おっさんの異世界生活は無理がある。
第452話
「……なるほどね、彼女が来ていたからこんなにも空気が張り詰めていたのか。」
「ロ、ロイドさん!冷静に分析している場合じゃ無いですからね!?」
「マホよ、何をそんなに慌てておるのじゃ?こやつはそんなに凄い奴なのか?」
「ちょ、ちょっとレミさん!こやつなんて言い方をしたらダメですよ!このお方は、国王陛下の娘さん!つまりはお姫様なんですからね!」
「おぉ!なんとそうじゃったのか。これはこれは、すまんかったのう姫様。」
「いえいえ、別に気にしていませんので謝罪は必要ありませんよ。それよりも……」
愛らしい容姿で優雅に微笑みかけてきたお姫様……くっ、コレが本当の姿だったらどんなに良かった事かっ!ヤベェ、ガチで嫌な予感してこねぇぞ……!
「……お姫様、どうしてここに居るの?」
「ふふっ、ソレは勿論……九条さんにお会いしたかったからですよ。」
「え、えぇ!?そ、そんな……お姫様がおじさんにっ?!」
「はっはっは!良かったではないか九条!お主、姫様に好かれておるんじゃのう!」
……背中をバシバシと叩きながらイラっとする顔をしているレミから目を逸らした俺は、無理やり口角を上げてニコっと微笑むと眉をひくひくさせながらお姫様の方に顔を向けて行った。
「ミ、ミア様、ご冗談はほどほどにして頂かないと困りますよ。ほら、俺の仲間達が混乱しているじゃないですかぁ……ア、アハハ……」
「ふふっ、失礼を致しました。そちらのお嬢さんがあまりにも可愛らしかったので、ついついからかいたくなってしまって。」
「………はぇ?か、からかってって……?それじゃあさっきのは……?」
「申し訳ございません。私がここに来た本当の理由は、先ほど皆様がお読みになっていた手紙を此方《こちら》までお届けする事なんです。」
「むっ、そうなのか?いやしかし、その様な役目はお主がやらんでも良くないか?」
「はい、確かに貴女の言う通りだと思います。事実、私もそう考えていましたから。ですが……此方《こちら》にお邪魔させて頂いた事は間違いでは無かったみたいですね。」
「っ!……あ、あのぉ……いかがなさいましたか?」
「……九条さん、扉の向こう側に居てよく聞こえなかったのですが……もしかして、クエストをお断りするなんて言っていませんでしたか?」
「へっ!?い、いやそのぉ……何と言いますかぁ……?え~……そ、そうです!実は色々と予定が立て込んでいるのでクエストの日は都合が悪いかなって思いまして!」
「ふふっ、手紙には日付については何も書いていなかったはずですが?」
「あ、あれぇ!?そうだったですかねぇ~……?」
「はい、間違いありませんよ。私もそこに書かれている事を把握していますので。」
「な、なるほどぉ!……なるほどぉ……」
おいコラ、どんどん逃げ場を無くして来るんじゃねぇよ!つーか、聞こえなかったとか言ってるけどソレって絶対に嘘だろ!だって確信しながら追い詰めてきてるし!
「お姫様、もし良かったらクエストの内容について詳しく教えて貰えないだろうか。それを聞ければ受けるかどうかの判断材料になると思うからさ。」
「えぇ、分かりました。とは言っても、クエストの内容はその手紙に書いてある事が全てなんです。」
「……王立学園での講師活動?」
「はい、実は以前より冒険者や商人といった方々を学園にお招きして普段はどの様な活動をしているのか講師として教えて頂きないなと考えていたんです。生徒の皆様が将来について考える良い機会にもなるかと思いまして。」
「おや、それはまた随分と立派な考えだね。素直に尊敬するよ。」
「ふふっ、お褒め頂きありがとうございます。しかし……九条さん、このクエストを本当に引き受けては……下さらないのですか?」
「うぐっ!そ、それは………!」
「九条さん、悪い話では無いと思うけれど?」
「そうですよ!とっても素敵なクエストじゃないですか!引き受けるべきです!」
「うむ、こんなに心惹かれる依頼は無いぞ。選ばれた事、光栄に思うが良い。」
「……皆がそれで良いなら構わない。」
「……九条さん、いかがでしょうか?」
瞳をうるうるとさせながら不安そうにこっちを見上げて来たお姫様、そんでもってやる気に満ちた皆に見られながら俺は……俺は………!
