異世界転生で貰ったチートがTS魔法少女変身能力でしたがこの世界で頑張るしか無いようです
37 ラケルタだって男の子
「まだまだっすよ!ラケルタの旦那!自分を豚と思うんす!あ、豚知ってます?」
「え?いや、知らないけど...いたあっ!」
「口答えするなっす!ほれほれ、苦しみながら叩かれるのはどうっすか?気持ち良くなってくれば一流の豚...」
「あーちゃん。るーちゃん。どうぞー。」
「はいよー。」
「がってん!」
私の合図にアーミンとルルエナがバットに見立てた気の棒をスイングすると、見事ラビにクリーンヒットした。
「あふうっ!ありがとうございます!」
二人の腕力じゃ大してダメージは与えられないが愉悦に浸らせとけば少なくとも10分は大人しくなるだろう。
「ふい~、これもう何回目?」
「さあ?でもさ、なんか癖になってきた。」
「分かる」
分かるなよ...その扉は開かないで下さい...
私達は特訓の第一段階として広場を貸し切りラケルタの基礎体力を向上させる為、ひとまずは体力トレーニングをする事にした。
最初に行ったのはランニングだ。
ラケルタが広場を私が止めるまで走り込み、ラビがムチを持って遅くなったら叩き、ラビがやりすぎたらアーミンとルルエナがしばくという良く分からないルーティーンになっている。
最初こそはどうかと思ったが意外と良い組み合わせらしく、始めてから既に全周600メートル程の広場外周を60周目に突入していた。
実際のところ1日で身体は出来上がらないのは当たり前なので、このランニングの目的は体幹作りである。
「あの...イオンさん、余り苛めては可哀想な気が...」
「それは無い」
「無いわよ。」
「無いねー。」
「駄目ですよー。そこの害獣にはこの程度当然ですから~。殺されないだけましかとー。」
にこやかにサディスティックな言葉を発したしおんのオーラが黒く淀んでいる。
聖女にあるまじきその発言は問題だと思うが致し方ないかもしれない。
それは勿論ラビにセクハラされた張本人なのだからであり、ある程度は目を瞑ろうと思う。
「はあはあはあ....もう...無理です...限界...休憩させて...下さい...はあはあ」
「駄目だよ。次は腕立てね。」
「ええっ!...うう...分かりました...」
1時間程経ち200周が過ぎた頃流石に限界に達したのか膝から崩れ落ちた。
だがここで休ませようものならこれ以上動けなくなるだろうと続行させる。
「じゃあ...あーちゃん、乗っていいよ。」
「がってん!」
息を切らしながら腕立ての体勢をとるラケルタの背中の上にアーミンがどんっと腰を下ろした。
「おもっ...」
「成長期だからねっ!」
ラケルタの失礼な言葉にアーミンはめげない所か全く気にしない様子で背中をポンポンと叩くとそれを合図にラケルタが腕立てを始めるも。
「ふんっ...うおお....はあはあ...」
あがらなかった。
やはり体力が限界なのかアーミンが実際に重いのか分からないがそれ以上は無理そうなので、ルルエナに選手交代するが。
「んああっ!...んんっ!...アーミン程じゃないけどおも...」
「ああ?なんですって?」
「ひっ!何でもないよ!」
ルルエナの方が背も胸も小さいからか数回成功したが、ルルエナの睨みに怯んだラケルタは涙目になっていた。
「交代...しおーん。」
「はーい。では失礼しまーす。」
「は、はい。よろしくお願いします。」
四つん這いになるラケルタにしおんが乗ると一気に崩れ落ちる。
流石に限界なのだろうかと目を瞑って考えているとしおんが提案してきた。
「お次はイオンさんが乗ってみたらどうでしょうか?この中で一番軽そうですし。」
「だねー。いおちゃん小さいし、色々と。」
「色々って身長の事だけだよね?胸の事は言ってないよね?ねえ!何処見てるのかな!?ちゃんとこっち見て!」
アーミンの言動に精神ダメージを負っているとラケルタが顔を赤くし照れた様子で。
「あ、あの...イオンさんがその...乗るんですか?」
「ん?うん、そうだけど...嫌なら止めるよ?」
「そ、そんな事無いです!よろしくお願いします!」
何故か元気を取り戻し若干興奮気味な様子のラケルタにちょっと引きつつ、彼の肩に手をおいて。
「う、うん。じゃあ乗るね?よっと。」
背中に乗ってみたのだが竜神族はその種属性からか細身といえどもがっちりしており、とても乗り心地が良い。
「では、いきます!」
「はーい。どーぞー。」
先程までとは打って変わってハイペースで何度も上下し始めたのでバランスを崩し彼の首もとに抱きつく形でしがみつくと。
「ごめんごめん。バランス崩しちゃったよ。」
