復讐、報復、意趣返し……とにかくあいつらぶっ殺す!!
第57話 シムトゥーロの町
「あれがシムトゥーロの町ですね?」
「あぁ」
西へと向かった限たち一行。
目的の町であるシムトゥーロが見えてきた。
ダンジョンがある町として有名な町だ。
「……結構な列ですね?」
「ダンジョン目当ての冒険者たちだろ」
近付くにつれ、レラはこれまでとは違う様子に気付く。
町に入るための審査の列が、これまでよりも長く繋がっているからだ。
その理由を限が答える。
限がそう思った理由は、並んでいる人間を見たからだ。
並んでいる人間の多くが明らかに商人には思えないような見た目をしているうえ、筋肉の付き方からして鍛えているのが分かる。
そこから予想して出した答えが、ダンジョン目当ての冒険者というものだった。
「あれだけの人数が毎日のように来ているとしたら、ダンジョン内は渋滞しているのではないでしょうか?」
町へ入るための審査をしている兵らしき者たちが、別段慌てる様子がないところを見ると、これが日常なのだと予想できる。
この数の冒険者が毎日やってきて、その人間が集まるとなると、目的であるダンジョン内は大混雑のはずだ。
自分たちも目的はダンジョンのため、中に入るのは難しくなりそうに思えた。
「上層はそうだろうな」
「上層……ですか?」
ダンジョンに入るのも難しくなりそうな様子に困り顔のレラ。
それに対し、限が自分の考えを述べることにした。
「有名になるほど攻略されていないということは、下層の方まで行っている冒険者は少ないということなんだろう」
「なるほど……」
ダンジョンが発見されると、その核を手に入れに冒険者たちが殺到する。
というのも、ダンジョン核も魔石であるからだ。
魔石なら魔物を倒して手に入れれば済む話だが、魔物の強さや大きさなどによって魔石の大きさは変化してくる。
それに引きかえダンジョン核は、かなりの大きさをしていることが多い。
この世界では、魔石が魔道具の電池代わりに使われているため、かなりの魔力を有するダンジョン核は高値で引き取られる。
しかも、難易度の高いダンジョン核の場合、それだけ多くの魔力を集めている可能性が高いため、その大きさもかなりのものに違いない。
ダンジョンで有名の町で、これだけ多くの人間が毎日のように集まってきているにもかかわらず攻略されていないということは、それだけ難易度が高いということなのだろう。
恐らくここのダンジョン核1つ手に入れるだけで、何世代にも渡って安泰で暮らせるほどの資金が得られるかもしれない。
これだけの人間が毎日集まるのも納得できるというものだ。
「つまりは、ここのダンジョンはそれだけの階層になっているんだろうな。最低でも100層は行ってるんじゃないか?」
「ひゃ……それはすごいですね」
ダンジョンで100層以上なんて、そう滅多に出現することはない。
それほどの階層を攻略しようとしたらどれほどの時間かかるか分からない。
そのため、それを聞いたレラは驚きの声を上げた。
「まぁ、俺たちはレラの訓練が目当てだから、攻略は二の次だがな」
「……そうですね」
そう、限たちの目的は、レラのセント力の強化。
そのために、ダンジョンに潜るのだ。
なので、ダンジョン核のことなんてどうでもいいことだ。
訓練と聞いたレラは、それがどれほどのものになるのかという不安からか若干表情が硬くなった。
「とりあえず並ぼう」
「はい!」
始める前から不安になるのも仕方がない。
限の強さを近くで見てきたたからこそ、敷島の者たちの強さの片鱗がうかがえる。
それと戦えるほどの強さにならないとなると、相当なハードな訓練になるのが想像できるからだ。
何にしても、町の中に入らなくては始まらない。
そのため、限たちは、町に入るための審査の列へと並ぶことにした。
「はぁ~……、ようやく入れたな」
「そうですね……」
長い時間をかけ、シムトゥーロの町へと入れた限たち。
ようやく入れたことに、限たちは安堵のため息を吐いた。
「アルバにビビッてないでさっさと通せってんだよあいつら」
列の長さから、自分たちの番までしばらくかかると思っていた。
その予想通り、1時間くらい経ってようやく限たちの番になった。
その時、審査役の兵たちが白狼のアルバのことをやたらと警戒し、町に入る許可が下りるまで時間がかかってしまった。
限が何度もアルバは従魔だといったのに、何故だか信用されなかった。
これまでの町もアルバを見ると審査役の者は警戒していたが、今回は特に酷かった気がする。
何でも、ここのダンジョンから狼種の魔物が出てきて、結構大きな被害を出したことがあったそうだ。
だからって、アルバまで暴れるのではないかと思うのは怯え過ぎだ。
後からきた者が先に入れる中、審査役の者たちに止められて待たされたことを、限は腹を立てていた。
「クゥーン……」
「アルバのせいじゃねえよ」
限の機嫌が悪くなった理由が自分のせいだと思ったのか、アルバは申し訳なさそうに鳴いた。
別にアルバに文句を言った訳ではない。
そのため、限は機嫌を直すようにアルバの頭を撫でてあげる。
「キュウ!」
「ほら。ニールも元気出せってよ」
「ワウッ!」
アルバの背に乗る亀のニールも、アルバを励ますように声を上げる。
その鳴き声を聞いたアルバは、元気を取り戻したかのように鳴き声を上げた。
「よし! じゃあ、今日は宿屋を見つけて、明日からダンジョンに向かうとしよう」
「ハイ!」
「ワウッ!」「キュウ!」
町に入る列に並んで、入れるまでに時間が経ってしまったため、今からダンジョンに入ろうにも準備ができていない。
なので、ダンジョンに入るよりも、まずは宿の捜索が先にすることにした。
自分たち以外にも多くの者が町へと来ているのだから、宿屋が満杯になってしまっているかもしれない。
「2手に分かれて探すか?」
「そうですね」
効率を上げるため、限とアルバ、レラとニールの2手に分かれて、宿屋探しを味めることにした。
「すぐに見つかったな……」
「えぇ……」
満杯になっているかもしれないと思っていた宿屋だったが、2手に分かれる必要なんてなかった。
何故ならすぐに宿屋が確保できたからだ。
「ダンジョンに来る人間のために、宿屋が大量に乱立してるなんてな」
限とレラが分かれた道から1本ズレた道へ入ると、そこには多くの宿屋が両脇に建ち並んでいて、その一つに当たってみたところ、すぐに部屋を取ることができた。
宿屋の女将に聞いてみたところ、ダンジョンに入るために毎日のように人が来るため、その者たちを受け入れるために宿屋が増えたそうだ。
何にしても、目的の宿屋が見つかったため、限たちは明日に備えて休むことにした。
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