苦労して魔王を倒したと思ったら勇者パーティーを追い出された件

ベレット

牢獄に入れられた件

「ああ~?うっせえな。何だよ...何だよ?」


「立て!罪人ユウキ!ローゼリッタ姫、強姦の罪で貴様を王城へと連行する!」


「は?...はああああっ!?」


勇者以外の面々がようやく城から帰り、いつもの宿屋で就寝している時だった。
いきなり兵士に囲われた...
逃げることは容易いが暴れたとしても厄介な事態によりなるだけだろうと観念した...その時だった。


「晶皇撃!」


「....は?...はああああっ!?(2度目)」


ガーフェナさんのご登場ですね。
これで助かる~!ひゃっほ~い!...とはならない。
何故ならガーフェナはトラブルメイカー...では無いがトラブルを引っ掻き回す事が多々ある。
正直なにもしないでほしい。


案の定兵士達が宙を舞っているし、屋根は隕石でも落ちましたか?というくらい大穴が空いている。
雨漏りどころではない。
色々と非常にまずい事態だ。(金銭的にも)


「お前達!何故ユウキを捕らえる!?ユウキは犯人ではないと協議しただろう!」


「で、ですが隊長!これは王命でして!」


「ぐっ!ユウキ...あんた本当にやってないのよね?」


「やってねえ...あ?お前疑って...かはっ...なに...しやがる...」


鳩尾にガーフェナの剣の鞘がめり込み床に倒れる。
意識が朦朧とする中、ガーフェナが優しく語り掛けてきた。


「ごめん。けど王命である以上連れていくしかないわ。後は任せなさい。」


「任せろったってお前...前に任せたら余計まずい事態に...」


「うるさい。」


顔面を殴られ今度こそ気を失った。


....数刻過ぎたろうか。
ようやく意識を取り戻し、目を開けるともう一回目を閉じた。
現実逃避をそろそろしたくなってきた。


「起きよ。...起きよ!傭兵!」


「....寝てます...」


「こやつ...王を侮辱しおるか。誰かこの男を...ちょおおおい!ガーフェナ隊長殿!?いきなり何を!?」


「ごっふ...」


いきなり側頭部に膝を入れられ両手を縛られた状態なのもありどっさーっと床を滑る羽目になった。
王城だけありマットが柔らかい。
これだけで大分ダメージが緩和されるが、痛いことは痛い。


「おまっ!なにしやがる...」


「しーっ!静かに!つーかあんたバカァ!?王様にあんな態度とって!」


「どうしましたかな?ガーフェナ隊長?」


臣下の一人が怪訝そうにこちらに言葉を送る。
それに驚きガーフェナは肩をびくっと震わせ、俺の顔を押さえつけながら振り反る。


「いえ、少々躾がなってませんので、灸をすえようかと...」


「こいつ...ん?あれは...」


押さえつけられながらも目だけ動かし誰がいるのか確認しているとやはりというか、勇者レオンの姿がそこにあった。


なんとなく分かってはいたがこれで確実になった。
今回の件、あいつの仕業に間違いない。
というかあいつ以外やる必要がない。


視線をずらし王様の方を見るとそこにはローゼリッタ姫の姿もあった。
俺と目が合うなり泣き出しそうに顔を歪ませる。


「そろそろいいかな?罪人ユウキよ。そなたは我が国の姫、ローゼリッタに不貞を働いた罪として。」


「待ってくれ!俺はやってない!むしろ!」


「死刑に処す。」


「は?」


王様のその一言に思考が停止する。
いきなり死刑ってなくない?
中世か!あ、中世らへんの文明だったわ。


「お父様!」


「死刑。」


「いや、ちょっと待って。」


「死刑」


「あの...」


「死刑」


....もうどうしようもない。
その証拠にガーフェナも項垂れている。
どうやら俺はここまでの様だ。


...牢屋の開く音がする。
目隠しをされているから場所は分からない。


「ここに入れ。」


「いや、わからん。」


「ふんっ!」


「ぐあっ!?いてて...おい!いきなり何しやがんだ!」


どうやら背中を蹴られたらしく顔から床に突っ込んでしまった。
両手を紐で縛られたまま何とか立ち上がり入り口らしき方に歩き出す。
だが一歩遅くガチャンと鍵の閉まる音がした。


「そこで大人しくしていろ。明日の朝までな」


「くそ...明日の朝が予定時刻ってことか...」


周囲を足で確認しているとベッドらしきものを発見しそこに腰を下ろす。


「ふう...どうしたもんか...」


とはいえ武器もないし、片腕だし、牢屋だし特にやれるものはない...と、背中を壁に預けているとドサッと何かが倒れる音がした。


ざっざっと何者かがこちらに歩んでくるのを聞き取り警戒する。


「ユウキ様!ご無事ですか!?」


「あ?...その声、ローゼリッタか?」


「はい!お助けに参りました!」


流石に騎士隊長のガーフェナか盗賊のアルヴィン辺りが助けにくると思っていたがまさかお姫様とは。


「少し待っててください...よいしょ」


ガチャンと鍵の開く音と共にぎいっと扉の開く音がした。
すると自分の背後に回る人の気配を感じると手を縛っていた紐が解けた。
同時に目を覆う布も床に落ちる。


「すまん。助かった...だけど良いのか?あんた、お姫様だろ?脱獄させたなんて知れたら...」


すると彼女は驚きを隠せない言葉を口にした。

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