「う...うぅ...うおおおおお!」
「うわっ!」
今日一番の運動量を発揮し始めた。
しかもやたら興奮して...もしかして私に抱きつかれて色々耐えられず煩悩を振り払おうとして一心不乱になっているのかもしれない。
私が同じ立場ならそうなるかもしれないなと男目線で考えているとアーミンとしおんがにまにまとこっちを見ており、ルルエナは膝から崩れ落ち四つん這いになっていた。
「何、二人とも?るーちゃんもどうしたの?」
「あらあら。ふふ、いえいえ何でも御座いませんよ?何でも。ふふっ!」
「ふーん。ラケルタってそうなんだー。でも誰を応援するべきなのかなー。」
「くうっ!他の女なら許せないけど、イオンっちなら...辛いけど...」
私とラケルタは別にそういう関係じゃないのだから止めてもらいたいのだが...
それから腹筋や懸垂など一通り思い付く事を一通り終わらせたのち。
「リキュペレート...どうかな?」
「ありがとうございます。大分楽になりました。明日もよろしくお願いします!」
「うん。...ほら皆起きて!帰るよ!」
既に日を跨いでしまい、いつの間にか寝ていた3人を起こしていく。
「ふあ~!終わったー?」
「じゃあ私帰ってもう一眠りするわ~。」
「ふう...では帰りましょうかー。イオンさんー。」
皆してアクビをしながら起き上がるととぼとぼと歩いていく...すると疲労困憊の筈のラケルタが送ってくと言い出した。
「女の子ばかりですから送っていきます!」
「うーん。ならお願いしようかな?でも送り狼は駄目だよ?」
「わ、分かってますよ!何言ってるんですか!?」
再び顔を火照らせ恥ずかしさから小走りにルルエナ達に駆け寄っていったが、しおんがこちらに向かってきた。
「先帰ってていいよ?」
「一人で帰るのも寂しいでしょうから。それにいくらイオンさんが中性的で、強いからって男性と二人きりにさせるわけにはいきませんから~。」
どうやら私の用事に感づいたらしく、そう告げるなり石造りのベンチに腰を下ろした。
それを見ながら私は近くにある井戸の端にもたれながら、今日1日視線を送っていた人物が展望台に続く坂から降りてきたので声をかけてみる。
「ガレト、どうだった?ラケルタくん今日は随分頑張ってたと思わない?」
「まあな。ただもっと早く出来なかったのかと思うけどな。」
「はは、確かに言えてる...」
ガレトが私の隣にもたれ掛かり、二人して吹き抜ける気持ちの良い風に身を任せていると。
「イオンさん...ラケルタはどんな感じだ?あんたの感想は?」
「なになに?やっぱり友達の事が気になるの?」
「そんなんじゃない...茶化さないでくれ。それとあいつは友達じゃない。」
真剣な顔をした彼の問いかけに私も真剣に返そうとトーンを落とす。
「.....そうだね。やっぱりポテンシャルは凄いね。正直なところ直ぐに根を上げるかと思ってたけど、疲れたと言いながら全部やってのけたんだから。彼は普通じゃないと思う。」
「そうか...やっぱりあいつは...分かった。イオンさん、俺ももう帰るよ。それとあいつに言っといてくれ、負けるつもりはないって。」
それを聞き終わるなりそそくさと立ち去ろうとしているので、私も今日感じた違和感を口にした。
「はいはい、伝えとくよ。...代わりに一つ教えてもらえないかな?」
「ん?...何をだ?」
彼は振り向き怪訝な表情をしている。
「村の人達が言ってた通り私も最初はラケルタくんは弱いんだと思ってた。でも彼と関わって度々見かける異常性...それに今日の訓練で疑問になって段々と確信に変わりつつある....本当にあの子は弱いの?ラケルタくんは本当は....」
「.......」
そこまで言うとガレトは俯きながら渇いた笑いを溢し始めた。
「はは...俺からも一ついいか?何で俺があいつの事をそんなに腹立てていると思う?」
質問に質問で返されて少しムッとしたが、感情を抑え答えることにした。
「まあ...アリアさんを殺してあげなかったこととあの消極的な性格かな?」
それぐらいじゃないかと思ったがどうやら違ったらしく、また笑い声を漏らしつつ壁を殴り付けた。
「違う。全然違う。アリアの事は仕方ねえ事だし、あの性格は...俺のせいでもあるしな....そんなんじゃねえんだ。」
「じゃあ何なの?てっきりそれかと思ってたんだけど。」
「あいつのむかつく所は...誰よりも強い筈なのに昔の事を引きずって努力もしなくなっちまった事だ。そして好きな女から目を背けようとした事もな、俺は...あいつのあんな姿見たくない。あいつはあのままくすぶっていい奴じゃない。」
そうか...そういう事か...
