おっさんの異世界生活は無理がある。
第465話
家を出るのが早かったおかげで昼前ぐらいに帰って来る事が出来た俺達は、1時間だけなら大丈夫ですよと告げたミアを誘って一緒に食卓を囲んでいた。
「ふふっ、九条さんの作ったお料理がこんなに美味しいだなんて知りませんでした。これならば私の専属シェフとして何時でも雇ってあげられそうですね。」
「おっと、その前に私の実家で雇わせてもらうよ。」
「ダメ、私が雇う。」
「おぉ、良かったですねおじさん!次の就職先がもう見つかりましたよ!」
「はっはっはぁ……そもそも探してねぇっての……」
勝手に俺の就職先について盛り上がっている3人を呆れながら見つめつつ少しだけ残っているパスタをフォークでくるくる巻いていると、一足先に昼飯を食べ終わったマホが食器を片付けたすぐ後に床の上に置いてある紙袋の方に近寄って行った。
「あの、おじさん!ちょっとだけコレを羽織ってみても良いですか?」
「ん?まぁ良いけど……ただ、俺のだとマホには大きすぎると思うぞ。」
「えへへ、それが良いんですよ!それじゃあ失礼して………」
マホは俺の方を見ながらニコっと微笑むと紙袋の中から明らかに体格に合ってない白いローブを取り出すと、楽しそうに袖を通していき……ハッ、ヤベェ!!
「は、離してくれ九条さん!ソフィ!どうして私の邪魔をするんだ!」
「ぐっ!落ち着けロイド!気持ちは分かるが……このっ!」
「……強い……!」
「あ、あの……これは一体……?」
困惑の表情を浮かべるミアの視線の先には……萌え袖という凶器を振りかざして、フードの下から悪戯っ子の様に下を出して笑っているマホ……に、飛びつこうとしているロイドとソレを阻止する為に立ち塞がった俺とソフィの姿が……って、コイツがこんな風になるの何時ぶりだよ!?久しぶり過ぎてすっかり忘れてたわっ!!
「ふふ~ん!おーばーけーだーぞ!」
「はうあっ!?た、頼む2人共!私はあの可愛らしいお化けを欲望に従ってギュッと抱きしめたいんだ!ただそれだけなんだ!ソレ以外は何もしない!約束する!」
「えぇい!そんな台詞を言う奴を信用出来るか!どうしても抱きしめたいってんならとりあえず落ち着け!今のお前は力任せに暴走しかねんだろうが!」
「そんな事は無い!時に優しく、時に激しく、本能の赴くままに目の前にある現実を愛するだけだ!さぁ、私の邪魔をするんじゃない!」
「ぐうっ!?だから目が血走ってて怖いんだよ今のお前は!少しは冷静になれっ!」
……そんな攻防を繰り広げてから数分後、俺達の目の前にはマホを抱きしめながら頭を撫でまくっているロイドの姿があった。
「はぁ……はぁ……つ、疲れた……!」
「九条さん、ソフィさん、お疲れ様でした。お水をどうぞ。」
「……ありがとう。」
「助かる……」
「もう、ロイドさん。そんなにギュッとされたら熱くなっちゃいますよ。」
「あぁ、それはすまない。だがもう少し……もう少しだけ!」
「えへへ……仕方がありませんね。それじゃあもう少しだけですよ。」
「ありがとう、マホ……!」
「ったく、普段はまともな癖にどうしてああなっちまうのかなぁ……」
「ふふっ、私はロイドさんの気持ちが分かりますよ。あんなに可愛らしい格好をしたマホさんを前にしたら抱き着きたくなってしまいますよ。九条さんだって、同じ事を考えたら反射的に動けたんですもんね。」
「……黙秘します。」
「まぁ、恥ずかしからなくても良いじゃないですか。自分の気持ちに素直になる事も大事ですよ。」
「……俺はロイドやミアお嬢様と違ってそういうのは苦手なんですよ。」
「あら、それは残念ですね。っと、そうでした。講師としての活動が始まるその前に九条さんにお願いしておきたい事があるんです。」
「お願い?何ですか。」
「特に難しい事ではありません。学園内では私の事はミアとお呼び下さい。」
「……はい?」
「今回、九条さんは私の執事としてではなく講師としていらっしゃるんです。なのにお嬢様と呼ばれてしまっては困ってしまいます。分かりましたか?」
「あぁ……分かりました、それじゃあミアさんと呼ばせてもらいます。」
「はい、よろしくお願い致します。」
「あっ、おじさんおじさん!まだ感想を聞けていませんでしたね!どうですか!私、ローブ似合ってますか!」
「……はいはい、似合ってる似合ってる。」
「もう、ちゃんと答えて下さいよ!……って言いたい所ですけど、きちんと私の方を見ていないのが照れている何よりの証拠ですね!」
「んぐっ……知るか……って、目の前に回り込んで来るなっての!」
「ふふーん!おじさんったら可愛いですねぇ!」
「や、やかましいわ!そうやって大人をからかって遊ぶんじゃありません!」
……こうして慌ただしくも騒がしい昼食の時間が終わり、俺達はミアを迎えに来た馬車を玄関先で見送ると明日から始まる講師活動に備えて支度を進めるのだった。
「ふふっ、九条さんの作ったお料理がこんなに美味しいだなんて知りませんでした。これならば私の専属シェフとして何時でも雇ってあげられそうですね。」
「おっと、その前に私の実家で雇わせてもらうよ。」
「ダメ、私が雇う。」
「おぉ、良かったですねおじさん!次の就職先がもう見つかりましたよ!」
「はっはっはぁ……そもそも探してねぇっての……」
勝手に俺の就職先について盛り上がっている3人を呆れながら見つめつつ少しだけ残っているパスタをフォークでくるくる巻いていると、一足先に昼飯を食べ終わったマホが食器を片付けたすぐ後に床の上に置いてある紙袋の方に近寄って行った。
「あの、おじさん!ちょっとだけコレを羽織ってみても良いですか?」
「ん?まぁ良いけど……ただ、俺のだとマホには大きすぎると思うぞ。」
「えへへ、それが良いんですよ!それじゃあ失礼して………」
マホは俺の方を見ながらニコっと微笑むと紙袋の中から明らかに体格に合ってない白いローブを取り出すと、楽しそうに袖を通していき……ハッ、ヤベェ!!
