3Rの魔法師〜魔力零の異端児は今日も誰かの魔力を糧にする〜
第17話 総騎士団長
うまい具合に難局を乗り切ったその後の首尾は上々だった。残りの授業は全て座学だったのだが、なんとなく視線を感じるだけで特に接触はなし。無事に放課後を迎えることができた。
今日も学院に通う生徒達の姿が見えなくなった街の外れで、クロエ王女に呼び寄せられる。影から見守りたい気持ちと、近くで護衛できる安心感がせめぎ合うが、そんな事は意味のない事。呼ばれた時点で、それに応えないという選択肢は僕には用意されていない。
「エステルが目をハートにして話してくれたよ。昨日は大活躍だったらしいね」
「大活躍など、そんな大したことはしていません」
「口調」
「……活躍したつもりなんてないよ。ただ、危ないところを助けただけだね」
なんだか今日はえらくご機嫌斜めのようだ。敏感にそれを察知し、すぐに敬語をやめたけど、機嫌が良くなる兆しはない。
クロエが僕の横を歩きながら深々とため息を吐いた。
「レイ兄様は相変わらずね。そういう事をされると女の子はときめいちゃうものなんだよ?」
「仮にそうだとしても、僕じゃなくて『ゼロ』の方で接したから問題ないよ。エステルはもう二度と彼に会う事はないだろうし」
「はぁ……また一人被害者が増えたって事ね」
クロエが頭に手を添えて左右に振る。なんというか、風評被害な気がしないでもない。
「被害者は心外だな。それに増えたっていうけど、何人も出してるわけじゃないって」
「ファルとファラに聞いた限り、助けた可愛い女の子によく好意を持たれるらしいけど?」
「……そんな覚えはないよ」
なんとも刺々しい言葉。そりゃ、任務で重役の娘とか秘密裏に護衛したこともあるけど、別に好意を持たれたことなんてないはず。
「まぁ、でも、エステルは全然あなたの正体に気がついていないみたいね……エステルは」
語尾がひどく強調された言い方。何が言いたいかは猿でもわかる。
「……彼女に関しては自分がヘマをしたとしか言いようがない」
「何があったの?」
こちらに小首を傾げてくるクロエに、僕は今朝あった事を話す。
「『ムシ』……そんな魔道具があるのね。警戒心の塊みたいなレイ兄様が気づかないなんて」
「僕は大きな魔力に敏感なだけだよ。小さな魔道具が発する微妙な魔力にまで身体が反応してたら参っちゃうって」
もはや魔道具というのは生活必需品だ。ありとあらゆる場所で使われている。その魔力をいちいち感じ取ってたら、夜寝る事だって容易じゃなくなってしまう。
「そっか、そうだよね。でも、武術の授業でレイ兄様が上手く立ち回ったから、確信は得られていないみたい」
「それは朗報だね」
だけど、疑惑を持っているのは事実だ。彼女の前では最大限の注意を払わなければならない。
「……学院にも一人ぐらいレイ兄様の正体を知ってる人がいてもいいと思うけどなぁ。私も話がしたいし」
「いるでしょ? 一人」
「彼女は……ちょっと苦手で」
クロエは眉を下げながらそっぽを向いた。まぁ、その気持ちはわかる。僕も得意なわけじゃないから。
「とりあえず彼女に正体をバラす事はしないよ。女王の命令でもない限りね」
「むぅ……」
クロエが不服そうに口を尖らせる。そうは言ってもそんな命令がデボラ女王から下されるわけがない。つまり、そういう機会は一生訪れないって事だ。
特に何も起こらないままクロエを城へと送り届けた僕はさっさと自分の住まいへと向かう。やはり、あそこが一番落ち着く。ここへ来てからずっと過ごしているせいかもしれない。あの場所は煩わしい人間関係も、奇異な物を見るような視線も感じない。心休まる僕の居場所。
そう思っていた。屋敷の前で豪胆な笑い声が聞こえる前は。
僕が顔をしかめながら玄関の扉を開けると、いつものように執事姿のノーチェが出迎えてくれる。
