異世界に来ましたが俺はスローライフを送りたいだけです

ベレット

聖騎士シンクレアー・メヒド

「うおおおおおっ!な、な、何すんだ!いきなり!」
「黙れ、このしれものが!」
降りかかる大剣を横に飛び込み回避し、振り反るとシンクレアーが切っ先を眼前へと伸ばしていた。
「っ!?......な、なんだよ!いきなり斬りつけるなんてどうかしてんじゃねえのか!?」
「黙れと言っています!あなたはご自分がこの町で何をしたか理解しているのですか!?」
俺がしでかした事?なんだろう....心当たりがありすぎてどれか分からんのだが。
「........い、いやぁ......ど、どれだったっけなぁ~なんて.......ぎゃああああ!」
俺のふざけた態度が余程気に入らないのか、見下した眼をさせながら、剣で俺の喉元をつこうとしたので一心不乱に右に飛び込み、九死に一生を得た。
「くっ!おのれ!」
そしてどうやら突き刺した場所が木製の横長椅子だったらしく、深々と突き刺さった剣を抜くのに手間取っているのを目にし、こそこそと柱の影に隠れる。
「な、なんなんだよ!あんた!いきなり殺そうとするなよ!つか、なんで殺そうとすんの!?」
「知れたこと!お前は勇者智也様を魔王軍幹部と手を組み罠に嵌めたでしょう!?それと町でも有名ではないですか!女性二人を誑かし、あまつさえ、未亡人に取り入り、一晩ともにしたと聞き及んでいますよ!この女遊びばかりしているクズ男が!」
「............おっふ......」
非の打ち所がないほどの正論に言葉が出なくなった。
というか人伝に聞くと酷いな、俺の所業。
でも仕方なくない?必死だっただけなので。
それに、そもそも.....
「そもそも智也が穴に落ちたのは事故だぞ!?俺らの........まあスイッチは仲間が踏んじゃったんだけど」
「お前達のせいではないですか!!やはり捨て置けません!」
と、無理矢理剣を引き抜き、椅子を破壊しながら柱ごと切り払おうとしてきたので伏せてよける。
そこではたと気がついた。
この女、鎧の下、ワンピースみたいな服じゃないかと。
「うおおおおっ!?..........そこだぁっ!!」
「きゃあああああああ!!」
一心不乱に大々的にスカート捲りをし、女騎士のスカートがブワっと舞い上がる。
「おお......紫とは意外と大胆な。ギャップ萌え狙ってんの?」
「ぶっ殺してやる!」
相当お怒りな女騎士が剣を振り下ろそうと頭上で両手に力を込めるその刹那、首から下げてあるペンダントを外し、ロープの様に投げる。
「なっ!?いきなり何が!!こ、この!これを今すぐ外しなさい!」
するとぐるぐると巻き付き、ペンダントの磁石が鎧に引っ付きびくともしなくなった。
「な、何をしているのです!は、早く外しなさい!外しなさいよ~!」
「続けたまえ.....よき」
「き、貴様~!ぜ、絶対にころしてやるからなあ~!」
女騎士の声が若干涙ぐんでいる気がする。
可哀想な気がしてこないでも無いが、解いたところで確実に殺しに来るだろう...と女騎士のあられもない下着をまじまじと眺めながら、きめ細かい太ももに視線を這わせていると。
「な、なにやら気持ち悪い視線が.....お、お前本当に何をしているんですか!?」
「視姦してるんだよー。」
「ひいっ!き、気持ち悪い!お前は絶対に!絶対に殺しますからね!?ぶっ殺してやるから覚悟しなさい!うぅ~.....!」
本格的に泣き始めたシンクレアーには悪いがこの伸びたヒモと、人間巾着状態の彼女を交互に見ていると脳裏にあることが過った。
これ、コマじゃない?
「う~ん、このままにしてもいいけど、ライトニングスロープが勿体ないし.....よし!」
「今、なにか最低な一言が聞こえましたが!?お前いったい何を.....きゃあああああああ!!」
「せやあっ!回れい!」
某コマ型の玩具の様に思い切りヒモを引っ張ると、ぐるぐるとシンクレアーが回転し。
「ぐふうっ!.....お、おのれ....この....卑怯ものが.....」
「ふっ.....悲しい勝利だ.........起きる前にに帰るか....」
シンクレアーが柱に頭をぶつけ、気を失っている隙に、買い物袋とライトニングスロープを手にそそくさと協会から立ち去った。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品