「は、離してくれ九条さん!ソフィ!どうして私の邪魔をするんだ!」
「ぐっ!落ち着けロイド!気持ちは分かるが……このっ!」
「……強い……!」
「あ、あの……これは一体……?」
困惑の表情を浮かべるミアの視線の先には……萌え袖という凶器を振りかざして、フードの下から悪戯っ子の様に下を出して笑っているマホ……に、飛びつこうとしているロイドとソレを阻止する為に立ち塞がった俺とソフィの姿が……って、コイツがこんな風になるの何時ぶりだよ!?久しぶり過ぎてすっかり忘れてたわっ!!
「ふふ~ん!おーばーけーだーぞ!」
「はうあっ!?た、頼む2人共!私はあの可愛らしいお化けを欲望に従ってギュッと抱きしめたいんだ!ただそれだけなんだ!ソレ以外は何もしない!約束する!」
「えぇい!そんな台詞を言う奴を信用出来るか!どうしても抱きしめたいってんならとりあえず落ち着け!今のお前は力任せに暴走しかねんだろうが!」
「そんな事は無い!時に優しく、時に激しく、本能の赴くままに目の前にある現実を愛するだけだ!さぁ、私の邪魔をするんじゃない!」
「ぐうっ!?だから目が血走ってて怖いんだよ今のお前は!少しは冷静になれっ!」
……そんな攻防を繰り広げてから数分後、俺達の目の前にはマホを抱きしめながら頭を撫でまくっているロイドの姿があった。
「はぁ……はぁ……つ、疲れた……!」
「九条さん、ソフィさん、お疲れ様でした。お水をどうぞ。」
「……ありがとう。」
「助かる……」
「もう、ロイドさん。そんなにギュッとされたら熱くなっちゃいますよ。」
「あぁ、それはすまない。だがもう少し……もう少しだけ!」
「えへへ……仕方がありませんね。それじゃあもう少しだけですよ。」
「ありがとう、マホ……!」
「ったく、普段はまともな癖にどうしてああなっちまうのかなぁ……」
「ふふっ、私はロイドさんの気持ちが分かりますよ。あんなに可愛らしい格好をしたマホさんを前にしたら抱き着きたくなってしまいますよ。九条さんだって、同じ事を考えたら反射的に動けたんですもんね。」
「……黙秘します。」
「まぁ、恥ずかしからなくても良いじゃないですか。自分の気持ちに素直になる事も大事ですよ。」
「……俺はロイドやミアお嬢様と違ってそういうのは苦手なんですよ。」
「あら、それは残念ですね。っと、そうでした。講師としての活動が始まるその前に九条さんにお願いしておきたい事があるんです。」
「お願い?何ですか。」
「特に難しい事ではありません。学園内では私の事はミアとお呼び下さい。」
「……はい?」
「今回、九条さんは私の執事としてではなく講師としていらっしゃるんです。なのにお嬢様と呼ばれてしまっては困ってしまいます。分かりましたか?」
「あぁ……分かりました、それじゃあミアさんと呼ばせてもらいます。」
「はい、よろしくお願い致します。」
「あっ、おじさんおじさん!まだ感想を聞けていませんでしたね!どうですか!私、ローブ似合ってますか!」
「……はいはい、似合ってる似合ってる。」
「もう、ちゃんと答えて下さいよ!……って言いたい所ですけど、きちんと私の方を見ていないのが照れている何よりの証拠ですね!」
「んぐっ……知るか……って、目の前に回り込んで来るなっての!」
「ふふーん!おじさんったら可愛いですねぇ!」
「や、やかましいわ!そうやって大人をからかって遊ぶんじゃありません!」
……こうして慌ただしくも騒がしい昼食の時間が終わり、俺達はミアを迎えに来た馬車を玄関先で見送ると明日から始まる講師活動に備えて支度を進めるのだった。
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