異世界転生で貰ったチートがTS魔法少女変身能力でしたがこの世界で頑張るしか無いようです 

ベレット

55 回想 中学生編 前編

「伊織君、私と付き合ってくれる?」


「えっと、本当に俺...なのか?間違いじゃないかな?」


「間違いじゃないわよ、失礼ね!!私は君が好きなの!!だから付き合って!!」


「ごめんなさい。急に言われても無理です。」


それが俺と相澤永遠がした初めての会話だった。


異世界に行く2年半前...中学三年のある日、蝉が鳴き太陽がオレンジ色に変わるころ俺は学校の屋上に呼び出され告白をされた。


だがこれまで特に面識もなく教室で挨拶する事も無い人物からのお誘いだった。


だから断った。当たり前だ、俺はそんな誰でも良いだなんて言う難破な男ではない。


「分かったわ。じゃあ私帰るわね。」


「え...うん...分かった...」


本当に告白されたのか疑う程の淡白さだった。


ーー「お兄ちゃんマジでバカじゃん!?あの相澤永遠先輩でしょ!?」


「う、うるさいな...仕方ないだろ!?そんな人と付き合えるかよ...」


「はあー...これだから童貞は...」


「童貞言うなっ!!特に妹に言われたくねえよ!!」
      いおん
妹である井坂衣音が茶碗を机に叩きつけた。


「母さん、どう思う!?頭おかしいでしょ、お兄ちゃん!!」


「別に良いんじゃないかしら~?だって好きでも無い相手と簡単に付き合う息子の方が嫌なのだけど...衣音だってそう思ってるでしょう?」


「それは...そうだけどさ...」


流石母さん、衣音を言いくるめた。
だかまあ衣音の言うことも分からんでもない。
相澤永遠と言えばうちの学校で知る人は居ないと言われている才色兼備な少女だ。


成績は高校までカバーできる程だし、運動神経も今から名門高にスカウトされるぐらい優秀だ。
性格も良く顔も美人だ....だからこそ俺は付き合いたくない。


俺自身は何処にでも居るようなただの高校生だ。
運動神経は並みだし、勉強は赤点がギリギリ回避出来る程度。
顔だってイケメンとは言い難く、そのままの意味で普通なのだ。
他人とは違う点と言えばヒーローに異様に憧れて武術を自己流で研究したり、鍛えたりしている事ぐらいだろう。


相澤とは釣り合いが取れないのは明白で、相澤永遠は雲の上の存在。


言ってみれば芸能人の様なフィクション的な物にしか見ていない。


そもそも本当に彼女は俺を好きなのか?
友達間でやる罰ゲームとかじゃないのか?


そんな事が頭を過る。


「やっぱり付き合いなよ?私も鼻が高いし!!」


うちの妹様は利己的である。


ーー。


「よお伊織、おはよ。」


「おう、おはよう。何見てるんだ?」


「相澤さんのブロマイド。」


こいつは朝から何を見とるんだ。


「本人見れば良いんじゃないか?そこに居るし。」


授業のため敢えて一番前の席を陣取る相澤の後ろ姿を眺めながらそう告げると信じられないような顔をして友人の真二が机越しに詰め寄ってくる。


「ばっか、お前!!あんな高嶺の花みたいな人直視できるかよ!?」


そんなもんかね。良く分からん。


「あっそう。ところでさ、これ持ってきたぞ。」


「おっ!!マジでっ!?...くあーっ!!やっぱりこの子最高だよな!!」


「分かるわ。巨乳は正義。」


俺はネットオークションアプリで購入したとあるグラビアアイドル雑誌を広げ、特にお気に入りの緒川楓のページを開いて騒いでいると。
                   しおん 
「妹ちゃんはあんまり胸大きくないよな?紫音さんは巨乳なのに。」


「母さんと妹の事をそんな目で見られると複雑な気分になるから止めろよ。」


「わりいわりい。二人とも美人だからさあ。」


だから止めろと言うとるだろうが。


「何をしているのかしら、伊織くん。」


不意に話しかけられ声のした方を向くが後悔した。


「げっ....」


「あ、相澤さんっ!?どどど、どうしたのっ!?」


狼狽えすぎだろう。少しは落ち着け。


「げっ...とはご挨拶ね、伊織くん。」


「ははは...つい。...なんか用かな?」


「ええ...その本について。」


今更ながらグラビア雑誌を開きっぱなしなのを忘れていたのに気付きパタンと急いで閉じる。


相澤永遠がじろじろと顔に目線を這わせてきているのを感じそっぽを向く。


「そういう娘が好きなのかしら?結構胸...大きかったわね。...ふむう...ねえ、伊織くん。こっち向いてくれる?」


中学三年生思春期真っ盛りな俺は耳まで真っ赤だったが諦める様子の無い視線に耐えかね顔を相澤に向けると。


「私もそれなりに大きいのだけどそんな写真より本物の方が良くないかしら?」


「ぶーーーっ!!」


相澤が俺にだけ見えるようにセーラー服の胸元を指でくいっと広げ谷間を見せびらかしてきた。


余りにも突飛な行動に吹き出すと口から飛び出した唾が彼女の胸元に一滴付着してしまった。


「あっ!!ごめん...なにしてんの...」


「何って...あなたの体液を舐め取ってるのだけど。」


その同級生だと思えない艶かしい所作やいやらしい雰囲気よりも言いたいことがある。


変態だーーー!!この人変態でした!!付き合わなくて正解だった!!


