オペラ座の変人

朽木桜斎

第2場 藤枝孝宏、渋澤教授のゼミ室に行く

黒龍館こくりゅうかん大学のキャンパスは街を一望できる小高い丘の上にあり、その入り口まではらせん状の軽い勾配こうばいの坂道になっている。

軽いとはいっても、体力に自信のない僕にはけっこうな運動をいる。

まだ初夏とはいえ、真夏並みのうだるような暑さが、拍車はくしゃをかけるように僕の体力を奪っていく。

ニイニイゼミの大合唱を鑑賞しつつ、てくてくと坂道をのぼってキャンパスの入り口にたどり着いたころには、僕の上着のシャツの両脇は汗でびっしょりになっていた。
まったく、なんでこんな場所に大学なんて作ったんだか。

キャンパスの入り口にでかでかとそびえる漆黒しっこくの門・通称『黒門くろもん』をくぐり、まだ濃い緑色をたたえたイチョウ並木のプロムナードを通ってしばらく歩くと、中心に巨大な噴水を有した公園風の広場に出る。

僕が普段拠点きょてんにしている文学部三号館は、そこを左に折れて、五分ほど歩いた場所にある。

腕時計をひょいと視界にかざすと、時刻は8時55分。

キャンパス内には学生や教職員がちらほら散見される。

小走りで移動している連中は、一講目の講義に間に合わせようと急いでいる、といったところだろう。

そんな人々を横目に見つつ、僕は昨日の出来事について思考をめぐらせていた。

渋澤達朗しぶさわ たつろう、黒龍館大学文学部美学芸術学科教授。

以前から聞いていた噂と、昨夜の飲み屋街での立ち振る舞いを照合しても、まさしく『オペラ座の変人』――

なりゆきでオペラ鑑賞の指南を受けることになったものの、本当にあんな人で大丈夫なんだろうか?

僕の人生経験上、ああいう人間は自分の趣味を他人に押しつけるのが大好物な気がする。

オペラの聴き方を教えてもらうだけでいいはずが、気がついたら音楽鑑賞廃人みたくされてしまったりして!?

音楽はなんてせいぜいJ-POPと一部の洋楽くらいしか聴かない僕が、そもそもオペラに挑戦しようだなんてはなから無理だったのでは?

でも朱音あかねさんがせっかく誘ってくれた手前、いまさら引き返せないし、うーむ……

いつもの癖で脳内循環論法を展開しながら歩いていたとき、一講目の講義の開始を告げるチャイムが、キャンパス内にこだました。

ハッとわれに返って顔を上げると、目の前は文学部三号館の入り口。

しまった、これでは昨日と同じパターンではないか!

またしても自分の醜態に呆れながら、僕は建物の中へと足を踏み入れた――



渋澤教授のゼミ室があるのは、僕の調査によれば3階だ。

ところがこの建物には、エレベーターというものは存在しない。

キャンパスにたどり着いた時点ですでに汗だくだというのに、やれやれ、まだ運動しなければならないのか。

ふてくされながらも僕はへばりつくように階段をあがった。

3階北向き右側、ちょうどキャンパス入り口に向かい合う位置に、教授のゼミ室はあるはずだ。

果たしてそこには『美学芸術学セミナー第三号室』とめい打たれたアクリル看板がはめこまれている。

ゼミ室右手には『渋澤達朗』とやはり銘打たれた部屋がある。

そちらが教授個人の部屋と考えられるから、やはりこのゼミ室で間違いないだろう。

僕は呼吸を整え、一息置き、意を決してドアをノックした。

反応がない。

もう一度ノック。

やはり反応がない。

教授は外出中なんだろうか?