「おかえりなさいませ」
「ただいま戻りした。……お客さんですか?」
正直、聞かなくても誰が来ているのかはわかる。だけど、もしかしたらということも……。
「アレクシス・ブロワ様がいらしております」
なかった。そらそうだ、人生そう上手くはいかない。
「やっぱりそうですか」
「今は応接室でヴォルフ様がお相手を務めております」
「お相手……ね」
なんの相手をしているかというのはリビングまで臭っているアルコール臭が物語っている。
「それなら僕は部屋に籠っていてもいいですか?」
「いいかどうかはご自身が一番よくわかっていると思いますが?」
僕の問いかけにノーチェが涼しい笑顔で返してくる。わかっているよ。聞いてみただけ。
僕はため息をつきつつ、リビングのソファに鞄を投げ捨てると、応接室に向かった。
ノックもなしに扉を開けると、さらに濃密な匂いが僕の鼻を刺激する。部屋のソファに座っていた二人が同時にこちらへと振り返り、奥に座っている顎に髭を蓄えた偉丈夫が笑いながら持っているグラスを上に掲げた。
「おーう! レイ! なーにしけたつらしてんだよ! こっち来て一緒に飲め!」
「あーダメダメ。カシラは下戸じゃないけど、酒の美味さがわからないお子様な味覚の持ち主っすから」
その男の対面に座っている、顔立ちは整っているがピアスやらネックレスやら指輪やらをつけたチャラそうな金髪の男が笑いながらそれに答える。お子様な味覚で悪かったね。苦いだけの液体を嬉々として飲んでるあんたらが異常なだけだ。
僕は仏頂面のまま空いている席に座った。
「お久しぶりですね、アレクシス総騎士団長。こんな昼間っから酒を飲むとは、流石は御三家の一角。庶民の感覚とはかけ離れていますね」
「何言ってんだよ! 昼に飲むから酒は美味いんだろうが!」
「その通り! さっすがはアレクシスの旦那だ! よくわかってらっしゃる!」
「ヴォルフは黙ってて」
年上だろうと構いやしない。僕がギロッと睨み付けると、ヴォルフはおずおずと持っていた酒を飲み始める。
「僕が言いたいのは騎士団をまとめる男がこんなところで油を売ってていいのかってことですよ。……お付きの人まで連れて」
そう言いながら、アレクシスの後ろに直立不動の姿勢で立っている眉目秀麗な男に目を向けた。彼の名前はフリード・ラウザー。上級貴族ラウザー家の次男にして、第一騎士団の副団長を任された男。騎士団の中でも五本の指に入る実力者である。
「フリードさんも大変ですね」
「いえ、これが私の仕事ですから」
きっぱりとした口調でフリードが答える。彼は騎士団の人間にしては珍しく僕を蔑んだり、馬鹿にしたりしない。
「その仕事が一番苦痛だと思いますよ? こんなダメ親父に付き合ってても、いいことなんてないですから」
「三日に一度くらいは勉強になることがありますので……いや、五日に一度ですね」
「なるほど、それは驚きました。僕はてっきり一月に一度くらいのペースかと思っていました」
「おいおいおい……相変わらず辛辣な物言いだな」
グラスに酒を注ぎながらアレクシスがジト目を向けるが、フリードは涼しい顔をしている。
「私が総騎士団長になるための踏み台……ゴホンッ! 尊敬すべき上司であるため、私はこの仕事に誇りを持っていますよ」
「本音がダダ漏れなんだよ!」
ふむ、やはりフリードはいいキャラしている。仕事もできて、才能もあって、ユーモアもある彼のことが結構気に入っていた。隣にいるチャラ男と同じくらいの年頃だというのに、その差は天と地ほどにある。
「ったく……俺の側近のくせに全然敬意を払わないんだよ、こいつは」
「敬意を払わない者が悪いのではなく、敬意を払いたくなる行いをしない者が悪いかと」
僕が冷たい視線を向けながら言うと、なぜかアレクシスは嬉しそうにグラスを一気に傾けた。
