魔族をどうにかすればまだここで食い止められるんじゃないか?」
虫の魔族だけなら、リシケサ軍でも何とか相手になるであろう。
それ以外の魔族を潰し、これ以上魔物が増えないようにすれば、ここから形勢を挽回できるかもしれない。
つまり、ネズミとカエルの魔族の始末をするしかない。
「どうやって?」
「これだ!」
そう言ってケイが魔法の指輪から取り出したのは、長距離狙撃をするために作ったライフル型の魔法銃だ。
魔力を込めた弾丸を長距離飛ばすためには、相当な強度を上げる必要がある。
そのため、丈夫にしようと工夫をしたら、結構な重量になってしまった。
とても持ち運んで戦うには向かない武器に仕上がっている。
しかし、元々長距離狙撃をするために作ったのだから、別に重いくらい大したことではない。
土魔法で丁度いい土台を作って、そこに銃を乗せた状態で使用すれば、重さなんて意味を成さなくなる。
ケイは試作品と完成品の2丁を取り出し、照準を合わせやすい完成品の方をレイナルドへ渡す。
「この距離だとギリギリだが、やってみよう」
ケイたちがいる山からは結構な距離がある。
魔力で届かせることはできるが、当てるのは少々難しい。
当たらなかったら、また次の機会にやればいいという程度の軽い気持ちで撃つことにした。
「俺がネズミを殺る。お前はカエルを殺ってくれ」
「分かった!」
そう言って、2人は銃をそれぞれの標的に向けて標準を定める。
どちらを狙ってもいいのだが、ネズミの方が速度が速そうなので、ケイがそちらを受け持つことにした。
「同時に撃つぞ?」
「了解!」
撃つタイミングがズレれば、虫の魔族が銃弾を阻止するかもしれない。
そのため、阻止されないように同時に撃つようにする。
「3、2、1、GO!!」
““パンッ!!””
「ギャッ!?」「ゴッ!?」
まるで1発しか撃っていないかのような音と共に、銃弾が発射される。
高速の弾丸は、見事に標的に炸裂。
頭を撃ち抜かれたネズミとカエルの魔族は、すぐに物言わぬ骸と化した。
「っ!?」
「気付かれた!?」
仲間になった魔族がいきなり殺されて、虫の魔族は慌てた。
ネズミとカエルの魔族が使役していた魔物が、主の死により暴れ出し、周囲にいる虫の魔物に襲い掛かり出す。
仲間の魔族を撃ち殺した銃弾が飛んできた方向に目を向けた虫の魔族が、状況の変化を眺めていたケイたちへ向いた。
「逃げるぞ!!」
こちらに虫の魔物を送られたら面倒だ。
ケイたちは慌てて島へと転移していったのだった。
また数日経ち、ケイとレイナルドはリシケサ王国の状況を見に転移してきた。
すると、戦線がとうとう東の軍の駐留地付近にまできていた。
ケイたちは、山の中に身をひそめながら戦場を見下ろしている。
流石に魔族の虫男も軍相手では勝てないだろうと思っていたのだが、形勢はリシケサの方が押されているように思える。
というのも、レイナルドの呟きの通り魔物がまた増えていたからだ。
「嫌な予感が的中したな……」
「どういうこと?」
ケイの呟きがレイナルドの耳に入る。
先日見にきた時に言っていた嫌な予感とは、どうやらこのことのようで、虫男の方の魔物が大幅に増えたことの理由が、分かっているような口振りだ。
「魔族が増えてる」
「…………えっ!?」
小さな島育ちのレイナルドは、魔族なんてものが存在しているのは今回初めて知った。
いまだに魔族のことはよく分からないが、珍しい生物という印象しかなく、そんな生物が他にも存在しているということに思い至らなかった。
考えてみれば、確かにあの虫男以外の魔族がこの世界に存在していないと言い切れる確証はない。
もしかしたら、どこかに潜んでいるということもありえた。
これだけの大群の魔物が移動していれば、その魔族たちが自分と同じような能力を持つものに気付いてもおかしくない。
虫男の狙いは、自分を長期間封印していたこの国の者たちへの報復と、この時代の魔族の招集も考えていたのかもしれない。
「集まった魔族は2体」
望遠と鑑定の複合術で虫男の側を見ると、2体の魔族らしき生物が見つけられた。
