S級魔法士は学院に入学する〜平穏な学院生活は諦めてます〜(仮)
9話
観客席と仕切りのある演習場へと足を踏み入れてきたのはこの国の第三皇女セレーネ・ウォル・ナヴァーロであった。
リリスそしてデールへと視線を移動させそのまままたリリスへと視線を戻し言葉を発する。
「学院初日のお昼休みから貴方達は何をやっているのかしら?こんな騒動まで起こして…」
そういうとセレーネはため息を事態の収拾を図ろうとした。
「みなさん届け出のない決闘は学院則違反ですわよ。速やかに皆さん解散して下さい」
そういうと観客席でセレーネに見蕩れていた生徒を何人か呼びデールを一応医療室へ連れていくよう指示するとリリスに向かい場所を移す事を伝え俺たち一行はセレーネと共に生徒が集中してる食堂とは近い人が少ない中庭の方で話をする事になった。
「全く貴方という人は…」
悩みの種を抱えるかようにこめかみを指で抑えながらセレーネが呟く。
「仕方ないじゃない喧嘩を売ってきたのはあいつの方だわ」
リリスには1%も自分が悪くないと言いそうな自分が怒られる事に不満のある表情でセレーネから視線を逸らす
「そもそも貴方は貴族、それも六魔公の一家としての───」
「あー!もう分かったわよ!でもあいつはレイを下民呼ばわりしたのよ」
「何ですってレイを下民呼ばわりに…?」
あれ?さっきまでリリスを説教してたはずのセレーネは眉間がピクピクと動き何かどす黒いオーラを放っているのは俺の気のせいか?
「確か彼はデュパリエ家でしたよね?よし取り潰しましょう」
いやいやいやセレーネ皇女様とんでもない事をいいだしてるのですが…
侯爵家をとり潰すって帝国にかなりの混乱が生じる気がするんですけど!!
「確かデュパリエ家は選民意識も強く貴族至上主義を掲げていたはず。それを利用…理由してはまだ何か…そうだわあれを───」
顎に指を添え何かを考えながらブツブツ呟いているがそれが物騒すぎる事に俺の額に冷や汗が浮かぶ。
これ以上の思考をこの皇女にさせてはいけないと俺の直感に従い話題を逸らすために声をかける。
「セレーネ皇女様お久しぶりでごさいます」
俺の声掛けに思考の沼にハマりこんでいたセレーネはハッとしたような表情をしてこちらに顔を向ける。
「もう!レイったらセレーネ皇女なんて他人行儀な!私とレイの中じゃない。いつものようにセレーネて呼んで欲しいな」
そう言いながら俺の顔に顔を近づいて覗き込んでくる。
近い近い近い!何でセレーネはいつも近いんだよぉぉ!!
「セレーネ、貴方いつもレイに近いのよ!」
リリスは俺とセレーネの間に入り込み物理的に俺たちの距離を取るように両腕で左右に俺たちを引き離した。
「んもう、別にいいじゃない。リリスには関係ないわ!ねぇそうよねレイ?」
「あぁいやそれは…そもそも皇女が異性とそんなに距離を縮めるのは如何なものとは思うけどな」
俺の返答が自分の意に沿わず気に食わなかったのか口を尖らせそっぽを向いて今度は後ろで控えている女性に話をふる。
セレーネの後ろにいるのはセレーネの傍付き兼護衛も務めるリュカという同い歳の女性なのだが俺はこの子に嫌われている。
今もというか演習場で会った時から鬼の形相で睨まれているのだ。ただセレーネが振り返った時には何食わぬ顔を装う。
俺は彼女に何かしたのだろうか全く心当たりがない俺にはどうしようもない。
「セレーネ様!このような男に近づいてはなりません!私には分かるのですこいつはセレーネ様を誑かして毒牙にかけようと───」
「もうリュカはいつもそんな事を言うんだから〜」
リュカに話を振ってもこのような反応だろうと分かっていながらリュカに話を振る辺りセレーネはこの状況を楽しんでいるのだろう。
「と、それよりそちらの方たちは?」
俺たちで話していたが後ろにエミリヤとエドがいる事を思い出し話題転換とエド達との事を気にしてのセレーネの気遣いだと思った。
「私たちのクラスメイトのエミリヤとエドよ」
リリスはセレーネ達によく見えるように横に移動し手ざしで2人を紹介くる。
「え、エミリヤです。よよよよろしくお願いします!」
「おれ、あいや私はエドといいます」
2人とも目の前にいるのが帝国の皇女ということもありガチガチに緊張しエドなんて顔に似合わず私なんて言った時には吹き出しそうになったのを必死に我慢するのには苦労物だ。
「ご丁寧にありがとうございます改めて自己紹介致しますね。セレーネ・ウォル・ナヴァーロです。これからはこの学院の学友ですし学院内では皇族貴族平民は平等です。どうかセレーネとお呼び下さいそして仲良くしてもらえると嬉しいです」
最後に見せたセレーネの笑顔にはエドだけでなく同性エミリヤも頬を紅く染め魅入っていた。
「2人とも騙されちゃダメよ!セレーネは猫を被ってるのよ!本当はこんなお淑やかな子じゃないわ」
「な!?リリス何を言ってるのよ!」
相手が皇女なのにこの言いようは六魔公という肩書きだけでなく同い歳で昔からの友達としてからの2人の関係性が伺えた。
午後からの講義も近くなっていたので話もそこそこに切り上げ挨拶をしてお互いの教室へと帰っていく。
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