苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件
鍛冶屋の件
「ふああ....ロゼ、新聞...」
「はい、お砂糖何個?」
「一個...」
朝起きていつものローテーションで新聞を開き、ロゼの煎れてくれたコーヒーを口に運ぶ。
毎日の日課だがこういう時間に幸せを感じ始めている自分がいる。
少しおっさん臭い気もするが。
「へえ、これ見ろよ。帝国でドラゴンの影発見だとよ。」
「ドラゴンかあ~。もう滅んでるんだよね...そういえばユウキくんのあの剣の鍔ってドラゴン製だよね」
「そういえばそうだったか」
すっかり忘れていたが問題ないだろう。
それが何だという話だ。
優雅な朝、大切な女とのきらびやかな時間...いつまでも続いてくれるのを願わずにはいられない。
「おっにいさーん!おっはよーー!ちょっといいかな!?」
扉が勢いよく開け放たれ双剣少女ことルーシェが突然現れた。
どうやら俺の平穏な朝はこれにて終了らしい。
「朝っぱらからうるさいですよ!ルーシェさん!洸刃千裂覇!!」
「うきゃあああっ!ごめんなさーーい!」
「はあ...支度するか...」
ロゼの見事な光輝く数百の光の刃が何度もルーシェを襲うのを眺めながら着替えに手を伸ばした。
ーー「うあ~ん...酷いよおにいさ~ん!助けてよぉ~!」
「嫌だわ。そもそも朝7時に突撃する方に問題あるだろうが。自業自得だろ」
わんわん泣きながら俺の服を引っ張るルーシェを引き剥がす。
延びちまったじゃねえか...ほんとこいつ鬱陶しい。
「で、今度は何の用だ」
「こんな美少女が泣いてるのに無視!?」
「はよ言え」
「う~!」
ルーシェから聞いた話はこうだ。
鍛冶屋を開くから手伝ってほしいとの事だ。
鍛冶台なんてこの村にあっただろうかと考えていると見えてきたようだ。
「なんだこりゃ」
俺の目に映るのはこの廃れた村に相応しくないレンガで造られたアトリエだった。
「おい、これどうした」
「建てたんだよー。」
「いや、建てたてお前...」
建物を端から端まで眺めている俺を置いてルーシェは中に入っていくので続いて入る。
すると目の前には家の半分を覆い尽くす鍛冶台が現れた。
本格的すぎる規模に唖然とする。
「もう一回聞くがこれどうした」
「だから建てたんだってばー」
「素人が建てれるわけないだろ。あばら家ならまだしもな」
「だって私、素人じゃないしねー」
ガチャンと炎石を台の上に置きながらそんな事を言ってのける。
「素人じゃないってのは?」
「私さー、お父さんが鍛冶屋でお母さんが大工でさー。よく子供の頃からやってたんだよね」
「ほう」
そういう家系なら頷ける。
とはいえ1ヶ月程度で完成するとは余程の腕前なんじゃないか?
「ごめん、お兄さんこれ入れて」
「ああ」
炎石を数個拾い火事場の火釜に放り投げる。
「精霊さん、お願い。」
「珍しいな、現出タイプか」
精霊にも種類がある。
俺やロゼの使うモーションが必要な使役タイプ、アテネのつかう即座に使用できる現象タイプに物に属性をエンチャントする付与タイプ。
そして実際に物理化させる事が出来る現出タイプ。
この現出タイプは現象タイプに比べたら多いがそれでも希少だ。
とはいえ戦闘よりも生活向けといった方が正しいだろう。
ルーシェの属性は更に珍しい。
全属性のオールカウント。
かなり有用だが精霊力の消費が激しいのが欠点として挙げられる。
それも訓練次第ではあるが。
何はともあれその白く輝く発光物を召喚したルーシェが指示すると炎石を燃やし始めた。
「ちょっと見てて、お兄さん」
そう告げるなりルーシェは隣の部屋に消えていった。
始めて見るオールカウントをまじまじ見ていると右手に痛みが走る。
「ぐっ!?なんだ....?」
相変わらず動くことは無いが久しぶりにあの紋様が浮かび上がっており、更には手の甲に文字が浮かんでいた。
それを読んでみると「現出....可能....?」と現れていた。
現出...だと...一体どういう事だ。
左手で持ち上げた右手を離し、意識を集中する。
すると自分の中に居る闇精霊の存在がいつもより大きくなっている気がした。
「....来い...闇精霊...」
試しにルーシェの真似をしてやってみる。
だが特に何も起こらない...一体なんなんだと頭を振りかぶり、後ろに振り向いた。
「.....はあ.....なにバカやってんだ、俺は.......?....なに?」
そこには形容しがたい闇そのものが浮いていた。
だがそれが何かは分かっている。
自分と共に産まれ落ちた闇精霊だ。
自分の左手が吸い込まれるように延びあと少しで届くという所でバンっと思い切りルーシェがドアを開く。
「お兄さん、これ」
何かを投げてくるのでそれをキャッチし闇精霊の居た場所に眼をやるとそこにはもう何も居なかった。
「お兄さん、どうかした?」
どうもぼーっとしていたらしく、心配した様子のルーシェに「なんでもねえよ...」と答えるしかなかった。
ふと気になり視線を落とす。
