異世界に来ましたが俺はスローライフを送りたいだけです

ベレット

スライムは雑魚じゃなかった

無事神様クエストをクリアしたのだが何も貰えなかった。
クソゲーじゃねえか...


もう何もやる気が起きず、次の神様クエスト『ギルドクエストを達成せよ』もやらずに、ギルドのテーブル席に一人で突っ伏している。


何故一人か...というとリンカは現在、他のパーティーに絶賛勧誘されちゅうだからだ。


因みに俺には誰も寄って来ない....泣くぞ?
別にやりたい訳ではないが、それはそれで悲しくなる。


「はあ~....帰りてぇ....」


早々に心が折れかけながら、ふてくされているとリンカがカウンターに移動していたのを見かけた。


その手には掲示板に貼られた依頼書が....
嫌な予感しかしない。


「なにしてんだ、あいつ....クエスト受けるのか?」


しかめっ面をしながらリンカを眺めていると、にこやかに、にまにましながら向かってきており、その手にはあの依頼書がある。


「なに?なんなの?」


「これ、一緒にやりましょう!ユウトさん!」


バッと向けてきたそれを見るなり俺の顔が青ざめた。


「おまっ!これ!討伐クエストじゃねえか!返してこい!.....待てよ?もしかしてあいつらと行くのか?」


「んー?違いますよ?ユウトさんと行くって言ったじゃないですか!」


こいつはどうやらパーティー勧誘を断ったらしい。
行けばいいのに...


「どうしてあいつらと行かないんだ?俺と居るよりかは生き残れるぞ?」


「嫌ですよ....だって私はユウトさんと一緒にお仕事したいですもん....」


悲しそうな顔を見て、少し揺らいでしまい、俺もとことん男だなと思わざるを得ない。
だがこれは命が関わる案件だ。
はい、そうですかとはいかん。


「そうか....断ってくる」


「えぇ~!ただのスライムですよぉ!?やりましょうよぉ!」


どうしてもやってみたいのか、抱き抱えるように引き留め、リンカの腕力ステータスのせいで俺の内臓が限界を迎えそうになっている。


「お願いします~!スライムと戦いましょうよ~!」


「いだだだだだ!離せ!ま、マジでヤバいから!お姉さーん!お姉さーん!これ、キャンセルだから!キャンセルお願いしまーす!」


「すいません!キャンセルにはお金がかかりまして!」


金がかかるという、当たり前の事実に身体の動きが止まり、リンカを睨み付けると、緩やか~に手を緩め始めた。


「.....あの~、因みにおいくら?」


「....5000セルカ....です....」


この瞬間、お仕事の時間が確定してしまった。




◇◇◇


ギルドから初登録者支援品として片手直剣とポーション三個。
それと近辺の地図をもらい、依頼書に書いてある町の西の平原に来ている。


地図によるとこの大きめな町、ルーメルタウンという名称らしく、そこから四方に自然が広がり、北は山岳、南は丘陵地帯、東は湖で、西が平原が続いている。


そして今いる平原にはスライムが最近出現し始めたらしく、それで討伐依頼が一件来たんだそうだ。


ああそうさ、スライムだ。
あの雑魚代表のな。
誰だ、雑魚とか最初言った奴。ぶっ殺すぞ。


「ごぽぽぽぽぽっ.......」


「リンカーー!」


リンカがスライムとの戦闘の末、体内で溺れてる。


よくよく考えればスライムが弱いはずがない。
だってあれ、液体じゃん。
物理的に退治できないじゃないか。


それでも最初こそは良かったのだ。
最初はリンカも足が遅いなりに走り、剣を抜いて切りつけようとしていた。
だがそこからがまずかった。
まさかこけて、更にこけた先がスライムだったとは誰が予想出来ようか。


完璧に自業自得な上、スライムは一切動かない....というよりかは動けないらしい。
実のところ、スライムによる人的被害は自ら入るぐらいのもので、スライムの基本的な食事はじっと待って身体に入り込んだ虫を溶かして食うぐらいらしい。


なら何故討伐対象なのか....それは、その中の一緒類が田畑を耕してくれる虫が被害に遭っているから。
これだけである。


と、いうことで今、俺はリンカをスライムの身体から引っ張りあげている。


「うおおおおっ!抜けたあっ!」


腕力がくそ雑魚なので、そのまま地面に倒れこみ、リンカを放り出す。


「おい、リンカ?生きてるか?返事しろ....はあはあ」


「うぅ....生きてますぅ...」


プールで溺れたようにぐったりしている。
俺はポケットに入れてあった依頼書を取り出し、ある部分を見た。


「上級討伐クエストじゃねえか!」


と、地面に叩きつけて、リンカの側に寝転がる。


「もう討伐クエストは受けねえ。いいな?」


「はい....それでお願いします....」


今回ので相当懲りたらしいリンカは快く同意した。

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