異世界転生で貰ったチートがTS魔法少女変身能力でしたがこの世界で頑張るしか無いようです 

ベレット

10 先祖返り

何やら世界の根幹に関わる重要な話が急に始まる雰囲気を感じるが、そんな事よりも目の前にある大金の方が怖いのでギルドで保管出来ないか聞いてみる事にした。


「それではこれから魔獣に関する基礎知識から...」


「あっ、そんな事よりも...」


「そんな事!?」


大事な話の腰を折られた事よりも重大な話をそんな事呼ばわりされたのが余程堪えたのか先程までのクールな御姉様は何処かへ成りを潜めてしまったらしく、美人なお顔がひきつっている。
大変怖いがこんな大金持っている方が恐ろしいのですすっと袋を滑らせ。


「お金ってギルドで預かって貰えましたよね?これお願いします。」


「え、ええ...分かりました...お預かりします...ふんっ!」


困惑と憤りの間で感情がせめぎあっているのか眉間をピクピク動かしているが、金貨袋は相当重いらしく力を入れた瞬間今まで保っていた笑顔が消えた。
そして落とさないようにゆっくりと再度ショルダーバックに入れていく様を見て、そんなに重いのなら持ってみれば良かったと感想を頭の中で述べていると息切れしているお姉さんがいい加減にしろと言わんばかりに、影のある作り笑顔を浮かべていた。


「そ・ろ・そ・ろ宜しいですか?」


「は、はい...」


相当怒っているようなのでもう何もしないでおこう。
俺が大人しくしているのを確認し、バックから依頼書と同じ安物の羊皮紙の束を出し、ドサッとテーブルに置いた。
そしてパラパラと捲っていくと『魔獣の生態について』というページに差し掛かるとそこで捲るのを止め見やすいように俺に渡し....。


「今から魔獣の説明をしますね。それでは此処を見てください。」


「えーと、何々...魔獣は現代において存在しておらず、近年確認されている個体は先祖返りとされている。...先祖返りってあれですか?才能のある子孫が初代の身体能力とか容姿とか瓜二つの?」


「はい。良くご存知で...やはり変わった方ですね。いおりさんは。何故それを知ってて他の事を知らないのか...よく分かりませんね。」


また雲行きが怪しくなってきた..。
話を逸らそうと書類を見ていると妙な点に気付き質問する。


「あのー、これなんですけど。俺達人間や亜種族って魔法使えないんですか?」


「ああ、それですか。全員ではありませんが極少数ですね。いおりさんは数少ない使い手かと。」


「何で使えないんです?」


その質問に答えるかの様にある文章をとんとんと叩くので見てみるとこう書いてあった。


「活動する為のエネルギー源が人間種の場合は酸素だが、魔者の場合は空気中にあると思われる魔素を吸い込んで活動エネルギーとして代謝していると考えられている。だがその中でも魔法類を使える者は魔者でも極少数であり、それも今は亡き魔獣のみだと考えられる...か。ん?でもおかしいな...確かギガントゴーレムも魔獣なんですよね?何で生存していたんですか?」


「それは簡単ですよ。魔者が先祖返りした姿が魔獣。簡単に申し上げれば魔獣とは現在の最も優秀な各魔者族の長で魔素の保有量が限界を超えた際に変異した姿だと調べはついています。ギガントゴーレムも調べた所だと同じ時期にゴーレム村の長が姿を眩ましていたらしく、イオンさんの討伐した彼がそうだと判断出来ます。」


何となく魔獣と魔者の先祖返りの関係性は見えてきたがもう1つ気になる事がある。
何故、先祖返りが起こるのだろう。


「どうしてそんな現象が?人間種にもあるんですか?同じことが」


彼女は頬杖をつきながら口を開いた。だがその回答に驚きを隠せなかった。


「いえ、先祖返りは魔者だけです。その理由は魔素を取り込むのが魔者だけなのと、長が一番吸収スピードが早く限界に達するからです。ですが、不思議な事にここ数年なんですよ。この『魔含症』〈まがんしょう〉は...」


「えっ!?そんな急に!?魔獣が居なくなったのはどのくらい前なんですか?」


俺は身を乗りだし顔を近づけると、流石に恥ずかしいのか右に席をずらされてしまった。
だが、そんな事にショックを感じている場合ではない。それだと時間的な面でも勿論あり得ないが、そもそも魔素の保有スピードが幾ら早くとも簡単に限界に達する物なのか?それだと人間も空気を取り込みすぎて破裂する気がする...
だが俺の問いかけに答えたお姉さんの言葉にそれ以上何も言えなくなった。


「魔獣が居なくなったのは今から200年も前の事です。」


「そ...うですか...」


その間に魔獣が出現していないのは明らかにおかしい気はするがその理由なぞ検討もつかず言葉を詰まらせていると...。


「ん?あれは...さっきの奴らじゃ無いですか?何をそんなに急いでるんだろう...」


「さあ...また馬鹿な事でもしているのでは?」


どうやら俺に対する仕打ちが気に食わないのか何時にも増して言い方が冷たい気がする。
だが先程目の前でいた同じ人物とは思えないあの“二人”が気になりアナライズを用い調べてみる。


「やっぱり何かあったのか?絶対あの感情は変だろ。」


「え?」


お姉さんが驚くのも無理は無いだろう。アナライズはレベルや能力値は当然の事、実はこれかなり有用で文字は理解できるわ、足跡を追えるわで使い勝手が非常に良い。
特に今の状況には最適だ。


「これは...焦り...疲労感、後悔?それと...恐怖か?だけど一体何に?」


「どうしたんですか?いおりさん。」


現状に理解出来ずキョトンとしているお姉さんをひとまず置いて、俺は目を閉じ聴覚に全神経を研ぎ棲ませパッシブスキル聞き取りの範囲を拡大する。
すると、かなりまずい状況を理解し店を飛び出してしまっていた。


「すいません!ちょっと行ってきます!」


「待ちなさい!何が何なのか分かりませんけどイオンさんは彼女達に関わるべきじゃっ!」


「それはそうですけど、俺の好きなヒーローは嫌いな相手だって助けるんです!それじゃあ!」


それを最後にイオンがシャンテの居ない取り巻き二人に近づいて話し掛ける様を見ていたギルドの受付のアルテナは「もう!君の為に言っているのにっ!すいません、店員さん!特大クリームシフォンケーキ1つ!」とストレスと心配からか注文したそれをどか食いし始めた。


「そもそもヒーローって何なのよ!意味わからないわっ!もう!」


急いで食べて行き先を確認すると頃合いを見て騎士団本部に出向き応援を要請するのだった。

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