エルティモエルフォ ―最後のエルフ―
第118話
「コルデーロ! 全力で行くぞ!!」
「あぁ!!」
あまりにもあっさりと仲間のビルヒニオが殺られ、ビルヒニオは目の前にいるハーフエルフの実力が相当なものだとようやく判断した。
そもそも、エルフは生物を殺さないという話を聞いていたのだが、全くのデマだったらしい。
強いうえに平気で殺意を持って攻撃してくる相手に、こっちは生け捕りをしなければならないなんてハンデにしては大きすぎる。
2人でなりふり構わず痛めつけなければ、倒すことすら難しいかもしれない。
そのため、2人は本気を出してレイナルドと戦うことにした。
「ハッ!!」
両刃の短い穂先に、自分の身長(175cm)程の柄をした槍を使い、ヘルバシオは突きや払いを放ちレイナルドを攻撃する。
「セイッ!!」
長身(185cm)と鍛え上げた筋肉を使って、コルデーロはバトルアックスを振り回してくる。
しかし、どちらの攻撃もレイナルドには当たらず、空を斬るばかりだ。
「クッ!?」
「ちょこまかと!!」
空振りが続き、ヘルバシオとコルデーロは焦りを覚えていた。
どんな攻撃をしても、レイナルドは持ち前の高いレスポンス(反応)で躱し、しかもまだ余裕がある表情をしている。
このままではスタミナを消耗するだけだ。
どうにかして一撃加え、レイナルドの動きを止めたい。
「ハッ!?」
“バキッ!!”
「がっ!?」
考えながら攻撃をしていたからか、コルデーロとの連携に僅かに隙ができた。
それにヘルバシオが気付いた時には、レイナルドの拳が顔面に迫っていた。
右ストレートが直撃し、ヘルバシオは吹き飛んで行った。
「ヘルバシオ!! くっ!!」
仲間が攻撃を受けて飛んで行ったが、コルデーロはそのままレイナルドに攻撃を続ける。
コルデーロの攻撃は、1撃1撃に威力があるため、防御をすることができない。
防御ができれば反撃が出来るのだが、レイナルドが防御用に携帯している短刀では、すぐに破壊される可能性がある。
それが分かっているからか、レイナルドは躱すばかりで防ごうとしない。
「シッ!!」
「つっ!?」
防げなくても攻撃の機会はある。
バトルアックスは、威力こそあるが重量がある。
そのせいで、コルデーロが攻撃をした後、次の攻撃に移るには僅かにタイムラグがある。
そこを狙ってレイナルドはジャブを打つ。
速度重視のため、深いダメージは与えられないが、攻撃は当たる。
「シッ!!」「シッ!!」
「ぐっ!?」「がっ!?」
ヘルバシオとコルデーロとの2対1なら躱すことに集中しなければならないが、1対1なら対処できる。
レイナルドは、コルデーロが攻撃をするたび躱し、その後の隙をついて攻撃する。
長身でガタイの良いコルデーロに、ジャブは大きな痛手を与えないが、殴られた部分は赤くなっている。
それを見る限り、全く効いていない訳ではないようだ。
ちょっと時間がかかるかもしれないが、他にも相手をしなければならない敵はそこかしこにいる。
無駄に怪我をする訳にはいかないので、無傷で終わらせるためにも、レイナルドはこのままコルデーロを痛めつけることにした。
「ぐっ!?」
「止めだ……」
数十発の攻撃を食らい、さすがのコルデーロもダメージが溜まり膝をついた。
体中に痣を作りながらも、コルデーロはレイナルドを睨みつける。
「っ!?」
「避けられるなら避けてみやがれ……」
コルデーロばかり相手をしていたからか、レイナルドはいつの間にかヘルバシオのことを忘れていた。
止めを刺そうとコルデーロに近付いていくと、レイナルドの探知に高魔力の集中が感じられた。
そちらに目を向けると、強力な1撃を食らって吹き飛んで行ったはずのヘルバシオが、槍に高密度の魔力を纏わせて立っていた。
「速射槍!!」
魔力は槍にだけでなくヘルバシオの足にも集中していた。
ヒラヒラと躱すレイナルドでも反応できないほどの速射攻撃。
この1撃ために、吹き飛ばされた後気配を消して集中したのだ。
ヘルバシオにとって全身全霊をかけた1撃。
それを食らわせるために、ヘルバシオは地を選り、とんでもない速度でレイナルドに迫っていった。
“フッ!!”