私はまだ分かっていなかったようだ...きっとガレトはラケルタを友達ではなく、ライバルと思っていたんだろう。
だからあれだけ強く当たっていたのだ...昔の彼に戻ってほしくて。
誰よりもラケルタの事を信用しているから...アリアの事を乗り越えてほしいから。
そしてガレトも好きだった筈のアリアを自分の手で殺したいのも彼を遠ざけたのも...きっとラケルタが戦えないのを知っているから...。
どいつもこいつも不器用過ぎるだろ。
そしてそんな彼らにとってのキーは三人の過去なのだろうなと。
「ねえ...聞かせてくれない?ガレトとラケルタくん...それとアリアにあった事。ラケルタくんが今みたいな性格になった理由を。」
そう語りかけるとガレトは最初こそ話したくなさそうに目線をずらし、俯いていたが次第に話す気になったのか、また私の隣に寄りかかった。
「分かった...話すよ。あんたには知っておいて貰うべきだろうからな。あれは今から4年前...シンオ、アーミン、ルルエナとは別行動していて、俺とアリアはあいつを誰にも内緒で英雄と呼んでいた時の事だ。」
そしてガレトは淡々と呟きながら語り始めた。
二人が英雄と呼んだ少年の物語を...
「え?いや、知らないけど...いたあっ!」
「口答えするなっす!ほれほれ、苦しみながら叩かれるのはどうっすか?気持ち良くなってくれば一流の豚...」
「あーちゃん。るーちゃん。どうぞー。」
「はいよー。」
「がってん!」
私の合図にアーミンとルルエナがバットに見立てた気の棒をスイングすると、見事ラビにクリーンヒットした。
「あふうっ!ありがとうございます!」
二人の腕力じゃ大してダメージは与えられないが愉悦に浸らせとけば少なくとも10分は大人しくなるだろう。
「ふい~、これもう何回目?」
「さあ?でもさ、なんか癖になってきた。」
「分かる」
分かるなよ...その扉は開かないで下さい...