「……っはー! 俺の事をそんな目で見る奴は騎士団には中々いないぜ? やっぱりお前は最高だな!」
「……フリードさんも似たような目で見てると思いますけど?」
「えぇ、そうですね。虫ケラを見るような目でいつも見ています」
「お前はそんな目で見るんじゃねぇよ!」
アレクシスが乱暴にグラスを叩きつける。その机、来賓ように高級なやつを買ってるんだから壊したら弁償だからね。
「とにかく、だ。俺はレイ、お前のことが気に入ってんだ。だから、さっさとあいつと結婚して俺の息子になれ!」
「……急にぶっ飛んだ話を振らないでくれませんか?」
「結婚? カシラ、結婚するんすか? いやーやめた方がいいわー。女遊び出来なくなりますよ?」
それまで黙って酒を飲んでいたヴォルフがここぞとばかりに食いついてきた。
「しないから。全然する気ないから」
「なんでだ? 親の俺が言うのもなんだが、あれは別嬪だぞ? それに、荒削りだが剣技も光るものがある」
「……こういう時、本人の気持ちを尊重しろとか言って断るんですけど」
「それは無理ですね。彼女はレイさんにぞっこんですから」
フリードがこともなげに僕の言葉の続きを言ってくれた。その通りなんだよね。僕でもわかるくらいに好意を持たれている。
「付き合うくらいならいいんじゃないっすか? 旦那の娘さんはかなりレベル高いっしょ?」
「おっ! 女を見る目が厳しいヴォルフのお墨付きとくりゃ百人力だ! 他に問題なんてねぇだろ!」
「そうですね、彼女は魅力的だと思いますよ。しいて問題をあげるとしたら父親になる男ですかね」
「あぁ、それは致命傷だ。アレクシス様、諦めましょう」
僕の言葉に納得したフリードがうんうん、と首を縦に振る。やっぱり彼はベストだ。
「たっだいまー! ……って、うえぇ!酒臭っ!!」
そんな話をしていたら玄関の方から元気のいい声が聞こえてきた。そして、近づいてくる二人分の足音。
やれやれ……騒がしいのが帰ってきたみたいだね。
今日も学院に通う生徒達の姿が見えなくなった街の外れで、クロエ王女に呼び寄せられる。影から見守りたい気持ちと、近くで護衛できる安心感がせめぎ合うが、そんな事は意味のない事。呼ばれた時点で、それに応えないという選択肢は僕には用意されていない。
「エステルが目をハートにして話してくれたよ。昨日は大活躍だったらしいね」
「大活躍など、そんな大したことはしていません」
「口調」
「……活躍したつもりなんてないよ。ただ、危ないところを助けただけだね」
なんだか今日はえらくご機嫌斜めのようだ。敏感にそれを察知し、すぐに敬語をやめたけど、機嫌が良くなる兆しはない。
クロエが僕の横を歩きながら深々とため息を吐いた。
「レイ兄様は相変わらずね。そういう事をされると女の子はときめいちゃうものなんだよ?」
「仮にそうだとしても、僕じゃなくて『ゼロ』の方で接したから問題ないよ。エステルはもう二度と彼に会う事はないだろうし」
「はぁ……また一人被害者が増えたって事ね」
クロエが頭に手を添えて左右に振る。なんというか、風評被害な気がしないでもない。
「被害者は心外だな。それに増えたっていうけど、何人も出してるわけじゃないって」
「ファルとファラに聞いた限り、助けた可愛い女の子によく好意を持たれるらしいけど?」
「……そんな覚えはないよ」
なんとも刺々しい言葉。そりゃ、任務で重役の娘とか秘密裏に護衛したこともあるけど、別に好意を持たれたことなんてないはず。
「まぁ、でも、エステルは全然あなたの正体に気がついていないみたいね……エステルは」
語尾がひどく強調された言い方。何が言いたいかは猿でもわかる。
「……彼女に関しては自分がヘマをしたとしか言いようがない」
「何があったの?」
こちらに小首を傾げてくるクロエに、僕は今朝あった事を話す。