「なっ!?」
「ば、馬鹿な……」
先に声を出したのはコルデーロだ。
ヘルバシオのこの攻撃を、コルデーロも信頼していたからだ。
この攻撃は何度か見たことがあるが、通用しなかったのはあまり見たことがない。
しかも、初見で躱せる人間がいるとは思ってもいなかった。
その超高速の1撃が、レイナルドへ突き刺さると思った瞬間、残像を残したかのように姿を消した。
「いい技だ。けど、それくらいなら対応できる」
「っ!?」
必殺の攻撃を躱し姿を消したレイナルドは、いつの間にかヘルバシオの背後に回っていた。
背後を見ていないが、ヘルバシオは頭に銃を突き付けられているのを感じていた。
動けば撃たれる。
さっきの攻撃で、ごっそり魔力を消耗したヘルバシオは、この距離で銃撃されたら防げるか分からない。
そのせいで動くことがためらわれ、何もできず、いつ打たれるかの恐怖を感じて脂汗を流すことしかできずにいた。
「スピード自慢みたいだな? 服を切られるとは思わなかったよ。ただ、常時その速度で動く人間をいつも相手にしてるんでな……」
「そんな……」
そんなバカげた人間がいる訳がない。
ヘルバシオはそう言葉を続けようとしたが、続けられなかった。
“パンッ!!”
続ける時間を与えないように、レイナルドが引き金を引いたからだ。
発射された弾丸が頭を撃ち抜き、ヘルバシオは崩れるように倒れて行った。
「がぁっ!!」
仲間がやられて、膝をついている場合ではない。
コルデーロは立ち上がり、バトルアックスで襲い掛かった。
片手で振ったバトルアックスをレイナルドがまたも躱すと、それを見越していたのか、開いてる片方の手でレイナルドの服を掴みかかった。
“パンッ!!”
「うぐっ!?」
「……もしかして自爆でもする気だったか?」
嫌な予感がしたレイナルドは、その伸びてきた手を銃で撃ち、掴ませなかった。
攻撃のほとんどが通用しないと悟った時、魔物でも時折自爆をしてくるような種類がいる。
それと似たような魔力の動きをコルデーロから感じた。
そのため、レイナルドはバックステップして距離を取った。
レイナルドの読みは図星だったらしく、コルデーロの魔力は元の流れに戻っていった。
「くっ……、くそー!!」
1人では勝てないと分かっていても、仲間が殺られこのまま引き下がるつもりはない。
コルデーロは破れかぶれでレイナルドへ向かって行った。
“パパンッ!! パンッ!! パンッ!!”
近付かれれば自爆してくるかもしれない。
そうなってはレイナルドでも危険なので、近付かせるわけにはいかない。
そう判断したレイナルドは、銃を連射してコルデーロを仕留めたのだった。
◆◆◆◆◆
「そんな具合で敵を倒し、他にいた敵兵たちはいつの間にか逃げて行ってた」
自分が向かった方の状況を、レイナルドはカルロスに説明した。
「何もできずに殺られる方は無念だね……」
「敵に同情なんてしてられるか!」
この兄との訓練で、いつも自分がやられていることがおこなわれたようだ。
全く歯がたたずに負けた者のことを考えると、カルロスは敵ながら少し同情してしまった。
レイナルドだって、ケイとの訓練で同じ目に遭うことが多い。
その状況の相手がどう思っているかは分からなくもないが、所詮彼らは自分たちにとっては敵でしかないので、同情の余地はない。
「思ったより駐留兵のみんなの怪我人が多い。もしかしたらここの捨て時かもしれない」
「……そうだね。敵も一旦引いてるみたいだし、俺たちも東へ向かおう」
駐留兵の獣人たちは数に負けて怪我をした者が多い。
重傷者が多いが、どうやら死人はまだ出ていないのが救いだ。
隊長のモイセスも怪我をしていたので、これ以上の抵抗は死人が出てしまうかもしれない。
父のケイは、最初から死人を出すくらいならこの島を捨てても良いと言っていた。
そうなると、ここが潮時かもしれない。
こういった時、集まる場所はあらかじめ決まっていたため、レイナルドとカルロスはその場所へと向かうことにした。
「あぁ!!」