ノブに手をかけると鍵は開いている。

なるべく音を立てないよう配慮して、ちょうど自分の顔の横幅くらいドアを開けてみる。

「失礼します……」

視線を前にやると、ちょうどそこに渋澤教授が仁王立におうだちしていた。

びっくりして閉口する僕に、教授はにたにたしたみを浮かべた。

「あの、おはようございます……」

「おはよう! 調子はどうだい? 僕はとってもうきうきしてるんだ。だって世界はこんなに美しいんだからね!」

「……」

「……」

「失礼しました」

「おい、待ちなさい!」

「いや、やっぱりちょっと、かわいそうな方なのかと……」

「かわいそうなとは失礼な。いま私が歌ったのは、グスタフ・マーラーの歌曲集『さすらう若人わこうどの歌』の一節ひとふしだよ。若き日のマーラーが自身で作詞作曲した青春の歌なんだ。春にぴったりの一曲だと思わないかい?」

「いまは夏ですが」

「細かいことを気にするな、ハゲるぞ」

「ハゲるって……」

「まあ、立ち話もなんだ。入りなさい」

「……失礼します」

僕はいそいそと、室内に足を踏み入れた。

学校の教室ほどの空間の両側の壁に、本棚が整列している。

床から天井まで、締め上げるようにびっしりと。

右側の本棚は資料専用なのか、日本語・英語から何語か判別不可能な分厚いハードカバーの文献や、論文とおぼしきたぐいの書類がずらりと並んでいる。

いっぽう左側の本棚は、音楽関連のCDやらDVDやらで埋め尽くされている。

いかにも「芸術の研究やってます!」ってな感じだ。

正面は左の隅にベランダに通じると思われるガラス戸と、残りはオーディオ類のスペースと小さなキッチン。

渋澤教授はそのキッチンで、なにやらお湯を沸かしたりしている。

コーヒーを作っているようだ。

「突っ立ってないで、遠慮せずかけてくれたまえ」

「は、はい」

僕はゼミ室中央の大きなテーブルに腰かけた。

「コーヒーは大丈夫だよね」

「飲めますが……?」

「いや、たまに飲めない者がいるから、一応断ったのだよ」

意外に優しい、というか心配性? なのかと思った。

教授は二人分のコーヒーを真っ白なカップに注いで持ってくると、一方をテーブルの僕の前に置いて、向かい合うように自分も腰をおろした。

「改めて、ここのあるじの渋澤だ。藤枝孝宏ふじえだ たかひろくんであっていたよね?」

「はい。名前を覚えていてくれて光栄です」

「はは、まあそう固くなるな。リラックスしたらいい」

「恐縮です」

「ふむ。では藤枝君の華々しいオペラ・デビューの前祝いに乾杯だ。それとも『君の瞳に』のほうがよいかね?」

僕は吐きそうになった。

「先生はまさか……」

「勘違いするなよ、冗談のわからんやつだな。たとえ相手がナルキッソスだろうとアドニスだろうと、私を奮い立たせるにはいたるまい」

要するに色ボケなだけなんだろうと思ったが、あえてつっこまないことにして、僕はコーヒーをすすった。

ブラックコーヒーの苦くも芳醇な味わいが口いっぱいに広がる。

「うまいですね」

「ブラジル産の豆だよ。水はアルプス、メーカーはイタリア製。最近はミルにもこだわっていてね。君のような貧乏学生には到底無理なたしなみであろう? うむ、断じて無理だ」