「相澤さーん。お客さんだよー!!」


扉近くで談笑していた女生徒の一人が相澤永遠を呼び出した。


わざわざ俺達のクラスにやって来たその人物を見た女子達がざわめき始める。


学校内で双璧といわれるテニス部部長の姿がそこにあった。


流石はこの中学校を二分する一人だけある、顔を見せただけで女子は蕩け、笑顔を見せれば大歓喜間違いなしだ。


それとは正反対に俺達男子は怒りと嫉妬に渦巻いているが...イケメンはフツメンの敵でしかないから仕方ない。


因みにもう一人は相澤永遠。こちらも例に漏れず男子に大人気だ。


「めんどくさいわね...」


「どうせ告白だろ?付き合ったらどうだ?」


「嫌よ。私が誰を好きか知ってるでしょう?案外意地悪なのね?」


「別に嫌いになっても良いんだぞ。俺はこんな性格なんだ。」


諦めさせるためにわざと嫌みったらしく言ってみたが、それどころか笑みを溢し「それはないわね。嫌いになる所かその逆よ。また伊織くんの知らない一面が知れてうれしいわ。」と言い残しイケメンの元に渋々向かっていった。


それを大人しく見ていた友人がタイミングを見て机に身を乗り出し口を開いた。


「お前らって付き合ってんのか?」


何処をどう見たらそんな結論に至るんだ。殴るぞ。


「付き合ってねぇ。バカ言うな。」


「そうなんか?いつも伊織の事見てたりしてたからよ。てっきり告白されたんじゃねえかと思ったけどよ?ちがうん?」


「は?」


なんだと?見てたっていつからだ?


「なあそれいつから?俺知らないんだけど。」


「伊織は鈍いからなー。他の奴は知らないと思うけどよ、いつもお前の事見てたぜ?あれはたしか~...2年の始めごろじゃないか?」


そんなに前からか?最近好きになった訳じゃなく、ましてや罰ゲームではないと...


本来はドキドキの一つはする所だが俺は一つ思い当たる事があり、聞いてみる。


「なあ...それって学外でもか?」


「あー、そうかもな。たまにお前んちの近くで見たぞ?だから付き合ってんのかと思ったんだよ。」
ちょくちょく背後に感じてた犯人はあいつだったのか....ってそれストーカーじゃねえか!!余計付き合いたくなくなったわ。


「なあ面白そうだから見に行ってみねえ?皆集まってっしよ!」


「....いいぞ。」


イケメン君が振られるのはほぼ間違いないだろうがあの端正な顔から自信を失くすのを想像したらワクワクしてきた。


人混みをかき分け教室の開け放たれた廊下側の窓枠にもたれ掛かる。


見てみるとどうやらベストタイミングだったのか告白する寸前までヒートアップしているっぽい。


ふと相澤と目があった。


手を振るな。お前と関わりたくないんだ。ほらな、皆こっち見ちゃった...勘弁してくれ...


