エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
第133話
「たいして時間はかからなかったな……」
「そうね」
転移魔法によってリシケサ王国の、ある町の近くの草原に移動したケイと美花。
エルフのケイが聞き回ることもできないため、町で美花に聞いてもらって仕入れた情報をもとに、王都を目指して移動し始めた。
美花は人族と言っても日向の人間なので少し珍しがられたが、あっさりと受け入れられ、何の苦労もなかった。
一応、カンタルボスから情報収取のプロを連れてきているのだが、彼らが動かずに分かってしまったので、なんとなく微妙な空気になってしまった。
だが、そんなことは些細なこと。
方角が分かってからは、数日で王都までたどり着いた。
「この森なんか良いんじゃないか?」
「そうですね。王都からそれ程離れていないし良いかも知れないですね」
ケイの提案に諜報員の一人、ハコボが頷きながら返事をする。
今ケイたちが潜んでいる森は、魔物もたいして強いのがいないうえに、王都が目に見える距離にある。
ここから一気に門へと向かって行けるので、攻め込むにはちょうどいい距離だ。
他の者たちも賛成をしたため、ケイはここを拠点にすることに決定した。
「ここからは我々の仕事になりますね……」
「みんな気を付けて行って来てください」
王都内の情報を収集するのは、ハコボたち諜報員の仕事になっている。
彼らは変装もできるので、普通に見ただけでは獣人だとバレることはないだろう。
とは言っても、危険なことには変わりない。
これからその任務に行こうとするハコボたちに、ケイは注意を促しておいた。
「それでは……」
ケイが心配してくれているのが分かっているので、彼らは感謝の意味を込めて頭を軽く下げると、リシケサの王都へ向かって行ったのだった。
「さてと……、美花は一旦島に戻って、レイを連れて来てくれるか?」
「了解よ」
転移の魔法が使えるのはケイと美花とカルロスだけ、レイナルドも手が治ればすぐに使えるようになるとは思う。
まだ完治には至っていないだろうが、ケイがこれから行う作業を手伝ってもらいたい。
そのため、美花に連れて来てもらうことにした。
「じゃあ、行って来るね」
「あぁ」
ケイと軽く挨拶を交わすと、美花は転移していなくなった。
「…………始めるか」
一先ず1人になったケイが今から始めるのは、地下室づくりだ。
ここは王都からも近く、出現する魔物も弱い。
そうなると、初心者冒険者などが依頼を達成するのにちょうどいい場所になる。
ここに獣人たちを転移させて来るにしても、数が多くては見つかってしまう可能性が高い。
そのためにも、連れてきた獣人たちを隠すための場所が必要になる。
それをケイが作ることにしたのだった。
「ここら辺なら大丈夫だろう……」
少し行った先に水場があり、王都方面だけ少し視界が開けている。
ここなら冒険者の接近にも気付け、姿を隠すのも容易な場所だと言える。
そのため、ケイはここに地下室を作ることに決めたのだった。
「ケイ! 連れてきたわよ」
「あぁ、ありがとう」
ケイがどれほどの大きさの地下にするか考えている所へ、美花がレイナルドを連れて戻って来た。
「美花は戻ってていいぞ」
「そう? じゃあ、そうするわ」
ここからの作業はケイとレイナルドの担当。
美花もケイに教わったので土魔法を使えるが、魔力の量がケイたちに比べると少ない。
そのうえ、転移で魔力を使っているのでちょっと疲れているだろう。
もしものことを考えると美花が心配なので、ケイはこの報復作戦で戦わせるつもりはない。
ここから先は、しばらく美花の出番がないので、村に帰って孫たちの相手をしていてもらいたいところだ。
美花も昔に比べると戦闘に関わろうとはしなくなったので、むしろ孫たちと一緒にいることの方が楽しいようだ。
