異世界転生で貰ったチートがTS魔法少女変身能力でしたがこの世界で頑張るしか無いようです 

ベレット

35 転生者と転移者

「それにしてもお前意外と強いんだな。」


「まあ使い魔っすからね。ご主人のステータスがフィードバックされてるんすよ。」


「へえ....」


顔がへこんでいるラビが頬をポンポンと叩き治している様を見ながらアリアを一瞥する。


取り敢えず気絶しているもののどうしたらいいものかと頭を捻らせるが私が殺すわけにもいかないし、だからといって捕まえておくのは無理だろう。


「どうしたもんかなあ。」


と、ポツリと呟いた時だった。


「うい~、イオンっちどしたの~?皆どこ行ったの~?」


酔っぱらいことルルエナがよろよろと千鳥足で此方に歩んできていた。


「あ...忘れてた。ルーちゃん、あっち行っててくれる?危ないからね?...え...ちょ、何してんの?おおおい!何してんのぉ!?」


「あの人クレイジーっすね。」


私の横をすり抜けアリアの近くまで寄ると。


「あはははは!アリアちょーでっかくなってんじゃん!笑えるー!ひっく!」


急にガンガンとアリアの首筋を蹴り始めた。


あいつはイカれとんのか。


「うああ!やめっ!ちょっと何やって....げぇっ」


止めようと駆け寄った時だった。


白目を剥いていたアリアの眼が動き出し爬虫類独特の金色で縦筋の瞳がギョロっとルルエナを凝視しのそのそと起き上がったのだが。


「ふおおお!アリアおはよー!背中乗せてくれない?」


「このバカー!これだから酔っぱらいはっ!」


ルルエナの眼前まで持ってきていた巨大な下顎をルルエナがポンポンと叩きながらそんな事を笑顔で言っていた。


その行動がアリアの怒りに触れたのか「グルルルル」と喉を鳴らしてルルエナを食べようと口を開いたのを目にし、咄嗟に彼女の腰に手を回し担いで谷の入り口に駆け出す。


「うおおおお!ラビ!何とかしろっ!」


「あはははは!早い早いー!ふーー!」


「お任せあれー!やあああ....あああああ....さっきのでパワーが...がががが....ぎゅむ。」


「ええ.....?」


命令通り果敢に突っ込んでいったラビだったがどうやら先程の自己召喚アンド必殺技でエネルギーを使い果たしてしまったのか、羽が薄くなり羽ばたけなくなるとガリガリガリと地面にめり込んでしまい、そのままアリアに踏みつけられた。


「あははははー!ダサすぎ~!」


「役立たずにも程があるだろーがっ!酔っぱらい、うるさいよっ!ああもうこうなったら!〈フレイムスレイブ〉!」


いつぞやのコンロもとい、炎の魔剣を出現させザザーッと足でブレーキをかけながら振り向き様に握ったそれを地面に突き立てる。


すると、穴が開いた部分から炎の壁が天高くそびえ立つように噴出した。


フレイムスレイブの内包スキル〈ファイアーウォール〉だ。


「グルル....」


魔獣といってもやはり獣...炎が怖いのかその手前で足踏みしている。


「ふううううっ!ひゃああっ!スッゴいね...え...」


「何か急に寝たんですけど。」


その隙に谷の入り口に入り込み、近くにある窪みの中に一瞬で眠りに落ちたルルエナを隠しアリアを通さないように立ちはだかり。


「計画通りにはやっぱりいかないかな...やるしかないか。ごめん。」


誰も聞いていないにも関わらず、謝罪を口にしながら腰を落とし構える。


すると咆哮と共に薄まりかけていた炎の壁を突っ切ってきたアリアが迫ってきていた。


だが私が拳を振ろうとした瞬間驚きの光景を目にし、耳はその場に似つかわしくないものを拾ってしまった。


「あの~、ご無事ですか~?どもどもー。お困りなら手を貸しますよ?」


「え?」


「グルル?」


今まさにやりあおうとしていた私とアリアはその声のした谷の入り口横に顔を向けるとそこにはほんわかした雰囲気の女性がふんわりとした表情で此方を眺めていた。


「だ、誰?っていうか危ないから逃げてほしいんですけど...」


「やはり危ないところでしたかっ!ではでは失礼して。」


魔獣化したアリアですら読める空気を読めないのかとてとてと歩きながら私とアリアの間に立つと、アリアが痺れを切らし村に居そうな村娘ファッションでそうは見ないであろう綺麗な銀髪を三つ編みにした長髪を前に垂らした女性の頭を噛み千切ろうと牙を立てようとしていた。


「あ、危ないっ!」


「お構い無くー。大丈夫ですからー。」


助けようと飛び出した私に振り向き、すっぽり収まったアリアの口の中で微笑みながらそう言うと彼女は身体の周りに半透明な膜を覆わせた。


アリアはそれに構わず噛み砕こうとその球体に噛みつくが、砕けずヒビも入らずそれどころか傷一つ付いていない。


「....嘘だろ...なんだあれ.......!?」


私は言葉を失った。何故なら次の瞬間その膜が広がり始め、半月状になりながら何千キロとある谷を覆い、アリアを森まで押し込んだからだ。


だからといってアリアが諦める筈もなく突進したり、頭突きをしたり、尻尾を叩きつけたりと様々な攻撃をその膜に仕掛けるがびくともしなかった。


その光景に殺さずに済んだと安堵したが、同時に自分と同等かそれ以上の能力に驚きと不安が募り「何者なんだ、あんた...」と口を衝いて出てしまった。


すると彼女は。


「地球から転移してきた聖女の柊しおんと言います!初めましてイオンさん!」


「て...んい...?」


事も無げに私を真っ直ぐに見つめそう言った。





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