苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件
重犯罪者が潜むの件
出発の少し前。
俺は村の修繕がどの程度進んでいるか気になり、グルカン爺の居る正門までやってきたのだが、そこで見たものに目を丸くした。
「なんだこれ....」
「すごいですぅ」
村に連れてきてたった1日程度だ。
本来ならあり得ないだろう。
「門が直ってやがる...」
しかもただ直しただけではない。
明らかに前より頑丈な造りになっている。
ベースとなる木材で出来ていた部分は何重にも重ねられ、強度を増すため鉄でパーツ毎に分けられ、手法は分からないが鉄同士を溶接したかのようになっている。
こんな辺境にはもったいない程の技術に圧倒されていると柵...というか城壁のようなものを造っている2人が俺に気付き、作業を中断し話しかけてきた。
「よお、坊主。様子見か?」
「あ、ああ。そうなんだが...もう門完成したのか?早い気がするが」
「そうか?まあドミノからしたら朝飯前よ!」
まるで自分の事の様に喜ぶグルカン爺だが違和感を覚える。
何故衣服が汚れていないのだろうか?
「それは親父がもう大工が出来る身体じゃねえからだ」
小降りのハンマーをくるくる手元で回転させているドミノがそう告げてきた。
「どういう意味だ?出来ないって」
「そのまんまの意味じゃ。わしはもう身体がうまく動かん。じゃからアドバイザーという立場な訳じゃな」
なるほどな、合点が行った。
あの時、仕事を渋ったのはそれが理由か。
それなら致し方ないだろう。
「それはそうと、旦那。どうだ、門は?一応景観を維持しつつ、強度を上げてみたんだが」
門を見上げ率直に感想を言う。
「どうもなにも完璧だと思うが。素人だからいまいち分からんが。」
余程嬉しかったのかいつも仏頂面な幼女の顔に笑みが溢れた。
「幼女とか言ったら殺すからな」
「お、おう...」
「はわわわわ」
「そんで、何か意見はあるか?こうしてほしいとか」
「そうだな...」
この間の戦いで思ったがあれだけの数が来ると一人一人倒すのは面倒だし、なによりミスティーの戦いかたでは不利だ。
持てる矢には限界があるし、あいつの持ち味がなかなか生きないだろう。
そこで村の四墨に目線を移し。
「弓とか火炎瓶とか投げれる高台とか作れるか?」
と、告げるとドミノが目を輝かせた。
「あったり前だろぉ!まっかせとけ!」
腕をパンっと叩き自信満々に嬉々として言いはなったドミノが不気味な笑みを浮かべつつ「あれ試してみるか...」と呟いており、余計なことをしないと良いんだがとその場を去った。
トリスリアの居る村外へ向かう途中ミスティーを見つけ話しかける。
「ミスティー、トトの家の前でどうした?」
「ん...帰ってくるかもだから」
「そうか...」
体操座りで扉にもたれ掛かっているミスティーの隣に腰掛け、顔色を窺う。
あまり体調が良くないのかもしれない。
「心配か?」
「ん。....でもそれだけじゃない...あの時、私余り役に立たなかった」
「そんなことは無いだろう?戦えない人を守るためギルドで迎撃してたじゃないか」
実はあの闘いの時、ミスティーはギルドに籠り、アルと一緒に村民を守っていた。
彼女もまたこの村の住人で大切に想う気持ちを感じられ俺まで嬉しくなる。
「お前は良くやってるぞ。」
「パパ...」
ポンポンと頭を優しく叩くと無表情のまま俺の目を見つめてきた。
それに耐えきれなく立ち上がる。
「ミスティー、俺は今から首長国へ行く。ここは頼んだぞ」
「え?どうして?」
「医者を探してくる。」
「じゃあ私も」
ミスティーは立ち上がり共に行こうとするが、俺は首を横に振り、彼女の肩に手を置き座らせた。
「お前はトトを待っててやれ。帰ってきたときお前に会えたら喜ぶだろ?」
「......ん、分かった...」
「....よし、なら行ってくる。またな、ミスティー」
「うん。パパ頑張ってね」
分かりづらいが多少顔に生気が戻ったのが感じられたことで安堵し手を振り合い別れを告げた。