いちいち玄人くろうとっぷりを主張してくるのがかんに障ったものの、僕は黙ってコーヒーをすすり続けた。

渋澤教授はコーヒーを飲み干すと、一呼吸入れて語り始めた。

「さて、何から始めようか」

あごをじょりじょり言わせながら、なにやら思考をめぐらせている様子だ。

「君はオペラと聞いてどんなものを連想ないしイメージするかな?」

突然の質問に、僕は少し考えて、

「なんというか、太ったオバチャンたちが金切かなきごえをあげているとか……クラシックの中でも特に高尚こうしょうで、ハードルが高い感じですかね……」

若干じゃっかん遠慮したつもりで答えた。

「ふむ、およそ一般人が持つオペラのイメージそのままだね」

教授はかすかにうつむいて、またあごをじょりじょり言わすと、

「まあ、私の質問が少々、抽象的で意地悪だったかな」

再び僕のほうに視線を移して、

「オペラとはそうだな、いうなれば『昼ドラ』の世界だよ」

意外な単語を口にした。

「『昼ドラ』……あのドロドロしたやつですか……?」

「たとえばモーツァルトの『フィガロの結婚』。君もタイトルくらいは聞いたことがあるだろう?」

「昔、音楽の授業で『序曲』を鑑賞した程度ですが」

「じゅうぶんだ。世間ではあの神オペラの、ほんの出だししか認知されていないという事実が、腹立たしくもあるが……まずその『フィガロ』を例に説明しよう」

ちょっと面白そうかもと、姿勢が前のめりになる。

「『フィガロの結婚』の主人公、町の何でも屋フィガロと、そのフィアンセのスザンナは結婚を控えていて、領主のアルマヴィーヴァ伯爵から、彼のやかたの一室をあてがわれている。だがそれは、伯爵があわよくば、スザンナをフィガロから寝取ろうと画策してのことだった!」

「なっ、なんと! そんな内容のオペラだんたんですか!?」

「知らなかっただろう。『フィガロ』に限らず、タイトルだけで内容はほとんど知られていない作品があまりに多い。これも腹立たしいことだね」

「他人の結婚相手を寝取るだなんて、ずいぶん過激なんですね」

「なかなか刺激的だろう。大雑把だが、最終的にその伯爵をギャフンと言わせて大団円となる筋立てだね」

「僕のというか、一般的なオペラのイメージとは、だいぶ違っているんですね」

「そこが忸怩じくじたるところでね。芸術のミッシング・リンクというか、われわれ業界の人間や音楽愛好家も、もどかしく感じている点だよ。オペラなんてすすめても、まず誰も相手にしてくれないからね。いまの藤枝君のように、知れば興味のわく世界なのにさ」

「確かにオペラと聞いただけで、ものに触るような気分でしたが、先生のおっしゃるとおり、少しでも知識を得たことで印象が変わりました」

「うんうん、その調子だ。芸術といえど、しょせん人間の作り出したものだからね。同じ人間に理解できないはずはないんだよ」

僕はなんだか自信がついてきた気がした。

渋澤教授の話をもっと聞きたいと思った。

教授はそれを察したようだ。

「ではもう一点、紹介しよう。昨晩私が居酒屋『いのししてい』の女将おかみをくどくときに歌った『サロメ』だが――」

「リヒャルト・シュトラウス、でしたっけ」

「ほう、よく覚えていたね」

「状況があまりにも衝撃的だったものですから」

「おほん、見苦しいかぎりだ。ん? まさか藤枝くん、君はそれをネタに、私を恐喝きょうかつしようなどともくろんでいるのではあるまいね?」

「めっ、めっそうもありません! そんな気は毛頭もうとう……」

「ふはは、冗談だよ。オペラ好きにそんな悪党はいないからね」

どの口がと、僕は思った。

「話を戻そう。『サロメ』の主人公、王女サロメは、幽閉されている預言者ヨカナーン、洗礼者ヨハネのことなんだが、彼にぞっこんになってしまってね。義父王ヘロデからダンスをせがまれ、踊ってくれれば所望するものを何でも与えるとわれる。しかし踊り終えたサロメが望んだものとは、なんとヨカナーンの『首』だった!」

「くっ、『首』ですか……!?」

「サロメは切り落とされたヨカナーンの首に接吻せっぷんし、愛の言葉をかける。そしてその光景に恐怖したヘロデは、「殺せ、あの女を!」と叫ぶ。果たしてサロメは打ち殺され、幕は下りる。おおよそ、こんな筋立てだね」

