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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第389話

 死の淵から蘇って再び強敵と相まみえる……そんな状況を何度も妄想してきたが、まさか当事者としてその場に居合わせる事になっちまうとは思いもしなかったな!

「オラアッ!」

 それに依然として状況は呑み込みきれてはないが、レミから託されたであろう力に身を任せて自分でも信じられないぐらいの速度で甲冑に突っ込んでいった俺は地面を思いっきり踏み抜くと構えていた刀を奴の胴体目掛けて横薙ぎに斬り払った!

「……!」

「っく!」

 即座に反応して攻撃を防いだ甲冑はさっきと同じ様に武器を振り抜いて、俺の体を吹き飛ばそうとしたみたいだが……!

「ふふっ……はははっ……!こりゃ……面白くなってきたなぁ……オイッ!」

 手足が震える感覚がしながらもその場に踏み止まれている事に思わず笑っちまった俺は、歯を食いしばりながら奴の何も入っていない頭部を睨みつけた!

「ほら、どうした……!そんなんじゃ……俺は殺せねぇぞ……!」

 ……さっきまでとは比べ物にならないぐらいの激痛が全身を襲っているせいで一瞬でも気を抜けば意識を失っちまいそうだし、レミから託された力は10分もしないで消えちまう事も何となくだが理解している……!でも……それなら……!

「覚悟しやがれ……!お前だけは……俺の命に代えても……ぶった斬る!」

 俺は全身全霊の力を込めて鍔迫《つばぜ》り合っていた刀を引いて半身を逸らしながら甲冑が振り上げたブレードを間一髪の所で避けると、そのままの勢いで体を回転させながら無防備になった奴の胴体目掛けて刀を振り払った!

 だが甲冑はその巨体からは想像も出来ない速度で身を翻《ひるがえ》して攻撃を躱《かわ》すと、次の瞬間には手にしていた武器を思いっきり叩きつけようとしてきやがった!

「ふっ!」

 目前まで迫って来ていたブレードを横跳びで避けた俺は、左手を地面をつきながら半回転するように体勢を立て直すと瞬時に反撃を仕掛けようとしたんだがっ!

「っ!」

 ブレードが地面に接触した瞬間に土埃が舞い上がり黒い甲冑が視界から消えたその直後、嫌な予感がした俺は咄嗟《とっさ》にバックステップをしてその場所から離れて行った!そうしたら黒い甲冑が居るであろう所に突如として巨大な魔方陣が出現して!?

「チィッ!」

 その事に驚いている暇も無く、今度は土埃を突き破る様にして黒い電撃が連続して飛んで来やがった!……だがっ!

「甘いんだよっ!」

 とんでもない精度で飛んで来ている電撃を後ろに下がりながら少ない動きで2度、3度と躱した俺は瞬時に身を低くして刀を構えながら眼前を見据えると……!

「ふっ!」

 襲い掛かって来ている電撃を掻い潜って一気に土埃の向こう側まで走り抜けた俺は即座に甲冑を斬り付けようとしたんだが、魔方陣の近くに奴の姿はなくて!?

「っ!こっちか!」

 背後に気配を感じて刀を頭上に持っていき防御の姿勢を取った瞬間、両腕に激痛が走りガキィンと言う金属同士がぶつかり合う耳に届いてきた!

 その衝撃で土埃が消えてなくなると、全体重を乗せて武器を振り下ろしてきている黒い甲冑の姿が視界に飛び込んできやがった!

「うっ、ぎぎっ……!な、なるほどねぇ……!頭部には何も入って無い癖に、色々と考えやがるなぁ……!良いぜ……そうこなくっちゃなぁ!」

 あぁ、ちきしょう……!絶体絶命のピンチだってのにさぁ……!どうしてこうも、テンションが上がってきちまうんだ……!って、そんなの決まってるか……!二次元でしか見た事ないシーンを実際に体験して……!興奮しない訳には……!

「い、いかねぇよなぁ……!うおおおおおおおあああああああああ!!!!!!!」

 振り絞る様に雄叫びを上げて魔力を込めた右足を無理やり振り上げた俺は、一気に地面を踏み抜くと黒い甲冑の足元に魔方陣を出現させてやった!!