ーー「こんなところで降りやんして、良かろうか?」
「良いに決まってるだろ。帝都の時の二の舞は出来ん。侵略と思われたくないわ」
「何したの、一体」
帝都でのやらかしたことを思いだし、トリスリアの鱗に汗が滲む。
ここは首長国の首都、メリザリンの郊外。
そこに降り立って貰いここからは徒歩でとなった。
理由は勿論、トリスリアのせいで物的被害を出したくないからだ。
「それではわたくしは帰りあるけれど、本当に良き?」
「ああ、なるべく早く村に戻ってくれ。直ぐには攻めてこないと思うが報復に来るのは間違いないからな」
「そうだわね、ならもう行きなんわ」
「じゃあな、なるべく早く帰るから」
別れの挨拶を終えるとトリスリアは共和国方面の海へと飛び去っていった。
首長国は部族が治める国。
国土が広く、人の数は世界一だろう。
だが、住みやすいかと言ったらそうでもない。
何故なら国土の半分が砂漠だからだ。
そこを俺とルーシェは借りた大蜥蜴に股がり横断している。
「これからどうするんだ?」
問いかけるとルーシェはイスタンブールの様な街並みで中央にインドに有りそうな宮殿が建っているメリザリンという首長国最大の都市を指差す。
「メリザリンで情報収集かな。」
「なら、まずはギルドに行かないか?ちょっとしたツテがある。」
「へえ、もしかして来たことあるの?」
「ああ、ガキの頃な。そういえば医者ってどんな奴だ?」
今後の方針を決めようとした矢先、遠くから猛スピードで蜥蜴がこちら目掛けて掛けてきており、その集団が俺達の前で止まった。
「貴公らは旅人か?」
「ああ、そうだが...」
まじまじと見てくる蜥蜴に股がったリーダー格らしき民謡服に身を包んだ男が問いかけながら一枚の紙を差し出してきた。
いぶかしみながらも視線を落とし、紙を見る。
「重犯罪者、リリ・アーシュ....!?」
アーシュの名が入っており俺は動揺を隠せなかった。
それを男に見抜かれてしまったみたいだ。
「貴公...もしや知っておるのか!」
「いや、知らないな。こんなフード姿の奴は...」
フードで知ってるのはシャスティぐらいしか知らない。
「む...そうか...」
そうは言うもののまだ怪しまれているみたいだ。
「本当に知らないのだな?名も知らんと」
「いや、無いな。初めて聞く名だ。」
男は俺の目を見つめ、虚偽はないと納得すると仲間に合図を送った。
「済まなかったな、旅人よ。旅の安寧を祈る」
「ああ、そっちも」
「それとこのリリアーシュには近づかない事だ。見つけたら宮殿まで報告してくれ。では!」
けたたましく言葉を連ねると、砂煙を上げメリザリンへと向かっていった。
「なんだったんだ...」 
「......」
もう一度視線を落とすとそこにはこう書かれていた。
罪状、大量殺人....と。
ーーそれから特に何も起こらず、砂漠を横断した俺達は無事メリザリンへと辿り着いたが、着いた頃にはもう夜更けで、今日は宿へ泊まり、明日ギルドに行く手筈となった。
「それにしても本当に同じ部屋で良かったのか?」
「うん。勿論」
「いや、男女が同室は流石にどうかと思うが」
「いいの!私が良いって言ってるんだから!」
頑固なルーシェに諦めを感じ夜空を見上げながら問いかける。
「この国に来た本当の目的はなんなんだ?」
「えー、なにそれー」
向き直り真剣な表情を見せると、本気だと理解したのか押し黙った。
すると月明かりに照らされた彼女の口元が妖艶に微笑み、俺の腕をさする。
「んー、そうだなー。どうしても欲しいものがあるからかなぁ?村に居たら手に入らない...ね」
そしてルーシェは俺の頬に触れ顔を近づけて来ている刹那、街中で轟音が轟いた。
「なんだ!?...爆発か?」
「むー、タイミング悪いなぁ」
窓から身を乗り出して外を見るとある地点にある屋敷が音を立てて崩れ去った。
「行くぞ!ルーシェ!」
「えー!放っとこうよー!」
「そんな訳にいくか!怪我人が居たらどうするんだ!」
「はあ~、ほんとにお人好しだなぁ、お兄さんは~。まあそこも良いんだけど...」
