異世界転生で貰ったチートがTS魔法少女変身能力でしたがこの世界で頑張るしか無いようです 

ベレット

2 格闘系魔法少女イオン

「まずは自己紹介からしませんか?私はアルル共和国のルーミアの街にある屋敷に住んでいる[スフィア・ルーミア]といいます。一応街を治めている貴族の一族です。」


前触れ無くスフィアが自己紹介をし始めたので豪華ではない普通の馬車に揺られながら俺達も名乗ることにした。


「私はエルフのリンスと言います。以後お見知りおきを。普段はルーミアの街で広報活動や宣伝、商品製作や販売をしております。いおりさんがギルドの依頼をこなす場合はお手伝いする事もありますね。」


「じゃあ、次は俺だな。いおりだ、よろしくな。それと...」


いおりは魔方陣を胸元に展開させ、それに右腕を突っ込むと魔法少女お約束の光を纏いながら性転換しつつ、魔法少女イオンの正装に様変わりさせ...


「この姿の時がイオンね?そう呼んでくれ。」


「わっ!本当に姿だけでなく、性別まで...ルーミアの街の皆さんの間では有名な話でしたが、本当だったんですね!」


スフィアが興奮気味にイオンの身体を上から下へとまじまじと見ている。
流石に少し恥ずかしいものがあり...


「そんなに見ないでくれないかな?ちょっと恥ずかしい...」


「あっ、すいません!可愛くて!」


最近はイオンになるのにも慣れてきてはいるが可愛いと言われると少々むず痒い。
顔を恥ずかしさの余りに赤らめていると急に馬車が止まり、御者のおじさんが声を上げた。


「済まねえ、止まるぞ!悪い、いおりの旦那...いや、今はイオンの嬢ちゃんだったか。前を見てくれ。」


既に顔馴染みになりつつあるおじさんにそう告げられ、御者台まで移動し、前方を見るとそこにはゴブリンの群れが馬車を囲もうとしていた。


「アナライズ」


そう発するとレベル20で習得した対象を調べる魔法でゴブリンの集団にスキルを使用すると、レベル12と表示されていた。


数は16体程度でこれなら問題無いだろうと馬車から降りる。
因みに護衛などは連れて来ていないらしく、本当にイオンの力を見たいだけらしい。


「ちょっと行ってくるからそこで大人しくしててくれ。」


「はい!拝見させて貰いますねっ!」


目を輝かせながら御者台のすぐ後ろに移動してそう告げたスフィアを尻目に、リンスは興味無さげに今回の営業用のアイテムを業務用ハンカチで拭いていた。


副業の時以外はいつもそんな感じなので無視してゴブリンどもに向き直る。


そしてクラウチングスタートの姿勢をとり、右足で地面を蹴り上げ「はっ!」と声を上げると地面が抉られ、イオンは一瞬にして先頭にいた一体のゴブリンに接近していた。


「グギャギャギャッ!そんな細腕で俺達と戦うのかよっ!」


この世界に来て驚いた事がある...この世界のモンスターは...喋るのである。
動物型であろうともだ...衝撃を最初こそ禁じ得なかったが最近では慣れてきてしまった。なんとモンスター個々の村までありモンスターと言えども生物には変わらないようだ。


だが、襲ってくるのなら手加減しないとイオンは拳でゴブリンの顔面を殴り付ける。


「うっさいわっ!魔法少女なめんなっ!」


「ぷぎっ!」


その小さな断末魔と共に頭を吹っ飛ばされたゴブリンが地面に肉体を崩れ落ちさせると、それを見た他のゴブリンが戦々恐々としている。


「ひいっ!人間の女の癖になんてパワーなんだっ!可愛いのに!あんなに可愛いのにっ!」


「でもボスっ!あの女物に出来たらすげえ強い子供生ませられるんじゃないっすか!?」


「そうだ、そうだっ!俺達は性癖の使者ゴブリンだぜっ!女に好き勝手させるかよっ!」


恐れ戦いていたゴブリンどもがその一体のゴブリンが言い放った言葉に反応し、俺の身体をねぶるように目線を這わせ、涎を垂らしていた。
俺はその様子に全身の毛が逆立ち、寒気を感じ、世の女性は男からこんな視線を感じているのを男目線から申し訳なさを感じた。
それにしても気持ち悪い...こんな奴らに犯されるなんて真っ平ごめんだ。


「ひいっ!きっ、きもいっつーのっ!!もう容赦しないからなっ!」


「やっちまえーーっ!犯せ、犯せーーっ!」


イオンは黄色い声でそう叫びながら襲いかかるゴブリンを一体一体一撃の元に葬り去っていく。
いおりの状態でも戦えなくはないが、いおりだとパラメーター通りの力しか発揮できないので、人間相手の喧嘩ぐらいにしか用途がないが、魔法少女形態だと某女児アニメの初期キャラ並みに強く、体術はあれを基本としている。


パンチやキックは勿論強力なのだが、ほ〇かのよく使っていた、かかと落としが非常に良く利き当てた瞬間衝撃波で、まるでスーパーさい〇じ〇の様に小石を浮かせて爽快だ。


「はっ!てやっ!ふんっ!」


「ぎゃああああっ!」


既に半分程始末し、一気に決めようとスキルを発動させる。


「フレイムスレイ!」


今やMPが30あるので問題なく発動させたそれは、左手の甲に魔法陣が浮かび上がり、そこから炎の刀剣を形成する。
そしてそれを一気に横薙ぎに振ると...


