名探偵とスライムに男を尽く寝取られる女

kitatu

名探偵とスライムに男を尽く寝取られる女

 異世界探偵事務所。今日も、名探偵の僕のもとに迷える子羊がやってきた。


「実は、悩みがあって」


 女性は実に深刻そうな顔をしている。いつもの魔物探しや、発情期の浮気事件とは、性質が違いそうだ。


「私が好きになった男の人、尽くスライムに寝取られるんです」


「それは、また奇怪な」


「私、自分で言うのもなんですけど、美人な方だと思うんです。でも付き合った男性が尽くスライムに寝取られるんですよ」


「なるほど。それは困りますね」


「はい。もう十人もスライムに寝取られているんです。流石におかしいと思い、探偵さんに謎を暴いてもらおうと来たんです」


「なるほど、なるほど、ああ、なるほどというのは探偵の口癖でね。多用することを許してほしいのだけれど大丈夫かな? いえね、なるほど、が、らりほーに聞こえて怯えてしまう魔物さんもいるから」


「そんなことはどうでもいいです。私もいい年頃です。これ以上、スライムに寝取られ続けたら婚期を逃してしまいます。どうか解決してください」


「わかりました。では質問をしたいのだけれど、まず自分の姿を鏡で見たことがあるかな?」


「いえ、鏡なんて高級品、使ったことがありません」


「次に質問だけれど、鏡もないのにどうして自分を美人だと?」


「それは人間の男性から美人って言われるからです」


「なるほど、なるほど。そろそろ、君の問題が掴めてきたよ。最後に君が付き合ってきた男性の特徴を教えてほしいんだ」


「美少年だったり、線の細い方だったり、優しく包み込めるような方方です」


 女性はぷるんとして青白かった頬を赤らめてそう言ったあと、ハッとして、勢いよく言葉を吐いた。


「もしかして私が美人だからですか!? スライムに妬まれて、嫌がらせに男を奪われてきたんじゃ!?」


「いや違うなあ」


 僕がそう言うと、女性は苦笑した。


「スライムから羨ましがられる人間、そんなのあり得ないですもんね……あっ」


 またもや女性はハッとして口を開いた。


「人間じゃないってことは、私、スライムか魔物なんですか!?」


「違うよ、君は人間だよ。だって人間の僕が一眼で女性だってわかるんだもの」


 そう言うと、女性はほっと胸をなでおろした。


「でもね、男の好みがスライムとぴったり一緒なんだよ」


「……それじゃあ、私が寝取られるのは、雌スライムに女として負けてるってこと?」


「そうなるだろうね」


「……」

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