復讐、報復、意趣返し……とにかくあいつらぶっ殺す!!
第21話 疑問
「今日はどうなさいますか?」
宿屋で一泊して1階の食堂で朝食を取った後、レラは限へ今日の予定を聞いてきた。
人体実験をおこなって、自分を苦しめた研究員たちへの報復を考えていたが、ギルドには情報が入っていなかった。
限が始末した英助の言うことが本当だったなら、人造魔獣の研究という危険な実験を放置しておくことはできないというのもある。
人の手で強力な兵器となる魔獣を作り出すという、神への冒涜のような行為が成功するとは思えないが、一般市民にまで危害が及ぶかもしれないことを見過ごせない。
研究の成功前に、全てを無に帰したいところだ。
「とりあえずギルドへ行こう」
「ハイ!」
人造魔獣の研究を止めるにしても、情報がないのではどうしようもない。
むやみやたらに動いて、逃げられでもしたら元も子もない。
今はその情報が入るまで、ゼータを故郷へ帰すことを優先するのが一番だ。
そのためにも、まずはギルドへ行ってある依頼がないか調べたい。
なので、限はギルドへ行くことを告げ、レラは頷きを返した。
「南へ向かう護衛依頼はないな……」
「そうですね……」
ギルドに着き、掲示板に貼られた掲示板を眺めていた限とレラは、目欲しい仕事がないため残念そうに小さく呟く。
限たちの目当ての仕事とは、護衛依頼だった。
どうせゼータを送りに南へ向かうのだから、ついでに資金を稼げればと思っていた。
そのためには南へ向かう商人の護衛依頼を受ければいいと思っていたのだが、護衛の護の字もない。
「もしかして、商業ギルドへ頼むものなのか?」
商人が町から町へ移動するとき、盗賊や魔物からの襲撃を警戒して護衛を募集するという話を昔に聞いたことがあったが、てっきりギルドに依頼するものだと限は思っていた。
しかし、一枚も貼られていないところを見ると、もしかしたら冒険者ギルドではないのではないかと思い始めた。
ギルドには冒険者ギルドだけでなく商業ギルドも存在する。
商人ならもしかしたら、所属している商業ギルドの方に依頼をするのだろうか。
「あの?」
「はい!」
疑問を解消するのには、知っているであろう人間に聞くのが一番手っ取り早い。
先程までいた冒険者たちは、それぞれ自分の目当ての依頼を受けて出て行ってしまった。
それによって、今受付は空いている状況だ。
その受付に座っている女性に、限は疑問を尋ねることにした。
「護衛依頼って商業ギルドの方に行くものなんですか?」
「いいえ。護衛依頼はこちらに依頼されることが多いです」
商業ギルドの方が護衛依頼が受けられるのかと思って受付の女性に尋ねてみると、どうやら違うようだ。
どちらのギルドにも護衛依頼は依頼することができるが、荒事を請け負うことが多いのは冒険者の方のため、どちらかと言うと冒険者ギルドの方に依頼が来ると受付の女性は説明してくれた。
「護衛の依頼ってそんな頻繁に来ないんですか?」
「いいえ。週に何件か来ますよ」
こちらに依頼をすることが多いというなら、全く貼りだされていないことに疑問が湧いてきた。
そのことを尋ねると、女性は限の疑問にすぐに否定をしてきた。
他の町との貿易をおこなっている商会なども存在しているので、定期的に護衛の依頼は入ってくるらしい。
「しかし、依頼を受けられる冒険者は依頼に合ったランクが必要になってきます。ゲンさんは白狼を従魔にしていらっしゃいますが、ランクは一番下なので護衛の依頼を受けるのは難しいかもしれません」
「……なるほど」
冒険者にはランクがあり、D・Ⅽ・B・A・Sの順に上位になっていく。
ランクには当然腕っぷしも評価の基準になってはいるが、依頼を受けて達成をすることによって信頼と実績を積み、それによってランクが上がっていく仕組みになっている。
限たちは昨日登録したばかりなので、信頼も実績も低い当然Dランクだ。
受けられる依頼は、数も種類も限定されてしまう。
腕っぷしの方は、アルバがいるから申し分ないと判断される可能性もあるが、ランクがDだとギルドの方も推薦することは難しいとのことだ。
その説明を受けて納得した限は、受付の女性に礼を言って掲示板の側で待っているレラたちの所へと戻っていった。
「地道に頑張らないとダメって事か……」
