復讐、報復、意趣返し……とにかくあいつらぶっ殺す!!

ポリ 外丸

第91話 1対多②


「ハアァー!!」「くたばれ!!」「オラ―ッ!!」

 敷島の兵3人が、限の前方左右からほぼ同時に襲い掛かってくる。
 後方に跳べば3人の攻撃は躱せるだろうが、そうすれば待ち構えている敵たちに襲い掛かられる。
 そんなことになれば、限でも攻撃を受けるかもしれない。
 その考えに乗って、どれだけ対応できるか試してみるのも手だが、限へと向かって来る敵の数はまだ増えてくるはず。
 無理をする状況ではないため、限はこの状況を対応するかを考える。
 そして出した答えは、

「「「っ!!」」」

 前方の人間を瞬殺しての中央突破。
 左右から迫る2人の攻撃に注意をしつつ、限は後退ではなく前方に向かって地を蹴る。
 限の取った意外な行動に驚きつつも、3人はそのまま手に持つ刀で斬りかかってきた。

「フンッ!!」

「「なっ!?」」

 迫り来る3人に近付いた限は両手に持つ刀の切っ先から左右から迫る敵に向かって火弾の魔法を放つ。
 左右の敵は、刀の軌道を変えて自身へ迫る火弾の防御へと移る。

「ハッ!!」

「ガッ!!」

 左右からの攻撃を止めれば、後は前方から来る敵に意識を向ければいい。
 一瞬とは言え1対1の戦闘。
 左手の刀で敵の攻撃を防ぎ、右手の刀で斜めに斬り裂く。
 そうすることによって、限は中央突破に成功した。

「このっ!!」「てめっ!!」

 火弾を防いだ2人は、目の前で仲間を斬り殺した限の足止めをするために、片方が上半身、もう片方が下半身に攻撃する。

「フッ!!」

「なっ!?」「おわっ!?」

 2人からの刀が迫るなか、限は手に持つ刀の切っ先を2人の足下へ向けて魔法を放つ。
 今度は土魔法。
 それによって、左右の2人の足下の土が盛り上がり、バランスを崩した2人の攻撃は限に当たることなく空を斬った。

「シッ!!」

「グッ!!」「ガッ!!」

 2人の攻撃が当たるギリギリの所を通り抜けると、限は両手の刀を横に振る。
 刀は左右の2人の首を斬り飛ばし、限はすぐさまその場から移動を開始した。

「チッ!! 追え!!」

 3人の攻撃から逃れるために後退してくる限を待っていた者たちは、策が外れる。
 そのことに舌打ちしつつ、すぐに限を始末するために追いかけ始めた。

「何十人が追いかけて来てんだよ……」

 樹々を利用するように移動をする限。
 後方からは、多くの敷島の兵たちが追いかけて来ている。
 それを見ながら大雑把に数を数えた限は、あまりの多さにうんざりしつつ呟いた。

「っ!!」

「危ねっ!!」

 樹々に身を隠しながら移動するのは、敷島の人間にもできること。
 移動しながら後方の敵に意識を向けつつ隙を窺う限に、突如前方から刀が迫る。
 攻撃に気付いた限は、咄嗟にスライディングすることで回避に成功した。

「危ねえだろうが!!」

「ぐへっ!!」

 スライディングからすぐに立ち上がった限は、すぐに反転して攻撃をして来た敵の心臓目掛けて突きを放つ。
 心臓を貫かれた敵は、血を吐いて絶命した。

「「ハッ!!」」

「くっ!」

 突然の攻撃を躱して反撃をしている間に、追いかけてきていた敵に追いつかれた。
 追いついた敵の先頭2人は、魔力弾を連発して限の手を防御に使わせる。
 飛んでくる魔力弾は、威力はあるが防げないほどではない。
 限は迫り来る魔力弾を、両手に持つ刀で斬り飛ばした。

「よしっ!!」「いいぞっ!!」

「くそっ!!」

 咄嗟とは言え、刀で攻撃を防いだのは失敗だった。
 攻撃を防いでいる間に、2人の後ろから来る敵たちにも追いついてきてしまった。
 このままでは周囲を囲まれ、動き回ることも難しくなる。

「だったら!!」

「「っっっ!!」」

 敵に囲まれる前に、限は魔法を利用した行動を起こす。
 足元の地面を高速で隆起させ、限はその勢いを利用して上空へ跳び上がったのだ。

「ハッ!!」

“スタッ!!”

「「「なっ!?」」」

 跳びあがった限は、風魔法を利用して着地をする。
 着地したのは迫り来る敵の最後尾。
 集団の頭上を跳び越えたのだ。
 後方にいたのは、速度よりも力を優先した戦いをする者たち。
 彼らは、現の出現に驚きつつも刀を抜こうとした彼らは、追いかけていた相手が急に上空から現れたことに驚きつつも刀を抜こうとした。

「貴様ぁー!!」

「遅い!!」

 他の者たちが足止めした所に追いつき、攻撃に参加するつもりだったのだろう。
 走るのに邪魔にならないように刀を収めていたのは、彼らにとって失敗だった。
 敵が刀を抜ききる前に、限が行動を起こす。
 両手に持つ刀を振り回し、限は最後尾にいた敵を次々始末していった。

「このっ!!」

「フンッ!!」

 仲間の死体が増えるなか、巨体の敷島兵が、覆いかぶさるように現に向かって来た。
 その巨体から繰り出された1撃は強力なようだが、如何せん速度が違い過ぎる。

「ぐえっ!!」

「……チッ!」

 その巨体の敵を始末すると、限は思わず舌打をする。
 何故なら、この巨体の男を殺している間に、時間を稼がれてしまったからだ。
 刀を抜くことすらせずに限に向かってきたのは、どうやらこれが狙いだったようだ。
 命を捨てての時間稼ぎ。
 敷島内では、場合によってはそういった行動をするように教育されているとはいえ、こうも躊躇いなくやってくる者がいるとは思わなかった。
 まんまと狙い通りに時間を稼がれ、反転した敵たちがまたも次々と限へと迫ってきた。

「死ね!!」「ハァー!!」

 槍使いが2人迫り来る。
 その2人は、持っている槍で限に突きを放ってくる。
 刀による攻撃よりも、こっちの攻撃の方が今の限には面倒だ。
 攻撃は躱せるが、間合いが遠いためカウンターで斬り殺すということが難しい。

「このっ!」

「ぎゃっ!!」

 瞬殺は難しくとも、この2人も限の相手ではない。
 深く踏み込んでの突きに対し、限も攻撃を躱しながら深く踏み込み反撃をする。
 腹を斬り裂かれた1人が崩れ落ちる。

「ハッ!!」

「フンッ!!」

「ぎゃっ!!」

 これまでのことで気持ちを切り替えたのか、もう1人の敵は仲間がやられても動じることなく攻撃の手を止めない。
 2人でも当たらない攻撃が当たる訳もなく、限はもう1人も同じように対応して斬り殺した。

「逃がすな!!」「囲め!!」

「ハァ~……結構しんどいな」

 槍使いを相手にしているうちに、迫る敵はどんどん数を増やしてくる。
 その様子にため息を吐きつつ、限はまたも移動を開始した。


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