苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件
海賊出没の件
共和国の西側、アルザス村から馬を走らせ夜中中走りようやくたどり着いたこの港。
共和国が瓦解したからか、既にほとんど機能していなく定期便が1日三便出ているだけの寂しい港だ。
時間も気にして出たし、大丈夫だろうと思っていたのだが、違う問題に直面してしまったようだ。
「どうだった?ロゼ」
「うん、何でも海賊が近海に出たから出港するか迷ってるみたい」
「どうしますかぁ?ご主人様ぁ?」
海賊か...その程度ならなんとかなるだろう。
「ロゼ、船長の所まで案内してくれ」
「うん。こっちだよ」
俺の手を引いていくロゼはこんな状況なのに楽しそうに微笑んでいる。
「どうした、何がそんなに楽しいんだ?」
「ん?ふふ...だってまさか本当に夫婦みたいにハネムーンみたいな事出来るなんて夢にも思ってなかったから」
「あれぇ?お二人って夫婦なんですよねぇ?旅行くらい行ったこと無いんですかぁ?」
しまったとロゼと顔を見合わせると彼女も同じだったのか慌てていた。
「いや、まあ...い、忙しくてな!おっ、そろそろ着いたんじゃないか!?」
「そ、そうだね!すいませーん、船長さーん!」
「う~ん...なんか怪しいですぅ」
つい雑に話題を逸らしたせいで余計疑われた気がしないでもないが、これ以上ボロを出すわけにはいかないと、フェニアから目を逸らす。
その先には妙齢のアゴヒゲの海の男らしい男性が立っていた。
「どうかしたかね?出港はまだ出来んが」
「ああ、分かってる。分かってはいるが何とかならないか?急いでいてな」
「無理だと言ったろう。海賊が出没しておるのだ。しかもあのクリード海賊団だぞ?」
「クリード海賊団か...」
有名な海賊だ。
何度も軍艦を襲っては勝利をもぎ取っている海賊らしいと王都で聞いたことがある。
だが俺とロゼなら問題ない筈だ。
「それなら何とかなる。だから出港してくれ」
「だから無理だと言っとるだろう!お前達だけなら良いがわしは船におる船員の命を預かっておるのだ!」
どうしても譲る気はない船長に対し威嚇するように腕を組み睨み付ける。
「な、なんだ!そんな眼をしても無駄だ!」
「預かっているのは船員の命だけでは無いだろう?この船は回遊船だ。つまり積み荷...しかも共和国で積み込んだ...な」
「!?」
「それを届けないとあんたの立場危ういんじゃないか?ああ、最悪あんたの家族もな。奴らの耳に入りでもしたら余計に...だろ?」
それだけ脅すと少し考え「少し待て」とだけ告げると船員の元へと向かっていった。
「うわぁ、ご主人様あくどいですぅ」
「世の中綺麗事ばかりじゃ生きていけねえからな。あの船長しかり船員しかり積み荷しかり」
「え?それどういう意味ですか?」
これも人生勉強になるかと特に厳重に縛られている小さな荷物を指差す。
「あの小さな積み荷がなんですか?」
「あれは正規の積み荷じゃない。非認可の品だ。しかもあのマーク見てみろ」
「んー?あの鷲みたいなマーク何のマークですかぁ?」
それを凝視していたロゼの眼に動揺が感じられた。
「そ、そんな!あれは公国の紋章!中身は...中身は何なんですか!?」
「ああ、中身は税関を通せない酒...恐らくはエリクシールだろうな。あれの独特の匂いがしたからな。後は...俺のとは違う葉っぱ。中毒性の高い...な」
安全な方の葉っぱを咥えマッチで火をつけているとロゼの身体がわなわなと震え始めた。
そして船長の所へ向かおうとするのでマッチを海に捨て腕を掴み引き止めた。
「何するつもりだ?」
「何するって...今すぐそんな事止めるように言ってきます」
「駄目だ」
ロゼは珍しく俺をキッと睨み付ける。
「どうしてですか!あれは犯罪ですよ!?」
「だとして俺達に何が出来る?優先順位を見誤るな。今大事なのはなんだ?」
ロゼの腕から力が抜け俺の手を握り返した。
「....村を...守る事...です」
「そうだ。それにさっきも言ったろ。世の中...」
「綺麗事ばかりじゃ生きていけない...あの人にも家族が居て守らないといけないから...?」
「ああ、そうだ。この世の中正義ばかりではまかり通らねえんだ。ロゼ、もしこの先自分の正義が通用しない時はこの言葉を思い出せ。やるべき事を念頭に置いてな」
「正義だけじゃ...違いますね...正義ばかりじゃ何も守れない...そっか、だから....ごめん、取り乱しちゃった...もう大丈夫だから」
ようやく納得したのか強く握りしめ、その眼には何かの決意が表れていた。
なんというか最近はこういう役回りがやけに多いな。
前まではガーフェナの役目だったんだが。
「あ、ユウキくん」
ロゼが服を引っ張り、指差す方向を見ると船長がこちらに歩いてきていた。
「本当に何とかなるんだな?」
「ああ、問題ない。任せろ」
そう言い切ると納得したように頷き大声を上げた。
「お前達!出港だ!錨を上げろ!」
船長が檄を飛ばすと船員達が「おおー!」と声を張り上げ錨を引き上げて、帆を張る。
「お客人、出港だ!さあ、乗りな!」
「恩に着る、船長」
「こっちこそだ!」