そのため、ケイに村へ戻っていいと言われた美花は、あっさりとそれを受け入れ、挨拶もそこそこに転移の扉を閉めたのだった。
「……始めようか?」
「……あぁ」
あまりにあっさりした美花の態度に、なんだか置いてきぼりを食らったようなケイとレイナルドは、少し間が空いて目を合わせると、地下室づくりを開始したのだった。
「最初にレイが大雑把に穴を掘ってくれるか?」
「あいよ!」
ケイの指示に、レイナルドは素直に従う。
そして、左手を地面にかざすと、地面にゆっくりと穴が開いて行ったのだった。
空いた分の地面の土は、穴の周囲へと積もっていった。
土が山になった状態であると、関係ない者がここに来た時に不審に思われるので、誤魔化すようにケイは周辺に撒き散らす。
大雑把と言ってはいたが、エルフの血を引くレイナルドの魔力制御はケイに次ぐ実力だ。
右手の回復が終わっていないため、微妙にコントロールがズレると言っても、この程度のことならあまり気にしなくても使いこなせる。
そのため、レイナルドが作った穴は、かなり綺麗な形に整っていて、十分な大きさに出来上がった。
「あとは任せる」
「あぁ」
ここでバトンタッチし、レイナルドが開けた部分をケイが強化していく。
これなら地震が起きても崩れることがないだろう。
「よし、完成だ」
その後、開けた穴の上に天井を作り、簡易的な地下室の完成した。
ここの魔物はたいして大きいものがいないので、これで平気だ。
もしも巨大な魔物が現れたとしても、ケイなら襲われる前に対処できるため、これでカンタルボスの獣人たちを連れて来ても大丈夫だろう。
「じゃあ、俺は手の再生してるわ」
「あぁ」
地下室内の簡単な装飾をしたあとは、何もすることがなくなった。
そのため、レイナルドは残りは指だけとなった再生をおこなうことにした。
治ってもらって、転移が使えるようになれば、この作戦にとっても有利になる。
そのため、ケイはレイナルドの再生に期待し、完成した拠点を確認してもらうために、ファウストを迎えに向かったのだった。
「そうね」
転移魔法によってリシケサ王国の、ある町の近くの草原に移動したケイと美花。
エルフのケイが聞き回ることもできないため、町で美花に聞いてもらって仕入れた情報をもとに、王都を目指して移動し始めた。
美花は人族と言っても日向の人間なので少し珍しがられたが、あっさりと受け入れられ、何の苦労もなかった。
一応、カンタルボスから情報収取のプロを連れてきているのだが、彼らが動かずに分かってしまったので、なんとなく微妙な空気になってしまった。
だが、そんなことは些細なこと。
方角が分かってからは、数日で王都までたどり着いた。
「この森なんか良いんじゃないか?」
「そうですね。王都からそれ程離れていないし良いかも知れないですね」
ケイの提案に諜報員の一人、ハコボが頷きながら返事をする。
今ケイたちが潜んでいる森は、魔物もたいして強いのがいないうえに、王都が目に見える距離にある。
ここから一気に門へと向かって行けるので、攻め込むにはちょうどいい距離だ。
他の者たちも賛成をしたため、ケイはここを拠点にすることに決定した。
「ここからは我々の仕事になりますね……」
「みんな気を付けて行って来てください」
王都内の情報を収集するのは、ハコボたち諜報員の仕事になっている。
彼らは変装もできるので、普通に見ただけでは獣人だとバレることはないだろう。
とは言っても、危険なことには変わりない。
これからその任務に行こうとするハコボたちに、ケイは注意を促しておいた。
「それでは……」
ケイが心配してくれているのが分かっているので、彼らは感謝の意味を込めて頭を軽く下げると、リシケサの王都へ向かって行ったのだった。
「さてと……、美花は一旦島に戻って、レイを連れて来てくれるか?」
「了解よ」
転移の魔法が使えるのはケイと美花とカルロスだけ、レイナルドも手が治ればすぐに使えるようになるとは思う。