受付の女性から受けた説明をレラたちにもすると、限は困ったように呟いた。
ゼータを送り届けるついでに資金稼ぎをできるいい手だと思っていたのだが、考えが甘かった。
商人からしたら、被害に遭えば自分だけでなく従業員やその家族にまで連鎖的に被害が及ぶことになる。
そう考えると、そんな重要な仕事を新人に任せる訳にはいかない。
腕っぷしには自信があるが、実績が無いと言われれば文句も言えない。
護衛依頼を受けるという考えは無理そうだ。
「どうなさいますか?」
移動の足と実益を兼ねた仕事だったが、もう諦めて他の方法を考えるしかない。
護衛依頼の事を諦めた現に、レラはこれからのことを尋ねてきた。
「楽に移動と資金稼ぎをしようとしたのが間違いだったな。地図を買って次の町へ向かおう」
「ハイ」
護衛用の馬車に乗って楽に次の町へ行こうと思っていたが、それができなくなったのは仕方がない。
限たちには元々移動方法があるので、場所さえ分かれば問題はないため、限たちは地図を買って次の町へ向かうことに決めた。
「ゼータ。出ても大丈夫だぞ」
「ふぅ~……やっと喋れる!」
地図を手に入れた限たちは、そのまま南の町へ向かうため町の外へ出た。
町を出てから少し歩き、街中では見られたら困るゼータはようやくレラの服のポケットの中から顔を出すことができた。
限たちの会話は聞こえていたので、南の町へ行くということは分かっているが、ずっと黙っているのはストレスが溜まる。
ポケットから顔を出したゼータは、嬉しそうに喋りだした。
「レラはアルバの背に乗ってくれ」
「ワウッ!」
「ハイ!」
次の町への移動は、距離を考えると徒歩では数日かかってしまう。
それがあったから護衛依頼を受けて短縮しようという考えもあったのだが、それができなくなったので違う方法で向かうつもりだ。
その方法は簡単に言うと、走るだけだ。
魔力が大量に溜め込めるようになった限からすると、馬車並みの速度で何時間も走ることなんて難しくない。
長距離より短距離の方が得意ではあるが、アルバも同様だ。
しかし、レラはそうはいかないため、アルバに乗って移動してもらうことにした。
アルバも1人、しかも女性なら、たいして苦もなく乗せられる。
減の指示を受けたレラに、乗れと催促するようにアルバはしゃがみこんだ。
「出発するけど、しっかり捕まっていろよ」
「ハイ!」
アルバの背に恐縮するように乗っているレラが、走り出したら落ちてしまうのではないかと不安になった限は、しっかりとアルバの首輪に捕まるように指示をする。
従魔の証として付けなくてはいけない首輪も、こんな時には役に立つものだ。
「出発!!」
「ワウッ!」
「わっ!!」
何故かゼータの合図で走り出した限とアルバ。
走り出した瞬間、レラはバランスを取ろうと慌てるが、それもすぐに治まり安定した。
「なあ、限」
「んっ?」
アルバが走ることによって受ける風も心地よくなって来たころ、ゼータは気になっていたことを限に聞くことにした。
「昨日何かしたか?」
「……何って何を?」
昨日宿に入って夕食を取った後、ゼータは何故か突然眠くなってしまった。
そのことが不思議に思っていた。
「眠くなかったのにいつの間にか眠ってたんだ。まるで睡眠の魔法をかけられたみたいに……」
昨日町に入ったばかりの昼間は何もすることができないので、ゼータはレラのポケットの中で昼寝をしていた。
それもあって眠くなかったはずなのに、いつの間にか眠ってしまっていたことが不思議でならなかった。
もしかしたら何か魔法でも欠けられたのかと思ってそのことを問いかけると、限は何とも言えない表情に変わった。
「それは……」「気のせいよ!!」
限が昨夜のことを言いにくそうに返答しようとしたところ、レラが代わりに返答した。
しかも強めに。
「魔法なんて誰も使っていないわよ!」
「そうか?」
食事をしてすぐから記憶が無いということを考えると、単に食事をして満腹になったから眠くなった可能性も否定できなくはない。
そのため、レラがハッキリと魔法の使用を否定するのを聞いて、ゼータは何だか納得できないが渋々受け入れることにした。
「そうよ!」
「………………」
最後に念を押すように強く答えるレラを横目に、昨日の夜のベッドことを思いだしていた限は無表情でやり過ごすことにした。