俺とルーシェは宿を飛び出し、砂煙の昇る場所に急いで向かう。
俺は村の修繕がどの程度進んでいるか気になり、グルカン爺の居る正門までやってきたのだが、そこで見たものに目を丸くした。
「なんだこれ....」
「すごいですぅ」
村に連れてきてたった1日程度だ。
本来ならあり得ないだろう。
「門が直ってやがる...」
しかもただ直しただけではない。
明らかに前より頑丈な造りになっている。
ベースとなる木材で出来ていた部分は何重にも重ねられ、強度を増すため鉄でパーツ毎に分けられ、手法は分からないが鉄同士を溶接したかのようになっている。
こんな辺境にはもったいない程の技術に圧倒されていると柵...というか城壁のようなものを造っている2人が俺に気付き、作業を中断し話しかけてきた。
「よお、坊主。様子見か?」
「あ、ああ。そうなんだが...もう門完成したのか?早い気がするが」
「そうか?まあドミノからしたら朝飯前よ!」
まるで自分の事の様に喜ぶグルカン爺だが違和感を覚える。
何故衣服が汚れていないのだろうか?
「それは親父がもう大工が出来る身体じゃねえからだ」
小降りのハンマーをくるくる手元で回転させているドミノがそう告げてきた。
「どういう意味だ?出来ないって」
「そのまんまの意味じゃ。わしはもう身体がうまく動かん。じゃからアドバイザーという立場な訳じゃな」
なるほどな、合点が行った。
あの時、仕事を渋ったのはそれが理由か。
それなら致し方ないだろう。
「それはそうと、旦那。どうだ、門は?一応景観を維持しつつ、強度を上げてみたんだが」
門を見上げ率直に感想を言う。
「どうもなにも完璧だと思うが。素人だからいまいち分からんが。」
余程嬉しかったのかいつも仏頂面な幼女の顔に笑みが溢れた。
「幼女とか言ったら殺すからな」
「お、おう...」
「はわわわわ」
「そんで、何か意見はあるか?こうしてほしいとか」
「そうだな...」
この間の戦いで思ったがあれだけの数が来ると一人一人倒すのは面倒だし、なによりミスティーの戦いかたでは不利だ。
持てる矢には限界があるし、あいつの持ち味がなかなか生きないだろう。
そこで村の四墨に目線を移し。
「弓とか火炎瓶とか投げれる高台とか作れるか?」
と、告げるとドミノが目を輝かせた。
「あったり前だろぉ!まっかせとけ!」
腕をパンっと叩き自信満々に嬉々として言いはなったドミノが不気味な笑みを浮かべつつ「あれ試してみるか...」と呟いており、余計なことをしないと良いんだがとその場を去った。
トリスリアの居る村外へ向かう途中ミスティーを見つけ話しかける。
「ミスティー、トトの家の前でどうした?」
「ん...帰ってくるかもだから」
「そうか...」
体操座りで扉にもたれ掛かっているミスティーの隣に腰掛け、顔色を窺う。
あまり体調が良くないのかもしれない。
「心配か?」
「ん。....でもそれだけじゃない...あの時、私余り役に立たなかった」
「そんなことは無いだろう?戦えない人を守るためギルドで迎撃してたじゃないか」
実はあの闘いの時、ミスティーはギルドに籠り、アルと一緒に村民を守っていた。
彼女もまたこの村の住人で大切に想う気持ちを感じられ俺まで嬉しくなる。
「お前は良くやってるぞ。」
「パパ...」
ポンポンと頭を優しく叩くと無表情のまま俺の目を見つめてきた。
それに耐えきれなく立ち上がる。
「ミスティー、俺は今から首長国へ行く。ここは頼んだぞ」
「え?どうして?」
「医者を探してくる。」
「じゃあ私も」
ミスティーは立ち上がり共に行こうとするが、俺は首を横に振り、彼女の肩に手を置き座らせた。
「お前はトトを待っててやれ。帰ってきたときお前に会えたら喜ぶだろ?」
「......ん、分かった...」
「....よし、なら行ってくる。またな、ミスティー」
「うん。パパ頑張ってね」
分かりづらいが多少顔に生気が戻ったのが感じられたことで安堵し手を振り合い別れを告げた。
ーー「こんなところで降りやんして、良かろうか?」