俺達は微笑み合うと船のタラップを通り、看板へと降り立った。
共和国が瓦解したからか、既にほとんど機能していなく定期便が1日三便出ているだけの寂しい港だ。
時間も気にして出たし、大丈夫だろうと思っていたのだが、違う問題に直面してしまったようだ。
「どうだった?ロゼ」
「うん、何でも海賊が近海に出たから出港するか迷ってるみたい」
「どうしますかぁ?ご主人様ぁ?」
海賊か...その程度ならなんとかなるだろう。
「ロゼ、船長の所まで案内してくれ」
「うん。こっちだよ」
俺の手を引いていくロゼはこんな状況なのに楽しそうに微笑んでいる。
「どうした、何がそんなに楽しいんだ?」
「ん?ふふ...だってまさか本当に夫婦みたいにハネムーンみたいな事出来るなんて夢にも思ってなかったから」
「あれぇ?お二人って夫婦なんですよねぇ?旅行くらい行ったこと無いんですかぁ?」
しまったとロゼと顔を見合わせると彼女も同じだったのか慌てていた。
「いや、まあ...い、忙しくてな!おっ、そろそろ着いたんじゃないか!?」
「そ、そうだね!すいませーん、船長さーん!」
「う~ん...なんか怪しいですぅ」
つい雑に話題を逸らしたせいで余計疑われた気がしないでもないが、これ以上ボロを出すわけにはいかないと、フェニアから目を逸らす。
その先には妙齢のアゴヒゲの海の男らしい男性が立っていた。
「どうかしたかね?出港はまだ出来んが」
「ああ、分かってる。分かってはいるが何とかならないか?急いでいてな」
「無理だと言ったろう。海賊が出没しておるのだ。しかもあのクリード海賊団だぞ?」
「クリード海賊団か...」
有名な海賊だ。
何度も軍艦を襲っては勝利をもぎ取っている海賊らしいと王都で聞いたことがある。
だが俺とロゼなら問題ない筈だ。
「それなら何とかなる。だから出港してくれ」
「だから無理だと言っとるだろう!お前達だけなら良いがわしは船におる船員の命を預かっておるのだ!」
どうしても譲る気はない船長に対し威嚇するように腕を組み睨み付ける。
「な、なんだ!そんな眼をしても無駄だ!」
「預かっているのは船員の命だけでは無いだろう?この船は回遊船だ。つまり積み荷...しかも共和国で積み込んだ...な」
「!?」
「それを届けないとあんたの立場危ういんじゃないか?ああ、最悪あんたの家族もな。奴らの耳に入りでもしたら余計に...だろ?」
それだけ脅すと少し考え「少し待て」とだけ告げると船員の元へと向かっていった。
「うわぁ、ご主人様あくどいですぅ」
「世の中綺麗事ばかりじゃ生きていけねえからな。あの船長しかり船員しかり積み荷しかり」
「え?それどういう意味ですか?」
これも人生勉強になるかと特に厳重に縛られている小さな荷物を指差す。
「あの小さな積み荷がなんですか?」
「あれは正規の積み荷じゃない。非認可の品だ。しかもあのマーク見てみろ」
「んー?あの鷲みたいなマーク何のマークですかぁ?」
それを凝視していたロゼの眼に動揺が感じられた。
「そ、そんな!あれは公国の紋章!中身は...中身は何なんですか!?」
「ああ、中身は税関を通せない酒...恐らくはエリクシールだろうな。あれの独特の匂いがしたからな。後は...俺のとは違う葉っぱ。中毒性の高い...な」
安全な方の葉っぱを咥えマッチで火をつけているとロゼの身体がわなわなと震え始めた。
そして船長の所へ向かおうとするのでマッチを海に捨て腕を掴み引き止めた。
「何するつもりだ?」
「何するって...今すぐそんな事止めるように言ってきます」
「駄目だ」
ロゼは珍しく俺をキッと睨み付ける。
「どうしてですか!あれは犯罪ですよ!?」
「だとして俺達に何が出来る?優先順位を見誤るな。今大事なのはなんだ?」
ロゼの腕から力が抜け俺の手を握り返した。
「....村を...守る事...です」
「そうだ。それにさっきも言ったろ。世の中...」
「綺麗事ばかりじゃ生きていけない...あの人にも家族が居て守らないといけないから...?」
「ああ、そうだ。この世の中正義ばかりではまかり通らねえんだ。ロゼ、もしこの先自分の正義が通用しない時はこの言葉を思い出せ。やるべき事を念頭に置いてな」
「正義だけじゃ...違いますね...正義ばかりじゃ何も守れない...そっか、だから....ごめん、取り乱しちゃった...もう大丈夫だから」
ようやく納得したのか強く握りしめ、その眼には何かの決意が表れていた。
なんというか最近はこういう役回りがやけに多いな。
前まではガーフェナの役目だったんだが。
「あ、ユウキくん」
ロゼが服を引っ張り、指差す方向を見ると船長がこちらに歩いてきていた。
「本当に何とかなるんだな?」
「ああ、問題ない。任せろ」
そう言い切ると納得したように頷き大声を上げた。
「お前達!出港だ!錨を上げろ!」
船長が檄を飛ばすと船員達が「おおー!」と声を張り上げ錨を引き上げて、帆を張る。
「お客人、出港だ!さあ、乗りな!」
「恩に着る、船長」
「こっちこそだ!」
俺達は微笑み合うと船のタラップを通り、看板へと降り立った。
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