「サロメは……」

「ネクロフィリアだったのだね。原作はイギリスのオスカー・ワイルドによる同名の戯曲だが、そのドイツ語訳をそっくりそのまま台本に使って作曲されたんだ。初演時は大変なスキャンダルになってね、一時期上演禁止にされたこともあったほどなんだよ。ちなみにだが、初演についてはマーラーが並々ならぬ意欲を燃やしていたんだが、結局念願は叶わなかったという裏話もある」

「なんというか……先生のおっしゃるとおり、『昼ドラ』のようにドロドロした世界ですね」

「だろう。ドロドロだろう」

「しかし……仮にも芸術、メインカルチャーがそんな代物でいいんでしょうか……?」

「大衆が求めているからね。芸術と言えば聞こえはいいが、しょせんは人間の営みだ。人間の考えることなど、昔も今もそうそう変わらないということだよ。『大衆はそこまで賢くない』と言ったのはアリストテレスだったかな? 大衆という概念なりコミュニティなりを馬鹿にするわけではないが、誰しもギリシャ神話の英雄劇より、『昼ドラ』を見たいのさ。誤解を恐れずに言えば、芸術とはそう、人間の欲望の『合法的な』はけ口なんだよ」

考えたこともなかった。

芸術なんて一部の限られた人間だけのものだと思い込んでいたけど……

「そんなわけで、オペラを鑑賞するのも、アダルトビデオを鑑賞するのも、人間の欲望を満たすという意味においては等価な行為なのだよ。あくまで持論だがね。これは内緒だよ? 同業者に知られたら袋叩きにされるからな」

そんな……

オペラとアダルトビデオを同列に語るなんて……

でも渋澤教授の語り口は理にかなっていて、奇妙な説得力があった。

僕が呆気あっけに取られている間、教授は2杯目のコーヒーをカップに注いでいた。

「さて、そろそろ本題、君が次の日曜日に鑑賞する、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの歌劇『ドン・ジョヴァンニ』について話そうか」

うおっと緊張が走った。

モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』――

朱音さんが誘ってくれたオペラの公演、その演目が確かにそれだ。

ここまでの流れから、教授は少なくともこの分野に関しては信用に足る人物のようだ。

きっと彼ならうまいこと僕を、音楽の魔術にかけてくれることだろう。

僕は教授の話を1ミリたりとも聞き逃すまいと、全神経を集中させた。

その瞬間――

「おや?」

携帯電話の着信音が、チノパンのポケットの布地を通して、ゼミ室にこだました。

それにより僕の集中力の糸がプツンと断ち切れたのは、言うまでもない。

「メールかね?」

「はい。たぶん、大学の友人からです」

「ドリーム・シアターの『サラウンデッド』だね」

着信音からアーティストと曲名を即座に言い当てられ、僕はキョトンとした。

「なかなか、いいセンスじゃないか」

「先生はオペラの研究者だと……」

「ははは、私は古今東西、あらゆる音楽に通じているのだよ。音楽あるところにこの渋澤ありだ。知らない音楽などないとさえ自負じふしている」

すごい自信だ。

しかもはったりに聞こえない気負きおいすらある。

「ドリーム・シアター、好きなのかい?」

「ええ、『イメージズ・アンド・ワーズ』と『メトロポリス パート2』くらいしかまともに聴きませんが。『アウェイク』みたいな暗くて重いのは苦手で」

「馬鹿者、『アウェイク』は神のアルバムだぞ。とっつきは悪いかもしれんが、聴けば聴くほど味が出て、飽きがこない。私はケヴィン・ムーアのリリックが好きでね。『アウェイク』では3曲に作詞しているが、平易な英単語の組み合わせで、複雑な世界観を形成している。インスト・ナンバーの神曲『エロトマニア』も所収だしね」