「…!…」

 その事に驚いた奴がブレードに込めていた力を緩めて後ろに下がろうとした瞬間、俺はその動きに合わせて刀を構えながら一歩前に踏み出して魔方陣に足を乗せた……だが、そこからは何も出現しなかったってなぁ!

「…!?…」

「バカがっ!魔方陣は囮だ!」

 攻撃を止めさせて回避行動を取らせるという俺の目論見の通りに行動をしてくれた黒い甲冑の頭部をニヤリと笑いながら見つめた俺は隙だらけの奴を斬り倒す為にまた一歩前に踏み出すと刀を思いっきり振り上げようとしたんだが……!

「うおっ!?」

 斬られた所から血が流れ出ていたまま戦い続けていたせいなのか一瞬だけ体の力が抜けるような感覚に襲われてフラついてしまったその時、いきなり黒い甲冑の方から突風が吹いてきて俺はマズいと思いながら反射的に目を閉じてしまった!

 そして攻撃を受ける訳にはいかないと判断して一気に後方へ飛んで行った後、俺は急いで奴の姿を確認する為に目を開けた……しかし視界の先に奴の姿は無く……!?

「おいおい……!空を飛ぶなんて反則だろっ……!」

 丸々と輝いている満月を背にして空に静止している黒い甲冑を見つけた直後、奴は手にしていた巨大なブレードを天高く掲げて霞みがかった夜空に特大の魔方陣を出現させやがった……!?

「ちょっ、冗談じゃねぇぞ!アイツ、ここら一帯を吹っ飛ばす気か!?」

 って、驚いてる場合じゃねぇ!魔法が発動する前に何とかしないと俺だけじゃなくレミも巻き添えに……!でも、どうやって止めれば良いんだ?!中途半端な魔法じゃ効果なんてあるはずも無いし、だからってあんな上空まで行けるはずが……いやっ!

「アレが神の能力だってんなら……っ!」

 黒い甲冑を睨みつけながら一か八かの賭けに出る事を決めた俺はグッと両足に力を込めると上空に向かって一気に飛び上がって行った!

 そして空中で制止しかけた瞬間に足元に水の塊を魔法で出現させると……!そこを足場にして更に加速しながら黒い甲冑のもとに突っ込んでいった!そして……!

「ッラァ!!」

「…?!…」

 勢いそのままに振り上げた斬撃はもう少しの所で躱されてしまったが何とか上空に出現していた魔方陣を消す事に成功した俺は、黒い甲冑と同じ高さの所に水の足場を生み出してそこに着地をして奴を見ながら笑みを浮かべた。

「うーん、やっぱり神様の力ってのは凄いもんだねぇ……まぁ、それもそろそろ限界みたいだけどな………ごふっ…………ははっ、血を吐く経験なんて初めてだな……」

 これも、限界以上の力を引き出している影響なのかねぇ……そして恐らくだが……レミから託された力はもう数分もしない内に消えちまうだろう……そして……

「お前も……そろそろ限界なんだろ……?不完全なままこの世界に呼び出されて……こんだけ力を消耗させたらなぁ………だからさ………」

 両手で構えているはずの刀がカタカタと揺れる音を耳にしながら、ぼやける視界の先に奴の姿を捉えながら口角を上げた俺は……!

「覚悟を決めろ……死神……!これが……最終ラウンドだっ……!」

 正真正銘、最後の力を振り絞って黒い甲冑がこっちに向かって来たのとほぼ同時に空中に飛び出して行き刃を混じり合わせながら奴とすれ違った俺は即座に体を捻ると足元に再び水の足場を作ってそこに着地をした!

「ぐぅっ……!」

 激痛に体を襲われながらも必死に顔を上げてみると黒い甲冑が黒い電撃を連続して撃ち込んできていたので、即座にその場から飛び出した俺は瞬時に作り出した小さな水の足場を利用しながら少しずつ奴との距離を詰めていった!