あまりにもあっさりと仲間のビルヒニオが殺られ、ビルヒニオは目の前にいるハーフエルフの実力が相当なものだとようやく判断した。
そもそも、エルフは生物を殺さないという話を聞いていたのだが、全くのデマだったらしい。
強いうえに平気で殺意を持って攻撃してくる相手に、こっちは生け捕りをしなければならないなんてハンデにしては大きすぎる。
2人でなりふり構わず痛めつけなければ、倒すことすら難しいかもしれない。
そのため、2人は本気を出してレイナルドと戦うことにした。
「ハッ!!」
両刃の短い穂先に、自分の身長(175cm)程の柄をした槍を使い、ヘルバシオは突きや払いを放ちレイナルドを攻撃する。
「セイッ!!」
長身(185cm)と鍛え上げた筋肉を使って、コルデーロはバトルアックスを振り回してくる。
しかし、どちらの攻撃もレイナルドには当たらず、空を斬るばかりだ。
「クッ!?」
「ちょこまかと!!」
空振りが続き、ヘルバシオとコルデーロは焦りを覚えていた。
どんな攻撃をしても、レイナルドは持ち前の高いレスポンス(反応)で躱し、しかもまだ余裕がある表情をしている。
このままではスタミナを消耗するだけだ。
どうにかして一撃加え、レイナルドの動きを止めたい。
「ハッ!?」
“バキッ!!”
「がっ!?」
考えながら攻撃をしていたからか、コルデーロとの連携に僅かに隙ができた。
それにヘルバシオが気付いた時には、レイナルドの拳が顔面に迫っていた。
右ストレートが直撃し、ヘルバシオは吹き飛んで行った。
「ヘルバシオ!! くっ!!」
仲間が攻撃を受けて飛んで行ったが、コルデーロはそのままレイナルドに攻撃を続ける。
コルデーロの攻撃は、1撃1撃に威力があるため、防御をすることができない。
防御ができれば反撃が出来るのだが、レイナルドが防御用に携帯している短刀では、すぐに破壊される可能性がある。
それが分かっているからか、レイナルドは躱すばかりで防ごうとしない。
「シッ!!」
「つっ!?」
防げなくても攻撃の機会はある。
バトルアックスは、威力こそあるが重量がある。
そのせいで、コルデーロが攻撃をした後、次の攻撃に移るには僅かにタイムラグがある。
そこを狙ってレイナルドはジャブを打つ。
速度重視のため、深いダメージは与えられないが、攻撃は当たる。
「シッ!!」「シッ!!」
「ぐっ!?」「がっ!?」
ヘルバシオとコルデーロとの2対1なら躱すことに集中しなければならないが、1対1なら対処できる。
レイナルドは、コルデーロが攻撃をするたび躱し、その後の隙をついて攻撃する。
長身でガタイの良いコルデーロに、ジャブは大きな痛手を与えないが、殴られた部分は赤くなっている。
それを見る限り、全く効いていない訳ではないようだ。
ちょっと時間がかかるかもしれないが、他にも相手をしなければならない敵はそこかしこにいる。
無駄に怪我をする訳にはいかないので、無傷で終わらせるためにも、レイナルドはこのままコルデーロを痛めつけることにした。
「ぐっ!?」
「止めだ……」
数十発の攻撃を食らい、さすがのコルデーロもダメージが溜まり膝をついた。
体中に痣を作りながらも、コルデーロはレイナルドを睨みつける。
「っ!?」
「避けられるなら避けてみやがれ……」
コルデーロばかり相手をしていたからか、レイナルドはいつの間にかヘルバシオのことを忘れていた。
止めを刺そうとコルデーロに近付いていくと、レイナルドの探知に高魔力の集中が感じられた。
そちらに目を向けると、強力な1撃を食らって吹き飛んで行ったはずのヘルバシオが、槍に高密度の魔力を纏わせて立っていた。
「速射槍!!」
魔力は槍にだけでなくヘルバシオの足にも集中していた。
ヒラヒラと躱すレイナルドでも反応できないほどの速射攻撃。
この1撃ために、吹き飛ばされた後気配を消して集中したのだ。
ヘルバシオにとって全身全霊をかけた1撃。
それを食らわせるために、ヘルバシオは地を選り、とんでもない速度でレイナルドに迫っていった。
“フッ!!”
