異世界に来ましたが俺はスローライフを送りたいだけです

ベレット

鍛冶スキル入手に伴う結果

「何をしとるんじゃ、おぬしらは」
「ああ、じいさん.....いや、あんたにお願いがあって.....げほげほ....ちょっと待って....息が....」
「どーも、お爺さん!」
俺達を呆れながら見下ろしている白髪の老人が石像と化したルカを一瞥し、俺に視線を戻した。
「お願いってなんじゃ?わしに出来ることか?」
「ごほごほ.....どうかな....分からないけど..........はあ.....あー、実は昨日貰った鉱石をアクセサリーにしたいんだけど、町の人はもうやってないらしくてさ。もし作れたら教えて欲しいんだけど」
「............それだけか?他には?」
どうしたんだろうか?それだけなんだが。
「いや、それだけ。ほら、昨日困ったことがあったら来いって言ってたから」
「ふむ.....本当に変わった奴じゃ.....こっち来い。加工ぐらいなら教えてやるわ。嬢ちゃん達はそこで待ってな」
リンカ達に向くと、ルカが元に戻っていた。
「はーい!頑張ってね、ユウトくん!」
「ふえぇ......身体痛いよぉ.......」
石になってたんだから当然だろうよ。
「おい、行くぞ小僧」
一言声を掛けたじいさんがすたすたとダンジョンに歩いていくのでそれについていく。
.......ダンジョン?何故?


ーーダンジョンの中腹ら辺だろうか、ふと老人がゆっくりと口を開いた。
「......おぬしは魔王についてどう思う?」
魔王だって?....そういえば考えたことないな。
「いや、知らないけど。人間と敵対してるんだよな?」
「.....ふん....まあ普通は知らんだろうな....魔王は.....人間の王と恋仲じゃったんじゃが」
「え?なんて?恋仲?付き合ってたの?」
なんか嫌な予感がする。しかもめちゃくちゃバカらしい....
「ああ。魔王、アズールと人間王、ガレットはな....禁断の恋をしておったんじゃ」
「魔王と人間だからか?そりゃまあそうだろうけど」
「違うわ。男同士だからじゃよ。どちらも愛し合っておったんだが、お互いの国の大臣が子を為せないからと無理矢理な」
ま、まじかよ.....そりゃまあ分からんでもないが。
ちょっと待って?それが戦争の原因なの?
バカらしすぎる....
「敵対の原因ってそれ?なんか.....憂さ晴らしみたいな....」
「そうじゃな。お互いの国を潰せばまた共に居れるからの....」
迷惑すぎるだろ!じゃあなんだ?自分達の為に戦争を起こしたってのか?
この世界でも恋愛脳は害悪だな....
「にしても、何であんたがそんな事を.........もしかして関係者か?」
「ふん、当然じゃろう。これでも豪腕と呼ばれとる身、なのでな」
あんたが幹部の豪腕のラズワールなのかよ!
もう色々めちゃくちゃだな!
ってか魔王軍の幹部も被害者なんじゃないか?


◇◇◇


ダンジョンの最奥の扉を潜ると見るからに鍛冶をやれそうな釜と炉、そして金床が部屋の大半を占めていた。
「それでどう思う?わしらを」
「どうって.....不憫だなと....まあ人間王もだけど....まあぶっちゃけ自分に被害が無ければどうでもいいし」
「わしに懸賞金が掛けられていてもか?」
ラズワールは俺の方を見ずに鉱石とつるはしを炉の隣に置きながら問いかけてきた。
「なんで戦わないといけないんだよ。俺は日々平和に暮らせればいいわけ。金もそんなにいらないし、怪我もしたくないし、戦うの怖いし」
「おぬし、本当に人間の冒険者か?ずいぶんみみっちい奴じゃ」
こちとらこの間まで高校生だったんだよ。
異世界転生願望無しのな。
「ふっ、まあよいわ。こっちに来い。金細工の作り方を教えてやろう」
「よろしくお願いします!」


ーー案外こういうのも面白いな。
グラージ石を金床に置き、ハンマーで細かく砕き、金やすりでそれぞれ優しく磨いていく。
そして紐を鉱石の上に置き、上部となる鉱石を重ね、熱したこてで溶かしながら溶接。
そして最後に水で一気に冷ましたら、ハンマーで平らにしていき、彫刻刀を用いて細工を施していく。
「.............う~ん。ここ、もうちょい、バランスとらないとな.....」
「大したもんじゃな、人間のスキル技術というものは」
「ドワーフの精巧な技術にはほど遠いよ。結局元々は素人だから、スキルで誤魔化してるだけだ」
別に卑下しているわけではない。
実際に作って見比べてみればドワーフの技術の高さが分かる。
鉱石の砕き方からして、やはり滲み出る物があるだろう。
「こんなもんか.....悪くないな。どれどれ」
観察スキルによればレア度はハイレア。
名称はライトニングスロープと言うらしい。
ペンダント部分を鋼鉄の何かに投げつければ、磁力でくっつき、ロープ代わりになるそうだ。
普通の冒険者なら武器スキルや能力強化スキルがあるから、手にいれても宝の持ち腐れだが、俺にはチートアイテムに見える。
これでいざという時の逃げる手段が増えた。
なかなか上々ではないだろうか。
「ありがとう。助かったよ」
「構わんよ。もうそろそろ帰るじゃろ?送ってくぞ?」
「いいのか?迷惑じゃあ....」
「阿呆か、おぬしは。また殺されかけても知らんぞ」
行きのヒートトードを思いだし、身震いする。
「よろしくお願いします!」
「わしも町に買い出しがあるんでな。それとおぬしに頼みがあるからな。」
なんだろう....厄介ごとに首を突っ込んだ気がしてならない。
ラズワールが顔が見えないほどのフード付きのローブを手にとるのを見ながら、なんとなくそう思った。









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