 そしてどうにか黒い甲冑よりも高い場所に飛び上がった直後に刀の持ち手を両手で握り締めながら両足にグッと力を込めた俺は、襲い掛かって来る黒い電撃に圧縮した水の塊をぶつけて消滅させながら奴に向かって一直線に突っ込んで行った!

「オラァッ!!」

 そして防がれるのも承知で奴が頭上に構えたブレードにさっきの仕返しとばかりに振り絞った力を全て込めて刃を叩き落としてやると……!

「ぐっ……!うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

 片腕しか残ってないか黒い甲冑が手にしているブレードがほんの僅かに沈み込んだ感覚が刀を通じて伝わってきた瞬間、俺は体が壊れていく様な激痛に襲われながらもそれら全てを無視して……もっと……もっと……!!

「こ、れで……!終わり……だ……っ!?ぐぁっ!?!?!!!!」

 限界以上の力を引き出しているのを実感しながら死に物狂いで刃を押し込んでいき黒い甲冑の肩を少しずつだが切り裂くまでに至ったその時……!

 いきなり心臓を握り潰される様な痛みに襲われて呼吸困難になり思わず左手で胸の辺りを押さえてしまった直後、黒い甲冑に刀を上方向に弾かれてしまい体勢を崩してしまった俺は奴が振り下ろしてきたブレードを防ぐ為にっ!?

「がはっ!?」

 突然の事に踏ん張りが間に合わず凄まじい威力のブレードを叩きつけられてた俺はとんでもない速度で地面に落ちて行って……!マズいと判断したのも束の間、すぐに水のクッションを進行先に生み出してどうにか勢いを殺そうとしたんだが……!!

「ぐふうっ!?!??!!」

 まともに受け身も取れないまま体を何度も地面に打ち付ける事になってしまい……最後には木にぶち当たって呼吸困難な状況にまで陥ってしまっていた……

「……っ……!ざけ……がって………!」

 あ、あの野郎……わざと……力を流し込んで………呪いを……強めやがった……!まさか……そんな手を……使ってきやがるとは……なぁ……感心……するぜ………

「は……ははっ………だが……おまえも………げんかい……みたいだな………」

 背後の木に体を預けながらそう呟くと……上空から……黒い甲冑が降りて来て……俺に追撃を加えるでもなく……そのまま……膝から……崩れ落ちていきやがった……

「バカな……奴だなぁ……あの時……俺を殺してさえ…いれば……そんな目に………遭わなくても……済んだっつうのにさぁ……ははは………まぁ……俺が偉そうに……そんな事……言えた立場じゃあ……ねぇんだっ……けどよぉ……!」

 満身創痍……いや……既に死を目前に感じながら……木を支えにして……無理やり立ち上がった俺は……右手に刀を持ちながら……黒い甲冑に視線を送った………

「っ…はぁ………はぁ………はぁ………このまま……動けずにいるお前を……黙って見てりゃあ……全て……終わるんだろうが……それじゃあ……つまんねぇだろ……?だからさ………決着を……付けるとしようぜっ………!」

 本当は分かってる……アイツよりも先に俺が死んだら……呪いが発動して……奴は完全な姿で復活を遂げるであろう事も……でも……このまま……終わる訳には………いかねぇだろが………!

「ロイドを……そして皆を……傷つけて……悲しませて……苦しませたその罪は……この手で償わせると……そう……誓ったんだ……!」

 歯を食いしばり……感覚の無い手足に力を込めて……刀を強く握りしめた俺は……立ち上がり……ブレードを手にしながら……黒い甲冑の……断末魔みたいな雄叫びを耳にしなが…………大きく息を吸い込むと………!

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!!!」

 巨大なブレードを振り上げて突っ込んできた黒い甲冑と同時に駆け出して、地面が抉れる程の力で地面を踏み抜きながら奴とすれ違うと…………!

「……ぐふっ!」

 全身から……力が抜けていき………血反吐を出しながら……倒れ込んでいき………それか……ら…………

「………ざま……みろ………俺の………勝ち……だ………」

 微かに……残っていた………最後の力を振り絞って……そう呟きながら……中指を立てた直後………木々が揺れ動く程の……叫びが聞こえ……………重苦しかった……やつの………………けはいが………………きえ…………て………………………

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