「………すみませんが、今回は縁が無かったという事で……!」
「お、おじさん!?」
「く、九条!お主、何を考えておるのじゃ!?」
「う、うるせぇ!た、例え誰に何を言われようと……学園になんて行けるかよぉ!」
「もう!おじさんってば何時まで昔の事を引きずっているんですか!ほら、さっきの言葉を撤回して下さい!」
「い、嫌だ!俺は覚悟を決めたんだ!絶対に断るってなぁ!」
「あっ、コラ!ソファーの後ろに隠れるとは、お主は幾つなんじゃ!?」
自分でもみっともない事ぐらい分かってる!だが、キラキラと希望に満ち溢れてる連中が溢れんばかりに居る学園で講師活動なんてやってられるかよ!そんな事をするぐらいなら、死神と再戦する方がまだマシだっ!!
「……すまないね、ギルドリーダーがこう言っているから今回は諦めて他の冒険者を講師として招いてもらえるかな。」
「ロイドさん?!ほ、本当にそれで良いんですか!?」
「あぁ、仲間に無理強《むりじ》いさせる訳にもいかないからね。」
「……分かりました。残念ですが今回は諦めると致します。」
「…………えっ?」
あのミアがあまりにもアッサリと引いた事に驚いて反射的に隠れていた背もたれの後ろから顔を出した瞬間……目が合ったお姫様の目つきがスッと細くなって……
「はぁ……ですが本当に残念です……皆様、九条さん達が学園に来るかもしれないと聞いて嬉しそうにしていましたのに……」
「み、皆様……?」
「えぇ……エルアさん、イリスさん、それにクリフさんやオレットさんも……勿論、私も……しかし、九条さんのご都合が悪いのであれば仕方ありませんよね……本日はお邪魔致しました。私は他に講師をして下さる冒険者の方を探さねばなりませんので今日はお暇させて頂きたいと」
「ちょ、ちょっと待ったぁ!!」
「……はい、何でしょうか?」
「……………………受ける………」
「……すみません、良く聞こえなかったのでもう一度お願い出来ますか?今……何と仰いました?」
「……だから!………このクエスト……受けさせて……もらいます……っ!」
「まぁ!よろしいんですか?ご都合が悪いのでは?」
「……だ、大丈夫だ!何とかする……!」
「ふふっ、それはどうもありがとうございます。それでは早速ですが、詳しい日程についてになりますが……」
最初から負け試合だと理解していればこんな無駄な時間を過ごす必要も無かったんじゃないの?……なんて言葉がミアから聞こえてきそうな気配を感じながら……俺は戸惑った様子のエリオさんからクエストについて説明されるのだった………
「ロ、ロイドさん!冷静に分析している場合じゃ無いですからね!?」
「マホよ、何をそんなに慌てておるのじゃ?こやつはそんなに凄い奴なのか?」
「ちょ、ちょっとレミさん!こやつなんて言い方をしたらダメですよ!このお方は、国王陛下の娘さん!つまりはお姫様なんですからね!」
「おぉ!なんとそうじゃったのか。これはこれは、すまんかったのう姫様。」
「いえいえ、別に気にしていませんので謝罪は必要ありませんよ。それよりも……」
愛らしい容姿で優雅に微笑みかけてきたお姫様……くっ、コレが本当の姿だったらどんなに良かった事かっ!ヤベェ、ガチで嫌な予感してこねぇぞ……!
「……お姫様、どうしてここに居るの?」
「ふふっ、ソレは勿論……九条さんにお会いしたかったからですよ。」
「え、えぇ!?そ、そんな……お姫様がおじさんにっ?!」
「はっはっは!良かったではないか九条!お主、姫様に好かれておるんじゃのう!」
……背中をバシバシと叩きながらイラっとする顔をしているレミから目を逸らした俺は、無理やり口角を上げてニコっと微笑むと眉をひくひくさせながらお姫様の方に顔を向けて行った。
「ミ、ミア様、ご冗談はほどほどにして頂かないと困りますよ。ほら、俺の仲間達が混乱しているじゃないですかぁ……ア、アハハ……」
「ふふっ、失礼を致しました。そちらのお嬢さんがあまりにも可愛らしかったので、ついついからかいたくなってしまって。」
「………はぇ?か、からかってって……?それじゃあさっきのは……?」
「申し訳ございません。私がここに来た本当の理由は、先ほど皆様がお読みになっていた手紙を此方《こちら》までお届けする事なんです。」
「むっ、そうなのか?いやしかし、その様な役目はお主がやらんでも良くないか?」
「はい、確かに貴女の言う通りだと思います。事実、私もそう考えていましたから。ですが……此方《こちら》にお邪魔させて頂いた事は間違いでは無かったみたいですね。」
「っ!……あ、あのぉ……いかがなさいましたか?」
「……九条さん、扉の向こう側に居てよく聞こえなかったのですが……もしかして、クエストをお断りするなんて言っていませんでしたか?」
「へっ!?い、いやそのぉ……何と言いますかぁ……?え~……そ、そうです!実は色々と予定が立て込んでいるのでクエストの日は都合が悪いかなって思いまして!」
「ふふっ、手紙には日付については何も書いていなかったはずですが?」
「あ、あれぇ!?そうだったですかねぇ~……?」
「はい、間違いありませんよ。私もそこに書かれている事を把握していますので。」
「な、なるほどぉ!……なるほどぉ……」
おいコラ、どんどん逃げ場を無くして来るんじゃねぇよ!つーか、聞こえなかったとか言ってるけどソレって絶対に嘘だろ!だって確信しながら追い詰めてきてるし!