私達は特訓の第一段階として広場を貸し切りラケルタの基礎体力を向上させる為、ひとまずは体力トレーニングをする事にした。
最初に行ったのはランニングだ。
ラケルタが広場を私が止めるまで走り込み、ラビがムチを持って遅くなったら叩き、ラビがやりすぎたらアーミンとルルエナがしばくという良く分からないルーティーンになっている。
最初こそはどうかと思ったが意外と良い組み合わせらしく、始めてから既に全周600メートル程の広場外周を60周目に突入していた。
実際のところ1日で身体は出来上がらないのは当たり前なので、このランニングの目的は体幹作りである。
「あの...イオンさん、余り苛めては可哀想な気が...」
「それは無い」
「無いわよ。」
「無いねー。」
「駄目ですよー。そこの害獣にはこの程度当然ですから~。殺されないだけましかとー。」
にこやかにサディスティックな言葉を発したしおんのオーラが黒く淀んでいる。
聖女にあるまじきその発言は問題だと思うが致し方ないかもしれない。
それは勿論ラビにセクハラされた張本人なのだからであり、ある程度は目を瞑ろうと思う。
「はあはあはあ....もう...無理です...限界...休憩させて...下さい...はあはあ」
「駄目だよ。次は腕立てね。」
「ええっ!...うう...分かりました...」
1時間程経ち200周が過ぎた頃流石に限界に達したのか膝から崩れ落ちた。
だがここで休ませようものならこれ以上動けなくなるだろうと続行させる。
「じゃあ...あーちゃん、乗っていいよ。」
「がってん!」
息を切らしながら腕立ての体勢をとるラケルタの背中の上にアーミンがどんっと腰を下ろした。
「おもっ...」
「成長期だからねっ!」
ラケルタの失礼な言葉にアーミンはめげない所か全く気にしない様子で背中をポンポンと叩くとそれを合図にラケルタが腕立てを始めるも。
「ふんっ...うおお....はあはあ...」
あがらなかった。
やはり体力が限界なのかアーミンが実際に重いのか分からないがそれ以上は無理そうなので、ルルエナに選手交代するが。
「んああっ!...んんっ!...アーミン程じゃないけどおも...」
「ああ?なんですって?」
「ひっ!何でもないよ!」
ルルエナの方が背も胸も小さいからか数回成功したが、ルルエナの睨みに怯んだラケルタは涙目になっていた。
「交代...しおーん。」
「はーい。では失礼しまーす。」
「は、はい。よろしくお願いします。」
四つん這いになるラケルタにしおんが乗ると一気に崩れ落ちる。
流石に限界なのだろうかと目を瞑って考えているとしおんが提案してきた。
「お次はイオンさんが乗ってみたらどうでしょうか?この中で一番軽そうですし。」
「だねー。いおちゃん小さいし、色々と。」
「色々って身長の事だけだよね?胸の事は言ってないよね?ねえ!何処見てるのかな!?ちゃんとこっち見て!」
アーミンの言動に精神ダメージを負っているとラケルタが顔を赤くし照れた様子で。
「あ、あの...イオンさんがその...乗るんですか?」
「ん?うん、そうだけど...嫌なら止めるよ?」
「そ、そんな事無いです!よろしくお願いします!」
何故か元気を取り戻し若干興奮気味な様子のラケルタにちょっと引きつつ、彼の肩に手をおいて。
「う、うん。じゃあ乗るね?よっと。」
背中に乗ってみたのだが竜神族はその種属性からか細身といえどもがっちりしており、とても乗り心地が良い。
「では、いきます!」
「はーい。どーぞー。」
先程までとは打って変わってハイペースで何度も上下し始めたのでバランスを崩し彼の首もとに抱きつく形でしがみつくと。
「ごめんごめん。バランス崩しちゃったよ。」
「う...うぅ...うおおおおお!」
「うわっ!」
今日一番の運動量を発揮し始めた。
しかもやたら興奮して...もしかして私に抱きつかれて色々耐えられず煩悩を振り払おうとして一心不乱になっているのかもしれない。
私が同じ立場ならそうなるかもしれないなと男目線で考えているとアーミンとしおんがにまにまとこっちを見ており、ルルエナは膝から崩れ落ち四つん這いになっていた。
「何、二人とも?るーちゃんもどうしたの?」
「あらあら。ふふ、いえいえ何でも御座いませんよ?何でも。ふふっ!」
「ふーん。ラケルタってそうなんだー。でも誰を応援するべきなのかなー。」
「くうっ!他の女なら許せないけど、イオンっちなら...辛いけど...」
私とラケルタは別にそういう関係じゃないのだから止めてもらいたいのだが...