「『ムシ』……そんな魔道具があるのね。警戒心の塊みたいなレイ兄様が気づかないなんて」
「僕は大きな魔力に敏感なだけだよ。小さな魔道具が発する微妙な魔力にまで身体が反応してたら参っちゃうって」
もはや魔道具というのは生活必需品だ。ありとあらゆる場所で使われている。その魔力をいちいち感じ取ってたら、夜寝る事だって容易じゃなくなってしまう。
「そっか、そうだよね。でも、武術の授業でレイ兄様が上手く立ち回ったから、確信は得られていないみたい」
「それは朗報だね」
だけど、疑惑を持っているのは事実だ。彼女の前では最大限の注意を払わなければならない。
「……学院にも一人ぐらいレイ兄様の正体を知ってる人がいてもいいと思うけどなぁ。私も話がしたいし」
「いるでしょ? 一人」
「彼女は……ちょっと苦手で」
クロエは眉を下げながらそっぽを向いた。まぁ、その気持ちはわかる。僕も得意なわけじゃないから。
「とりあえず彼女に正体をバラす事はしないよ。女王の命令でもない限りね」
「むぅ……」
クロエが不服そうに口を尖らせる。そうは言ってもそんな命令がデボラ女王から下されるわけがない。つまり、そういう機会は一生訪れないって事だ。
特に何も起こらないままクロエを城へと送り届けた僕はさっさと自分の住まいへと向かう。やはり、あそこが一番落ち着く。ここへ来てからずっと過ごしているせいかもしれない。あの場所は煩わしい人間関係も、奇異な物を見るような視線も感じない。心休まる僕の居場所。
そう思っていた。屋敷の前で豪胆な笑い声が聞こえる前は。
僕が顔をしかめながら玄関の扉を開けると、いつものように執事姿のノーチェが出迎えてくれる。
「おかえりなさいませ」
「ただいま戻りした。……お客さんですか?」
正直、聞かなくても誰が来ているのかはわかる。だけど、もしかしたらということも……。
「アレクシス・ブロワ様がいらしております」
なかった。そらそうだ、人生そう上手くはいかない。
「やっぱりそうですか」
「今は応接室でヴォルフ様がお相手を務めております」
「お相手……ね」
なんの相手をしているかというのはリビングまで臭っているアルコール臭が物語っている。
「それなら僕は部屋に籠っていてもいいですか?」
「いいかどうかはご自身が一番よくわかっていると思いますが?」
僕の問いかけにノーチェが涼しい笑顔で返してくる。わかっているよ。聞いてみただけ。
僕はため息をつきつつ、リビングのソファに鞄を投げ捨てると、応接室に向かった。
ノックもなしに扉を開けると、さらに濃密な匂いが僕の鼻を刺激する。部屋のソファに座っていた二人が同時にこちらへと振り返り、奥に座っている顎に髭を蓄えた偉丈夫が笑いながら持っているグラスを上に掲げた。
「おーう! レイ! なーにしけたつらしてんだよ! こっち来て一緒に飲め!」
「あーダメダメ。カシラは下戸じゃないけど、酒の美味さがわからないお子様な味覚の持ち主っすから」
その男の対面に座っている、顔立ちは整っているがピアスやらネックレスやら指輪やらをつけたチャラそうな金髪の男が笑いながらそれに答える。お子様な味覚で悪かったね。苦いだけの液体を嬉々として飲んでるあんたらが異常なだけだ。
僕は仏頂面のまま空いている席に座った。
「お久しぶりですね、アレクシス総騎士団長。こんな昼間っから酒を飲むとは、流石は御三家の一角。庶民の感覚とはかけ離れていますね」
「何言ってんだよ! 昼に飲むから酒は美味いんだろうが!」
「その通り! さっすがはアレクシスの旦那だ! よくわかってらっしゃる!」
「ヴォルフは黙ってて」
年上だろうと構いやしない。僕がギロッと睨み付けると、ヴォルフはおずおずと持っていた酒を飲み始める。
