異世界に来ましたが俺はスローライフを送りたいだけです

ベレット

グラージ石の所在地

「これでクリアしたみたいだな。」
「ようやくだねー。」
「それにしても、変なクエストだよなー。.....です」
皆で椅子に座り、伸びをしながらパンフレットを開く。
「次はどんなクエスト?」
「ちょっと待て.....えーと....なんだこれ?『グラージ石を手にいれよう』?なんだ、グラージ石って?聞いたこと無いぞ」
「私も.....無いです.....」
石ね....ゲームとかだと鉱石とかでありそうな名だけど。
ここはやはり、彼女に聞くのが一番だろう。
「今からギルドに行くぞ。お姉さんにグラージ石の事を聞こうぜ」
「はーい!」
「はい......行くです」


◇◇◇


ギルドに入った途端、違和感に気がついた。
皆騒ぎ立て、妙に浮き足だっている。
「一体なんだ?なんかあったのか?」
「そうなんです。実は豪腕のラズワールが遺跡の奥で何かしているらしくて、こちらも調査をお願いしているのですが....なかなか募らなくて...」
それで騒いでいるのか。
耳を澄ますと誰が行くのかで揉めているらしいな。
あんな屈強な戦士たちでも恐ろしいんだ。
俺みたいな雑魚が相手に出来るわけがない。
魔王軍幹部は強い奴に任せよう。
「幹部ね....俺には無理だな。死にたくないし。あ、そうだこれ」
残りの3100セルカをお姉さんに渡すと。
「もう集まったんですか?ありがとうございます。それで今日はなに用で?」
「ええ、聞きたいことが....グラージ石っての知ってます?少し入り用になりまして」
「グラージ石ですか....それは....」
お姉さんは少し考えを巡らせるとはっとし、俺の目を見つめてきた。
「それはその....ある場所にありまして....出来ればその......クエストもついでに....」
「お断りします。失礼します!」
「あっ!待ってください!」
嫌な予感がしたので早々に立ち去った。


ーー「くそったれがぁぁぁっ!グラージ石、あの遺跡にあんのかよぉぉぉ!」
俺は今、最早常連となりつつあるお馴染みのテーブル席に顔を埋めている。
お姉さんは実際には言っていないのだがあの様子だと、近辺だとあの遺跡にしかないのだろう。
「あー、くそ.....詰んだ....あんなとこ行けるわけねえだろーが.........あれ?そういえばあいつらどこに.....」
周りをキョロキョロ見渡していると人垣に埋もれているのを発見した。
だが嫌な予感しかしない。
「おいおい、可愛らしい姉ちゃんが居るじゃねえか」
「俺はこっちの小さい娘が好みだぜ」
「な、なんなんですか!?気持ち悪い!」
「ふええ....また変な人が.....ですぅ....」
二人がモヒカンの世紀末系男どもに絡まれていた。
「うわあ.....関わりたくねえ....つーか関わんなよ、あんた達も。」
ここで普通助けに行くもんだが俺は行かない。
当たり前だろう。怪我したくない。
なので見届けることにした。
すると見覚えのあるフルプレートのイケメンが仲裁に入るため、人垣をかき分け躍り出た。
「君達!嫌がる女性にこんな真似をして恥ずかしくないのかい!?」
「きゃああああ!智也様~!カッコいい~!」
「智也く~ん!こっち向いて~!」
いや、特に何かしているようには見えんぞ。
ただ、話しかけただけなんだけど。
つかイケメンってだけできゃあきゃあ言われやがって。
あー、ムカつく。
「ああ?なんだてめ.....ぎゃあああ!」
「もう気持ち悪いー!」
「ひぎゃあああ!は、腹が~っ!!」
「ひゃぁぁ~!........お腹げろげろ.....です!」
やりやがった、あいつら!
リンカは思いっきり拳を当てて悶絶させ、ルカの呪いでもう一人は外に逃げていった。奥からも悲鳴が....可哀想に....
「き、君達....それはさすがにやりすぎ.....ご、ごめん!何でもないからにじり寄らないでくれ!い、いるんだろ!?ユウト!助けてくれ!」
なにやってんだ、あいつらは。
行きたくねえ。.....こっち来ちゃった。
「ユウト!君は何をしているんだい!君はリーダーだろう!?」
「勝手にリーダーにするな。勝手に決めるな。勝手に役割にするな、バカたれが」
「ば、バカたれ.....!?き、君は本当に!」
なんでこう、イケメンは自分の言うことが正しいと思ってんの?
それにそいつら、なら大丈夫だよ。
本性知れば向こうから逃げるから。
俺も逃げ出したい...
「ねえねえ、ユウトくん。なんか話があるんだって」
「聞きたくないんだけど。あとお前覚えてるよな?.....女の影が見えたらスライム地獄に落としてやるってぇぇぇっ!」
「ほ、本気だったのかい!にじり寄らないでくれたまえ!そ、そこの君、何をする気だい!?ユウトくん!君もなに指示を......ぎゃあああ!スライムが!スライムが僕の身体を......!」
「幻覚みろみろ......です」
ふう、スッキリした.....
また奥から悲鳴が聞こえたので冥福をお祈りしておこう。


ーー「はあ?グラージ石を取りに行く手助けをしたい?また何で......嫌な予感しかしないから断る」
「君は少しぐらい相手に歩み寄ってもいいんじゃないかい?」
嫌だが?そこは魔王の手先が居るんだぞ。
誰が行くか..........待てよ?
「分かった。よろしくな!護衛は頼んだ!」
「あ、ああ....?いきなり態度が変わったね。どうしたんだい?」
「うわあ....あの似合わない爽やかな笑顔。絶対何か企んでるわ」
「ですぅ....」
うるさい。



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