オトギ・オブ・ザ・ワールド
オトギの世界への切符
「お前はほんとに本が好きだな」
遊びに誘ってくる友人に断りを入れるとそう告げられた。
「じゃなきゃ、好き好んで図書委員なんてやってないよ」
「ま、そうだわな。.....分かったよ。でも今度は付き合えよ?」
「うん、分かってるよ。また」
手を振り合うと、友人は図書室から出ていき、待っていた女生徒二人が脇に抱えていた本、数冊と貸し出しカードを差し出した。
「お願いしま~す」
「はい.....えっと.....はい、終わりましたよ。どうぞ」
貸し出しカードに題名を記載し判子を押していてると女の子二人が。
「知ってる?あの都市伝説」
「都市伝説?どんなだっけ?」
「ほら、あれじゃん。オトギの世界に引き込まれるっていう海外の本」
と、かしましく騒ぎ立てている。
......聞いたことないな.....ちょっと気になるな。
黙々と読書カードの整理をしながら聞いていると、その子達が話しかけてきた。
「お兄さんは知ってますか?」
「え?あ、いや、知らないけど....ちなみにどこら辺での話?」
「あの本屋さんらしいよー?」
あの街角の所か....
「そうなんですか.....あ、これどうぞ」
「はーい、ありがとうございまーす」
図書室に置いてある新聞部の書いた新聞を手渡すと、彼女達は退室していった。
室内を見渡すと誰も居なくなっていた。
「....今日は暇だな....まあ、最近は紙媒体の何て課題の時くらいしか見ないよな.....俺はこのカビ臭いとことか好きなんだけど....」
溜め息を吐きながら目線を下ろすと新聞が眼には入り、新聞を広げる。
「うちの学生の変死体、これで8人目か.....なんか最近おかしいよな....それも皆、一度行方不明になってるとか....」
肘をついて新聞を捲っていると、背後の横開きの扉が開いた。
シズル
「山本紙弦君、お疲れ様。もう人は居ないみたいね」
「委員長、お疲れ様です。最近はこの事件であんまり人が残らないですからね」
バサッと新聞の見開きを見せると委員長が悲しげな表情で新聞を取り上げた。
「そうね....シズルくん、そろそろ上がって良いわよ?あの本今日、発売日でしょ?」
「え!でも、それは私用ですし....」
帰るのを渋り、椅子に座っていると背中をポンポンと叩き、席を代わるように催促されたので立ち上がると。
「先輩の言うことは聞きなさい?それじゃあ帰って良いわよ」
優しくもイタズラな笑顔で、さっさと行くように手をしっしっと振ってきた。
「えと.....じゃ、じゃあ失礼します。また....」
「ええ、また明日ね...........明日がこれば....だけど....」
「え?」
扉を開けようと指に力を入れようとした瞬間、不意に委員長の言葉に首をもたげ、振り返り訊ねようとしたが、既に集中して仕事に励んでいたので質問するのが憚られた。
「また明日聞けばいいか....」
邪魔しちゃ悪いと思いその場を後にした。
◇◇◇
「ありがとうございましたー。またのお越しをー。」
本屋から出るなり肩を落とし項垂れる。
「まさか売り切れになってたなんて....予約しとくんだったなぁ.....」
皆、そんな買わないだろうとたかを括っていたのだが、特典目当てで買う客が後を絶たなかったらしく、売り切れてしまっていた。
「はあ.....仕方ないか....ちょっと高いけどネットで....」
落胆しながらとぼとぼ歩いていると。
「もし、そこの方.....よろしければこちらの本を読んでみませんか?」
通りがかった路地裏から声が聞こえ振り向くと、そこには天幕のかかったテントとローブを着込んだ女性が艶やかな紫色の唇をローブの隙間から覗かせ微笑んでいた。
「................」
怪しいと思い、その場を立ち去ろうとしたがいつの間にか俺の足はその女性へと向かっていた。
「ふふ.....こちらを.....」
「......グリムワールドストーリーズ......?御伽...世界物語......?」
手渡されたその本の表紙に目を写すと、聞いたことも無い題名を目にし不安が余計に募るが、それとなく本を開く。
すると女がにやりと口角を上げた。
「ようこそ、オトギ・オブ・ザ・ワールドへ」
「え?........なっ!?」
女が嬉しそうに笑みを溢すと、突然本が光輝き....
「くっ!?うあああっ!」
それが裏路地全体を包むと俺の意識を刈り取った。
◇◇◇
「赤ずき~ん!ちゃんとバケット持った?おばあちゃんの好物のフルーツとかあるからちゃんと持ってくのよ~?」
「分かってるよぉ!今から持ってくって.....え~と....よし!準備完了!じゃあママ、行ってくるね!」
「は~い。気をつけて行くのよ~」
「はーい!行ってきま~す!」
今日はおばあちゃんのお見舞いに行く日だ。
おばあちゃんは森の奥に住んでいたのだが、急に体調を崩してしまったらしい。
勿論おばあちゃんの事は心配だ。
だけど....