「僕が言いたいのは騎士団をまとめる男がこんなところで油を売ってていいのかってことですよ。……お付きの人まで連れて」
そう言いながら、アレクシスの後ろに直立不動の姿勢で立っている眉目秀麗な男に目を向けた。彼の名前はフリード・ラウザー。上級貴族ラウザー家の次男にして、第一騎士団の副団長を任された男。騎士団の中でも五本の指に入る実力者である。
「フリードさんも大変ですね」
「いえ、これが私の仕事ですから」
きっぱりとした口調でフリードが答える。彼は騎士団の人間にしては珍しく僕を蔑んだり、馬鹿にしたりしない。
「その仕事が一番苦痛だと思いますよ? こんなダメ親父に付き合ってても、いいことなんてないですから」
「三日に一度くらいは勉強になることがありますので……いや、五日に一度ですね」
「なるほど、それは驚きました。僕はてっきり一月に一度くらいのペースかと思っていました」
「おいおいおい……相変わらず辛辣な物言いだな」
グラスに酒を注ぎながらアレクシスがジト目を向けるが、フリードは涼しい顔をしている。
「私が総騎士団長になるための踏み台……ゴホンッ! 尊敬すべき上司であるため、私はこの仕事に誇りを持っていますよ」
「本音がダダ漏れなんだよ!」
ふむ、やはりフリードはいいキャラしている。仕事もできて、才能もあって、ユーモアもある彼のことが結構気に入っていた。隣にいるチャラ男と同じくらいの年頃だというのに、その差は天と地ほどにある。
「ったく……俺の側近のくせに全然敬意を払わないんだよ、こいつは」
「敬意を払わない者が悪いのではなく、敬意を払いたくなる行いをしない者が悪いかと」
僕が冷たい視線を向けながら言うと、なぜかアレクシスは嬉しそうにグラスを一気に傾けた。
「……っはー! 俺の事をそんな目で見る奴は騎士団には中々いないぜ? やっぱりお前は最高だな!」
「……フリードさんも似たような目で見てると思いますけど?」
「えぇ、そうですね。虫ケラを見るような目でいつも見ています」
「お前はそんな目で見るんじゃねぇよ!」
アレクシスが乱暴にグラスを叩きつける。その机、来賓ように高級なやつを買ってるんだから壊したら弁償だからね。
「とにかく、だ。俺はレイ、お前のことが気に入ってんだ。だから、さっさとあいつと結婚して俺の息子になれ!」
「……急にぶっ飛んだ話を振らないでくれませんか?」
「結婚? カシラ、結婚するんすか? いやーやめた方がいいわー。女遊び出来なくなりますよ?」
それまで黙って酒を飲んでいたヴォルフがここぞとばかりに食いついてきた。
「しないから。全然する気ないから」
「なんでだ? 親の俺が言うのもなんだが、あれは別嬪だぞ? それに、荒削りだが剣技も光るものがある」
「……こういう時、本人の気持ちを尊重しろとか言って断るんですけど」
「それは無理ですね。彼女はレイさんにぞっこんですから」
フリードがこともなげに僕の言葉の続きを言ってくれた。その通りなんだよね。僕でもわかるくらいに好意を持たれている。
「付き合うくらいならいいんじゃないっすか? 旦那の娘さんはかなりレベル高いっしょ?」
「おっ! 女を見る目が厳しいヴォルフのお墨付きとくりゃ百人力だ! 他に問題なんてねぇだろ!」
「そうですね、彼女は魅力的だと思いますよ。しいて問題をあげるとしたら父親になる男ですかね」
「あぁ、それは致命傷だ。アレクシス様、諦めましょう」
僕の言葉に納得したフリードがうんうん、と首を縦に振る。やっぱり彼はベストだ。
「たっだいまー! ……って、うえぇ!酒臭っ!!」
そんな話をしていたら玄関の方から元気のいい声が聞こえてきた。そして、近づいてくる二人分の足音。
やれやれ……騒がしいのが帰ってきたみたいだね。
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