S級魔法士は学院に入学する〜平穏な学院生活は諦めてます〜(仮)

マッサン

22話 デール視点





貴族は選ばれた者達、平民とは違うのだ。
自分の中に深く根付いた選民意識が常識だとそれが当たり前だとそう思っていた。だというのにこの学院に入学してからそれが崩れ去っていくような──

「何黄昏てるのよおもらしデール」
「だ、誰だお前は?」

ただ1人で静かな所にいたくて学院近く河川敷に座っていると声を掛けられる。

「はぁー!?誰だお前はって失礼ね!同じ一年風紀委員のメンバーでちゃんと委員会初日に自己紹介したはずだけど!」
「そうか」
「そうか…じゃないわよ!何その無愛想な返しわ!こんな所で何してるのよ?」
「お前には関け──」
「フィオナよ!フィ・オ・ナ!おもらしデール」
「お、おもらしデールはやめろ!!」

なんなんだこの女は…
俺に絡んできて何がしたいんだ?

「話してみなさいよ!少しは楽になるわよ」
「お前──フィオナには関係ない」
「お貴族様だから平民には話せないか〜まぁあんだけ初日に上の貴族にこてんぱんにやられたら心も折れちゃうか〜!!」
「いや別にそんな事は!あ、いやまぁその──」

こいつ、ずげずげと俺の中に入ってくる

「あのリリス様だっけ?六魔公の人、凄かったわね〜!でもデールもすごかった!」
「俺が…?」
「そうよ!あの溶岩兵?すごいじゃない!私にはあんな魔法できないもの」

─ふっ、すごいか

「だが、六魔公には手も足もでなかった」
「まぁそこは才能よ才能よ!そりゃあんた達がいう血筋のすごさってやつよ!」

バシバシ俺の背中を叩くな。俺を慰めたいのか更に心を折りたいのかどっちなんだこの女は──

「平民は才能なんて持ってる人少ないからね!魔力はあるけど生まれ持った才能には貴族と差がある。努力だけでしか成り上がれない私たちとは違ってデールは才能+努力ですごい魔法士にだってなれるじゃない!」

──努力か

俺は風紀委員会に入った時にレイと話した事を思い出しリリスとの決闘を振り返る。

魔法式を見ただけで魔法式の理解そしてそれを再現できるだけの力量、一体どれだけの──

「努力をしてきたんだ…」
「何かいった?」
「あ、いやなにもない」


◇◇◇


フィオナと河川敷であった後から風紀委員の見回りも一緒になる事も多くそれなりに話す機会も増える。
あれだけ選民意識のあった俺が平民であるカレンと接する事に抵抗を無くすのに時間はかからなかった。

──人の心に勝手に入り込む不思議な奴だ
それが俺が抱いたカレンの印象であっ。


「ねぇデール、今日の生徒総会何かおきると思う?」
「起きるかもしれないし起きないかもしれない。それは分からないが何が起きてもいいように気を抜かないようにしないとな」

──クスッ

「フィオナ何がおかしい?」
「えーだってデール変わったなって」

フィオナにそう言われ思う。
確かに自分でも何か変わったような
でもそれを認めるのは何故かむず痒くて

「別にそんな事はない」

俺はこれ以上の追求を避けるために足早に見回りに進める。場所は学院第二棟、総会会場とは離れた場所であり異常がないか回っていると話声が聞こえてきた。

『今日で全てが変わる』

ん?不審に思った俺はフィオナに声を掛け隠れるようにして様子を伺う。

『もう時期、武装した革命軍が学院を襲撃する。それに呼応して反貴族の平民達も動き出す』
『平民達も愚かだよな。革命軍の駒になるんだから』
『それを言うなら俺たちの駒にもなるだろ』
『あぁ、革命軍だけでなく平民学生まで反旗を翻せば皇帝派の貴族はみんなこっちに付くだろ。そして今回の騒動の責任をとって会長には退場してもらいこの学院は俺達のものとなる』
『オルタは予定通りこの襲撃に紛れて王女を暗殺するんだろ?』
『そうだ。あの王女は厄介だからなこれからの事を考えると余計にな』
『なぁ革命軍はこの襲撃で何を成したいんだ?』
『革命軍はこの襲撃を通して自分達の存在感のアピール、帝国内の貴族平民の感情悪化それに一年のリーシャとかいうエルフの女を連れ去るのが目的みたいだな』
『エルフの女ね〜奴隷にしたいとかそんなんじゃないんだろ?』
『それは知らん。まぁこっちの思う通りに動いてくれればそれでいい』
『ドベールとギルは計画通り皇帝派と共に革命軍と反旗を翻した平民共を──』

──なんなんだよこの会話は
革命軍と貴族派が通じてる?
襲撃、王女暗殺、生徒誘拐どれもヤバい事だらけだろ。
それに話してるのはニグブル先輩とあれは他の委員長と複数の貴族派の先輩達じゃないか。


「お前達何をしている!?」

しまった後ろから誰か来ているのに気づかなかったのか

「フィオナ!この事を会長に伝えるんだ!」
「デールは!?」
「俺はこいつらを足止めする!」
「1人じゃ無理だって!私も──」
「いいから行け!!お前がいても邪魔だ」

フィオナは歯を食いしばい悔しさをみせ納得がいってないが会長に伝えるために走り出す。

その直後大きな爆発音が複数おきた。




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