異世界転生で貰ったチートがTS魔法少女変身能力でしたがこの世界で頑張るしか無いようです 

ベレット

32 幼なじみ達

着火用の松明をアーミンから手渡された。


「え?なに?」


「今日の主役はいおちゃんだからね。ラケルタを励ましてくれたから。」


別にやりたくない...怪鳥からしても特に理由なく殺した奴に弔われたいとは思わないだろう。


だが私を見つめる竜神族の方々は断わる事をさせてくれなさそうだった。
仕方ないので組み木の目の前まで来たのだが怪鳥の頭らしき部位と目が合った気がして顔を背ける。


「うぅ....や、安らかに眠ってください。お願いします...」


そのまま目線を逸らしたまま組み木の隙間に火のついた松明を潜らせ、敷き詰められた落ち葉に触れさせるとパチパチと音を立てながら少しずつ燃え広がっていった。


私は手をすり合わせ。


「ごめんなさいごめんなさい」


と、何度も呟いていると周囲から厳かな雰囲気で皆が祈りを捧げ始めた。


「森の友よ。お眠りください。」


「安らかに天へ昇れますように。」


それが終わると祈りのポーズだと思われる左こぶしを胸に当てながら目を閉じ黙祷をしていたら突然一人の男がすっとんきょうな声を上げ、驚きの余り肩を震わせた。


「おっしゃああっ!宴会するぞお前らっ!」


「うおおおおっ!」


「いえーーーいっ!」


私以外がいきなり拳を突き上げ雄叫びを上げ始めた。


「え、宴会....?葬式中だよね、今...」


「ああ...まあそうなんだが、竜神族では良くあってな。」


「そうそう!イオンちゃんも楽しんでいってくれよな!」


厳かな雰囲気は何処へやら...既に宴会ムードに突入しつつある場にドン引きしていると、いつの間にか戻ってきていたガレトとシンオが両隣を囲んでいた。


「はあ...何て言うか豪快...」


「だよなー。って事で俺達も折角だから親睦を深めようぜ?イオンちゃん!」


「ちょっ!何すんだ!離して!」


いきなりアホな事を言い出したシンオが私の肩を抱き寄せてきたので振り払おうとしたら。


「いおちゃんに何すんだごらあっ!!」


「ぶふおっ!」


「待て待て待て!俺はまだ何も!」


「まだって言ってる時点で駄目って気付けや!」


両脇に居た二人をアーミンとルルエナがヤクザキックで蹴っ飛ばし、肩幅を狭めて震えていた私の手をとった。
此処で竜神族の真実が一つ明らかになったようだ...女の方が強いらしい。


ーーーーーーー。


アーミンとルルエナに救助され、連れ去られてから約2時間経った頃。


「ぷはーーっ!でさあ、聞いてよイオっち!私はそん時言ったわけ!ラケルタ、あんたアリアを幸せにしなかったら一生許さないからねってさ!言ってやったわよ!そう!言って...やったのよね....うわあああんっ!何でそんな事言ったのよ私~!あああん!」


「ちょっと!くさっ!くさいっ!ルーちゃんちょっと離れて!酒臭い!」


「そのくらい我慢しなさいよー!」


酒を飲み完全に酔っぱらってしまったルルエナに絡まれてしまっていた。
この女しっかりしてそうで案外そうでもないようだ。
三杯目に突入した瞬間、いきなり酒乱になりだし、目は虚ろで顔は紅潮し、何を言ってるのかよく分からなかったがルルエナが絡み酒の泣き上戸なのはよく分かった...


「はあ...しょうがないなー。よっと。」


私が困っているのを見たアーミンがルルエナの背後に回ったと思ったら。


「せい!」


掛け声と共に手刀をルルエナの首に当て気絶させた。


「あーちゃん、凄いね。」


「慣れてるからね。よく暴走するんだよ。」


そう言いながら私から引き剥がしたルルエナを無造作に座っていた大木から下ろし、草木に寝転がした。


私がその様子を観察していると不意に男性に声をかけられた。


「イオンちゃん、隣良いか?」


「あっ、俺も俺もっ!」


「良いですけど触ったら殴りますから。全力で。」


笑顔で握り拳を見せると直ぐ様距離を空けてくれた。


「えー、シンオも居るの?私そいつ嫌いなんだけど。」


「ああ!?何だと!俺だってお前みたいな猫かぶり女御免だね!」


「まーまーまー。確かにシンオは最低軟派男だけど此処に居るくらいはね。」


「イオンちゃんまで酷い!」


アーミンはよっぽどシンオが嫌いなのか終始嫌な顔をしていたが、宥めると私の左隣に腰を下ろした。


するとガレトが徐に口を開くと。


「さっきの話の続きを話そうかと思ってね。」


「さっきの話?」


「ほら。ラケルタと俺達との関係とか。」


「ああっ!」


聞きたかったことなのに今の今まで忘れていた。
私は姿勢を正すと。


「じゃあ聞かせて貰うけどガレト...だけじゃなくて此処に居る皆、ラケルタと関係あるの?」


「まあな...俺達は...」


「俺達皆幼なじみなんだよね。」


先に答えてしまったシンオをガレトが恨みがましく睨んでいる。


私はその言葉に異様に納得出来た...言われてみれば確かに思い当たる節はあるし、この村は年上だらけだから自然と集まったのかもしれない。


だがそこで違和感に直面する。


「なるほどね。ならさ、何でラケルタと今仲悪いの?特にガレトは特に嫌ってない?」


「そ、それは...何て言うか...」


アーミンが言い淀みガレトも口を開かなくなってしまった...もしかしなくてもこの話題はタブーだったんだろうかと思ったが、シンオが空気を読まないお陰で知ることが出来た。