紋様も文字も消え特に問題は無いように思えたが同時に自分の魔力が高まっているのも感じていた。
「はい、お砂糖何個?」
「一個...」
朝起きていつものローテーションで新聞を開き、ロゼの煎れてくれたコーヒーを口に運ぶ。
毎日の日課だがこういう時間に幸せを感じ始めている自分がいる。
少しおっさん臭い気もするが。
「へえ、これ見ろよ。帝国でドラゴンの影発見だとよ。」
「ドラゴンかあ~。もう滅んでるんだよね...そういえばユウキくんのあの剣の鍔ってドラゴン製だよね」
「そういえばそうだったか」
すっかり忘れていたが問題ないだろう。
それが何だという話だ。
優雅な朝、大切な女とのきらびやかな時間...いつまでも続いてくれるのを願わずにはいられない。
「おっにいさーん!おっはよーー!ちょっといいかな!?」
扉が勢いよく開け放たれ双剣少女ことルーシェが突然現れた。
どうやら俺の平穏な朝はこれにて終了らしい。
「朝っぱらからうるさいですよ!ルーシェさん!洸刃千裂覇!!」
「うきゃあああっ!ごめんなさーーい!」
「はあ...支度するか...」
ロゼの見事な光輝く数百の光の刃が何度もルーシェを襲うのを眺めながら着替えに手を伸ばした。
ーー「うあ~ん...酷いよおにいさ~ん!助けてよぉ~!」
「嫌だわ。そもそも朝7時に突撃する方に問題あるだろうが。自業自得だろ」
わんわん泣きながら俺の服を引っ張るルーシェを引き剥がす。
延びちまったじゃねえか...ほんとこいつ鬱陶しい。
「で、今度は何の用だ」
「こんな美少女が泣いてるのに無視!?」
「はよ言え」
「う~!」
ルーシェから聞いた話はこうだ。
鍛冶屋を開くから手伝ってほしいとの事だ。
鍛冶台なんてこの村にあっただろうかと考えていると見えてきたようだ。
「なんだこりゃ」
俺の目に映るのはこの廃れた村に相応しくないレンガで造られたアトリエだった。
「おい、これどうした」
「建てたんだよー。」
「いや、建てたてお前...」
建物を端から端まで眺めている俺を置いてルーシェは中に入っていくので続いて入る。
すると目の前には家の半分を覆い尽くす鍛冶台が現れた。
本格的すぎる規模に唖然とする。
「もう一回聞くがこれどうした」
「だから建てたんだってばー」
「素人が建てれるわけないだろ。あばら家ならまだしもな」
「だって私、素人じゃないしねー」
ガチャンと炎石を台の上に置きながらそんな事を言ってのける。
「素人じゃないってのは?」
「私さー、お父さんが鍛冶屋でお母さんが大工でさー。よく子供の頃からやってたんだよね」
「ほう」
そういう家系なら頷ける。
とはいえ1ヶ月程度で完成するとは余程の腕前なんじゃないか?
「ごめん、お兄さんこれ入れて」
「ああ」
炎石を数個拾い火事場の火釜に放り投げる。
「精霊さん、お願い。」
「珍しいな、現出タイプか」
精霊にも種類がある。
俺やロゼの使うモーションが必要な使役タイプ、アテネのつかう即座に使用できる現象タイプに物に属性をエンチャントする付与タイプ。
そして実際に物理化させる事が出来る現出タイプ。
この現出タイプは現象タイプに比べたら多いがそれでも希少だ。
とはいえ戦闘よりも生活向けといった方が正しいだろう。
ルーシェの属性は更に珍しい。
全属性のオールカウント。
かなり有用だが精霊力の消費が激しいのが欠点として挙げられる。
それも訓練次第ではあるが。
何はともあれその白く輝く発光物を召喚したルーシェが指示すると炎石を燃やし始めた。
「ちょっと見てて、お兄さん」
そう告げるなりルーシェは隣の部屋に消えていった。
始めて見るオールカウントをまじまじ見ていると右手に痛みが走る。
「ぐっ!?なんだ....?」
相変わらず動くことは無いが久しぶりにあの紋様が浮かび上がっており、更には手の甲に文字が浮かんでいた。
それを読んでみると「現出....可能....?」と現れていた。
現出...だと...一体どういう事だ。
左手で持ち上げた右手を離し、意識を集中する。
すると自分の中に居る闇精霊の存在がいつもより大きくなっている気がした。
「....来い...闇精霊...」
試しにルーシェの真似をしてやってみる。
だが特に何も起こらない...一体なんなんだと頭を振りかぶり、後ろに振り向いた。
「.....はあ.....なにバカやってんだ、俺は.......?....なに?」
そこには形容しがたい闇そのものが浮いていた。
だがそれが何かは分かっている。
自分と共に産まれ落ちた闇精霊だ。
自分の左手が吸い込まれるように延びあと少しで届くという所でバンっと思い切りルーシェがドアを開く。
「お兄さん、これ」
何かを投げてくるのでそれをキャッチし闇精霊の居た場所に眼をやるとそこにはもう何も居なかった。
「お兄さん、どうかした?」
どうもぼーっとしていたらしく、心配した様子のルーシェに「なんでもねえよ...」と答えるしかなかった。
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