異世界に来ましたが俺はスローライフを送りたいだけです

ベレット

だから金がねえっつってんだろ!

「お世話になりました。行きますよ、エロトさん」
「もうおいたしては、駄目ですよ。エロトさん」
「じゃあね~、エロお兄ちゃん!」
「いや、俺が悪いけども。せめて公衆の面前では.....はい、すいません」
女性陣と通りすがりの人の視線が痛い...


ーーシトリー宅から離れ、商店区に行き着いた俺とリンカはベンチに座り、パンフレットを開き、次の神様クエストの確認をすることにした。
「えっとお....『衣服を買い替えよう』ですって」
「......っ!だ、か、ら!金がねえんだよぉっ!借金があるし、この間のクエスト報酬も貰えなかったしよお!....があああああっ!はあはあ....」
「うわ、なにあの人、こわ....」
「早く行こ?関わんない方がいいって」
しまった....つい、発狂してしまった。
だがそれも仕方ないのでは無かろうか。
異世界転生二日目にして、借金を自分以外が原因で背負い、金も稼げず、寝床もない。
更には食糧だったキノコも四人で食べてしまったので残っていない。
「あの~、良かったらクエストでもしませんか?実入りいいですし.....」
こいつは本当に今の状況わかってんのか?
「討伐クエストは無理だって言っただろ!採取クエストだって幹部の影響でどこに何が居るかわかんねえの!そんな状況で遠出なんて出来るか!」
「は、は~い.....う~ん、もう一人くらい仲間が増えればもっと上手く行くと思うんですけど....」
世の中そんな甘くねえよ。
リンカがバトルマスターの名を利用して入れて貰うんならまだしも、そもそも俺達みたいな初心者パーティーに来たい奴なんて....
「おい、兄ちゃん!仲間を探してんのかい!?なら俺なんてどうよ!」
居るのかよ。
いったいどんな酔狂なやつ....
「俺をパーティーに入れてくんな!そしたら黒魔術で援護してやんよ!.....です」
「...........」
またキャラが濃い奴が現れやがった。
俯いている頭を上げ、真っ直ぐ見据えると、悪魔をデフォルメしたようなぬいぐるみを抱き抱えた、ゴスロリ衣装を纏うウェーブのかかった銀髪の女の子だった。
年齢は多分、十歳から十二歳くらいか。
「遠慮します....」
「良いじゃないですか!可愛いし!」
可愛いから良いという女子高生感覚を捨てろ。
「良いわけあるか!まだ子供だぞ!?そもそも冒険者カード持ってんのか!?」
「それならあるぞ。お嬢、見せてやれ。.....うん。はい」
ゴスロリ少女がポケットから取り出した冒険者カードを覗き込むと、確かに俺達のと寸分違わない冒険者カードそのものだった。
「えーと名前は『ルカミディア・リフライン』....職業は.....あっ!」
「そこまで......それ以上は.......だめ....」
「またセクハラですか?エロトさん。」
「違いますぅ!やってませんからぁ!っつーかあれも事故だって言っただろーが!」
そんな事よりなんで、今この子急いでカードをしまったんだ?
あ、怪しい....怪しすぎる。
俺の脳内危険感知システムがオンラインになっている。
この子は絶対に地雷だ。
「なんで開き直ってるんですか!ユウトさん、ちょっと優しいからって騙されました!本当は変態の覗き魔のドヘタレな最低男だったんですね!」
「おおい!止めろぉ!妙な誤解を生むからぁ!」
「誤解じゃないじゃないですか!もういいです!ユウトさんみたいな変態の自分本意な人知りません!...えーと、ルカミディアさんでしたか?一緒にクエスト行きましょう!」
リンカがルカミディアの手を取り、ルカミディアも握り返す。
「いいぜ!お嬢の強さ見せてやるぜ!....恥ずかしいよ....ミゼット....」
そして二人で仲良くギルドに歩いていってしまった。
「ああもう、お前らだけじゃ無理だっての!おい、待てったら!あー、くそ!」


◇◇◇


俺は今平原地帯のある一角に来ている。
理由は勿論、リンカとルカミディアが無謀にも受注した討伐クエストに同行したからだ。
その内容はチンケの討伐で一応下位ランクのクエストである。
チンケを知っているだろうか?
チンケとは妖精が闇落ちして変異したモンスターで、モンスターランキングでも下位に位置する雑魚として有名だ。
ナイフを片手に突っ込んでくるだけで、囲まれなければどうとでもなる簡単な相手....なのだが。
「いたいよぉ....いたぃよぉ....もう蹴らないでぇ....」
何故かバトルマスターのリンカがリンチに遭っている。
あいつ戦闘向いてなさすぎるだろ。

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