「てやあっ!」


「ぐぎいっ!」 


大した叫び声も上げず一体を残し7体のゴブリンを燃やし尽くした。


その圧倒的戦力差に恐れを抱きリーダーと思われる鉢巻きをした小型のゴブリンが逃げようと踵を返すのを発見し...


「逃がすかあっ!!とうっ!」


「ぎゃああああっ!もう許してくれぇっ!」


「許すかっ!世界中の女の子の代わりにてめえをぶっ殺す!」


そう宣言したイオンは空高くにバク転し、空中に制止した刹那「イオン特製スペシャルキーーックっ!!」と叫びながらアクティブスキル〈クロックスピアーMP14〉を使うと、一瞬にして空中からゴブリンが逃げる先に変身ヒーローの如く手を着きながら、ザザーッと着地し、ゴブリンの方を向き。


「残念だったね。逃がすわけないだろ?」


「ぐきゃあああっ!」


と、ゴブリンが叫び血を口から吐き出すと、腹に風穴を空けられていた。


〈クロックスピアー〉とは言ってみれば少し前の仮面変身ヒーローの必殺技に似たスキルである。
飛び上がり、右足を突き出しながら超高速で飛び蹴りをかます所謂ネタ技で発動条件も使い所も難しい。
だとしてもカッコいい技だし、威力は申し分ないのでたまに決め技として使っている。


ゆっくりと立ちあがり、背中で勝利を語るようにカッコつけている最中『ててーん』とレベルアップの音が聞こえ、自分以外には見えないステータス画面が表示された。


今の戦闘でレベルが21に上がったらしく、いおりのステータスも〈力 21 魔法 10  早さ32〉と出ており、スキルも発現したみたいだ。


〈パッシブスキル 火炎無効 アクティブスキル リキュペレートMP10 範囲拡大30〉


珍しく回復魔法を手にいれたらしい。


(使い所無いんだけど...修復スキルあるし...あっ、でも範囲拡大って書いてあるな。なら俺以外にも効くのかも。)


あまりあって欲しくは無いのだがこの世界は日本の様に弱者を間接的でも守ってくれる世界じゃない。
弱者は喰われ、強者が貪り喰う世界なのだ。
だからこそいおりは平和に過ごしてきた日本人として見てみぬ振りはしたくないと常々感じていた。


改めて異世界の不条理さを考えていると、「イオンさーん!凄く強いですっ!カッコ良かったです!はあー...やっぱり冒険者って憧れますねぇ~」と、がらがらと音を発てながらゆっくり近づいてくる馬車の窓枠から顔を出していたスフィアが感慨深く言っていた。


(スフィアは冒険者に興味があるのか?)


彼女の発言に違和感を覚えていたのだがリンスに「早く乗ってください。行きますよ?」と催促されたので仕方なく考えもそこそこにし、馬車に乗り込んだ。


「じゃあ行くぞ?イオンちゃん助かったぜ。そこに置いてある菓子パンでも食っててくれ。」


「どーもー。」


そう返事をしコッペパンを口に運んでいると...


「変身解かないんですか?」


不思議そうな表情でスフィアが問いかけてくるがそう思うのも仕方ないと、「街の外の人達は俺の体質しらないからさ。あんまり驚かせたくないからさ」等と適当に言い並べると「なるほど、なるほど。」と納得してくれたようだ。


実際の所は正体隠した方がカッコ良くない?という理由が半分、もう半分はバレたら変態呼ばわりされるのでは?と猜疑心に苛まれ、それが元で正体を隠しているだけである。


何はともあれゴブリン退治も終わった事でようやく馬車も動き出し、鉱山へと再出発する中、世間話に花を咲かせていた。


だが、その同時刻の鉱山ではいおり一行が予想もしていない危機的状況になりつつあった。


「な、何でこいつがこんな所に!」


「ただのゴーレムじゃなかったのかよっ!」


「冗談じゃないぞ...」


ある冒険者パーティーが依頼の帰りの際に立ち寄った鉱山で騒ぎを聞きつけ駆けつけたものの其処に居た存在に太刀打ち出来ず、次第に鉱員共々窮地に追いやられていた。


いおりの言うモンスター...魔物のみが罹る病がある。
それを発症した魔物は変異し精神異常をきたし、獣のようになることからこう呼ばれた。


「どうしてギガントゴーレムが...魔獣が居やがるっ!」







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