おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第644話

「皆、おはよう!今日はノルウィンドの案内よろしくね!」

「はいよ……ったく、朝っぱらから元気な奴だなぁ。」

「えへへ、それが私の魅力だからねぇ!どうどう?惚れ直しちゃった?」

「いや、そもそもお前に惚れたっていう覚えはないんだが……」

「えー!!」

 出掛ける準備万端で部屋にやって来たジーナとそんなやり取りをしていると、背後からソファーに座った親父さんの呆れた様なため息とルーシーさんのクスクスという笑い声が聞こえてきた。

「ジーナちゃん、そんなに張り切りすぎると体力が持ちませんよ。」

「ふふーん、大丈夫だよお母さん!これでもお父さんに鍛えられてるからさ!ね?」

「あぁ、だけど九条さんにご迷惑をお掛けするのは辺までにしておけよ。いい加減にしないと帰った後の仕事量を倍に増やすからな。」

「うぐっ!そ、それだけは勘弁して下さい……」

 親父さんが放った一言のおかげでようやくジーナが大人しくなった後、リビングに置かれたダイニングテーブルを囲う様に集まった俺達は宿屋を出る前にちょっとした確認作業をしていた。

「九条さん、この後は確かお知り合いの方がやっているお店に行くんでしたよね?」

「えぇ、そこで雪遊びをする道具を借りようかと思っています。」

「うーん、雪遊びかぁ……それって本当に面白いの?」

「はい!とっても面白いですよ!」

「山頂から雪の上を滑って行く爽快感。ジーナならきっと気に入ると思うよ。」

「へぇ~それなら楽しみにしていようかな!2人もやってみるよね?」

「うーん、どうしましょう……私、あんまりそういった遊びは得意ではなくて……」

「それならのんびりと遊べる道具を借りれば良いんじゃない?」

「ですね!本当に色んな物がありますから、探してみるのも良いかもしれません!」

「そうですか?では、そうしてみますね。」

「……九条さん、温泉巡りはどうする?」

「ん?まぁそれは昼飯を食ってから考えるって感じだな。俺の予想だとジーナの奴が雪滑りを続けたくなる可能性が大いにある気がするし……」

「おぉ!そこまで凄い感じなんだ!何だがワクワクしてきたよ!」

「はっはっは、はしゃぎ過ぎて怪我をしたりせんようにな。」

「分かってるって!よしっ、それじゃあ早速そのお店に行くとしようか!急がないと今日と言う時間が終わっちゃうからね!」

「あっ、コラ!だから先に行くんじゃって……はぁ、仕方のねぇ奴だな。」

「あはは……俺達も後を追いかけるとすっか。」

「えぇ、そうですね!」

 一足先にリビングを飛び出して行ったジーナに続いて部屋を出る事にした俺達は、宿屋を後にするとノルウィンドの北側に抜けてとある店に向かって行くのだった。

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