「なっ!?」
「ば、馬鹿な……」
先に声を出したのはコルデーロだ。
ヘルバシオのこの攻撃を、コルデーロも信頼していたからだ。
この攻撃は何度か見たことがあるが、通用しなかったのはあまり見たことがない。
しかも、初見で躱せる人間がいるとは思ってもいなかった。
その超高速の1撃が、レイナルドへ突き刺さると思った瞬間、残像を残したかのように姿を消した。
「いい技だ。けど、それくらいなら対応できる」
「っ!?」
必殺の攻撃を躱し姿を消したレイナルドは、いつの間にかヘルバシオの背後に回っていた。
背後を見ていないが、ヘルバシオは頭に銃を突き付けられているのを感じていた。
動けば撃たれる。
さっきの攻撃で、ごっそり魔力を消耗したヘルバシオは、この距離で銃撃されたら防げるか分からない。
そのせいで動くことがためらわれ、何もできず、いつ打たれるかの恐怖を感じて脂汗を流すことしかできずにいた。
「スピード自慢みたいだな? 服を切られるとは思わなかったよ。ただ、常時その速度で動く人間をいつも相手にしてるんでな……」
「そんな……」
そんなバカげた人間がいる訳がない。
ヘルバシオはそう言葉を続けようとしたが、続けられなかった。
“パンッ!!”
続ける時間を与えないように、レイナルドが引き金を引いたからだ。
発射された弾丸が頭を撃ち抜き、ヘルバシオは崩れるように倒れて行った。
「がぁっ!!」
仲間がやられて、膝をついている場合ではない。
コルデーロは立ち上がり、バトルアックスで襲い掛かった。
片手で振ったバトルアックスをレイナルドがまたも躱すと、それを見越していたのか、開いてる片方の手でレイナルドの服を掴みかかった。
“パンッ!!”
「うぐっ!?」
「……もしかして自爆でもする気だったか?」
嫌な予感がしたレイナルドは、その伸びてきた手を銃で撃ち、掴ませなかった。
攻撃のほとんどが通用しないと悟った時、魔物でも時折自爆をしてくるような種類がいる。
それと似たような魔力の動きをコルデーロから感じた。
そのため、レイナルドはバックステップして距離を取った。
レイナルドの読みは図星だったらしく、コルデーロの魔力は元の流れに戻っていった。
「くっ……、くそー!!」
1人では勝てないと分かっていても、仲間が殺られこのまま引き下がるつもりはない。
コルデーロは破れかぶれでレイナルドへ向かって行った。
“パパンッ!! パンッ!! パンッ!!”
近付かれれば自爆してくるかもしれない。
そうなってはレイナルドでも危険なので、近付かせるわけにはいかない。
そう判断したレイナルドは、銃を連射してコルデーロを仕留めたのだった。
◆◆◆◆◆
「そんな具合で敵を倒し、他にいた敵兵たちはいつの間にか逃げて行ってた」
自分が向かった方の状況を、レイナルドはカルロスに説明した。
「何もできずに殺られる方は無念だね……」
「敵に同情なんてしてられるか!」
この兄との訓練で、いつも自分がやられていることがおこなわれたようだ。
全く歯がたたずに負けた者のことを考えると、カルロスは敵ながら少し同情してしまった。
レイナルドだって、ケイとの訓練で同じ目に遭うことが多い。
その状況の相手がどう思っているかは分からなくもないが、所詮彼らは自分たちにとっては敵でしかないので、同情の余地はない。
「思ったより駐留兵のみんなの怪我人が多い。もしかしたらここの捨て時かもしれない」
「……そうだね。敵も一旦引いてるみたいだし、俺たちも東へ向かおう」
駐留兵の獣人たちは数に負けて怪我をした者が多い。
重傷者が多いが、どうやら死人はまだ出ていないのが救いだ。
隊長のモイセスも怪我をしていたので、これ以上の抵抗は死人が出てしまうかもしれない。
父のケイは、最初から死人を出すくらいならこの島を捨てても良いと言っていた。
そうなると、ここが潮時かもしれない。
こういった時、集まる場所はあらかじめ決まっていたため、レイナルドとカルロスはその場所へと向かうことにした。
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