宿屋で一泊して1階の食堂で朝食を取った後、レラは限へ今日の予定を聞いてきた。
人体実験をおこなって、自分を苦しめた研究員たちへの報復を考えていたが、ギルドには情報が入っていなかった。
限が始末した英助の言うことが本当だったなら、人造魔獣の研究という危険な実験を放置しておくことはできないというのもある。
人の手で強力な兵器となる魔獣を作り出すという、神への冒涜のような行為が成功するとは思えないが、一般市民にまで危害が及ぶかもしれないことを見過ごせない。
研究の成功前に、全てを無に帰したいところだ。
「とりあえずギルドへ行こう」
「ハイ!」
人造魔獣の研究を止めるにしても、情報がないのではどうしようもない。
むやみやたらに動いて、逃げられでもしたら元も子もない。
今はその情報が入るまで、ゼータを故郷へ帰すことを優先するのが一番だ。
そのためにも、まずはギルドへ行ってある依頼がないか調べたい。
なので、限はギルドへ行くことを告げ、レラは頷きを返した。
「南へ向かう護衛依頼はないな……」
「そうですね……」
ギルドに着き、掲示板に貼られた掲示板を眺めていた限とレラは、目欲しい仕事がないため残念そうに小さく呟く。
限たちの目当ての仕事とは、護衛依頼だった。
どうせゼータを送りに南へ向かうのだから、ついでに資金を稼げればと思っていた。
そのためには南へ向かう商人の護衛依頼を受ければいいと思っていたのだが、護衛の護の字もない。
「もしかして、商業ギルドへ頼むものなのか?」
商人が町から町へ移動するとき、盗賊や魔物からの襲撃を警戒して護衛を募集するという話を昔に聞いたことがあったが、てっきりギルドに依頼するものだと限は思っていた。
しかし、一枚も貼られていないところを見ると、もしかしたら冒険者ギルドではないのではないかと思い始めた。
ギルドには冒険者ギルドだけでなく商業ギルドも存在する。
商人ならもしかしたら、所属している商業ギルドの方に依頼をするのだろうか。
「あの?」
「はい!」
疑問を解消するのには、知っているであろう人間に聞くのが一番手っ取り早い。
先程までいた冒険者たちは、それぞれ自分の目当ての依頼を受けて出て行ってしまった。
それによって、今受付は空いている状況だ。
その受付に座っている女性に、限は疑問を尋ねることにした。
「護衛依頼って商業ギルドの方に行くものなんですか?」
「いいえ。護衛依頼はこちらに依頼されることが多いです」
商業ギルドの方が護衛依頼が受けられるのかと思って受付の女性に尋ねてみると、どうやら違うようだ。
どちらのギルドにも護衛依頼は依頼することができるが、荒事を請け負うことが多いのは冒険者の方のため、どちらかと言うと冒険者ギルドの方に依頼が来ると受付の女性は説明してくれた。
「護衛の依頼ってそんな頻繁に来ないんですか?」
「いいえ。週に何件か来ますよ」
こちらに依頼をすることが多いというなら、全く貼りだされていないことに疑問が湧いてきた。
そのことを尋ねると、女性は限の疑問にすぐに否定をしてきた。
他の町との貿易をおこなっている商会なども存在しているので、定期的に護衛の依頼は入ってくるらしい。
「しかし、依頼を受けられる冒険者は依頼に合ったランクが必要になってきます。ゲンさんは白狼を従魔にしていらっしゃいますが、ランクは一番下なので護衛の依頼を受けるのは難しいかもしれません」
「……なるほど」
冒険者にはランクがあり、D・Ⅽ・B・A・Sの順に上位になっていく。
ランクには当然腕っぷしも評価の基準になってはいるが、依頼を受けて達成をすることによって信頼と実績を積み、それによってランクが上がっていく仕組みになっている。
限たちは昨日登録したばかりなので、信頼も実績も低い当然Dランクだ。
受けられる依頼は、数も種類も限定されてしまう。
腕っぷしの方は、アルバがいるから申し分ないと判断される可能性もあるが、ランクがDだとギルドの方も推薦することは難しいとのことだ。
その説明を受けて納得した限は、受付の女性に礼を言って掲示板の側で待っているレラたちの所へと戻っていった。
「地道に頑張らないとダメって事か……」
受付の女性から受けた説明をレラたちにもすると、限は困ったように呟いた。
ゼータを送り届けるついでに資金稼ぎをできるいい手だと思っていたのだが、考えが甘かった。
