おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第520話

「くっ……!オイ!両手にウォーシューターってのは流石にズルくないか!?」

「そっちは経験者なんだ!こんぐらいのハンデで文句を言うんじゃねぇよっとぉ!」

「うおぉっ!?あぁクソっ!ちっとも反撃に移れねぇ……!」

 以前よりも機能が強化されているらしい連射とチャージショットを器用に使い分けながらガンガン攻めて来るフィオによって一方的な防戦を強いられ続けていた俺は、水の弾丸を避けたり撃ち落としたりしながら必死になって逃げ回っていた!

「ヘッ、そろそろケリを付けてるよ!オラァ!!」

「さ、させるかぁっ!」

 2丁のウォーシューターで水の弾丸を連射しながら突っ込んできたフィオの妨害をする為に右足を大きく上げた俺は、バランスを取りながらシュダールに魔力を込めて思いっきり海面を蹴り飛ばして目の前にちょっとした高波を出現させた!

 そしてフィオの姿が消えた直後にウォーシューターを構えてチャージを始めた俺は高波の向こう側にうっすら人影が見えた瞬間に引き金に指を掛けた!

「ハッ!甘ぇんだよテメェは!」

「んなっ?!」

 生成された巨大な水の弾丸を撃ち出した反動で腕が上がってしまい動けなくなっていたその時、高波の横から滑り込む様にしてフィオの奴が姿を現しやがって……!

「これで終いだ!くたばりやがれぇっ!」

「ごっっっっふううううぅぅぅっぅぅ!!!!!」

「ハーッハッハッハ!!オラオラオラオラオラオラ!!!!!」

「うぐっほああああああああああああああ!!!!!」

 無防備になっていた胴体に至近距離から限界までチャージされた水の弾丸を2発も撃ち込まれた俺はとんでもないスピードで天高く飛び上がっていき……着水する事も許されないまま空中で連射された水の弾丸を食らい……まく……って…………………

「……つーん……つんつーん……ねぇ、生きてんの?それとも死んでんの?」

「……たぶん………しんでる………」

「おぉ、どうやら目を覚ましたみたいじゃのう。」

「えぇ、そうみたいね……全く、あれしきの事で意識を失っちゃうだなんてちょっと情けないんじゃないの?」

「……いや……アレはどう考えても意識を刈り取られるだろ……げほっ、げほっ!」

「はぁ、仕方のない奴ね。ほら、コレでも飲んで落ち着きなさい。」

「……悪い……ここは……休憩場所か……」

 スポーツドリンクらしき味のする飲み物を流し込んで周囲を見渡した俺は、自分が寝転がされていた場所が海の家で借りてきたビーチベッドだった事に気が付いた。

「うむ、イリスがお主をここまで運んで来た。後で礼を言っておくんじゃぞ。」

「あぁ……それで……そのイリスは……?」

「アンタの仇を取るってフィオと勝負してるわよ、ほら。」

 体を少しだけ横にズラしてユキが親指をクイっとやった先に視線を向けてみると、そこにはメチャクチャ激しい攻防を繰り広げている人影が2つあって……

「……若いって凄いなぁ……」

「全く、そんな事ばっか言ってると一気に老け込むわよ。って、そんな事よりも目を覚ましたのなら丁度良かったわ。アンタに報告し解く事があるのよ。」

「……報告?何だよ。」

「アタシ達、ちょっと行く所があるからしばらくの間ここから離れるわよ。」

「えっ?アタシ達って……レミと一緒に何処かに行くのか?」

「うむ、少しばかりわしの城に行ってこようと思ってな。そもそもここに来た目的は失いつつあった神としての力を再び蓄える為でもあるからのう。」

「あぁ、そういや初めにそんな事を言ってたっけか……分かった、とりあえず監視の人に見つからない様に気を付けて行けよ。」

「ふんっ、そんな風に心配されなくても大丈夫に決まってるでしょ。多分、昼になる前ぐらいには戻って来れると思うから皆に聞かれたら適当に誤魔化しといてよね。」

「了解、お前もレミからシッカリ神様としての力を分けて貰って来いよ。」

「えぇ、言われるまでも無いわ。」

「はっはっは!それでは行ってくる、後の事は任せたぞ九条。」

「おう、いってらー」

 ビーチベッドに腰掛けながら海中にあるレミの城に通じている道がある洞窟の方へ向かって行く2人の後ろ姿を見送った俺は、手にした飲み物を口にしながらこれからどうするか適当に考える事にするのだった。

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