おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第411話

「……なるほどね。散々遊び倒した後で遅れを取り戻そうと必死になってクエストをこなしていったら、必然的にそうなってしまったと。」

「はぁ……九条さん、もう少し後先の事を考えて行動して頂かなければ困りますわ。帰って来て早々に動けなくなってしまうだなんて……貴方はお幾つなのですか?」

「うっ、ぐぅ……本当に……申し訳ない……」

 30種類以上もある素材を1日で集める為に無茶なスケジュールを組んでいたにも関わらず雪まみれになっていた俺達は……って言うか俺は、限界以上に体力を使っていたらしく宿に戻るとそのままソファーの上に倒れ込んでしまっていた訳でして……

「ま、まぁまぁ……それぐらいにしておきませんか?ほら、とりあえず頼まれていた素材は集める事が出来たんですから、ね?」

「そ、そうですね!それにあの……悪いのは私達も同じと言いますか……」

「……ごめんなさい。」

「はっはっは!すまんかったのう!いやしかし、九条がこうもあっさり倒れてしまうとはなぁ……やはり長期の入院で体力が衰えてしまっていたんじゃろうか?」

「ど、どうだろうな……一応、本調子まではいかないがそれなりに体力は戻したはずなんだが……慣れない雪の上で戦闘をしまくってたってのが関係している……つーかレミ、一番はしゃぎまくってたお前がどうしてそんなピンピンしてんだよ……!?」

「ふっ、あの程度の運動でわしが動けなくなる程に疲れる訳が無かろう!ほれほれ!悔しかったら立ち上がってみるが良い!あっそれ、つんつーん!」

「ぐあっ!こ、こんにゃろう……調子に乗りやがってぇ……!お前、後でどうなるか覚えとけよ……!」

「おぉ、怖い怖い。と、そんな事はさておき……もうそろそろ夕飯の時間になるが、この後はどうするんじゃ?九条がこんな調子では遠出する事は難しいじゃろうから、近場の店に足を運んでみるとするか?」

「そうですね……案内所で貰った地図によると、何軒か飲食店があるみたいですからそこに行って……おじさん、そこまで動けそうですか?」

「あ、あぁ……流石に朝から動き通しで俺も腹が減ってるからな……無理やりにでも何とかしてやるよ……!」

「ふぅ、ヤレヤレですわ……ライルさん、申し訳ありませんが九条さんに回復魔法を掛けてあげてくれませんか?このままでは、部屋を出た時点で倒れてしまう可能性がありますからね。」

「あっ、はい!分かりました。九条さん、すみませんが少しの間だけジッとしていて下さいね。」

 ライルさんは小走りで壁に立てかけてあった杖を取って来ると、俺の真上に小さな魔方陣を展開して暖かな光を出現させて……いやはや、本当に魔法ってのは便利な物だな……少しずつだが体力が戻ってきた感覚があるわ……

「……ありがとうな、ライルさん。もう良いよ、そろそろ動けそうだ。」

「そうですか?それなら良かったです!ですが、あんまりご無理は……」

「大丈夫だ、無理をしようとしても動けないだろうからな……ははは……」

「……おじさん、もしアレなら私が手を引いてあげましょうか?」

「平気だっての……って言いたい所だが、今回ばかりは頼むわ……」

「はい!任せて下さい!」

「……九条さん、私も手を貸してあげる。」

「えっ?いや、ちょっ!」

「おやおや、九条さんったら両手が華やかで羨ましい限りだね。私も混ぜて欲しいと思ってしまうよ。」

「ロ、ロイド様!それでしたら、その役目は私にお任せくださいませ!」

「あっ、わ、私も良かった!」

「おっと、嬉しいお誘いだね。それなら、是非ともお願いしようかな。」

「は、はい!かしこまりましたわ!では、私は右手の方を……はうあっ!わ、私……今、ロイド様と手を繋いでいますわ……!」

「すぅ……はぁ……すぅ……はぁ……だ、大丈夫……私なら…‥出来る……!」

「……九条、わしはどうすれば良いと思う?」

「……そうだな、とりあえずあっちに混ざるのは止めておけ。」

「うむ、そうじゃな………マホ、すまぬが開いている手を繋がせてもらうぞ。」

「あっ、はい。どうぞレミさん。」

 ……それからしばらくして、美少女に手を引かれて歩くおっさんとハイテンションすぎる美少女達に挟まれたイケメン美少女と言うなんともおかしな組み合わせで街に出た俺達は、ノルウィンド特有の料理を出す店に足を運んで晩飯を食べるのだった。

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