「俺はまあ煮え切らないあいつはムカつくけどガレト程じゃないしな。普通に喋るし...ガレトはアリアの事が好きだったからなー。」


「ちょっと、シンオ!それはガレトが言うべき話でしょ!?」


私はそれでも良かったのだがガレトを想うアーミンの言葉にシンオが萎縮したが、ガレト本人が手でアーミンを抑えた。


「大丈夫だ。元々話すつもりだしな。」


「むう...分かった。」


簡単に引き下がるアーミンを見て閃いた。


ははーん、アーミンもしかしてガレトの事好きなんだな?


ついニヤニヤしてしまったのをアーミンに見られてしまい、彼女は焦って話を逸らし始めた。


「.......!?...ほらほら、ガレト!話するんでしょ!?」


「あ、ああ...まあな...どうしてかって話だよな?」


「うん、まあ。」


ガレトの顔を見ながら頷いていると右腕にツンツンと感触を感じたので振り向いてみると、言わないでと言わんばかりに手を顔の前で合わせながら懇願していたので、こくりこくりと頷くと安堵した様子ではにかんだ。


その間にも話しているガレトの言葉に耳を傾け内容を把握していく。


「まあ好きな女を盗られたからってのもあるが、一番はアリアの最後の願いを聞いたにも関わらず逃げやがった所だろうな...」


「それは....まあ確かに許せないのも分かる気はする...」


「だよな!俺もそう思うぜ!?」


「シンオ、うるさい。」


ガレトがラケルタに対する態度は仕方ない反面どうやってラケルタが討伐するのを認めさせるかが問題だ。
被害を抑えるためにも計画通りに事を進めるためにも諦めて貰わなきゃならない。


「悪いけど一旦整理させて。」


「ああ。分かった。」


ガレトが頷くのを確認し、足を組み、そこに肘をついて考えを巡らせていく。


シンオはとりあえず放っておいて良いだろう。
問題はキーであるアリアだ...アリアはラケルタの事が好き...いや二人は恋人だったと判断できる。


そしてガレトはアリアの事が好きだったがアリアをラケルタに譲った...しかしそこで問題発生。


肝心のアリアが魔獣化し、その変異の間際ラケルタに殺してほしいと頼むも怯えて戦えないラケルタを皆が一旦距離を空け、その間にも努力しない彼をガレトは特に見放し、怒りを感じた。


ラケルタは何もしていないのにと言っていたがそもそも何もしなかったのが根幹であり、恐らくはこれ迄の話を統合するとガレトとラケルタは親友だったのだろう。
だからこそ親友にアリアを明け渡したと思われるが、その決断も余計憤りを感じさせる理由となった。


一通りは分かってきたが此処で問題だ...どうあっても引かないだろうな、ガレトは。


まあだからこその手があるのだが。


「ねえ、ガレト。どうしてもアリア討伐にラケルタくんが行くのは反対?」


「当たり前だ!あんな奴にもう任せておけるかっ!」


全て知った上でそれでもラケルタの肩を持つ私に怒りを感じたのか身を乗りだし叫び散らした。


それを逆手にとり、ある提案をする。


「ならさ、賭けをしない?もし君とラケルタくんが一騎討ちして勝てたなら身を引いてくれないかな?」


「正気か?あいつが俺に勝てたことなんて一度もないんだぞ?それに俺に何のメリットがある?」


当然の反応だろうと思いながらパチパチと燃え盛る炎を目にしながら。


「あるよ。もし君が勝ったらアリア討伐を手伝うよ。君にとってこれ以上魅力な提案あるかな?だってアリアを殺すこと...アリアを殺してあげる事はガレトが一番望む事じゃないかな?」


私は笑みを溢しながらもガレトの目を見据え、大胆不敵に言ってのける。
その言葉に三人が硬直していたが、次第にガレトが大声で笑い始めた。


「くくくくく...ははははは!ったく...分かった。分かった...負けても文句言うなよ?で、どうするんだ?いつやる?」


「そうだなぁ...3日猶予頂戴。その間に私が鍛え上げるから。」


「おいおい、ほんとかよ?」


「面白いね。もしラケルタが勝てたらお祝いしないとねー。」


この中でラケルタが万に一つ勝てると思っているのは私だけだろう、と目を伏せる。
勿論ガレトも同じで、また笑い始め、落ち着きを取り戻すと。


「ははははは!あー、腹いてえな..よし、なら4日後だな。楽しみにしてるよ、イオンちゃん。」


「はは...覚悟しといた方がいいよ。私が見た所彼は化けるから。」


私とガレトは握手をして笑いあった。





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