それから腹筋や懸垂など一通り思い付く事を一通り終わらせたのち。
「リキュペレート...どうかな?」
「ありがとうございます。大分楽になりました。明日もよろしくお願いします!」
「うん。...ほら皆起きて!帰るよ!」
既に日を跨いでしまい、いつの間にか寝ていた3人を起こしていく。
「ふあ~!終わったー?」
「じゃあ私帰ってもう一眠りするわ~。」
「ふう...では帰りましょうかー。イオンさんー。」
皆してアクビをしながら起き上がるととぼとぼと歩いていく...すると疲労困憊の筈のラケルタが送ってくと言い出した。
「女の子ばかりですから送っていきます!」
「うーん。ならお願いしようかな?でも送り狼は駄目だよ?」
「わ、分かってますよ!何言ってるんですか!?」
再び顔を火照らせ恥ずかしさから小走りにルルエナ達に駆け寄っていったが、しおんがこちらに向かってきた。
「先帰ってていいよ?」
「一人で帰るのも寂しいでしょうから。それにいくらイオンさんが中性的で、強いからって男性と二人きりにさせるわけにはいきませんから~。」
どうやら私の用事に感づいたらしく、そう告げるなり石造りのベンチに腰を下ろした。
それを見ながら私は近くにある井戸の端にもたれながら、今日1日視線を送っていた人物が展望台に続く坂から降りてきたので声をかけてみる。
「ガレト、どうだった?ラケルタくん今日は随分頑張ってたと思わない?」
「まあな。ただもっと早く出来なかったのかと思うけどな。」
「はは、確かに言えてる...」
ガレトが私の隣にもたれ掛かり、二人して吹き抜ける気持ちの良い風に身を任せていると。
「イオンさん...ラケルタはどんな感じだ?あんたの感想は?」
「なになに?やっぱり友達の事が気になるの?」
「そんなんじゃない...茶化さないでくれ。それとあいつは友達じゃない。」
真剣な顔をした彼の問いかけに私も真剣に返そうとトーンを落とす。
「.....そうだね。やっぱりポテンシャルは凄いね。正直なところ直ぐに根を上げるかと思ってたけど、疲れたと言いながら全部やってのけたんだから。彼は普通じゃないと思う。」
「そうか...やっぱりあいつは...分かった。イオンさん、俺ももう帰るよ。それとあいつに言っといてくれ、負けるつもりはないって。」
それを聞き終わるなりそそくさと立ち去ろうとしているので、私も今日感じた違和感を口にした。
「はいはい、伝えとくよ。...代わりに一つ教えてもらえないかな?」
「ん?...何をだ?」
彼は振り向き怪訝な表情をしている。
「村の人達が言ってた通り私も最初はラケルタくんは弱いんだと思ってた。でも彼と関わって度々見かける異常性...それに今日の訓練で疑問になって段々と確信に変わりつつある....本当にあの子は弱いの?ラケルタくんは本当は....」
「.......」
そこまで言うとガレトは俯きながら渇いた笑いを溢し始めた。
「はは...俺からも一ついいか?何で俺があいつの事をそんなに腹立てていると思う?」
質問に質問で返されて少しムッとしたが、感情を抑え答えることにした。
「まあ...アリアさんを殺してあげなかったこととあの消極的な性格かな?」
それぐらいじゃないかと思ったがどうやら違ったらしく、また笑い声を漏らしつつ壁を殴り付けた。
「違う。全然違う。アリアの事は仕方ねえ事だし、あの性格は...俺のせいでもあるしな....そんなんじゃねえんだ。」
「じゃあ何なの?てっきりそれかと思ってたんだけど。」
「あいつのむかつく所は...誰よりも強い筈なのに昔の事を引きずって努力もしなくなっちまった事だ。そして好きな女から目を背けようとした事もな、俺は...あいつのあんな姿見たくない。あいつはあのままくすぶっていい奴じゃない。」
そうか...そういう事か...
私はまだ分かっていなかったようだ...きっとガレトはラケルタを友達ではなく、ライバルと思っていたんだろう。
だからあれだけ強く当たっていたのだ...昔の彼に戻ってほしくて。
誰よりもラケルタの事を信用しているから...アリアの事を乗り越えてほしいから。
そしてガレトも好きだった筈のアリアを自分の手で殺したいのも彼を遠ざけたのも...きっとラケルタが戦えないのを知っているから...。
どいつもこいつも不器用過ぎるだろ。
そしてそんな彼らにとってのキーは三人の過去なのだろうなと。
「ねえ...聞かせてくれない?ガレトとラケルタくん...それとアリアにあった事。ラケルタくんが今みたいな性格になった理由を。」
そう語りかけるとガレトは最初こそ話したくなさそうに目線をずらし、俯いていたが次第に話す気になったのか、また私の隣に寄りかかった。
「分かった...話すよ。あんたには知っておいて貰うべきだろうからな。あれは今から4年前...シンオ、アーミン、ルルエナとは別行動していて、俺とアリアはあいつを誰にも内緒で英雄と呼んでいた時の事だ。」
そしてガレトは淡々と呟きながら語り始めた。
二人が英雄と呼んだ少年の物語を...
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