「少しぐらい何か期待してもいいよね?」
不謹慎だとは思うけれど私だってお年頃だ。
何か特別な事が起きるんじゃないかとワクワク胸を弾ませながら、家を飛び出した。
遊びに誘ってくる友人に断りを入れるとそう告げられた。
「じゃなきゃ、好き好んで図書委員なんてやってないよ」
「ま、そうだわな。.....分かったよ。でも今度は付き合えよ?」
「うん、分かってるよ。また」
手を振り合うと、友人は図書室から出ていき、待っていた女生徒二人が脇に抱えていた本、数冊と貸し出しカードを差し出した。
「お願いしま~す」
「はい.....えっと.....はい、終わりましたよ。どうぞ」
貸し出しカードに題名を記載し判子を押していてると女の子二人が。
「知ってる?あの都市伝説」
「都市伝説?どんなだっけ?」
「ほら、あれじゃん。オトギの世界に引き込まれるっていう海外の本」
と、かしましく騒ぎ立てている。
......聞いたことないな.....ちょっと気になるな。
黙々と読書カードの整理をしながら聞いていると、その子達が話しかけてきた。
「お兄さんは知ってますか?」
「え?あ、いや、知らないけど....ちなみにどこら辺での話?」
「あの本屋さんらしいよー?」
あの街角の所か....
「そうなんですか.....あ、これどうぞ」
「はーい、ありがとうございまーす」
図書室に置いてある新聞部の書いた新聞を手渡すと、彼女達は退室していった。
室内を見渡すと誰も居なくなっていた。
「....今日は暇だな....まあ、最近は紙媒体の何て課題の時くらいしか見ないよな.....俺はこのカビ臭いとことか好きなんだけど....」
溜め息を吐きながら目線を下ろすと新聞が眼には入り、新聞を広げる。
「うちの学生の変死体、これで8人目か.....なんか最近おかしいよな....それも皆、一度行方不明になってるとか....」
肘をついて新聞を捲っていると、背後の横開きの扉が開いた。
シズル
「山本紙弦君、お疲れ様。もう人は居ないみたいね」
「委員長、お疲れ様です。最近はこの事件であんまり人が残らないですからね」
バサッと新聞の見開きを見せると委員長が悲しげな表情で新聞を取り上げた。
「そうね....シズルくん、そろそろ上がって良いわよ?あの本今日、発売日でしょ?」
「え!でも、それは私用ですし....」
帰るのを渋り、椅子に座っていると背中をポンポンと叩き、席を代わるように催促されたので立ち上がると。
「先輩の言うことは聞きなさい?それじゃあ帰って良いわよ」
優しくもイタズラな笑顔で、さっさと行くように手をしっしっと振ってきた。
「えと.....じゃ、じゃあ失礼します。また....」
「ええ、また明日ね...........明日がこれば....だけど....」
「え?」
扉を開けようと指に力を入れようとした瞬間、不意に委員長の言葉に首をもたげ、振り返り訊ねようとしたが、既に集中して仕事に励んでいたので質問するのが憚られた。
「また明日聞けばいいか....」
邪魔しちゃ悪いと思いその場を後にした。
◇◇◇
「ありがとうございましたー。またのお越しをー。」
本屋から出るなり肩を落とし項垂れる。
「まさか売り切れになってたなんて....予約しとくんだったなぁ.....」
皆、そんな買わないだろうとたかを括っていたのだが、特典目当てで買う客が後を絶たなかったらしく、売り切れてしまっていた。
「はあ.....仕方ないか....ちょっと高いけどネットで....」
落胆しながらとぼとぼ歩いていると。
「もし、そこの方.....よろしければこちらの本を読んでみませんか?」
通りがかった路地裏から声が聞こえ振り向くと、そこには天幕のかかったテントとローブを着込んだ女性が艶やかな紫色の唇をローブの隙間から覗かせ微笑んでいた。
「................」
怪しいと思い、その場を立ち去ろうとしたがいつの間にか俺の足はその女性へと向かっていた。
「ふふ.....こちらを.....」
「......グリムワールドストーリーズ......?御伽...世界物語......?」
手渡されたその本の表紙に目を写すと、聞いたことも無い題名を目にし不安が余計に募るが、それとなく本を開く。
すると女がにやりと口角を上げた。
「ようこそ、オトギ・オブ・ザ・ワールドへ」
「え?........なっ!?」
女が嬉しそうに笑みを溢すと、突然本が光輝き....
「くっ!?うあああっ!」
それが裏路地全体を包むと俺の意識を刈り取った。
◇◇◇
「赤ずき~ん!ちゃんとバケット持った?おばあちゃんの好物のフルーツとかあるからちゃんと持ってくのよ~?」
「分かってるよぉ!今から持ってくって.....え~と....よし!準備完了!じゃあママ、行ってくるね!」
「は~い。気をつけて行くのよ~」
「はーい!行ってきま~す!」
今日はおばあちゃんのお見舞いに行く日だ。
おばあちゃんは森の奥に住んでいたのだが、急に体調を崩してしまったらしい。
勿論おばあちゃんの事は心配だ。
だけど....
「少しぐらい何か期待してもいいよね?」
不謹慎だとは思うけれど私だってお年頃だ。
何か特別な事が起きるんじゃないかとワクワク胸を弾ませながら、家を飛び出した。
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