商人からしたら、被害に遭えば自分だけでなく従業員やその家族にまで連鎖的に被害が及ぶことになる。
そう考えると、そんな重要な仕事を新人に任せる訳にはいかない。
腕っぷしには自信があるが、実績が無いと言われれば文句も言えない。
護衛依頼を受けるという考えは無理そうだ。
「どうなさいますか?」
移動の足と実益を兼ねた仕事だったが、もう諦めて他の方法を考えるしかない。
護衛依頼の事を諦めた現に、レラはこれからのことを尋ねてきた。
「楽に移動と資金稼ぎをしようとしたのが間違いだったな。地図を買って次の町へ向かおう」
「ハイ」
護衛用の馬車に乗って楽に次の町へ行こうと思っていたが、それができなくなったのは仕方がない。
限たちには元々移動方法があるので、場所さえ分かれば問題はないため、限たちは地図を買って次の町へ向かうことに決めた。
「ゼータ。出ても大丈夫だぞ」
「ふぅ~……やっと喋れる!」
地図を手に入れた限たちは、そのまま南の町へ向かうため町の外へ出た。
町を出てから少し歩き、街中では見られたら困るゼータはようやくレラの服のポケットの中から顔を出すことができた。
限たちの会話は聞こえていたので、南の町へ行くということは分かっているが、ずっと黙っているのはストレスが溜まる。
ポケットから顔を出したゼータは、嬉しそうに喋りだした。
「レラはアルバの背に乗ってくれ」
「ワウッ!」
「ハイ!」
次の町への移動は、距離を考えると徒歩では数日かかってしまう。
それがあったから護衛依頼を受けて短縮しようという考えもあったのだが、それができなくなったので違う方法で向かうつもりだ。
その方法は簡単に言うと、走るだけだ。
魔力が大量に溜め込めるようになった限からすると、馬車並みの速度で何時間も走ることなんて難しくない。
長距離より短距離の方が得意ではあるが、アルバも同様だ。
しかし、レラはそうはいかないため、アルバに乗って移動してもらうことにした。
アルバも1人、しかも女性なら、たいして苦もなく乗せられる。
減の指示を受けたレラに、乗れと催促するようにアルバはしゃがみこんだ。
「出発するけど、しっかり捕まっていろよ」
「ハイ!」
アルバの背に恐縮するように乗っているレラが、走り出したら落ちてしまうのではないかと不安になった限は、しっかりとアルバの首輪に捕まるように指示をする。
従魔の証として付けなくてはいけない首輪も、こんな時には役に立つものだ。
「出発!!」
「ワウッ!」
「わっ!!」
何故かゼータの合図で走り出した限とアルバ。
走り出した瞬間、レラはバランスを取ろうと慌てるが、それもすぐに治まり安定した。
「なあ、限」
「んっ?」
アルバが走ることによって受ける風も心地よくなって来たころ、ゼータは気になっていたことを限に聞くことにした。
「昨日何かしたか?」
「……何って何を?」
昨日宿に入って夕食を取った後、ゼータは何故か突然眠くなってしまった。
そのことが不思議に思っていた。
「眠くなかったのにいつの間にか眠ってたんだ。まるで睡眠の魔法をかけられたみたいに……」
昨日町に入ったばかりの昼間は何もすることができないので、ゼータはレラのポケットの中で昼寝をしていた。
それもあって眠くなかったはずなのに、いつの間にか眠ってしまっていたことが不思議でならなかった。
もしかしたら何か魔法でも欠けられたのかと思ってそのことを問いかけると、限は何とも言えない表情に変わった。
「それは……」「気のせいよ!!」
限が昨夜のことを言いにくそうに返答しようとしたところ、レラが代わりに返答した。
しかも強めに。
「魔法なんて誰も使っていないわよ!」
「そうか?」
食事をしてすぐから記憶が無いということを考えると、単に食事をして満腹になったから眠くなった可能性も否定できなくはない。
そのため、レラがハッキリと魔法の使用を否定するのを聞いて、ゼータは何だか納得できないが渋々受け入れることにした。
「そうよ!」
「………………」
最後に念を押すように強く答えるレラを横目に、昨日の夜のベッドことを思いだしていた限は無表情でやり過ごすことにした。
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