おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第386話

 下調べしていたルートを使って警備隊に見つからない様に細心の注意を払いながら街の外に抜け出した俺達は、トリアルを囲っている森の奥深くに懐かしのダンジョン近くまでやって来ていた……

「はぁ……はぁ……ここに来るのも……随分と久しぶりだな………ぐっ!」

「……九条、少しぐらいは休んだ方が良いのではないか?このままでは……」

「いや、大丈夫だ……それよりも……予想していた通り……この辺りに死神の野郎が居るみたいだな……呪いの力が……屋敷に居た時よりも強くなってやがるしな……」

 そのせいで呼吸をするのもしんどくなってきたが……ここで足を止めたらもう動けそうにないから……今は……無理やりにでも前に進んでおかねぇと……!

「……お主がそう言うのなら間違いないんじゃろうが、どうしてこの場所の近くだと分かったんじゃ?まさか、何か手掛かりでもあったのか?」

「別にそういう訳じゃない……ただ……この場所の更に奥の方に生息していたはずの凶暴なモンスターが……どういう訳か街の近くまで来ていた事と……斡旋所で聞いた話を合わせて考えた結果……この辺りが怪しいんじゃねぇかと思ったんだよ……」

「……確か妙な濃霧が発生しておるせいで、モンスターが縄張りを離れた理由を調査する事が出来ぬと言っておったんじゃろ?」

「あぁ……でも、おかしいな……濃霧なんて何処にも見当たらねぇぞ……」

「うむ……もう少し奥に行ってみるか……九条、歩けるか?」

「……大丈夫だ。」

 服の胸元をぐしゃりと握り締めながらそう返事をするとレミは微妙な顔をして俺の事を見てきたが……何も言わず前を向き、ダンジョンを回り込む様にして森の奥へと向かって歩き出した……その後にしばらくついて行くと……急に辺りが白く……っ!

「ぐっ!……これか……濃霧って言うのは……?!」

「……なるほどのう、そういう事じゃったのか。」

「レミ……どうかしたのか……?」

「九条よ、コレはただの霧では無いぞ。」

「な、何だと……?それはどう言う意味だ……」

「この霧は一種の結界……侵入者を奥へ進ませぬ為に生み出されたものであろう……しかも厄介な事に、この結界には悪しき神の力が含まれておるみたいじゃな。恐らくこのまま歩き続けても足を踏み入れた場所に戻されて終わりじゃろうな。」

「オイオイ、それじゃあどうすりゃ良いんだよ……こんな所で足止めなんてされてる場合じゃ無いんだぞ……クソっ!?聖水の力があってもギリギリだってのに……!」

「ふっ、そう焦るでないわ九条。お主と共に居るのは一体誰だと思っておるんじゃ?確かに面倒な結界ではあるが、所詮は人が作り出し物……それならば………」

 レミはニヤリと笑みを浮かべながら俺に背を向けると右手を空に伸ばしていき……パチンッと指を鳴らした……そうし、たら………

「マ、マジかよ……あんなに濃かった霧が……あっと言う間に消えて……」

「驚くのはまだ早いぞ九条よ。ほれ、目の前に広がる光景をよく見るが良い。」

「…………何だ……コレ………?」

「……そんなの決まっておるじゃろう。わし達が探していた目的の場所じゃよ。」

 濃霧が晴れた先に待っていたのはだだっ広い空間と……その真ん中には……さっき通り過ぎてきたのと似た形をした遺跡みたいな建物で……‥

「……こんなのがあるなんて、斡旋所で聞いた覚えは無いぞ?」

「それはそうじゃろうな。この遺跡は、先ほどのダンジョンを真似して造られた代物みたいじゃからな。」

「はっ?ま、真似てって……そんな事、出来るのか?」

「まぁ不可能ではあるまい。要はわしが住んでいた城みたいなものじゃ。悪しき神の力を利用して作り上げたんじゃろうが、まだ不完全みたいじゃな……今ならば、何の労力も必要とせずに侵入する事が出来るじゃろう。」

「そ、そうなのか?じゃあ急いで……ぐうっ!?」

「っ?!おい九条!しっかりせい!」

「はぁ…はぁ…はぁ………!だ、大丈夫だ……行くぞ……!」

「し、しかしじゃな!元凶に近づいて来ておる影響で呪いの力が……これでは聖水もどれ程の効力があるのか分からんのだぞ?!」

「例えそうだとしても……ここで待ってるだけなんてのはゴメンだ……!」

「……あぁもう!仕方のない奴じゃな!言っても聞かぬと言うのなら、わしより前に出るでないぞ!」

「あぁ、分かった……」

 足手まといになっている事は自覚しながらも渋々といった感じで納得をしてくれたレミと共に、俺は悪しき神が居るはずの遺跡へ足を踏み入れて行くのだった………

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