苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件

ベレット

元魔王軍の幹部襲来の件

「出てくるが良いユウキよ!我が知る最も強き戦士よ!最も気高き騎士よ!我こそがデュラハン族のデュークその人である!英雄よ、今こそ出でるがよい!」


声高々に宣言する漆黒の鎧に対し、鍬やスコップを武器にしている村人だけではなく、ミスティー、ルーシェ、アン、ハニーも臨戦態勢で身構える。


その集団に俺とトト、そしてロゼも加わり、その戦列の一番前へと躍り出た。


「デューク...!」


「貴様は...!ようやく来たか我が宿敵よ!待ちわびたぞ!」


「居場所掴んでた癖に随分遅かったな。身体でも磨いてたのか?」


「ふははは!貴様に合間見えようというのに汚れのついたままでは格好がつかんからな!」


ひとしきり挑発し合いお互いに口をつぐむ。


そしてデュラハンが左手を拳にし、また俺も拳を作り振り上げる。


「では!」


「始めるか!?」


「「うおおおお!」」


「ユウキくん!」


ロゼが叫ぶなか俺とデュラハンは駆け出し拳を振りかぶった。


「ユウキくん...!......え....」


「「「「は?」」」」


「久しぶりじゃねえか、デューク!元気だったか!?」


「ふはははは!貴様こそ健勝でなによりぞ!我が友よ!我が親友よ!我が兄弟よ!」


久方ぶりに逢瀬した今生の親友、デュークと硬い握手を交わし、熱い包容を交わす。


「驚いたぞ、まさか貴様がこんな辺鄙な場所に身を寄せておるとは!」


「ああ、色々あってな。ここに流れ着いた。お前こそ暗黒城での政務どうなんだ?」


「ふっ、貴様と殺しあったあの頃が懐かしい。やはり我には筆より剣であるわ!」


「ユウキくん!....ユウキくんってば!」


懐かしい人物との再会に華を咲かせていたがふとロゼの声に気付き周りを見ると皆一様に信じられない物を見たかの様に固まっていた。


そこで俺達は「ああ、わりい。こいつはデューク。俺の親友でな。」「ふはははは!そして永遠の宿敵であるわ!皆のもの、済まんかった!だが元幹部足るもの登場の仕方には凝っていてな!許せ、村民よ!」と、謝罪と弁明をし、解散を促した。


ーー俺の言葉を信用し、バラけ始め俺はデュークを家に招待した。


「家に招いて頂き感謝する。まさか貴様が結婚しているとはな」


「ああ、俺も驚きだ」


実際は偽装結婚だがな...と、ビスケットと紅茶を用意しているロゼに目配せする。


俺の意図を汲んだのか若干不満そうにしながらもビスケットと紅茶を机に並べた。


「おお、かたじけない。だが申し訳ないが我は不死族。食す様に身体が出来ていないのだ。すまんな。」


「す、すいません!勉強不足で!」


「はっはっは!構わんよ!」


妻として良いところを見せようと張り切っていたのか、顔をうつ向かせてしまっている。


それにしても仲がいいものだ。少し胃がムカムカする。
思ったより俺はロゼの事が好きらしい。


「こほん!あー、そろそろ本題入ってもいいか?」


未だに話し込んでいる二人を邪魔するべく、わざと咳払いをするとようやく会話が終わりデュークはばつが悪そうにしていた。
だがロゼには俺が嫉妬していたのがバレていたのか心底嬉しそうにニヤニヤしていた。


気を取り直しあの本を机の中心に置き、一番後ろの後書きを開く。


「本の題名は『妖精に関する考察』覚えがあるな?」


「...さあな...」


俺にはデュークが知っている確証がある。
この本を知っている確証が。
だがデュークは知らないふりをしている。
言えない...なにか...制約か何かがあるのかもしれない。


なら、と後書きの角に描かれているある紋章を指差す。


「お前は知ってなきゃおかしいんだよ。ここを見ろ。これはお前のサインだ。いつも大事な書類やなんかにはこれと同じマークを描いていたからな」


「.....」


少しの間沈黙が訪れるがデュークの脇に鎮座していたデュークの頭が「ふっ」と乾いた笑みを溢す。


すると頭を拾い上げ首もとに持っていくと、首の上で浮いている頭の下。
胸元で腕を組み語り始めた。


「流石だな、我が親友。貴様が初だぞ、感づいたのは」


それはそうだろう。何しろあのサインを知るものはデュークと懇意にしている奴くらいしかしらない。


部下ですらどれだけの数が知っていることか...


「そんな事はどうでもいい。これはお前が書いたのか?」


「それこそどうでもよいだろう?知りたいのはそんな事ではあるまい」


流石はデュークだ。話が早くて助かる。

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