「伊織やっぱ何かあっただろ。」


「まあ...ちょっとな。そんな事よりほら、始まるぞ。」


怪訝な視線を送られていたが無理矢理注目を二人に向ける。


「相澤永遠さん。君の事が好きだ。僕と付き合って欲しい。」


真っ直ぐ相澤を見据えイケメンが意を決し告白した。


自信満々な態度にいらっと来る。まさか自分が振られるなんて考えもしない顔だ。


「ごめんなさい。急に言われても無理です。」


ざまあ...なのだがちょっと待って欲しい。
それ俺が昨日言った台詞じゃねえか。


「え...はは。何かの冗談かな?恥ずかしがらなくても良いんだよ。素直に僕の事が好きだと言ってくれればそれで問題ないからね。」


なんだあいつ。ムカつくな。鼻っ柱へし折ってやりたい。
別に相澤の事が好きな訳じゃあ無いがあの男がただ単に腹立つ。


「そういうのいいから。本当にあなたの事なんかどうでもいいのよ。」


「え!?」


ばっさりいったな。相澤の冷たく言いはなった言葉が本気なのだと理解したのだろう。
途端に焦り始め、野次馬達も付き合うものだと勝手に妄想していたからか騒ぎ始めた。


隣を見ると友人が俺の顔を見てニヤニヤしている。


「なんだよ?」


「べっつに~?」


俺が恋愛関係で悩んでいるのを面白おかしくからかってきたそいつを小突いていると。


「どうしてだい?僕と付き合えないなんて女の子からしたらあり得ないんじゃないかな?そうか...何か悩みがあるんだね?それなら僕に話してくれないかい?力になるよ。」


勘違い奴乙!!的外れにも程があるだろ。


相澤は男から視線を外し、目を瞑り「はあっ」と深く溜め息を吐いた。


「なら協力してくれる?私、井坂伊織くんの事が好きなのだけど、昨日振られてしまって。彼との仲を取り持って。」


「あ、相澤!!お、お前なっ!!....う....」


誰一人例外無く俺に視線が集まる。


テニス部のイケメンくんは顔色が悪くなり、少しふらつく。


「振ったってどういう事?」


「相澤さんから告白したの?」


「何で井坂なんだ?」


等とひそひそ声が耳に入ってきた。
これは不味いぞ。このままでは俺の残り半年の学生生活が幕を閉じかねん。


悶々と対策を考えていると。


「伊織、お前振ったんか?もったいなくね?」


「うるせえ...」


「君が井坂伊織かい?」


イケメンくんが此方に歩んできた。


「そうだけどなんだよ?俺は相澤と付き合うつもりなんて無いぞ。」


「だろうね。君みたいな平凡な男が彼女に見合う筈がないからね。」


うるせえな、その端正な顔へこますぞ。


彼から顔を背け相澤を見ると怒り心頭のご様子だった。


これはいけない。絶対何かやらかすぞ。


俺は窓を飛び越え...


「相澤...何も言うなよ?マジで...お前の言動次第で俺の社会的地位が...」


「伊織にそんなの無いだろ。俺と一緒にバカやってんだからよ。」


友達解消してやろうか。
俺が邪魔するんじゃねえとばかりに睨んでいるとすぐ横を過ぎ去り相澤がイケメンの前まで行くと。


「彼の事をバカにしないで。」


「.....え....あの...」


頬におもいっきりビンタした。
その行動に俺だけでなく、ビンタされた本人に野次馬と全員が固まる。
現実に紅葉マークって出来るんだなぁとまじまじと眺めているととんでもないことを言い並べ始めた。


「見てみなさい!!この顔、癒されるでしょう!?確かに端正な顔つきとは言えないけれど見ていると落ち着くの!それに身体も細すぎず太すぎず抱き枕にしたくなるような体型にうっとりするわ!!」


こいつは何を言い出すんだ...ほら、見てみろよ。皆ドン引きしてますよ?


イケメンくんも心なしか顔が青い。


「この純粋そうな目もいいと思わない!?そう...分からないのね。なら教えて上げるわ!!私はね...彼のその目で視姦されたいし、その口で卑猥な事を囁かれたいわ。」


「待って!!おまっ...何言って!!」


「その可愛らしい耳をはむはむしたいし、その大きな手で身体をまさぐられるのを想像したら...じゅるり...どうしましょう、伊織くん。ちょっと興奮してきたわ?」


「どうしましょう...じゃねえわ!!どうしてくれる、この雰囲気!!バカじゃないのか、お前!!」


すると突然相澤は自分の両肩を抱きしめ身震いし始め、吐息が荒くなり始めた。


「あなたに罵倒されるのって気持ちいいわね。」


助けてください...この変態もう手遅れです...


ふとそこで気づく。今の相澤の変態的行動に忘れてしまっていたが告白されている最中なのを思い出した俺は呆然としているイケメンくんに目線を合わす。


「俺の事は気にしなくていいからさ。どうぞ続きを...」


「け、結構です!!こっちからお断りしまーーーーす!!!」


と言い残し走り去ってしまった。


マジかよ...と思いつつ周りを見渡し押し付けれそうな奴は居ないかと探すがどいつもこいつも目を逸らす。


「ふ、二人の間に入るのはあれじゃない?そうでしょ、男子?」


「お、おう。まあな!邪魔しちゃ悪いし俺達はこれで...」


「なっ!!...おいっ!真二!!お前相澤の事好きなんだろ!?ならっ!!」


「ふっ...親友の恋路を邪魔するほど野暮じゃねえよ...」


そう告げるなり自分の椅子に座ってしまい、空を眺め始めた。


ふっざけんなよ、マジで。お前ら相澤の事が好きだったんじゃねえのか?お前らの愛はその程度なのか?


と、茫然自失としているとなんの脈絡も無く相澤が腰に手を回し抱きついてきた。


「これで邪魔者は消えたわね。それじゃあ心置きなく交際を...」


「断るに決まってんだろがああぁぁあああぁぁ!!!」


俺は相澤を引き剥がし涙を流しながら走り出した。


キーンコーンカーンコーンとホームルームのチャイムが鳴っているにも関わらず走っていた結果。


「井坂、放課後生徒指導室に来い。サボりに風紀を乱した罰、それと廊下を全力疾走した事について指導するからな。」


「.....ごめんなさい...」


運悪くゴリラみたいな生徒指導の教師に捕まりこってり絞られた。









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