「あのネズミとカエルかな?」
「そうだ」
虫男の下に集まったのは、レイナルドが言ったようにネズミとカエルの魔族。
増えた魔物も同様にネズミとカエルの魔物たちだ。
カンタルボスのリカルドに聞いた話だと、魔族は自分と同種の魔物を使役する方が、多くの従魔を従える傾向にあるとのことだった。
「流石に、あの虫男ほどのレベルではないけれど、厄介なのは厄介だ」
虫男が特別なのだろうか、様々な虫の魔物が多すぎて、ネズミやカエルの魔物はそこまで多くないように見える。
しかし、小さな村なら潰せるのではないかという程の量の魔物が増えている。
虫との攻撃法の違いから、戦いの幅が増えたようにも見える。
「それに、移動すれば他の魔族が気付き、また増える。それを繰り返していく気なのかもしれないな」
ネズミとカエルの魔族がこの周辺にいたように、他の地にも他の魔族が存在している可能性がある。
たいしたことなくても、相当数の魔物を従えているとなると、魔族が集まれば集まるほど恐ろしいことになっていくことだろう。
「…………本格的にマズくない?」
「マズいな……」
この国を潰せれば御の字だと軽い気持ちで復活させてしまったが、魔物の集団が段々と膨らんで行くことを想像すると、2人の額には冷や汗が浮かんできた。
自分たちがしたことが、とんでもないことになってきたからだ。
「どうする?」
「あの虫男はともかく、他の魔族をどうにかすればまだここで食い止められるんじゃないか?」
虫の魔族だけなら、リシケサ軍でも何とか相手になるであろう。
それ以外の魔族を潰し、これ以上魔物が増えないようにすれば、ここから形勢を挽回できるかもしれない。
つまり、ネズミとカエルの魔族の始末をするしかない。
「どうやって?」
「これだ!」
そう言ってケイが魔法の指輪から取り出したのは、長距離狙撃をするために作ったライフル型の魔法銃だ。
魔力を込めた弾丸を長距離飛ばすためには、相当な強度を上げる必要がある。
そのため、丈夫にしようと工夫をしたら、結構な重量になってしまった。
とても持ち運んで戦うには向かない武器に仕上がっている。
しかし、元々長距離狙撃をするために作ったのだから、別に重いくらい大したことではない。
土魔法で丁度いい土台を作って、そこに銃を乗せた状態で使用すれば、重さなんて意味を成さなくなる。
ケイは試作品と完成品の2丁を取り出し、照準を合わせやすい完成品の方をレイナルドへ渡す。
「この距離だとギリギリだが、やってみよう」
ケイたちがいる山からは結構な距離がある。
魔力で届かせることはできるが、当てるのは少々難しい。
当たらなかったら、また次の機会にやればいいという程度の軽い気持ちで撃つことにした。
「俺がネズミを殺る。お前はカエルを殺ってくれ」
「分かった!」
そう言って、2人は銃をそれぞれの標的に向けて標準を定める。
どちらを狙ってもいいのだが、ネズミの方が速度が速そうなので、ケイがそちらを受け持つことにした。
「同時に撃つぞ?」
「了解!」
撃つタイミングがズレれば、虫の魔族が銃弾を阻止するかもしれない。
そのため、阻止されないように同時に撃つようにする。
「3、2、1、GO!!」
““パンッ!!””
「ギャッ!?」「ゴッ!?」
まるで1発しか撃っていないかのような音と共に、銃弾が発射される。
高速の弾丸は、見事に標的に炸裂。
頭を撃ち抜かれたネズミとカエルの魔族は、すぐに物言わぬ骸と化した。
「っ!?」
「気付かれた!?」
仲間になった魔族がいきなり殺されて、虫の魔族は慌てた。
ネズミとカエルの魔族が使役していた魔物が、主の死により暴れ出し、周囲にいる虫の魔物に襲い掛かり出す。
仲間の魔族を撃ち殺した銃弾が飛んできた方向に目を向けた虫の魔族が、状況の変化を眺めていたケイたちへ向いた。
「逃げるぞ!!」
こちらに虫の魔物を送られたら面倒だ。
ケイたちは慌てて島へと転移していったのだった。
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