突然ドリーム・シアターについて語りだされ、僕はあたふたした。

音楽なら何でも知っているのか、この人は。

「エロトマニア、恋愛妄想もうそうの意味だね。いまの藤枝君のことじゃないのか? 彼女を失望させないためとはいえ、度を越さんように注意したまえよ」

さすがの僕もむっとして、

「先生こそ、『いのしし亭』の女将さんを、しつこくくどいていると聞きましたが……あと、奥さんに逃げられたとも……」

がらにもなくつっかかってしまった。

教授は豚みたいに鼻をひくつかせて、かすかに引きつった顔をしている。

「あ……すみませんっ! 失礼しました……」

「いや、いいんだ。私も口が過ぎた、謝るよ。もうこの話題はやめにしよう。ところで藤枝くん、メール」

「え、でも」

「かまわんかまわん、確認したまえ」

幾分いくぶんかバツが悪いと思いながら、僕は携帯に着信したメールを確認した。

アブからか。

―― タカよ! 俺はもう腹が減って、おなかと背中がくっつきそうだ! 12時に学食関が原で待ち合わせるぞ! 遅参ちさんすれば必ずや神君しんくんの超絶無比なるおとがめが下るであろう! ――

虻川集一あぶかわ しゅういちとは高校からの腐れ縁で、彼は医学部の所属だ。

昔からテストでも運動でも上位の成績を収めていて、大学に入ってからも試験の順位は常に一桁ひとけたらしい。

メールの内容は九分九厘くぶくりんジョークなのだが、頭が大丈夫なのかと本気で疑うこともしばしばある。

こいつといい目の前の渋澤教授といい、まったく頭脳が優秀な人間は狂気と紙一重なのかとつくづく思う。

「友達からだった?」

「はい、12時に学食で待ち合わせだそうです」

「ああそうか、もうこんな時間だものね」

教授が腕時計を見ての一言に、僕も自分のを視線にかざした。

11時40分――

僕がここに来たのが9時頃だから、もう2時間以上経っていたということか。

最初はどうなることやらと思っていたが、時間を忘れて教授の話に聞き入っていたわけだから、ふむ、オペラも案外、食わず嫌いしていただけかもしれない。なんだかいけるような気がしてきたぞ。

「もっと先生の話をお聞きしたいところですが」

「かまわんかまわん。また時間のあるときにここをたずねなさい。講義のない時間帯は基本的にここにいるからさ」

「お世話になってばかりで恐縮です」

「彼女、ものにできるといいね」

「……はい」

悟られないように気をつけたが、教授のことだから内心ほくそ笑んでいるのだろう。

僕は手早く携帯をしまい、かばんを肩から下げた。

「どうも失礼しました。その、今後ともよろしくお願いいたします」

「昼飯の食いすぎで午後の講義で爆睡しないようにな」

「あれ、そういえば先生は、お昼は」

鹿角庵ろっかくあんの鴨せいろを注文してあるんだ。信州戸隠風しんしゅうとがくれふうのうまい店だよ」

「貧乏学生には無理なたしなみですね」

僕らは笑いあった。

席を立とうとすると、教授は3杯目のコーヒーを入れにキッチンに向かった。

どんだけコーヒーが好きなんだよ。

「失礼しました」

「いつでも待っているよ。恋人を待つようにね」

再び飛び出した趣味の悪いジョークに、またも吐きそうになった。

これから昼飯だっつーの。

そそくさとゼミ室をあとにし、ドアを閉めた上で深呼吸した。

そのタイミングで携帯の着信音――

いやな予感で腕時計をのぞくと、針は11時55分。

メールは案の定、アブからだ。

―― タカよ、俺はとっくに着いてお前を待ってる。一日が何時間かわかるか? 24時間だ。一年は? 365日だ。俺はなタカ、地球が一日に一回りするのかと思うとゾッとする。だから時計の針を見ると目が回る。タカ、お前はいいやつだ。だがモラルが足りねえ。モラルだ。ドウトクテキってことだ。うんぬん ――

要するに早く来いってことだろ。

僕の周りには馬鹿しかいないのか?

いや、一番馬鹿なのは、ひょっとして僕なのか?

にわかに発動しかけた循環論法を抑えつつ、僕は学食へ向けてダッシュした――

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