S級魔法士は学院に入学する〜平穏な学院生活は諦めてます〜(仮)
24話 学院生徒A視点
僕の名前はジミー。
ごく平凡な平民の家に育ち僕に魔法の才能がある事が分かった時の両親はすごく喜んでくれた。
魔法士とは希少性が高くそれだけで将来は安泰と言っても過言ではない。
家族には言えないが魔法士より実家の花屋を継ぎたいと思っていた。
でも僕に期待してる家族が裏切られずその思いは伝えられず学院に入学する事になった。もちろん入ったからには一生懸命勉強したいし魔法士としての技量を高めていきたい。
そんな事を考えながら入学式で学院の門をくぐった時は衝撃を受けた。
白、黄、赤、ピンク、青、紫と様々な鮮やかな色のとても綺麗なヒヤシンスという花が出迎える。
──美しい
僕は花達に水をあげている1人の女性に釘付けになってしまっていた。
「あ、あの!」
「だれ?新入生?」
「はい!えっとその…あの綺麗です!あ、花が!いやもちもろあのその──」
「なにテンパってんの君面白いね。花に興味あるの?」
「家が花屋をしてて…綺麗な花を見るとつい…」
『あー!もう委員長来てたんですか!?』
『今日は1番乗りだと思ったのに〜』
『やっぱり1番綺麗な花は委員長…ふふ』
これが僕とルディ・バスケス先輩との出会いであった。
◇◇◇
どうやら花壇は美化委員会が管理してるということで花が好きな僕は自然と委員会に入った。
学院の敷地は広大で様々な花や植物が植えてあったり生息していたりする。
毎日朝夕と担当を作り管理を行っていた。
毎日大変だがそれは苦になることは無くむしろ毎日楽しんでいた。
でも学院内の雰囲気は日に日に悪くなり生徒間の揉め事が頻発するようになる。
うちの委員会は他の委員会の様に派閥にも属してないので委員会内での差別とかもない。
ルディ先輩にそれとなく聞くと
『派閥とかめんどくさい』
『正直どうでもいい』
自分が興味ある事以外には特に関心を示さない方らしい。
「ジミー今日総会だし早めに水やり済ましとくぞ。委員長は総会関係で来れないって言ってたからな」
先輩にそう促され今日の担当10人程で丁寧に水やりをしていく。
──ドーーーッン!!
爆発音!?それに爆風!?
正門が爆発しそこから武装した集団が侵入してきた。
「花壇を守れぇぇーー!!!」
それは副委員長の叫びだった。
異常な出来事に固まっていたみんなが我に返る。防御魔法で相手の魔法や魔道具での攻撃を防ぐ者、相手を牽制するために攻撃魔法を放つ者それぞれが必死に花壇を守る為に動き出す。
物量差は歴然、守りきれる物にも限度があり花壇にも被害が出始める。
メンバー達も襲撃者の攻撃があたり次々と戦闘不能になっていく、僕は絶望を感じていた。
──なんて無力なんだ花も守れないなんて
敵の攻撃も激しさを増し覚悟した時だった地面から木樹の盾が横一直線に現れみんなを守ってくれる。
『委員長だ!』
『ルディ様がきてくれた!』
『すいません委員長守りきれなくて…』
喜ぶ者先輩に謝る者みな反応はそれぞれ違う。
「みんなよく頑張った」
ただ先輩は一言伝えると地面から自分よりも高い花が咲き出す。俺だけではなくみんなの所にもだ。その花が咲き雫が一滴僕に落ちてきた途端身体中の怪我痛み魔力欠乏による疲労感さえなくなった、みんな先輩の魔法で癒されていたのだ。
「お前もやるじゃん。ナヨナヨしてるだけの男じゃなくて勇敢な所もあるんだな」
僕は先輩の笑顔を初めてみた。
「後は私がやるから休んでな」
そこからは一方的な魔法戦が繰り広げられる。
敵の魔法も地面から出てきた無数の木樹を突破出来ずに手をこまねいていた。
「ミリアがいってた反貴族の洗脳された学生も紛れてるわね」
地面からの木樹は更に増え襲撃者達を飲み込み一帯に樹海が出来上がる。
「な、魔法が発動しない!?」
「いやこれは発動しないんじゃなくて魔力が吸収されて魔法式が崩れていってるのか!?」
魔法を行使したくてもそれが出来ない襲撃者達は慌てふためいていた。
「無駄だよ、ここはもう私のテリトリー」
樹海から伸びた蔓が襲撃者達を次々と拘束し戦闘不能にしていく。
大自然を操る固有魔法──
その姿はまるで妖精のようで
「妖精女王…」
僕はつい見蕩れて心に浮かんだ言葉を発してしまっていた。
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