「良いに決まってるだろ。帝都の時の二の舞は出来ん。侵略と思われたくないわ」
「何したの、一体」
帝都でのやらかしたことを思いだし、トリスリアの鱗に汗が滲む。
ここは首長国の首都、メリザリンの郊外。
そこに降り立って貰いここからは徒歩でとなった。
理由は勿論、トリスリアのせいで物的被害を出したくないからだ。
「それではわたくしは帰りあるけれど、本当に良き?」
「ああ、なるべく早く村に戻ってくれ。直ぐには攻めてこないと思うが報復に来るのは間違いないからな」
「そうだわね、ならもう行きなんわ」
「じゃあな、なるべく早く帰るから」
別れの挨拶を終えるとトリスリアは共和国方面の海へと飛び去っていった。
首長国は部族が治める国。
国土が広く、人の数は世界一だろう。
だが、住みやすいかと言ったらそうでもない。
何故なら国土の半分が砂漠だからだ。
そこを俺とルーシェは借りた大蜥蜴に股がり横断している。
「これからどうするんだ?」
問いかけるとルーシェはイスタンブールの様な街並みで中央にインドに有りそうな宮殿が建っているメリザリンという首長国最大の都市を指差す。
「メリザリンで情報収集かな。」
「なら、まずはギルドに行かないか?ちょっとしたツテがある。」
「へえ、もしかして来たことあるの?」
「ああ、ガキの頃な。そういえば医者ってどんな奴だ?」
今後の方針を決めようとした矢先、遠くから猛スピードで蜥蜴がこちら目掛けて掛けてきており、その集団が俺達の前で止まった。
「貴公らは旅人か?」
「ああ、そうだが...」
まじまじと見てくる蜥蜴に股がったリーダー格らしき民謡服に身を包んだ男が問いかけながら一枚の紙を差し出してきた。
いぶかしみながらも視線を落とし、紙を見る。
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アーシュの名が入っており俺は動揺を隠せなかった。
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「いや、知らないな。こんなフード姿の奴は...」
フードで知ってるのはシャスティぐらいしか知らない。
「む...そうか...」
そうは言うもののまだ怪しまれているみたいだ。
「本当に知らないのだな?名も知らんと」
「いや、無いな。初めて聞く名だ。」
男は俺の目を見つめ、虚偽はないと納得すると仲間に合図を送った。
「済まなかったな、旅人よ。旅の安寧を祈る」
「ああ、そっちも」
「それとこのリリアーシュには近づかない事だ。見つけたら宮殿まで報告してくれ。では!」
けたたましく言葉を連ねると、砂煙を上げメリザリンへと向かっていった。
「なんだったんだ...」 
「......」
もう一度視線を落とすとそこにはこう書かれていた。
罪状、大量殺人....と。
ーーそれから特に何も起こらず、砂漠を横断した俺達は無事メリザリンへと辿り着いたが、着いた頃にはもう夜更けで、今日は宿へ泊まり、明日ギルドに行く手筈となった。
「それにしても本当に同じ部屋で良かったのか?」
「うん。勿論」
「いや、男女が同室は流石にどうかと思うが」
「いいの!私が良いって言ってるんだから!」
頑固なルーシェに諦めを感じ夜空を見上げながら問いかける。
「この国に来た本当の目的はなんなんだ?」
「えー、なにそれー」
向き直り真剣な表情を見せると、本気だと理解したのか押し黙った。
すると月明かりに照らされた彼女の口元が妖艶に微笑み、俺の腕をさする。
「んー、そうだなー。どうしても欲しいものがあるからかなぁ?村に居たら手に入らない...ね」
そしてルーシェは俺の頬に触れ顔を近づけて来ている刹那、街中で轟音が轟いた。
「なんだ!?...爆発か?」
「むー、タイミング悪いなぁ」
窓から身を乗り出して外を見るとある地点にある屋敷が音を立てて崩れ去った。
「行くぞ!ルーシェ!」
「えー!放っとこうよー!」
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