「お姫様、もし良かったらクエストの内容について詳しく教えて貰えないだろうか。それを聞ければ受けるかどうかの判断材料になると思うからさ。」
「えぇ、分かりました。とは言っても、クエストの内容はその手紙に書いてある事が全てなんです。」
「……王立学園での講師活動?」
「はい、実は以前より冒険者や商人といった方々を学園にお招きして普段はどの様な活動をしているのか講師として教えて頂きないなと考えていたんです。生徒の皆様が将来について考える良い機会にもなるかと思いまして。」
「おや、それはまた随分と立派な考えだね。素直に尊敬するよ。」
「ふふっ、お褒め頂きありがとうございます。しかし……九条さん、このクエストを本当に引き受けては……下さらないのですか?」
「うぐっ!そ、それは………!」
「九条さん、悪い話では無いと思うけれど?」
「そうですよ!とっても素敵なクエストじゃないですか!引き受けるべきです!」
「うむ、こんなに心惹かれる依頼は無いぞ。選ばれた事、光栄に思うが良い。」
「……皆がそれで良いなら構わない。」
「……九条さん、いかがでしょうか?」
瞳をうるうるとさせながら不安そうにこっちを見上げて来たお姫様、そんでもってやる気に満ちた皆に見られながら俺は……俺は………!
「………すみませんが、今回は縁が無かったという事で……!」
「お、おじさん!?」
「く、九条!お主、何を考えておるのじゃ!?」
「う、うるせぇ!た、例え誰に何を言われようと……学園になんて行けるかよぉ!」
「もう!おじさんってば何時まで昔の事を引きずっているんですか!ほら、さっきの言葉を撤回して下さい!」
「い、嫌だ!俺は覚悟を決めたんだ!絶対に断るってなぁ!」
「あっ、コラ!ソファーの後ろに隠れるとは、お主は幾つなんじゃ!?」
自分でもみっともない事ぐらい分かってる!だが、キラキラと希望に満ち溢れてる連中が溢れんばかりに居る学園で講師活動なんてやってられるかよ!そんな事をするぐらいなら、死神と再戦する方がまだマシだっ!!
「……すまないね、ギルドリーダーがこう言っているから今回は諦めて他の冒険者を講師として招いてもらえるかな。」
「ロイドさん?!ほ、本当にそれで良いんですか!?」
「あぁ、仲間に無理強《むりじ》いさせる訳にもいかないからね。」
「……分かりました。残念ですが今回は諦めると致します。」
「…………えっ?」
あのミアがあまりにもアッサリと引いた事に驚いて反射的に隠れていた背もたれの後ろから顔を出した瞬間……目が合ったお姫様の目つきがスッと細くなって……
「はぁ……ですが本当に残念です……皆様、九条さん達が学園に来るかもしれないと聞いて嬉しそうにしていましたのに……」
「み、皆様……?」
「えぇ……エルアさん、イリスさん、それにクリフさんやオレットさんも……勿論、私も……しかし、九条さんのご都合が悪いのであれば仕方ありませんよね……本日はお邪魔致しました。私は他に講師をして下さる冒険者の方を探さねばなりませんので今日はお暇させて頂きたいと」
「ちょ、ちょっと待ったぁ!!」
「……はい、何でしょうか?」
「……………………受ける………」
「……すみません、良く聞こえなかったのでもう一度お願い出来ますか?今……何と仰いました?」
「……だから!………このクエスト……受けさせて……もらいます……っ!」
「まぁ!よろしいんですか?ご都合が悪いのでは?」
「……だ、大丈夫だ!何とかする……!」
「ふふっ、それはどうもありがとうございます。それでは早速ですが、詳しい日程についてになりますが……」
最初から負け試合だと理解していればこんな無駄な時間を過ごす必要も無かったんじゃないの?……なんて言葉がミアから聞こえてきそうな気配を感じながら……俺は戸惑った様子のエリオさんからクエストについて説明されるのだった………
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