まだ完治には至っていないだろうが、ケイがこれから行う作業を手伝ってもらいたい。
そのため、美花に連れて来てもらうことにした。
「じゃあ、行って来るね」
「あぁ」
ケイと軽く挨拶を交わすと、美花は転移していなくなった。
「…………始めるか」
一先ず1人になったケイが今から始めるのは、地下室づくりだ。
ここは王都からも近く、出現する魔物も弱い。
そうなると、初心者冒険者などが依頼を達成するのにちょうどいい場所になる。
ここに獣人たちを転移させて来るにしても、数が多くては見つかってしまう可能性が高い。
そのためにも、連れてきた獣人たちを隠すための場所が必要になる。
それをケイが作ることにしたのだった。
「ここら辺なら大丈夫だろう……」
少し行った先に水場があり、王都方面だけ少し視界が開けている。
ここなら冒険者の接近にも気付け、姿を隠すのも容易な場所だと言える。
そのため、ケイはここに地下室を作ることに決めたのだった。
「ケイ! 連れてきたわよ」
「あぁ、ありがとう」
ケイがどれほどの大きさの地下にするか考えている所へ、美花がレイナルドを連れて戻って来た。
「美花は戻ってていいぞ」
「そう? じゃあ、そうするわ」
ここからの作業はケイとレイナルドの担当。
美花もケイに教わったので土魔法を使えるが、魔力の量がケイたちに比べると少ない。
そのうえ、転移で魔力を使っているのでちょっと疲れているだろう。
もしものことを考えると美花が心配なので、ケイはこの報復作戦で戦わせるつもりはない。
ここから先は、しばらく美花の出番がないので、村に帰って孫たちの相手をしていてもらいたいところだ。
美花も昔に比べると戦闘に関わろうとはしなくなったので、むしろ孫たちと一緒にいることの方が楽しいようだ。
そのため、ケイに村へ戻っていいと言われた美花は、あっさりとそれを受け入れ、挨拶もそこそこに転移の扉を閉めたのだった。
「……始めようか?」
「……あぁ」
あまりにあっさりした美花の態度に、なんだか置いてきぼりを食らったようなケイとレイナルドは、少し間が空いて目を合わせると、地下室づくりを開始したのだった。
「最初にレイが大雑把に穴を掘ってくれるか?」
「あいよ!」
ケイの指示に、レイナルドは素直に従う。
そして、左手を地面にかざすと、地面にゆっくりと穴が開いて行ったのだった。
空いた分の地面の土は、穴の周囲へと積もっていった。
土が山になった状態であると、関係ない者がここに来た時に不審に思われるので、誤魔化すようにケイは周辺に撒き散らす。
大雑把と言ってはいたが、エルフの血を引くレイナルドの魔力制御はケイに次ぐ実力だ。
右手の回復が終わっていないため、微妙にコントロールがズレると言っても、この程度のことならあまり気にしなくても使いこなせる。
そのため、レイナルドが作った穴は、かなり綺麗な形に整っていて、十分な大きさに出来上がった。
「あとは任せる」
「あぁ」
ここでバトンタッチし、レイナルドが開けた部分をケイが強化していく。
これなら地震が起きても崩れることがないだろう。
「よし、完成だ」
その後、開けた穴の上に天井を作り、簡易的な地下室の完成した。
ここの魔物はたいして大きいものがいないので、これで平気だ。
もしも巨大な魔物が現れたとしても、ケイなら襲われる前に対処できるため、これでカンタルボスの獣人たちを連れて来ても大丈夫だろう。
「じゃあ、俺は手の再生してるわ」
「あぁ」
地下室内の簡単な装飾をしたあとは、何もすることがなくなった。
そのため、レイナルドは残りは指だけとなった再生をおこなうことにした。
治ってもらって、転移が使えるようになれば、この作戦にとっても有利になる。
そのため、ケイはレイナルドの再生に期待し、完成した拠点を確認してもらうために、ファウストを迎えに向かったのだった。
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